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学習指導要領とは?内容や改訂の仕組み、最新版のポイントを解説

2023.02.03

教科書は学習指導要領にもとづいて作られているとは知っていても、「そもそも学習指導要領って何?」と思っている方もいるでしょう。本記事では、学習指導要領の内容や仕組み、2020年に改訂され重要視されているポイントをお伝えします。難しい日本語で書かれていることの多い学習指導要領ですが、分かりやすく解説していくので、ぜひ参考にしてください。

「学習指導要領」とは学校のカリキュラム編成の基準

学習指導要領とは、学校の教育課程(カリキュラム)を作る際の基準のことです。全国のどこにいても、一定の水準で教育を受けられるようにするためにつくられました。ここでは、学習指導要領に関して、以下2つの点を詳しく見ていきましょう。

・学習指導要領には何が書かれているのか?
・学習指導要領に従う義務があるのか?

学習指導要領には何が書かれているのか?

学習指導要領には、「総則」として教育課程全般の配慮事項や授業時数の取り扱いがまとめられており、小・中・高等学校で学ぶそれぞれの教科に対して大まかな教育内容や目標が書かれています。例えば、小学校学習指導要領の国語部分には、以下のような目標が定められています。
『言葉による見方・考え方を働かせ,言語活動を通して,国語で正確に理解し適切に表現する資質・能力を次のとおり育成することを目指す。』
この目標をベースとして、各学年の発達段階にあわせた具体的な目標が記載されています。

学習指導要領に従う義務があるのか?

各学校は、教育課程(カリキュラム)の編成や実施をするにあたって学習指導要領に従う必要があるものの、義務ではありません。学習指導要領は、あくまで教育水準を保つための「基準」であるためです。児童生徒に目標達成の義務があるのではなく、全国の各学校が学習指導要領に掲げる目標を達成できるように教育をすることが必要とされています。ただ、児童生徒の実態を踏まえ、必要がある場合には必ずしも従う必要は無く、各学校の判断によって学習指導要領に示されていない内容を加えて教育を行うことも可能です。

学習指導要領はおよそ10年ごとに改訂される

これまで、学習指導要領は約10年ごとに改訂されてきており、今後も約10年ごとに改訂されていくことが予想されます。生徒に求められる能力は、時代とともに変化します。この変化に対応し、必要な能力や思考力を身に付けられるように、定期的な見直しを行う必要があるのです。

学習指導要領改訂の流れ

学習指導要領が改訂されるまでに、以下のような流れをたどります。

1.文部科学大臣から中央教育審議会に諮問
2.中央教育審議会教育課程部会で議論
3.中央教育審議会教育課程部会審議のまとめを公表
4.国民からの意見や情報を募集
5.中央審議会の答申
6.学習指導要領改訂案を公表
7.国民からの意見を募集
8.学習指導要領改訂

※諮問:(法令上定められた事項についての)意見を尋ね求めること
※答申:上司の諮問に対して意見を申し述べること

直近の改訂された流れをたどると、1の諮問から8の改訂までの間で、約4年かかっています。また、学習指導要領が改訂されるまでに2回、国民の意見を聞く「パブリック・コメント」を実施します。意見は「e-GovのWebサイト」から発信することが可能です。

現在までの学習指導要領の移り変わり

学習指導要領は、戦後すぐに試案として作成されました。ただし、現在のような「告示」という形で定められたのは昭和33年です。それ以来、約10年ごとに改訂を繰り返し続け、約7回改訂されています。1970年代前半までは、「詰め込み教育」と呼ばれる知識重視の教育観が根づいていました。いじめの増加や校内暴力に繋がってしまい、その反省を活かして新たな教育方針を打ち立てます。1977年から、ゆとりある学校生活の実現を目指す「ゆとり教育」が始まりました。ゆとり教育も結果的には学力低下に繋がってしまいます。2011年から、生徒の生きる力を伸ばすことを重視した教育方針に切り替わり、現在も10年ごとに更新を続けています。

最新(平成29・30・31年改訂)の学習指導要領の主な特徴

平成29年から平成31年に、学習指導要領が新たに改訂されました。今までの「生きる力を育む」に加え、新たに以下4つの特徴が追加されています。

・社会に開かれた教育課程の実現
・子どもたちに必要な資質・能力の3つの柱
・生徒が主体となって学習すること
・言語能力・情報活用能力の育成

それぞれ見ていきましょう。

社会に開かれた教育課程の実現を目指している

教育課程を社会に開くことで、社会のつながりの中から学ぶことを目標としています。これは、社会とのつながりから学ぶことで、子どもたち自身の力で人生や社会をよりよくできるという実感を持たせるためです。例えば、岩手県大槌町では、震災から立ち上がり将来の人材育成を担うため、学校と地域が協同して子どもたちを育てていくという目標が共有されています。町にコミュニティスクールを設置し、教職員と地域住民が熟議する機会を儲けました。このように、保護者や地域の方と協力しながら、学校教育を通じてよりよい社会を創る教育が求められています。

子どもたちに必要な資質・能力の3つの柱を示している

新しい学習指導要領では、育成を目指す資質・能力を以下の3つの柱として整理されました。

・学びに向かう力、人間性
・知識及び技能
・思考力、判断力、表現力

上記が整理された背景として、社会に出てからも学校で学んだことを活かせるように、上記3つの力をバランスよく育んでいき、「生きる力」の育成につなげようとした動きがあります。特に「何のために学ぶのか」という学習の意義を共有し、授業を創意工夫して教材の改善を引き出せるようにすることが求められています。

生徒が主体となって学習することを重視している

生徒が主体的に学べるための授業改善も重視されています。生徒が主体的に学ぶためには、先ほどの3つの柱で整理された資質・能力を育むために、「何を学ぶか」だけでは不十分です。「どのように学ぶのか」、その結果「何ができるようになるか」まで目指せるように、より主体的・対話的で深い学びが授業作成の際に必要です。体育の「跳び箱」の授業を例にすると、できるようになったことを記録する学習カードを活用することで、「何がうまくできていなくて」「うまく飛ぶためには何が必要か」を子どもたち自身に主体的に考えさせることができます。主体的な学びを実現させるために、全国の先生が日々様々な工夫を凝らしています。

言語能力・情報活用能力の育成に力を入れている

学習指導要領の改訂では、学びの基盤となる言語能力と情報活用能力の育成も重要とされています。「言語能力」は、国語で学習したことを主として、理科や社会など他の教科でも自身の意見を正しい日本語で論理的に伝えるなど、言語の活用を充実させる必要があると考えられています。また、算数の授業では、図やグラフを使用して筋道立てて考えを進めたり、自分の考えを的確に伝えたりできるような指導が重要とされています。他にも、「情報活用能力の育成」では、コンピュータを活用した学習やプログラミング教育の充実を図っています。特に小学校では、理科や総合的な学習の時間を通して「プログラミング的思考」の育成が求められるようになりました。新学習指導要領では、より効率的に育成を進められるように、国としても学校のICT環境の整備・改善に取り組んでいくとしています。

最新の学習指導要領の具体的な改訂のポイント

最新の学習指導要領によって導入される項目は、幼稚園・小学校・中学校・高等学校で異なります。それぞれの基本的な考え方と、教育改訂のポイントを見ていきましょう。

幼稚園・小学校・中学校の改訂の基本的な考え方

以下3つのポイントが、新しい改訂における基本的な考えとされています。

・「学びに向かう力、人間性」「知識及び技能」「思考力、判断力、表現力」の3つの柱をもとに、資質・能力をより一層高め、地域社会と連携した社会に開かれた教育課程を実施すること
・知識・技能と思考力・判断力・表現力等のバランスを重視した育成をし、知識理解の質を高め、確かな学力を育成すること
・道徳や総合などの特別教科において、道徳教育や体験活動、体育や健康に関する指導を充実させることにより、豊かな心や健やかな体を育成すること

幼稚園・小学校・中学校の教育内容の改訂ポイント

教育内容は、以下6つの改訂が大きなポイントです。

・言語能力の確実な育成
・理数教育の充実
・伝統や文化に関する教育の充実
・道徳教育の充実
・体験活動の充実
・外国語教育の充実

幼稚園では、幼児教育と小学校教育の接続を強化するために、幼児期の終わりまでの育成計画を、それぞれの教員間で共有する方針となりました。小学校では、外国語教育やプログラミング教育が大きく変わります。新教科の「外国語」が3年生から導入され、5・6年生の英語学習時間が35時間から70時間に増加しました。これにより、より一層外国語教育が充実するでしょう。プログラミングも必修となり、理科や算数などの各教科の一部として扱うことになりました。中学校では、学習指導要領の改訂前よりも高いレベルの学習が求められます。英語を例にすると、年間の学習時間は105時間から140時間に増加し、実際の対話によるコミュニケーション力を養うことに重きが置かれるようになりました。

高校の改訂の基本的な考え方

以下2点は、幼稚園・小学校・中学校の改訂と基本的に同じ考え方です。

・3つの柱をもとにして資質・能力を高めつつ社会に開かれた教育課程を実施する
・現行学習指導要領の教育内容を維持しつつ、知識や理解の質をさらに高める

3つ目の考え方として、以下のことが追加されました。

・高大接続改革の実施

この考え方の方針として、高等学校教育と大学教育をつなぐ一体的な改革やキャリア教育の視点で学校と社会の接続を目指すことが挙げられています。

高校の教育内容の改訂ポイント

高等学校教育は、以下の6つが主要な改訂ポイントです。

・言語能力の確実な育成
・理数教育の充実
・伝統や文化に関する教育の充実
・道徳教育の充実
・外国語教育の充実
・職業教育の充実

改訂の大枠は幼稚園・小学校・中学校と似ています。異なるのは職業教育です。地域や社会の発展を担う職業人の育成のために、グローバル化の視点から各教科内容の改善が求められました。加えて、産業界で求められる人材の育成のため、「情報セキュリティ」や「観光ビジネス」など新たな科目が新設されます。このように、高等学校での多様な実態が踏まえられ、生徒のニーズに応じて科目が選択できるように教科内の構成が見直されました。また、今までの「現代社会」に代わりに「公共」が導入され、必修科目となっています。学習の範囲は「現代社会」と大きく変わりませんが、学習方法は異なります。公共の目標は、国や社会の問題を自分事として捉えられる主権者を育成して、社会に参画する力を身に付けることです。そのため、生徒の主体性を意識した、対話的で深い学びのある授業が展開されることが期待されます。

まとめ

学習指導要領は、全国どこにいても一定水準の授業を受けられるようにするための基準です。変化の激しい時代に対応するために、約10年に1度内容が見直されており、最近では平成29年〜31年に改訂がありました。新しい学習指導要領で重要とされているポイントを今一度確認し、実際の授業で実践できるようにしていきましょう。

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