- 1 1. 思春期の不登校で親が最初に知っておきたいこと
- 1-1 1.1 思春期に不登校が起こりやすい理由
- 1-2 1.2 小学生の不登校と中学生や高校生の不登校の違い
- 1-3 1.3 甘えや怠けと決めつけてはいけない背景
- 2 2. 思春期の不登校に見られる主なサイン
- 2-1 2.1 朝になると体調不良を訴える
- 2-2 2.2 昼夜逆転や生活リズムの乱れが続く
- 2-3 2.3 親との会話が減り部屋にこもる
- 2-4 2.4 ゲームやスマホの時間が増える
- 3 3. 思春期の不登校の原因として考えられること
- 3-1 3.1 学校生活や友人関係のストレス
- 3-2 3.2 勉強や成績への不安
- 3-3 3.3 先生との相性やクラス環境
- 3-4 3.4 家庭内のプレッシャーや親子関係
- 3-5 3.5 発達特性や起立性調節障害などの体調面
- 4 4. 思春期の不登校で親が知っておきたい関わり方
- 4-1 4.1 無理やり学校へ行かせようとしない
- 4-2 4.2 原因を急いで問い詰めない
- 4-3 4.3 兄弟姉妹や同級生と比べない
- 4-4 4.4 将来への不安を一人で抱え込まない
- 5 5. 思春期の不登校で親が今日からできる接し方
- 5-1 5.1 まずは安心できる家庭環境を整える
- 5-2 5.2 子どもの気持ちを否定せずに聞く
- 5-3 5.3 登校よりも睡眠と食事を優先する
- 5-4 5.4 会話のきっかけを日常の中につくる
- 5-5 5.5 できたことを小さく認める
- 6 6. 不登校から回復へ向かうステップ
- 6-1 6.1 休むことを受け止めて心身を回復させる
- 6-2 6.2 家庭内で安心して過ごせる時間を増やす
- 6-3 6.3 外出や学習など小さな行動を始める
- 6-4 6.4 別室登校や保健室登校を検討する
- 6-5 6.5 本人に合う学び方や進路を選ぶ
- 7 7. 思春期の不登校で相談できる場所
- 7-1 7.1 学校の担任やスクールカウンセラー
- 7-2 7.2 教育支援センターや適応指導教室
- 7-3 7.3 小児科や児童精神科
- 7-4 7.4 フリースクールや通信制高校
- 7-5 7.5 文部科学省や自治体の相談窓口
- 8 8. 思春期の不登校に関するよくある疑問
- 8-1 8.1 いつまで様子を見るべきか
- 8-2 8.2 勉強の遅れはどう取り戻すか
- 8-3 8.3 スマホやゲームは取り上げるべきか
- 8-4 8.4 高校受験や進路に影響するか
- 9 9. まとめ
思春期の子どもが突然学校へ行けなくなると、多くの親御さんは「どう接すればいいのか」「何がつらいのだろう」と戸惑い、不安を抱えます。この記事では、思春期に不登校が起こりやすい理由や見られるサイン、考えられる原因を整理したうえで、親が知っておきたい関わり方と今日から実践できる接し方、回復へ向かう具体的なステップまでを解説します。大切なのは、無理に登校させることではなく、まず安心できる家庭環境を整え、子どもの心身を休ませることです。相談できる窓口やよくある疑問への答えも紹介するので、焦らず前に進むための道筋が見えてきます。
1. 思春期の不登校で親が最初に知っておきたいこと

思春期の子どもが学校に行けなくなると、多くの親御さんは「どう対応すればいいのか分からない」と戸惑い、強い不安を抱えます。「自分の関わり方が悪かったのでは」と自分を責めてしまう方も少なくありません。しかし、不登校は決して特別なことではなく、どの家庭にも起こり得るものです。まずは親自身が少し落ち着き、思春期という時期の特性や不登校の背景を理解することが、子どもと向き合う第一歩になります。
文部科学省の調査によると、小中学校における不登校の児童生徒数は年々増加傾向にあり、社会全体で向き合うべき課題となっています。不登校は本人の努力不足や親の育て方だけが原因ではなく、複数の要因が重なって起こることがほとんどです。
1.1 思春期に不登校が起こりやすい理由
思春期は、子どもから大人へと心身が大きく変化する時期です。体の成長だけでなく、自我が芽生えて「自分とは何か」を意識し始め、周囲との関係の中で強い葛藤を抱えやすくなります。友人関係や学業、家庭での立ち位置など、さまざまなプレッシャーが一度に押し寄せることも少なくありません。
また、この時期はホルモンバランスの変化によって感情が不安定になりやすく、自律神経の乱れから体調不良を訴えることもあります。心と体の両面で大きな変化を経験する思春期は、ストレスへの耐性が揺らぎやすく、不登校という形でSOSが表れやすい時期でもあります。親としては、こうした発達段階の特性を知っておくだけでも、子どもの状態を少し受け止めやすくなります。
1.2 小学生の不登校と中学生や高校生の不登校の違い
不登校といっても、年代によってその背景や表れ方には違いがあります。小学生の場合は、母子分離不安や環境の変化への戸惑いなど、比較的わかりやすい原因が背景にあることが多い傾向です。一方で、思春期にあたる中学生や高校生になると、原因が複雑になり、本人自身も理由をうまく言葉にできないケースが増えてきます。
| 年代 | 主な背景の傾向 | 対応のポイント |
|---|---|---|
| 小学生 | 母子分離不安、環境の変化への不安、生活リズムの乱れ | 安心感を与え、家庭で寄り添う |
| 中学生 | 友人関係、学業への不安、思春期特有の心の揺れ | 本人の気持ちを尊重し、進路の選択肢を広げる |
| 高校生 | 人間関係、将来への迷い、自分の生き方への葛藤 | 本人の意思を大切にし、多様な学び方を検討する |
思春期の不登校では、本人が理由を明確に説明できないことも多くあります。原因を急いで特定するよりも、まずは子どもの状態をそっと見守り、その子に合った関わり方を探していくことが大切です。年代ごとの特徴を踏まえたうえで、家庭でできるサポートを考えていきましょう。
1.3 甘えや怠けと決めつけてはいけない背景
「ただ怠けているだけなのでは」「甘えているのではないか」と感じてしまう瞬間がある親御さんもいるかもしれません。けれど、不登校の背景には、本人の意思ではコントロールできない心身の不調や、深刻な悩みが隠れていることが多くあります。朝起きられない、体がだるいといった症状は、起立性調節障害などの体の病気が関係している場合もあります。
子ども自身も「学校に行かなければならない」と分かっていながら行けず、罪悪感や自己否定感に苦しんでいることが少なくありません。不登校を甘えや怠けと決めつける前に、「行けないほどつらい状態なのかもしれない」と受け止めることが、子どもの安心につながります。家庭が安心できる場所になることが、回復への土台となります。
2. 思春期の不登校に見られる主なサイン

思春期の子どもは自分の気持ちを言葉でうまく表現できないことが多く、不登校の前兆は「言葉」よりも「行動」や「体調」に表れやすいものです。親が早めにサインに気づき、無理に登校を促すのではなく子どもの状態を理解することが、その後の対応を大きく左右します。ここでは、思春期の不登校で見られやすい代表的なサインを紹介します。
次のようなサインが複数、そして継続して見られる場合は、心身のSOSとして受け止め、子どもに合った対応を考えていくことが大切です。
| サインの種類 | 具体的な様子 |
|---|---|
| 体調面の変化 | 朝になると頭痛や腹痛を訴える、吐き気やだるさが続く |
| 生活リズムの乱れ | 夜眠れず昼夜逆転する、朝起きられない |
| コミュニケーションの変化 | 会話が減る、部屋にこもりがちになる |
| 行動の変化 | ゲームやスマホに没頭する時間が増える |
2.1 朝になると体調不良を訴える
思春期の不登校で多く見られるサインが、朝になると体調不良を訴えることです。頭痛や腹痛、吐き気、めまい、強いだるさなどが代表的で、登校時間が近づくにつれて症状が強くなる傾向があります。特徴的なのは、学校を休むと日中には症状が軽くなり、元気そうに見えることがある点です。この状態を見ると親御さんは戸惑うかもしれませんが、実際にはストレスや不安が身体症状として表れているケースが多くあります。
また、こうした症状の背景に、朝に血圧が上がりにくく立ちくらみや倦怠感を起こす起立性調節障害が関係していることもあります。体調不良が続く場合は、思春期特有の体の変化も視野に入れながら、小児科などで相談することが大切です。
2.2 昼夜逆転や生活リズムの乱れが続く
夜になっても眠れず、明け方まで起きている一方で、日中に眠り続けるといった昼夜逆転も、不登校でよく見られるサインです。学校に行かない日が続くと生活リズムが崩れやすくなり、さらに朝起きられなくなって登校が難しくなるという悪循環に陥ることがあります。
生活リズムの乱れは、単なる夜更かしではなく、不安や気持ちの落ち込みによって眠りが浅くなっている場合もあります。無理に早寝早起きを強く求めるよりも、まずは睡眠が取れているか、心身が休めているかに目を向けることが回復への第一歩になります。
2.3 親との会話が減り部屋にこもる
これまで普通に話していた子どもが急に口数が減り、自分の部屋にこもりがちになるのも見逃せないサインです。思春期は親から距離を取りたい時期でもあるため、ある程度の変化は自然なことですが、食事を一緒に取らなくなったり、目を合わせなくなったり、明らかに表情が乏しくなっている場合は、何か負担を抱えている可能性があります。
部屋にこもる行動は、外の世界や人間関係から自分を守ろうとする防衛反応であることもあります。親としては心配のあまり理由を聞きたくなりますが、子どもが安心して過ごせる空間を保ちながら、話したいときに話せる関係を維持することが大切です。
2.4 ゲームやスマホの時間が増える
ゲームやスマホ、動画、SNSに費やす時間が急に増えることも、思春期の不登校でよく見られるサインです。一見すると単なる遊びに見えますが、現実の不安やつらさから一時的に気持ちを切り離すための行動であることも少なくありません。ゲームやスマホの中に、安心できる居場所や人とのつながりを見出している子どももいます。
そのため、急にゲームやスマホを取り上げてしまうと、数少ない逃げ場を失い、かえって状態が不安定になることがあります。まずは行動そのものを責めるのではなく、その背景にある子どもの気持ちや不安に目を向けることが重要です。利用時間のルールについては、回復の段階を見ながら本人と話し合って決めていくとよいでしょう。
これらのサインは、どれか一つだけで不登校と判断できるものではありません。しかし、複数のサインが重なり、長く続いている場合は、子どもが何らかのストレスや不安を抱えているサインと考えられます。大切なのは、サインを叱る対象として見るのではなく、子どもからのSOSとして受け止め、寄り添う姿勢を持つことです。
3. 思春期の不登校の原因として考えられること

思春期の不登校には、はっきりとした一つの原因があるとは限りません。多くの場合、学校生活のストレスや友人関係、勉強への不安、家庭環境、体調面など、複数の要因が複雑に絡み合っています。文部科学省の調査でも、不登校の要因は本人・家庭・学校のさまざまな状況が重なって生じることが示されています。ここでは、思春期の子どもに不登校が起こる背景として考えられる主な要因を整理して見ていきます。
大切なのは、原因を一つに特定して責任の所在を探すことではなく、子どもが置かれている状況を多面的に理解しようとする姿勢です。原因が本人にもうまく言葉にできないケースも少なくないため、焦らず全体像をとらえていきましょう。
| 要因の分類 | 主な内容 |
|---|---|
| 学校生活・友人関係 | いじめ、友達とのトラブル、クラスになじめない孤立感 |
| 学業面 | 成績の低下、勉強についていけない不安、テストへのプレッシャー |
| 教員・環境面 | 先生との相性、クラスの雰囲気、部活動での人間関係 |
| 家庭面 | 親子関係の緊張、期待へのプレッシャー、家庭内の不和 |
| 心身・特性面 | 発達特性、起立性調節障害などの体調不良、不安や気分の落ち込み |
3.1 学校生活や友人関係のストレス
思春期の子どもにとって、友人関係は自分の居場所を左右するとても大きな存在です。仲の良かった友達とのすれ違いや、グループ内での立ち位置の変化、いじめやからかいなど、大人から見れば小さく見えることでも、本人にとっては深刻な悩みになることがあります。
クラス替えや進学によって環境が大きく変わり、これまでの人間関係が一度リセットされることもきっかけになりやすいものです。「学校に行けば必ず誰かと関わらなければならない」というプレッシャーそのものが、大きな負担になっている場合もあります。友人関係のストレスは表面化しにくく、本人が親に打ち明けられないまま抱え込んでいることも少なくありません。
3.2 勉強や成績への不安
中学生や高校生になると学習内容が一気に難しくなり、授業のスピードについていけないと感じる子どもが増えます。一度つまずくと次の単元も理解できなくなり、「わからない」が積み重なって自信を失ってしまうことがあります。
定期テストや模試の結果、順位が明確になることで、成績への不安が強まるのもこの時期の特徴です。頑張っても結果が出ないという無力感が続くと、学校そのものから距離を置きたくなる気持ちにつながっていきます。特に真面目で完璧を求めやすい子どもほど、思うようにいかない自分を責めてしまう傾向があります。
3.3 先生との相性やクラス環境
担任の先生や教科担当との相性も、思春期の子どもには大きく影響します。厳しい叱責を受けた経験や、自分だけが理解してもらえていないという感覚が、登校をためらう原因になることがあります。
また、クラス全体の雰囲気が騒がしかったり、ピリピリした緊張感があったりすると、その空間で一日を過ごすこと自体が強いストレスになります。感受性が強い子どもは、直接自分に向けられたことでなくても、教室の空気に敏感に反応して疲れ切ってしまうことがあります。部活動での上下関係や指導のあり方が負担になっているケースもあります。
3.4 家庭内のプレッシャーや親子関係
家庭は本来、子どもにとって安心できる場所であることが理想です。ただ、成績や進路への期待、励ましのつもりでかけた言葉が、思春期の子どもにはプレッシャーとして伝わることもあります。「しっかりしなさい」という言葉の積み重ねが、本人の心に重くのしかかってしまう場合もあります。
親自身は子どもを思って伝えた言葉でも、思春期の子どもには「ありのままの自分では認めてもらえない」というメッセージとして受け取られることがあります。家庭内の不和や、きょうだいとの比較なども、子どもの心の安定を揺るがす要因になり得ます。親子関係が原因のすべてではありませんが、家庭が安心できる場になっているかを一緒に見つめ直す視点は大切です。
3.5 発達特性や起立性調節障害などの体調面
不登校の背景に、発達特性や体調の問題が関係していることもあります。集団行動や対人コミュニケーションに困難を感じやすい特性がある場合、学校生活そのものが大きな負担になっていることがあります。
また、思春期に多く見られる起立性調節障害は、朝起きられない、立ちくらみやだるさが続くといった症状が現れる自律神経の不調であり、本人の意思や気持ちの問題ではありません。「怠けている」ように見える朝の不調が、実は体の病気によるものだったというケースもあります。気分の落ち込みや強い不安が続く場合には、心の状態が影響していることも考えられます。こうした場合は、小児科や児童精神科など医療機関への相談が回復への助けになります。詳しい症状については日本小児科学会などの情報も参考になります。
4. 思春期の不登校で親が知っておきたい関わり方

思春期の子どもが不登校になると、親御さんはどうにか状況を変えようと焦り、良かれと思って声をかけることがあります。その気持ちは、子どもを心配しているからこそ生まれる自然なものです。ただ、この時期の子どもは自我が育ち、大人に近い感受性を持ちながらも心はまだ不安定です。親のちょっとした言動が、子どもにとって大きなプレッシャーになることもあります。ここでは、思春期の不登校において子どもが安心しやすくなる関わり方を整理します。
4.1 無理やり学校へ行かせようとしない
「行けば慣れる」「休み癖がついてしまうのでは」という思いから、登校を強く促したくなることがあります。不登校の背景には、本人でもうまく言葉にできない不安や疲れが積み重なっていることが多く、心身がすでに限界を迎えているケースも少なくありません。そのような状態では、まず「今は休む必要がある状態なのかもしれない」と受け止める姿勢が、子どもの安心につながります。登校を目標にする前に、心と体の回復を優先して考えてみましょう。
4.2 原因を急いで問い詰めない
「どうして行きたくないの」「何があったの」と原因を知りたくなるのは、親として自然なことです。ただ、思春期の子どもは、原因が一つに絞れないことも多く、自分自身でも理由がはっきりわからないまま学校へ行けなくなっている場合があります。続けて質問されると、子どもは責められているように感じ、ますます口を閉ざしてしまうことがあります。原因を無理に聞き出そうとするよりも、子どもが自分から話したくなるまで待ち、話し始めたら否定せずに耳を傾けることが重要です。
4.3 兄弟姉妹や同級生と比べない
「お兄ちゃんはちゃんと通っていたのに」「友だちは頑張っているよ」といった比較の言葉は、励ましのつもりでも、子どもの自己肯定感を傷つけることがあります。思春期は他者との違いに敏感になる時期であり、比べられることで「自分はダメな存在だ」という思いを強めてしまうこともあります。比較ではなく、その子自身が今どんな状態にあり、どんなペースなら少し楽に過ごせるのかに目を向けることが大切です。
4.4 将来への不安を一人で抱え込まない
「このままでは高校に行けないのでは」「将来どうなるのだろう」と不安になるのは、親御さんとして自然なことです。ただ、その不安をそのまま子どもに伝えると、子どもは今の自分を否定されたように感じ、家庭でも安心しにくくなることがあります。将来への焦りが強いときほど、まずは目の前の子どもの安心と回復を優先し、親自身も一人で抱え込まずに相談先を持つことが望ましい対応です。
これらの対応に共通するのは、親の焦りや善意が、子どもにはプレッシャーとして伝わることがあるという点です。思春期の不登校では、親が正そうとするよりも、子どもが安心して自分の気持ちを立て直せる環境をつくることが回復への第一歩になります。できない日があっても大丈夫です。親御さんが「責めずに聞こう」と意識できたなら、それだけでも関わり方は大きく前に進んでいます。
| 意識したい関わり方 | 子どもが安心しやすい理由 | 声かけの例 |
|---|---|---|
| 無理やり学校へ行かせようとしない | 心身の疲れを受け止めてもらえたと感じやすい | 「今日はまず体を休めようか」 |
| 原因を急いで問い詰めない | 責められている感覚が減り、話しやすくなる | 「話せそうなときに教えてくれたらいいよ」 |
| 兄弟姉妹や同級生と比べない | 自分のペースを認めてもらえたと感じやすい | 「あなたに合う進み方を一緒に考えよう」 |
| 将来への不安を一人で抱え込まない | 家庭が安心できる場所になりやすい | 「困ったら大人も相談しながら考えるね」 |
5. 思春期の不登校で親が今日からできる接し方

思春期の不登校に直面したとき、多くの親御さんは「どう声をかければいいのか」「何をすれば子どもが元気を取り戻すのか」と悩みます。しかし、特別なことを完璧にする必要はありません。大切なのは、子どもが安心して過ごせる環境と、否定されずに気持ちを話せる関係を家庭の中につくることです。ここでは、親が今日から実践しやすい具体的な接し方を紹介します。
5.1 まずは安心できる家庭環境を整える
不登校になった子どもは、学校での人間関係や勉強のプレッシャーなどによって、心身ともに疲れ切っている状態かもしれません。そんなときに家庭までもが緊張を強いる場所になってしまうと、子どもは休む場所を失ってしまいます。まずは家庭が子どもにとって安心できる居場所であることを最優先に考えましょう。
親が焦りや不安を強く表に出すと、子どもはそれを敏感に感じ取り、さらに追い詰められてしまうことがあります。学校のことを話題にしすぎず、日常の何気ない会話や落ち着いた雰囲気を大切にすることで、子どもは少しずつ心のエネルギーを回復させていきます。
5.2 子どもの気持ちを否定せずに聞く
「なぜ行けないの」と理由を急いで聞き出すよりも、子どもが話したくなったときにじっくり耳を傾ける姿勢が大切です。子どもが「学校がつらい」「行きたくない」と口にしたとき、それを否定したり、正論で説得しようとしたりすると、子どもは「わかってもらえない」と感じて心を閉ざしてしまうことがあります。
「そうだったんだね」「つらかったね」と、まずは子どもの気持ちをそのまま受け止めることが信頼関係の土台になります。アドバイスや解決策を急いで提示するのではなく、子どもの感情に寄り添う「傾聴」の姿勢を意識しましょう。
5.3 登校よりも睡眠と食事を優先する
不登校の子どもは、昼夜逆転や食欲不振など生活リズムが乱れやすくなります。しかし、まず整えたいのは学校への登校ではなく、睡眠と食事という心身の回復に欠かせない生活の基盤です。
十分な睡眠と栄養がとれていないと、気力も体力も戻りにくく、次の一歩を踏み出すことが難しくなります。無理に生活リズムを正そうと厳しく管理するのではなく、朝日を浴びる、一緒に食事をとるなど、自然に整うきっかけを日常の中に取り入れていくとよいでしょう。予定どおりにできない日があっても、それは失敗ではありません。今の子どもに必要な休み方を探している途中だと考えて、少しずつ整えていきましょう。
5.4 会話のきっかけを日常の中につくる
親子の会話が減ると、子どもの状態が見えにくくなり、親の不安も大きくなります。とはいえ、無理に会話を増やそうとすると、かえって子どもは負担に感じることがあります。大切なのは、学校や勉強とは関係のない、日常的で気軽な会話のきっかけを自然につくることです。
好きなテレビ番組やゲーム、食べ物の話題など、子どもが関心を持っていることに触れると会話が生まれやすくなります。以下のように、日常の中には会話のきっかけがたくさんあります。
| 場面 | 会話のきっかけの例 |
|---|---|
| 食事のとき | 「これおいしいね」「何が食べたい?」など好みを聞く |
| テレビや動画を見ているとき | 「これ面白いね」と一緒に楽しむ |
| 買い物や外出のとき | 「よかったら一緒に行く?」と軽く誘ってみる |
| 趣味やゲームの話題 | 「どんなところが面白いの?」と関心を示す |
会話は情報を引き出すためのものではなく、子どもが「安心して話せる」と感じられることに意味があります。返事が少なくても焦らず、親の側から穏やかに声をかけ続けることが大切です。
5.5 できたことを小さく認める
不登校の子どもは自己肯定感が低下していることが多く、「自分はダメだ」と感じてしまいがちです。そんなときに親ができるのは、できていないことを指摘するのではなく、できたことを小さくても認めて言葉にすることです。
「朝起きられたね」「ご飯を食べられたね」「少し外に出られたね」といった、日常の小さな一歩を肯定的に受け止めることで、子どもは少しずつ自信を取り戻していきます。他人と比べたり、過去の状態と比較したりするのではなく、今の子ども自身の一歩に目を向けることが回復への支えになります。
こうした日々の積み重ねが、子どもの心に「ここにいていい」「自分は大切にされている」という安心感を育てます。文部科学省も、不登校の子どもへの支援においては学校復帰そのものを目標とするのではなく、子どもの社会的自立を目指す視点が重要だとしています。親が焦らず子どもの気持ちに寄り添う姿勢こそが、回復への確かな第一歩となります。
6. 不登校から回復へ向かうステップ

思春期の不登校からの回復は、一足飛びに「また学校へ行けるようになる」ことを目指すものではありません。心身の状態が整い、本人のなかに「動いてみよう」という気持ちが芽生えるまでには、いくつかの段階があります。焦って次の段階へ進めようとすると、かえって回復を遅らせてしまうこともあるため、子どものペースに合わせて一つずつステップを踏んでいくことが何より大切です。ここでは、回復へ向かうおおまかな流れを段階ごとに紹介します。
まずは、それぞれのステップで親が意識したいことと目安を整理しておきましょう。
| 段階 | 子どもの状態の目安 | 親が意識したいこと |
|---|---|---|
| 休養期 | 心身ともに疲れ切っている | 安心して休める環境を用意する |
| 安定期 | 家庭で落ち着いて過ごせる | 安心できる時間を増やす |
| 回復期 | 少しずつ活動意欲が戻る | 小さな行動を見守る |
| 移行期 | 外の世界に関心が向く | 登校や学びの選択肢を一緒に考える |
6.1 休むことを受け止めて心身を回復させる
不登校の初期段階では、多くの子どもが心身ともにエネルギーを使い果たしています。学校へ行けない自分を責めたり、周囲の期待に応えられない不安を抱えたりして、想像以上に消耗していることが少なくありません。この時期にまず必要なのは、しっかりと休むことです。
親としては「休ませて大丈夫なのか」と焦る気持ちが出てきますが、休養は後退ではなく、次の一歩を踏み出すためのエネルギーを蓄える大切な時間だと捉えることが重要です。学校や勉強の話題を急がず、まずは安心して家で過ごせるようにしてあげましょう。文部科学省も、不登校の子どもへの支援では登校を目標にするのではなく、社会的な自立を目指すという視点を示しています。
6.2 家庭内で安心して過ごせる時間を増やす
心身の疲れが少しずつ取れてくると、家庭のなかで落ち着いて過ごせる時間が増えていきます。この段階では、無理に活動を促すのではなく、家庭が本人にとって安心できる居場所であり続けることを優先します。
一緒に食事をとる、テレビを見て笑う、何気ない会話を交わすといった日常のやりとりが、子どもの心の安定を支えます。親御さんがうまく声をかけられない日があっても大丈夫です。家庭の中に責められない空気があるだけでも、子どもにとっては大きな安心になります。会話が増えてきたり、表情が明るくなってきたりする変化は、回復が進んでいるサインと考えてよいでしょう。
6.3 外出や学習など小さな行動を始める
安定した時間が続くと、子ども自身のなかに「何かしてみたい」という意欲が少しずつ芽生えてきます。近所へ買い物に出かける、散歩をする、好きな分野の本を読む、少しだけ勉強に触れてみるなど、本人が自分から始められる小さな行動を尊重することが回復を後押しします。
ここで大切なのは、親が先回りして課題を与えすぎないことです。子どもが自分で選んで動けたという経験の積み重ねが、自信の回復につながります。うまくいかない日があっても、それは失敗ではなく、今の状態を知るための大切なサインです。行動の量ではなく、本人が前向きに取り組めているかどうかに目を向けることが大切です。
6.4 別室登校や保健室登校を検討する
外に出ることへの抵抗が和らいできたら、いきなり教室に戻るのではなく、段階的な登校のかたちを検討します。別室登校や保健室登校は、教室という大きなハードルを避けながら学校とのつながりを保てる有効な方法です。
まずは短い時間だけ学校の敷地に入る、放課後に登校するといった小さなステップから始めるのも一つの方法です。こうした選択肢を進める際は、担任やスクールカウンセラーと連携し、本人が安心して過ごせる場所や時間帯を一緒に決めていくとよいでしょう。無理に教室復帰を急がず、子どもが「ここなら行けそう」と思える環境を整えることが重要です。
6.5 本人に合う学び方や進路を選ぶ
回復が進んでくると、これからの学び方や進路について考える時期がやってきます。従来の学校生活に戻ることだけが正解ではなく、子ども一人ひとりに合った多様な学びの選択肢が広がっていることを知っておくと、親子ともに気持ちが楽になります。
主な選択肢には、次のようなものがあります。
| 選択肢 | 特徴 |
|---|---|
| 在籍校への復帰 | これまでの学校で学び直す。別室登校から段階的に進めることもできる |
| フリースクール | 少人数で個々のペースを尊重した学びができる民間の施設 |
| 教育支援センター | 自治体が運営し、学習や生活のサポートを受けられる公的な施設 |
| 通信制高校 | 自分のペースで学習を進めやすく、登校日数を選べる場合が多い |
進路を選ぶ際は、親が一方的に決めるのではなく、本人の希望や特性をふまえて一緒に話し合うことが大切です。焦らず選択肢を比べながら、子どもが「自分で選んだ」と思える形で次の一歩を決められるよう支えていきましょう。
7. 思春期の不登校で相談できる場所

思春期の不登校は、家庭内だけで抱え込もうとすると、親も子どもも行き詰まってしまうことが少なくありません。子どもの状態や困りごとに応じて、専門機関や支援の場を早めに頼ることが、回復への大きな一歩になります。ここでは、思春期の不登校で相談できる主な場所を、それぞれの特徴とともに紹介します。
7.1 学校の担任やスクールカウンセラー
最初に相談しやすいのが、学校の担任の先生やスクールカウンセラーです。担任は子どものクラスでの様子や友人関係を把握しているため、学校側での配慮や別室登校の相談がしやすくなります。スクールカウンセラーは心理の専門家として、子ども本人だけでなく保護者の悩みにも対応してくれます。「学校を休ませたい」と伝えることに引け目を感じる必要はなく、まずは現状を共有して連携できる関係をつくることが大切です。
7.2 教育支援センターや適応指導教室
教育支援センター(適応指導教室)は、市区町村の教育委員会が設置している公的な支援機関です。学校に行きづらい子どもが、少人数の環境で学習したり、他の子どもと過ごしたりできる場所として利用できます。在籍校と連携しており、通った日数が出席扱いになる場合もあります。学校復帰そのものを急がず、生活リズムを整えながら少しずつ外の世界とつながる場として活用できるのが特徴です。
7.3 小児科や児童精神科
朝になると起き上がれない、頭痛や腹痛が続く、強い不安や気分の落ち込みが見られるといった場合は、体調面の背景を確認するために医療機関の受診も検討しましょう。思春期には起立性調節障害など、本人の意思とは関係なく体調に不調が出る場合があります。小児科や児童精神科、思春期外来では、身体面と心理面の両方から状態を診てもらえます。「怠け」ではなく治療やケアが必要な状態が隠れていることもあるため、気になる症状が続くときは早めの相談が安心です。
7.4 フリースクールや通信制高校
学校以外の学びの場を求める場合は、フリースクールや通信制高校といった選択肢があります。フリースクールは、決まった時間割にとらわれず、子どものペースで過ごせる民間の居場所です。中学生・高校生年代の子どもが、無理なく学習や交流を続けられる環境として選ばれています。通信制高校は、自宅学習やスクーリングを組み合わせて高校卒業資格を目指せるため、進路の選択肢としても現実的です。「学校に戻ること」だけがゴールではなく、その子に合った学び方を見つけることも立派な前進です。
7.5 文部科学省や自治体の相談窓口
どこに相談すればよいか分からないときは、公的な相談窓口を利用する方法もあります。文部科学省は、いじめや不登校を含む子どもの悩みに対応する電話相談として「24時間子供SOSダイヤル(0120-0-78310)」を案内しています(文部科学省「24時間子供SOSダイヤル」)。また、各自治体の教育委員会や子ども家庭支援センターなどでも、保護者からの相談を受け付けています。親自身が一人で悩みを抱え込まず、公的な窓口を頼ることも、子どもを支えるための大切な選択肢です。
相談できる場所は一つではありません。子どもの状態や家庭の状況に合わせて、以下のように整理して考えると、どこに頼ればよいかが見えやすくなります。
| 相談先 | 主に対応してくれること | こんなときに |
|---|---|---|
| 担任・スクールカウンセラー | 学校での様子の共有、登校の配慮、心理的なサポート | まず学校と状況を共有したいとき |
| 教育支援センター・適応指導教室 | 少人数での学習や居場所の提供、出席扱いの相談 | 学校以外の通える場所を探したいとき |
| 小児科・児童精神科 | 体調面・心理面の診察や治療 | 体調不良や強い不安が続くとき |
| フリースクール・通信制高校 | 子どものペースに合わせた学びの場 | 学校以外の学び方や進路を考えたいとき |
| 文部科学省・自治体の相談窓口 | 電話相談、保護者向けの情報提供 | どこに相談すべきか迷っているとき |
8. 思春期の不登校に関するよくある疑問

思春期の子どもが不登校になると、親御さんはさまざまな迷いや不安を抱えます。ここでは、多くの家庭で共通して寄せられる疑問について、対応の考え方を整理して解説します。
8.1 いつまで様子を見るべきか
「このまま見守っていていいのか」「どこかで動くべきではないか」という迷いは、多くの親御さんが感じるものです。基本的な考え方としては、子ども自身が心身を回復させ、少しずつエネルギーを取り戻すまでは焦らず見守ることが大切です。ただし、何もしないという意味ではなく、家庭の中で子どもの様子をそっと見守り、必要に応じて相談先につながることが大切です。
次のようなサインが見られる場合は、様子を見るだけでなく、専門機関への相談を検討する目安になります。
| 状態 | 対応の目安 |
|---|---|
| 数日〜数週間の欠席で会話ができている | 家庭で安心して休める環境を整えつつ見守る |
| 不登校が数週間以上続き会話も減っている | 担任やスクールカウンセラーに状況を共有する |
| 食欲や睡眠の乱れが強く体調不良が続く | 小児科や児童精神科など医療機関に相談する |
| 気分の落ち込みが激しく自己否定が強い | 早めに専門的なサポートにつなげる |
「いつまで」という期間で区切るよりも、子どもの心身の状態を基準に判断することが重要です。回復には個人差があるため、他の家庭と比べて焦らないようにしましょう。
8.2 勉強の遅れはどう取り戻すか
不登校が続くと、勉強の遅れを心配する親御さんは少なくありません。ただし、心身が回復していない段階で無理に勉強をさせても、かえって学校や学習への抵抗感を強めてしまうことがあります。まずは子どもが安心して過ごせる状態を優先し、そのうえで本人が取り組めそうなタイミングを見極めることが大切です。
学習を再開する際には、以下のような選択肢があります。子どもの状態や興味に合わせて、負担の少ない方法から始めるとよいでしょう。
| 学習方法 | 特徴 |
|---|---|
| 家庭学習・ドリル | 自分のペースで少しずつ進められる |
| タブレット教材・オンライン学習 | ゲーム感覚で取り組みやすく苦手分野を確認できる |
| 教育支援センターや適応指導教室 | 学校以外の場で学習と生活リズムを整えられる |
| 家庭教師・個別指導 | つまずいた部分をさかのぼって学び直せる |
大切なのは、遅れをすぐに取り戻すことではなく、学ぶ意欲が戻ったときにスムーズに再開できる土台をつくっておくことです。小さな達成を積み重ねることで、少しずつ自信を取り戻していきます。
8.3 スマホやゲームは取り上げるべきか
不登校中にスマホやゲームの時間が増えると、「取り上げた方がいいのではないか」と考える親御さんも多いでしょう。しかし、頭ごなしに取り上げると、子どもの数少ない安心できる居場所や人とのつながりを奪ってしまう可能性があります。特に思春期では、スマホやゲームが友人とのつながりや気分転換の役割を果たしていることも少なくありません。
大切なのは、一方的に禁止するのではなく、子どもと一緒に使い方のルールを話し合うことです。生活リズムを整える観点から、次のような工夫が考えられます。
- 就寝前の一定時間はスマホを控えるなど、家族で共有できるルールを決める
- 使う時間帯や場所を一方的に押しつけず、本人の意見も取り入れる
- ゲームや動画の話題を否定せず、会話のきっかけとして活用する
昼夜逆転が続く場合は、スマホやゲームそのものを否定するのではなく、睡眠と食事のリズムを整えることを優先して話し合うとよいでしょう。
8.4 高校受験や進路に影響するか
「不登校が続くと進学できないのではないか」という不安は、思春期の子どもをもつ親にとって大きな心配事です。しかし現在は、不登校を経験しても進学や進路の選択肢は幅広く用意されているため、過度に悲観する必要はありません。
高校への進学を考える場合、次のような選択肢があります。子どもの状態や希望に合わせて検討できます。
| 進路の選択肢 | 特徴 |
|---|---|
| 全日制高校 | 毎日通学するが、学校によって出席や内申の扱いは異なる |
| 定時制高校 | 登校時間や日数に柔軟性があり自分のペースで通いやすい |
| 通信制高校 | 自宅学習を中心に、登校日数を選べる仕組みがある |
| 高等専修学校など | 専門的な学びを通して興味に沿った進路を選べる |
内申点や出席日数を心配する場合でも、通信制高校のように出席日数の影響を受けにくい進路もあります。文部科学省でも不登校の子どもへの多様な学びの機会の確保が進められており、進路の選択肢は着実に広がっています。
進路を決める際に最も大切なのは、偏差値や学校名だけではなく、子ども自身が安心して通い続けられる環境かどうかです。焦って結論を出さず、本人の気持ちを尊重しながら一緒に考えていきましょう。
9. まとめ
思春期の不登校は、甘えや怠けではなく、友人関係や勉強への不安、体調面などさまざまな要因が重なって起こります。だからこそ、無理に学校へ行かせたり原因を急いで聞き出したりするよりも、まずは安心できる家庭環境を整え、子どもの気持ちを否定せずに受け止めることが回復への第一歩になります。焦らず心身を休ませ、小さな行動を認めながら本人に合う学び方や進路を一緒に探しましょう。悩んだときは学校のスクールカウンセラーや児童精神科、自治体の相談窓口など専門機関に頼ることも大切です。親御さんは、子どもにとって一番身近な味方です。一人で抱え込まず、周囲と連携しながら子どもの回復を支えていきましょう。