クリティカルシンキングとは?重視される背景や基本的な考え方を解説

2022/11/07(月)

「クリティカルシンキング」という言葉を聞いたことがある方は多いでしょう。しかし、クリティカルシンキングがどのような意味なのか、どのように活用すれば良いのか、詳しく理解できていない方もいるのではないでしょうか?
本記事では、クリティカルシンキングの意味や背景だけでなく、教育で活用するためのポイントまで詳しく解説します。「実際にどのように使ったらいいのかイメージできない」という方は参考にしてください。

クリティカルシンキングとは物事の本質を見極める思考方法

クリティカルシンキングとは「批判的思考」のことで、物事の前提や根拠を疑い、正しい結論に導くための思考法を指します。ここで出てくる「批判的」とは、決してネガティブな意味ではありません。辞書で「批判」を調べると「物事の可否に検討を加え、評価・判定すること」と記載されています。(三省堂「大辞林」)このように、物事の可否に対して客観的な視点を持つことで、知識や経験にとらわれず、本質を見極めることができます。「この前提や根拠はこれで正しいのか?」「そもそもの背景は?」「目的は何だっけ?」と批判的に物事を検討することで、思考の偏りをなくし、論理の精度を高めることが可能です。クリティカルシンキングを身に付けると、説得力のある結論が得られ、相手に納得感を持って物事を伝えられます。

ロジカルシンキングとの比較

クリティカルシンキングと似た言葉に、ロジカルシンキングという言葉があります。ロジカルシンキングとどこが違うのでしょうか?端的に言うと、物事の捉え方に違いがあります。ロジカルシンキングは、主張に対して「なぜ?どうして?」と論理的な繋がりを考えます。一方、クリティカルシンキングはそもそもの前提や根拠に対して「本当に正しい?」と客観的・批判的な視点で物事を捉えます。ロジカルシンキングの代表的な考え方に、ロジックツリーというフレームワークがあります。ロジックツリーは、1つの問題を、樹が枝分かれをするように分解して問題の原因や解決法を洗い出す手法です。ロジックツリーを使って論理を構成した後、「本当にこの主張は正しいのか?」「根拠はしっかりしているか?」と、クリティカルシンキングで自身に問いかけます。ロジカルシンキングとクリティカルシンキングは考え方が明確に異なり、セットで使われることが多い思考法です。

クリティカルシンキングが重要視されるようになった理由

クリティカルシンキングは新しい用語ではありません。2012年の学習指導要領においても「クリティカルシンキング」に関する言及があります。近年、さらに重要視されるようになってきている理由として3つのことが挙げられます。

・価値観が多様化し柔軟な考え方が必要になった。
・環境変化の予測が困難になり、経験や知識に頼らない視点が求められるようになった。
・情報社会において正しい情報の取捨選択能力が不可欠となった。

それぞれの理由について詳しく見ていきましょう。

価値観が多様化し柔軟な考え方が必要になった

1つ目は、人々の価値観が多様化し、従来の考え方に囚われない柔軟な考え方が必要になったためです。
グローバル化が進み、外国人の価値観に触れる機会が多くなりました。ライフスタイルも変化し、人それぞれの価値観が今まで以上に重視されています。このとき、個人の価値観に固執してしまうと、トラブルを引き起こしかねません。ビジネスであれば、物事が円滑に進まなくなるでしょう。他者の視点で物事を柔軟に考えることは、必須のスキルとなってきています。

環境変化の予測が困難になり、経験や知識に頼らない視点が求められるようになった

2つ目は、経験や知識に頼らない視点が求められるようになったためです。
例えば、これまでは当たり前だった対面授業や紙媒体の教材も、ここ最近ではオンライン授業や電子教材に一部置き換えられました。このように、環境がどのように変化するかを予測することは困難になり、過去の経験だけでは対応できない事態が多く発生しています。急速に変化する環境に対応するには、批判的な視点で物事を捉え、柔軟な思考や視点を持つことが必要です。

情報社会において正しい情報の取捨選択能力が不可欠となった

3つ目は、情報を取捨選択する能力が不可欠となったためです。
世の中は情報で溢れかえっています。スマホ1つで無数のデータにアクセスできる時代になりました。信憑性のある有益な情報もあれば、デタラメで何の役にも立たない情報もあります。そのため、全ての情報を鵜呑みにしてはいけません。このような膨大な情報の中から、正しい情報を取捨選択する能力が必要とされています。クリティカルシンキングを活用することによって、「本当に正しいデータなのか」を見極めることができるのです。

クリティカルシンキングを身に付けることで生まれるメリット

クリティカルシンキングを身に付けることで、多くの力が養われます。クリティカルシンキングを身に付けるメリットは、以下の3つです。

・問題解決の精度が向上する
・本質を見極める力が養われる
・新たな視点や発想につながる

それぞれのメリットについて、以下で詳しく解説します。

問題解決の精度が向上する

1つ目のメリットは、問題解決の精度が向上することです。
問題解決に答えはありません。何らかの欠点や不足点は必ず出てきます。しかし、欠点や不足点を補ってブラッシュアップしていくことは可能です。クリティカルシンキングを使い、無駄な論理や意見の漏れを見つけ出し、余計な情報を整理することで、問題解決の精度が向上します。

本質を見極める力が養われる

2つ目のメリットは、本質を見極める力が養われることです。
「これは本当に正しいのか?」「なぜこう言えるのか?」と批判的な疑問を持つことで、物事を客観的に捉えられるからです。客観的な視点を持ち、不必要なものや論理の通っていないものを排除することで、より本質に迫ることができます。本質を見極めることで説得力も向上します。

新たな視点や発想につながる

3つ目のメリットは、新たな視点や発想につながることです。
既存の考え方を疑う批判的思考で、新しい視点や発想を得ることができます。自分が当たり前だと思っている知識や経験に対して、「前提がそもそも間違っていないか?」「新しくアップデートされている知識もあるのではないか?」と疑問を投げかけることで、新しい視点や発想に気付くきっかけになります。

クリティカルシンキングができない人が陥りやすい問題とは?

クリティカルシンキングが中々身につかない人が陥りやすい、2つの問題をお伝えします。

・影響力がある人の発言を根拠なく信じてしまう
・自ら考えずに”みんな”の意見に同調してしまう

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

影響力がある人の発言を根拠なく信じてしまう

例えば校長先生や会社の上司など、影響力のある人が言うことをすぐに信じてしまう人は注意が必要です。もちろん、「分かりました」「その通りですね」と素直に応じるのはコミュニケーションを取る上で大切です。しかし、全て信じてしまうと、正しいことと間違っていることを判別する力が養われません。相手の主張に対して、その主張の根拠は何なのか、本当にその根拠は正しいのか、批判的に捉える癖を付けましょう。

自ら考えずに“みんな”の意見に同調してしまう

”みんな”の意見にすぐに同調してしまう人も注意が必要です。他人の主張に対して、何の疑問を持たずに賛成するのは、考えることを放棄しているのと同じだからです。クリティカルシンキングは、相手の意見に対して常に「考える」必要があります。何も考えずただ他人の意見に同調しているだけだと、批判的な思考力は身につきません。自分の意見を持つことが苦手な人は、まず「自分で考えること」から始めてみましょう。

クリティカルシンキングの基本的な考え方

クリティカルシンキングには、基本となる考え方が4つあります。

・目的を明確にする
・物事を多角的に疑う
・自身の思考の偏りに自覚的になる
・常に問い続ける

それぞれ詳しく見ていきましょう。

目的を明確にする

まず、物事の目的を明確に定めることが基本です。目的が曖昧だと、どこに向かっているか分からなくなります。特にクリティカルシンキングの場合は、疑ってかかることから入るため、論点がずれたり、内容が拡大したりする傾向にあります。そこで、目的が曖昧だと、「結局何をしたかったんだっけ?」と振り出しに戻ることになりかねません。クリティカルシンキングで物事を捉える前に、目的を明確に設定しておきましょう。

物事を多角的に疑う

1つの課題に対して、多角的に疑うことも重要です。正面から見たら長方形に見えても、横や上から見ることによって、立体だと気付けるかもしれません。答えは1つだと決め付けない習慣を付けることによって、物事の矛盾に気付けます。多角的な視点で捉えることによって、「これはこの状態で当然だ」という固定観念を手放すことができるのです。

自身の思考の偏りに自覚的になる

自身の思考には偏りがあることを自覚しましょう。前提として、人は誰しも考えるときに、暗黙の前提やクセをもっていたり、バイアスがかかっていたりするものです。今までの経験・知識・価値観は、考える際に無意識に影響を及ぼします。ただし、思考のクセやバイアスを持つことは悪いことではなく、それらをゼロにすることも不可能です。そのため、「自分が絶対に正しい」と思うのではなく、「自分の思考には少し偏りがある」と自覚することが大切です。

常に問い続ける200

最後は、常に思考を続け、「なぜ?」「それは本当?」と問い続けることです。例えば、教育について考える課題があったとします。このとき、「そもそも人は教育されるべきものなのか?」といったように、論理的な繋がりだけでなく、根本の部分から考えることも大切です。そうすることで、違った結論が得られたり、新たなチャンスが出てきたりするかもしれないからです。結論が既に出ていたとしても、常に問いを投げかけ続けることで、より本質に迫ることができるでしょう。

学校教育でクリティカルシンキングを指導するときのポイント

学習指導要領の「生きる力」にも、クリティカルシンキングについて以下のように明記されています。
”課題発見・解決能力,論理的思考力,コミュニケーション能力や多様な観点から考察する能力(クリティカル・シンキング)などの育成・習得が求められているところである”
では、実際に指導するときに、どこを押さえたらよいか、ポイントを見ていきましょう。
知的活動(論理や思考)を行う際は、以下4つの点に留意するように学習指導要領に記載されています。

1.事実等を正確に理解すること
2.他者に的確に分かりやすく伝えること
3.事実等を解釈し説明することにより自分の考えを深めること
4.考えを伝え合うことで、自分の考えや集団の考えを発展させること

特に3つ目の項目がクリティカルシンキングと密接に関係しています。
自分の考えを深める指導を行う際は以下の点を押さえましょう。自分の考えと他者の考えの違いをとらえ、妥当性や信頼性を吟味したり、異なる視点から検討したりして振り返るようにする。指導の際は、自分の考えをもった上で、相手の考えと比較して批判して見ることが大切です。

まとめ

批判的な思考を持ち、物事を多角的な視点から捉える習慣を身に付けると、問題解決の精度が上がり、新しい発見や発想につながります。クリティカルシンキングは、変化の激しい社会で活躍できる人材を育てるためにも、学校教育で指導されるべき重要な思考法です。クリティカルシンキングについて十分に理解し、指導にも積極的に取り入れるようにしていきましょう。

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