閉じる

校内教育支援センターとは?不登校・別室登校との違いと学校で受けられる支援を徹底解説

学校には行けるけど、教室には入れない
このようなお子さまの姿を見て、一人で悩んでいませんか?

この状況は、決して珍しいことではありません。「行けない」のではなく「入れない」—この違いには、お子さまの努力や意欲だけではどうにもできない事情が潜んでいます。

この記事は、お子さまの「行きたい気持ち」と「入れないつらさ」に寄り添いながら、学校内で安心・安全に居場所を見つけるための「校内教育支援センター(スペシャルサポートルーム)」について解説します。

「学校内でどんなサポートがあるのか」、「ご家庭ではどのような関わり方がお子さまの安心につながるのか」を具体的にひも解きながら、お子さまが学校という場所で安心して学び続けられるための道筋を一緒に探していきましょう。

不登校の理由の一つ:「行けない」ではなく「入れない」気持ち

不登校の増加を受け、国は学校現場での切れ目のない支援体制の整備を急いでいます。文部科学省「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」(令和7年 10 月 29 日)によると、小中学校における不登校児童生徒数は353,970人(前年度346,482人)と不登校児童生徒数が過去最多となりました。不登校の理由は、学校生活に対してやる気が出ない、生活リズムの不調など一人一人異なりますが、中でも、学校には行かれるのに、教室には入れない、という気持ちを抱くお子さまは少なくありません。

学校には通える、でも教室には入れない

「不登校」と言っても、お子さまの様子は一人ひとり異なります。

  • 「朝は登校できたのに、チャイムが鳴ると足がすくむ」
  • 「校門はくぐれたのに、教室のドアの前で固まってしまう」
  • 「保健室や図書室なら落ち着ける」

令和6年3月に公表された、文部科学省委託事業「不登校の要因分析に関する調査研究 報告書」によると、不登校のお子さま自身が回答する不登校のきっかけ要因について、「不安・抑うつの訴え」が76.5%となっています。

こうしたお子さまは、学校という場への「つながり」は持っている一方で、教室の環境、人間関係、成績を評価されることへの不安などが重なり、教室に入ることが難しくなっている状態です。

つまり、学校まで行くことはできても、教室の前まで言った途端、身体が固まる、動悸がする、頭痛や腹痛が起こるといった反応が出でしまう。教室のざわめきや多人数の視線、突然の指名に対する緊張、課題や評価への過度な不安、友人関係のつまずき、感覚過敏による音・光・においの刺激過多など、理由は様々です。

このようなお子さまにとって、「まず落ち着ける場所が校内にある」ことは、安心感の土台であり、回復の出発点です。

見守られながら別室で学習する、好きな活動から始める、そして短時間だけ授業の雰囲気を感じに行くというように、お子さまのペースを尊重した関わりが、「自分でできた」という自己肯定感の回復につながります。

「朝は学校に行ける」場合も、緊張の糸が張り詰めた状態が続くと、疲れや自己否定感が積み重なり、欠席の長期化や不眠・食欲低下(二次的な困りごと)につながることがあります。

だからこそ、焦らずに「安全・安心」→「関係の回復」→「参加の拡大」という順番を大切にし、小さな成功体験を積み上げるスモールステップがとても重要です。

校内教育支援センターは、そのプロセスを学校全体で支える「見える仕組み」を用意し、子ども・保護者・先生が同じ方向を向けるようにする場でもあります。

お子さまが「戻る」ことだけを目標に急ぐのではなく、「つながり続ける」「学び続ける」ことを中心に据えることで、結果として教室参加の可能性も広がっていくのかもしれません。

こうしたお子さまのニーズに応えるため、各地の学校で「校内教育支援センター(スペシャルサポートルーム/SSR、校内フリースクール等)」の整備が進められています。

校内教育支援センターとは

文部科学省のCOCOLOプラン「誰一人取り残さない学びの保証に向けた不登校対策」では、校内教育支援センターが「自分のクラスに入りづらい児童生徒が、落ち着いた空間で自分のペースで学び・生活できる環境」として位置づけられ、設置状況は次のようになっています。

校内教育支援センター(スペシャルサポートルーム等)の設置を促進

令和5年2月の調査では、校内教育支援センター(スペシャルサポートルーム等)をすべての学校に設置している市町村は全国に228か所、また、校内教育支援センターを設置している学校がある市町村は1015か所となっています。

自分のクラスにはいりづらい児童生徒が、落ち着いた空間の中で自分に合ったペースで学習・生活できる環境を学校内に設置します。
自分のクラスとつなぎ、オンライン指導やテスト等も受けられ、その結果が成績に反映されるようにします。

▼参考資料:文部科学省COCOLOプラン「誰一人取り残さない学びの保証に向けた不登校対策」2校内教育支援センター(スペシャルサポートルーム等)の設置を促進

このように、校内教育支援センターは、教室には入りづらい子どもが、学校にとどまりながら自分が在籍するクラスのとは別の部屋で安全・安心に過ごし、学びと人とのつながりを絶やさないための、学校の中の拠点を担う場所として設置されています。多くの自治体で、不登校のお子さまの学びの場を確保し、学びたいと思った時に学べる環境の整備が進められているのです。

別室登校と校内教育支援センターの違い

学校には通えるけれど教室に入れないお子さまが、校内で居場所を持つ方法はいくつかあります。特に「別室登校」や「保健室登校」と、「校内教育支援センター」は同じように思われがちですが、その目的と支援の質には明確な違いがあります。

項目 別室登校の役割 校内教育センターの役割
主な目的 緊急避難・休息、心身の体調ケア 安心の定着と学びの継続、社会的自立への段階的支援
支援内容 主に見守りと体調管理。学習は基本的に自習 個別学習支援(在籍クラスと接続)、心理教育、行動面スキル(SSTなど)をチームで計画的に提供
担当者 養護教諭(保健室)や空き時間の教員など、一時的な担当 専任の担当教員・支援員が配置され、SC・SSWと共にチームで運営
学習・評価 個別指導は難しく、評価への接続も不透明になりがち GIGA端末等を活用した個別最適化された課題を提供し、評価や出席扱いへつなげやすい
居場所の性質 一時的な休息所としての側面が強い 支援プログラム実施を目的とした、落ち着ける専用の環境

 

別室登校の具体例

例)校内別室の利用:練馬区立の中学校

・別室:保健室を利用

・状況:中学1年生の2学期から教室に入ることができなくなり、欠席が続いていた。現在は中学2年生。

・具体的な取り組み: 生徒に対して、担当教員だけではなく、学年に関係なく多くの教職員で対応する。学習面に不安がある場合は教職員によるフォローを行い、担任との面談など、人とのかかわりやコミュニケーションの機会を増やすことで、他者との関わりに感じていた困難さが薄れ、笑顔を見せることが多くなった。学習にも意欲を見せ、課題に率先して取り組み、登校日数が増えた。

参考資料:東京都教育委員会「不登校児童・生徒への効果的な支援事例について」不登校児童・生徒への支援事例(令和6年度)練馬区の事例

校内教育支援センターの具体例

例)岐阜県教育委員会学校安全課:児童生徒が安心して利用できる環境の整備

・校内教育支援センター:パーテションで仕切った個人用スペースを6か所、共同作業のできるテーブルを2台設置し、児童生徒が利用場所を選択して活用できるようにしている。人目を遮る目隠しも準備し、この状況に応じられるようにしている。また、リラックスできるように簡単な運動(フラフープ、ストレッチ、縄跳び)に使える空きスペースを用意。生徒一人一人にホワイトボードを用意し、「教室で授業」「オンライン」「自主学習」「休憩」等の活動内容を記したカードを自分で貼り付けながら一日の計画を立てることで、主体性をは含むとともに、一日の生活の流れの可視化を図っている。

・状況:小学5年生に進級後、一度も教室に入ることができずに不登校となった。家庭でオンライン授業を受けていたが、母親とセンター内で給食を食べるお試し利用を行ったことをきっかけに、給食を食べることを中心に来室を続けていた。

・具体的な取り組み:教室の仲間とのつながり作りとして、仲間が届けてくれる給食を自ら受け取る活動。オンライン授業における学習教材の確認や教室と同時進行でテストや学習プリントに取り組めるように配慮した学習支援。担当職員との会話を通して、生徒の気持ちを聞いたり、保護者と担任の間に入ったりするなどの情報共有における協力をする。

▼参考資料:岐阜県教育委員会 学校安全課「小・中・義務教育学校 校内教育支援センターにおける 実践事例集」(令和7年2月)

このように、不登校における別室登校は、主に保健室など既存の空きスペースを利用し、教員による学習フォローや面談を通じて教室復帰を目指す個人的な支援の場です。一方、校内教育支援センターは、専用の設備や空間(仕切り、リラックススペースなど)を整備し、活動計画の自己決定や仲間との緩やかな繋がり作りを通して、生徒の主体性や居場所の確保に重点を置いた集団的な支援拠点という特徴があります。どちらも学校生活への適応を目標としていますが、利用場所、支援体制、提供する環境の整備の仕方に違いが見られます。

お子さまが今、保健室や別室で安定して過ごせているのであれば、それは大切な一歩です。その安心感を土台に、学習や対人関係の再構築をより計画的に進めるための選択肢として、校内教育支援センターの活用を検討してみてはいかがでしょうか。

教育支援センターと校内教育支援センターの違い

教育支援センターと校内教育支援センターは、どちらも不登校のお子さまを支えるために自治体が行う公的な支援ですが、次のような点が異なります。

項目 教育支援センター 校内教育センター
設置主体 主に教育委員会(自治体) 各学校
場所 郊外に設置(独立した施設など) 校舎内の別室
利用対象 自治体内の複数校の児童生徒 当該校の児童生徒
在籍校との連携 カンファレンスや連絡帳で密に連絡 日々の授業・学級経営と直結
学びの継続性 校外の拠点として学校生活への参加を広げる 校内のハブとして教室との段階的な橋渡しがしやすい

 

どちらも在籍校と連携して学習保障を行いますが、校内にある教育支援センターは、日々の授業や学級活動との接続が非常に密で、別室登校から教室への段階的な参加を設計しやすいという特徴があります。

このように、教育支援センターは、教育委員会が学校外の独立した市の施設など(公民館、庁舎の一部など)に設置して運営し、複数の学校の生徒を受け入れ、利用料は基本的に無料です。 一方、校内教育支援センターは、特定の学校内に設置され、その学校の生徒を主な対象として、学校には行けるけれど自分のクラスには入れない時や、少し気持ちを落ち着かせてリラックスしたいときに利用できる、学校内の空き教室等を活用した部屋で生徒の居場所と学習の場を提供する役割を担います。

 つまり、教育支援センターは地域全体の不登校生徒を対象とした学校外の公的機関であり、校内教育支援センターは学校単独で生徒を支援するための校内施設であるという点が特徴です。

▼参考資料:文部科学省「不登校児童生徒への支援について」(令和7年4月10日)

教室復帰の考え方と出口支援:「戻す」ではなく「つなぐ」

校内教育支援センターのゴールは一律の「教室復帰」ではありません。お子さまの健康と学びの継続を最優先にした多様な在り方を目指します。

  • 時間割の一部のみ教室参加
  • 実技科目からの参加
  • 別室と教室の併用

など、在籍校ならではの柔軟な選択肢を設計します。

出口は、お子さまの気持ちに寄り添い、さまざまなものを検討します。

東京都教育委員会「不登校児童・生徒支援事例報告書によると、校内教育支援センターの設置による次のような成果が報告されています。

・昨年度まで、一日も登校できず家にひきこもりがちであった生徒が市の校内教育支援センターと連携し、週1日登校できるようになった。また、いじめにあった生徒の緊急避難場所としての活用もあった。自分のペースで学習を進められるなど、落ち着ける環境を用意できた。

・校内教育支援センター開室時に15名の不登校生徒に本事業についてお知らせをして、内6名が利用申請、5名が通室している。生徒によっては、継続的に(週3日程度)登校できるようになり、同センター利用後に一部の通常授業に参加する生徒も見られた。

このように、校内教育支援センターは再度しんどくなったときに戻れる「安全な戻り先(セーフティネット)」としての役割も担っています。通室を重ね、教室に入れるようになってからも、お子さまに寄り添った支援が途切れないように引き継ぐことが大切です。

教室へ「戻す」のではなく「つなぐ」。お子さま・保護者様・在籍校の三者で合意した現実的な出口を複線で用意することが、長期の安定と再発予防につながります。

新潟県:校内教育支援センターの具体的なステップ

新潟県では、令和6年度から校内教育支援センター(スペシャルサポートルーム/SSR)を核とした不登校対策に取り組んでいます。校内教育支援センターを利用するには、まずは担任や学校側に「今の困っている状況」を相談することがおすすめです。

ステップ 概要 保護者が学校と相談する内容
1.相談と申請 在籍校が窓口。担任、生徒指導主事、校内委員会が状況を見立てる。スクールカウンセラーや養護教諭が同席することもある まずは担任や学校に「今の困っている状況」を相談する
2.方針の合意形成 学校長が利用の可否を決定し、支援方針(安全配慮、関わり方、学習方法)や利用規約について説明・同意を得る 個別支援計画(目標・支援内容・評価方法)作成に協力する
3.利用開始 初回面談(ニーズ把握)→仮利用(お試し来室)→個別支援計画の確定→本利用開始という段階を踏む 無理のない開始(時間短縮・保護者同伴など)を学校と相談し、進める

 

■ ポイント
欠席扱い/出席扱いの判断や評価の付け方は、在籍校が責任を持って決定します。学校として学習の実施と成果を確認できること、継続的な指導・助言があることが重視されます。

次は、糸魚川市立田沢小学校の実例です。ここでは、利用児童が主体的に1日の計画を立てる「かがやきプラン」を作成します。

糸魚川市立田沢小学校の実例:子ども自身が考える計画

かがやきプランの作成→プランに沿った取り組み→振り返りカードに記録

振り返りカードは子どものよいところに注目して振り返るので、自己効力感が上がる効果が見込まれます。

一日の様子と子どもの政党を保護者と共有することで、家庭の理解と協力、さらに保護者の安心につなげています。

また、年に数回、管理職、担任、生活指導主任、保護者によるかがやき会議を行い、今後の短・中・長期目標を見直しながら、必要に応じてスクールソーシャルワーカーや特別支援教育担当が加わることも検討します。

教室以外の居場所で過ごす

校内教育支援センターの中に「つながりルーム」「プラス+」(個室)等を整備し、子どもが「登校したい」「ここで過ごしたい」と思える教室以外の居場所作りに取り組んでいます。

ここでは、不登校傾向の子どもが一時利用したり、子どものニーズに応じた学習支援を行う学習室「のびのびる~む」、一時集団から離れてクールダウンを行う「かがやきリセットルーム」を設置しています。

登校はできるが集団活動に抵抗があったり、一斉学習の内容に不安を感じるという状況のお子さまが、校内教育支援センターに通うことで、乱れがちな生活リズムを整え、きめ細かな支援による「不登校の子ども0人」を達成しています。

▼参考資料:新潟県教育委員会「校内教育支援センター設置・運営の手引き」(令和7年3月)

よくある質問

①校内教育支援センターを利用するのに費用はかかりますか?

教育支援センターは市の施設など公の建物の中にあることが多く、利用料は基本的に無料です。その教育支援センターの機能を在籍する学校の空き教室等を活用して設置する校内教育支援センターの利用料も、公立学校の授業の一環として扱われるため原則無料です。教材費や交通費は別途必要になる場合があるので、お近くの自治体までお問い合わせください。

②通知表と単位認定の取り扱いは?

  • 小学校・中学校では、校内教支援センターでの学習や活動は在籍校の教育課程の一部として扱われます。
  • 評価は、個別の目標に沿った到達度、学習の過程、提出物にもとづき、オンライン指導やテスト等の結果が成績に反映されるようにします。
  • 校内教育支援センターは校内にあるため、通常は「登校(出席)」として扱われますが、最終的な取扱いは学校の要録事務や校長の判断に従います。

▼参考資料:文部科学省 COCOLOプラン 誰一人取り残さない学びの保証に向けた不登校対策」(令和5年3月)

まとめ:次の一歩を無理なく広げるために

学校には通えるが教室には入れないお子さまには、校内教育支援センターを核にした「安心できる居場所」と「個別最適な学び」「心理・行動面の支援」を統合した支援が非常に効果的です。これは、文部科学省が示す「学校復帰のみを唯一の目標とせず、社会的自立を見据えた多面的支援」という方向性に合致しています。

校内教育支援センターは在籍校内に拠点があるため、学習評価や出席の取り扱い、学級との連携が取りやすく、教室復帰への「橋渡し」の選択肢として有効です。

支援の中核は、居場所づくりと学習保障です。GIGA端末などを活用し、別室でも学びを途切れさせないことが、お子さまの自信の回復につながります。

校内教育支援センターは「今のつらさを軽くし、次の一歩を無理なく広げる」ための現実的な選択肢です。

まずは、お子さまが通っている学校の相談窓口(担任の先生、学年主任、生徒指導主事など)やスクールカウンセラーに相談し、必要に応じて教育支援センターとも連携しながら、お子さまに合った歩幅での支援を一緒にはじめてみませんか?

執筆者
あした研究室編集部 (あしたけんきゅうしつへんしゅうぶ)
あした研究室編集部は、(株)すららネットの子どもの発達支援室に所属するスタッフと、学び・発達支援に関心を持つ編集チームによって運営されています。教育・発達支援・子育て・学習法などのテーマについて、現場視点と実証的な知見を大切にしながら、企画・取材・執筆・編集・校正・発信まで一貫して取り組んでいます。私たちの使命は、保護者や教育関係者、子ども自身が次の一歩を見つけられるような 信頼できる知見とアイデアを届けること。読者の皆さまには、根拠ある情報と温かい視点を通じて、学びと成長を支えるパートナーでありたいと考えています。