- 1 令和7年発表の令和6年度最新データが示す不登校の現状
- 1-1 過去最多を更新した不登校の人数
- 1-2 不登校の人数と不登校継続率
- 1-3 成績評価の状況
- 1-4 データから見える重要な変化
- 2 安心して学べる「多様な学び」の確保と活用
- 2-1 教育支援センター(適応指導教室)
- 2-2 フリースクールの支援
- 2-3 学びの多様化学校による新しい学びのかたち
- 2-4 ICT活用と出席扱い制度
- 3 不登校支援の多様化が加速:「出席扱い」認定率が示すICT・民間施設の利用増加
- 3-1 柔軟な学習形態の「出席扱い」認定状況
- 3-2 民間施設でのICT活用が進む背景
- 4 お子さまの状況別:最適な「学びの多様化」ルートガイド
- 4-1 ICT教材を活用した出席扱い(自宅学習)「ネット出席」がおすすめの子ども
- 4-2 民間団体(フリースクール等)がおすすめの子ども
- 4-3 学びの多様化学校(不登校特例校)がおすすめの子ども
- 4-4 教育支援センター(適応指導教室)がおすすめの子ども
- 5 まとめ:不登校を「多様な学びへの入口」と捉える
学校に行けない日が続くと、「このままで大丈夫かな」「将来どうなるんだろう」と、親として不安で胸がいっぱいになってしまいます。子どもの苦しむ姿を見るのは本当につらいものです。
この記事では、文部科学省が公表した「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」(令和7年10月29日)を元に、私たち保護者が今知っておきたい不登校の現状と、国が明確に打ち出している「登校という結果だけをゴールにしない、子どもの安心と成長を支える」新しい支援の方向性をご紹介します。
文部科学省は、在籍校の外での多様な学びを尊重しており、条件を満たせば校長先生の判断で「出席扱い」にすることが可能です。不登校を「多様な学びへの入口」と前向きにとらえ、お子さまと一緒に、まずは「明日への一歩」を踏み出してみませんか。
令和7年発表の令和6年度最新データが示す不登校の現状

過去最多を更新した不登校の人数
文部科学省「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」(令和7年10月29日)による最新の調査結果から、不登校の子どもの数は次のような傾向で増加していることが分かりました。
- 小・中学校の不登校児童生徒数は、353,970人となり、過去最多を更新(前年度は346,482人)
- 内訳: 小学校が137,704人、中学校が216,266人
- 割合: 小中学生全体の3.9%
- 傾向: 引き続き中学校段階で不登校が集中している。ただし、これまでコロナ禍から前年度まで続いていた急激な増加は緩やかになり、前年度からの増加率は2.2%
この数字を見ると、「不登校は特別なことではない」状況になりつつあるとも言えるかもしれません。多くのご家庭が同じ悩みを抱え、社会全体が支援のあり方を考え始めています。
不登校の人数と不登校継続率
次に、不登校の子どもの状況をさらに詳細に分けて比較したデータを紹介します。前年度より減少傾向にある状況が確認できます。
- 新規不登校児童生徒数は、小・中学校ともに前年度から減少
- 小学校:70,419人(前年度74,447人)
- 中学校:83,409人(前年度90,853人)
- 小・中学校合計:153,828人となり、9年ぶりに減少
- 不登校継続率の低下: 不登校継続率(前回不登校だった子どもが今回も不登校とされた割合)も、小・中学校ともに前年度から低下
文部科学省は、こうした増加率の低下や新規不登校の減少の背景を、次のように分析しています。
不登校児童生徒数の増加率が低下した背景として、チーム学校による丁寧なアセスメントや個々の児童生徒に応じた学習支援の充実、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー等の専門的な知見を有する人材の活用、校内外の教育支援センターの設置をはじめとした多様な学びの場や保護者への相談支援や情報提供の充実、一人一台端末を活用した心の健康観察による早期把握等が考えられます 。
▼文部科学省「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」(令和7年10月29日)より引用
つまり、学校や自治体が「多様な学びの場」や「ICTの力」を使って、不登校への対策や支援を工夫した結果が、少しずつ表れ始めていると国は考えているのです。
成績評価の状況
子どもが不登校になると、学習の遅れや成績評価について不安になるかもしれません。
「出席扱い」制度を利用する際、自宅や学校外の機関等での学習の成果を、学校の成績評価(内申)に反映することが可能です 。
文部科学省は、令和6年度から新たに不登校の出席扱いに認定された子どもの成績評価の状況についての調査を開始しました。その結果、自宅や学校外の機関等での学習の成果を指導要録に反映した児童生徒は81,467人に上りました
これは、不登校期間中の頑張りが、単なる「出席」だけでなく、「学習の成果」としてもきちんと認められ始めていることを示す、非常に心強いデータです。
データから見える重要な変化
国が今、目指しているのは「すべての子どもが安心して学べる環境」です。
- 「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策(COCOLOプラン)」を掲げ、「学びの場」の確保や「チーム学校」での支援を推進
- 特に、「学びの多様化学校(不登校特例校)」や「校内教育支援教室」の更なる設置、オンライン等も活用した効果的な学習のあり方を強く促す
最新データが私たちに伝えるのは、「不登校の子どもの数が増えている」という事実だけでなく、「一人ひとりに最適な支援ルートを見える化し、長期欠席や学びの中断を食い止める」という「早期・継続・協働」の支援体制が、今、まさに不可欠になっているという現実なのかもしれません。
安心して学べる「多様な学び」の確保と活用

文部科学省は、「不登校児童生徒への支援の在り方について」という通知で、「登校一択」に回帰するのではなく、子どもの安全、健康、学びを守るための「複線化された支援」を適切に組み合わせることが重要だと強調しています。
令和6年度の文部科学省の調査では、学校外の機関等で専門的な相談・指導等を受け、指導要録上出席扱いとした児童生徒数は42,978人でした(前年度38,632人)。そして、自宅や学校外の機関等での学習の成果を指導要録に反映した児童生徒数は81,467人に達しています。
この「学校外の学び」の支援先には、次のようなものがあります。
教育支援センター(適応指導教室)
- どんなところ?
- 自治体(教育委員会)が設置・運営する公的な「校外の学びと支援の拠点」
- 公立学校の教員OBや専門職員が配置されている
- 出席扱いの状況(令和6年度):
- 利用した不登校児童生徒数:32,240人(前年度30,365人)
- 指導要録上出席扱いとなった人数:23,368人(前年度21,418人)
- 期待できること: センターでの活動やICTを活用した在宅学習は、校長先生の判断で「出席扱い」にすることが可能で、公的な選択肢として、学びの連続性と安心の両立が期待できる
フリースクールの支援
- どんなところ?
- 民間が運営する、多様な学び・居場所支援の場
- 出席扱いの状況(令和6年度):
- 利用して相談・指導を受けた不登校児童生徒数:18,566人(前年度15,431人)
- 指導要録上出席扱いとなった人数:9,329人(前年度7,189人)
- 期待できること: 在籍校・保護者・フリースクールが連携し、学習状況・活動記録・成果物が把握できる体制を整えれば、校長先生の判断で出席扱いとされる場合がある。多様な理念やプログラムの中から、子どもに合った居場所を見つけられる
学びの多様化学校による新しい学びのかたち
- どんなところ?
- 学びの多様化学校(不登校特例校): 不登校児童生徒に特化したカリキュラムを持つ学校
- 子どもの状況に応じた学びを保障するため、制度・運用の両面で「学びの多様化」が進んでいる
- 期待できること: これらの選択肢は「在籍校に戻る」だけではない、子どもの心や止まっている学習への「回復ルート」を提供
ICT活用と出席扱い制度
- どんなところ?
- 自宅等でICT(タブレットやパソコン)を活用した学習活動
- 出席扱いの状況(令和6年度):
- 自宅におけるICT等を活用した学習活動を指導要録上出席扱いとした児童生徒数は13,261人(前年度10,467人)
- 傾向: 近年、ICTを活用した学習活動による出席扱いは、教育支援センターやフリースクールといった校外の場を利用した出席扱いよりも増加しており、この「出席扱い制度(ネット出席)」が年々存在感を増している
- 注意点: 自宅等での学習活動を「指導要録上の出席扱い」とするためには、文部科学省の通知に整理されている7つの要件を満たすことが重要。この要件を満たすためには、学習記録が正確に残るオンライン教材の活用が鍵となる
不登校支援の多様化が加速:「出席扱い」認定率が示すICT・民間施設の利用増加

文部科学省の令和6年度最新の調査結果は、不登校児童生徒の学習機会の確保のための環境の多様化が、国の方針から現場レベルまで急速に浸透していることを明確に示しています。従来の公的な支援に加えて、ICT教材の活用と民間団体での活動を「出席扱い」として認定する動きが加速しているのです。
柔軟な学習形態の「出席扱い」認定状況
不登校児童生徒が自宅での学習や学校外の施設での活動を「出席扱い」と認定された件数の推移を比較すると、公的機関による支援に比べて、ICTの活用や民間施設での活動の伸び率が著しく高いことがわかります。
出席扱い人数
出席扱い人数
増加率
民間施設でのICT活用が進む背景
この結果の中でも、民間団体による出席扱いが前年度比32.9%増と、最も高い増加率を示している点に注目が必要です。その背景には、民間施設におけるICT活用が促進されているという状況があります。
民間施設は、対面での居場所提供に加えてICTを活用した学習プログラムの導入を加速させています。これにより、以下の2つの面で「出席扱い」の増加を強力に後押ようししています。
- 「出席扱い」要件のクリアが容易に: 文部科学省は、学校外の施設での活動を「出席扱い」とするために、学習状況の把握や学校との連携などを求めている。民間施設がICTを活用することで、児童生徒の学習記録や活動状況をデジタルで正確に管理・共有できるようになり、学校との円滑な情報連携を通じて出席扱いの要件を満たしやすくなった
- 支援の相乗効果による対象生徒の拡大: 民間施設でICTを利用して学習支援を受けることで、生徒は自宅に戻った後も同様のICTツールで学習を継続しやすくなる。これにより、「民間施設の利用」と「ICT教材等のみの活用」の両方の件数が相乗効果で伸びたと考えられ、ICTを活用した支援の多様化が不登校児童生徒の個々のニーズに応じた学習機会の確保に繋がっている
このデータは、不登校という課題に対し、学校現場が硬直的な登校指導から脱却し、多様な学習スタイルと居場所を柔軟に認める方向へ、政策と実態の両面で大きく舵を切っていることを示唆しています。
お子さまの状況別:最適な「学びの多様化」ルートガイド
ここまで、不登校児童生徒の増加という現状と、それを背景に加速する「出席扱い」制度の多様化について解説してきました。どのような制度を利用するかを検討するとき、まずは子どもの外出へのハードルが高いか低いかを確認することがおすすめです。

次は、文部科学省が推進する主要な支援先である「教育支援センター」「フリースクール」「学びの多様化学校」の3つの機関と、「ICT教材を活用した自宅学習」について、それぞれの特徴と支援内容を深く理解し、「いま、わが子にとって最適なのはどれか」を見極めるための、具体的なガイドラインを解説します。
お子さまの「現在の状態」と「望む将来」から、明日への一歩を踏み出すヒントを見つけてください。
ICT教材を活用した出席扱い(自宅学習)「ネット出席」がおすすめの子ども
「ネット出席」はICT教材を活用した自宅学習で、自宅に居ながら「出席扱い」を確保するルートとして、現在最も急速に利用が拡大している支援形態です(前年度比26.7%増)。おすすめのタイプは、外出のハードルが高いお子さまです。
■ ポイント: まずは心理的な安定と「学びの中断」を防ぐことを最優先とし、自宅で自信を回復しながら学習の成果を着実に形に残したい場合に、最も迅速かつ柔軟に開始できる方法です。
文部科学省が進めるこれらの総合的な支援策の中でも、特にご家庭で迅速に対応しやすいのが「ICTを活用した自宅学習」です。国は1人1台端末の整備を進め、学校外での学びを積極的に評価する方針を明確に示しています。しかし、「具体的にどの教材をどう使えば、『出席扱い7つの要件』をクリアできるのか」という疑問が残ります。
▼『出席扱いの7つの要件』について詳しくは不登校の「出席扱い制度(ネット出席)」とは?認定条件や成績の付け方も解説!をご覧ください。
民間団体(フリースクール等)がおすすめの子ども
フリースクール等の民間団体は、運営者や理念によって支援内容が非常に多様です。学習支援が中心のところもあれば、体験活動や個別カウンセリングに特化しているところもあります。おすすめのタイプは、学校には行けないけど外出はできるお子さまです。
■ポイント: お子さまの個性や価値観を尊重し、学校とは完全に切り離された環境で、好きなことや興味のある活動を通じてエネルギーを回復したい場合に、最も適しています。
▼フリースクールについて詳しく見る:【フリースクール×出席扱い】通所型とオンライン型の過ごし方は?
学びの多様化学校(不登校特例校)がおすすめの子ども
学びの多様化学校(不登校特例校)は、不登校児童生徒に特化したカリキュラムを編成している公立または私立の学校です。おすすめのタイプは、外出はできるが、学校特有の環境や刺激に疲れやすいお子さまです。
■ ポイント: 学校という環境の中で「学び直し」や「人間関係の再構築」を目指したい、または、学籍や進路の確保を重視したい場合に適しています。
▼「学びの多様化学校」について詳しく見る:「学びの多様化学校(不登校特例校)とは|不登校の子どものために生まれた“もうひとつの学校”」
教育支援センター(適応指導教室)がおすすめの子ども
教育支援センター(適応指導教室)は、自治体(教育委員会)が設置・運営する公的な施設です。公立学校の教員や専門職員が配置されており、学校復帰を目標としつつ、集団活動や学習支援を通じて自立を促します。教育支援センターに向いているタイプは、外出はできるが学校の刺激には弱いので、少人数で安心できる居場所からスタートしたいというお子さまです。
■ポイント: 学校や公的機関への信頼感が高く、規則正しい生活リズムや集団生活への復帰に前向きな意欲が見られる場合に、最も適した選択肢です。
▼教育支援センターについて詳しく見る:「教育支援センター(適応指導教室)で支える不登校の学び|ICT活用による最新の支援とは」
まとめ:不登校を「多様な学びへの入口」と捉える

不登校は、お子さまの心身が発する「学校という環境に適応できない」というSOSであり、同時に「自分に合った学びを探す時期」であるとも言えるかもしれません。
文部科学省の最新のデータは、ICT活用や民間施設といった多様な学びの場の利用が急増しており、学校外の学びを「出席扱い」として積極的に認める国の姿勢が、現場レベルで着実に浸透し始めていることを示しています。
この記事が、不登校を「登校一択」という狭い視点で捉え直すのではなく、今回解説した「教育支援センター」「フリースクール」「学びの多様化学校」「ICT学習」という複線的な支援ルートの中から、お子さまの個別の状態と意欲に合った最適な道を選択する権利と機会が用意されていることを知っていただく機会になりましたら幸いです。
まずは、お子さまのペースを尊重し、学びの中断を防ぐための第一歩として、ICT学習など自宅で始められる支援から検討し、頑張った成果が必ず評価につながるという安心感を伝えることから始めてみるのがおすすめです。在籍校との連携を密にし、お子さまの未来の選択肢を広げるための一歩を、私たちと一緒に踏み出してみませんか。