- 1 不登校とは?現状と支援の重要性
- 1-1 不登校の定義と文部科学省の考え方
- 1-2 支援が必要となる主な原因と背景
- 2 家庭でできる不登校の支援と対策
- 2-1 子どもの気持ちに寄り添う対応
- 2-1-1 登校を無理に促さず休息を認める
- 2-1-2 理由を問い詰めず話を聴く
- 2-1-3 家庭を安心できる居場所にする
- 2-2 生活リズムを整えるためのサポート
- 2-2-1 起床・就寝時間を少しずつ整える
- 2-2-2 日中の過ごし方と学習の工夫
- 2-2-3 朝起きられない場合に考えられる体の不調
- 2-3 親自身のストレスケアと相談
- 2-3-1 親が自分を責めないための考え方
- 2-3-2 家族で方針を共有し役割を分担する
- 2-3-3 親が利用できる相談先
- 3 学校と連携した不登校支援
- 3-1 担任やスクールカウンセラーへの相談
- 3-1-1 担任に相談するときに伝えたいこと
- 3-1-2 スクールカウンセラーの役割と相談方法
- 3-1-3 スクールソーシャルワーカーとの連携
- 3-1-4 支援の方針を学校と共有する
- 3-2 保健室登校や別室登校の活用
- 3-2-1 保健室登校の特徴
- 3-2-2 別室登校と校内教育支援センター
- 3-2-3 出席扱いと学習の評価
- 3-2-4 段階的に登校するときの注意点
- 4 外部機関による不登校支援の種類
- 4-1 教育支援センターや適応指導教室の役割
- 4-2 フリースクールなど民間施設の活用
- 4-2-1 フリースクールの主な種類
- 4-2-2 費用と補助制度
- 4-2-3 施設を選ぶときの確認ポイント
- 4-3 医療機関や児童相談所への相談
- 4-3-1 医療機関に相談したほうがよいケース
- 4-3-2 児童相談所に相談できること
- 4-3-3 子ども自身が利用できる電話相談
- 5 まとめ
不登校の支援は、学校に戻すことだけを目的にするものではありません。文部科学省も、登校という結果のみを目標にせず、子どもが自分の進路を主体的に考え、社会的に自立することを目指す方針を示しています。家庭では登校を急かさずに気持ちを受け止め、生活リズムを整えます。学校とは担任やスクールカウンセラーを通じて保健室登校や別室登校を相談します。必要に応じて教育支援センター、フリースクール、医療機関、児童相談所も利用し、子どもの状況に合わせて組み合わせるのが基本です。この記事では、各支援の内容と利用の目安、親自身の負担を軽くする方法を紹介します。
不登校とは?現状と支援の重要性
不登校の支援を考えるときは、まず国の定義と現在の状況を知っておくことが役立ちます。不登校は特定の家庭や子どもだけに起こるものではなく、どの子どもにも起こり得るものとして、国も支援の考え方を示しています。
不登校の定義と文部科学省の考え方
文部科学省は不登校児童生徒を「何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しない、あるいはしたくともできない状況にあるために年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を除いたもの」と定義しています。つまり、病気や経済的な事情による欠席は含みません。一方で、「行きたくても行けない」状態も対象になるため、本人の意思だけで休んでいるとは限りません。
文部科学省の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」によると、令和5年度の小・中学校の不登校児童生徒数は34万6,482人で、11年連続で増え、過去最多となりました。内訳は小学校が約13万人、中学校が約21万6千人です。このうち約55%は年間90日以上欠席しており、長期化している子どもも多くいます。また、学校内外の機関で相談や指導を受けていない子どもが約4割いることも明らかになっています。
支援の考え方については、2016年に成立した「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律(教育機会確保法)」が基本となっています。この法律では、学校以外の場で学ぶことの重要性や、休養の必要性が認められました。これを受けて文部科学省は、通知「不登校児童生徒への支援の在り方について」の中で、支援の目的を示しています。それは「学校に登校する」という結果だけを目標にするのではなく、子どもが自分の進路を主体的に考え、社会的に自立することです。同じ通知では、不登校を「問題行動」と判断してはならないとも明記されています。
さらに、教育支援センターや一定の要件を満たす民間施設での学習、自宅でのICTを使った学習などは、校長の判断で指導要録上の出席扱いにできる仕組みがあります。国の施策や関連資料は、文部科学省の「不登校への対応について」のページにまとめられています。
支援が必要となる主な原因と背景
不登校のきっかけは一つとは限らず、いくつかの要因が重なっていることが少なくありません。文部科学省の調査で、学校が把握した不登校児童生徒の状況として多く挙がっているのは、主に次のようなものです。
- 学校生活に対してやる気が出ないなどの相談があった
- 不安や抑うつに関する相談があった
- 生活リズムの乱れに関する相談があった
- 学業不振や宿題の未提出が見られた
- いじめを除く友人関係の問題があった
このほか、いじめ、教職員との関係、家庭環境の変化なども背景として挙げられます。発達障害などの特性から、集団生活や授業の進め方に強い負担を感じる子どももいます。また、腹痛や頭痛、朝起きられないといった体の症状が出る場合もあり、起立性調節障害などの病気が関係していることもあります。本人も「なぜ行けないのか分からない」と感じていることがあるため、周囲が原因を一つに絞らないことが大切です。
支援が必要とされる理由は、欠席が続くことで次のような影響が出やすいためです。
- 学習の遅れが生じる
- 生活リズムが崩れる
- 家族以外の人と関わる機会が減り、孤立しやすくなる
- 自信を失いやすくなる
こうした影響が重なると、進学や将来の選択に対する不安も大きくなりがちです。相談や指導を受けていない子どもが約4割いるという調査結果からも、家庭だけで抱え込まず、学校や外部の支援につながることが求められています。
支援の窓口は、家庭、学校、教育支援センター、フリースクール、医療機関など複数あります。子どもの状態や原因に応じて、使える支援を組み合わせることができます。
家庭でできる不登校の支援と対策

子どもにとって家庭は、学校に行けない時期にもっとも長く過ごす場所です。そのため、保護者の関わり方が、子どもが心身のエネルギーを回復できるかどうかに大きく影響します。家庭での支援は、「気持ちに寄り添うこと」「生活リズムを整えること」「親自身が無理をしないこと」の3つに分けて考えると、何から取り組めばよいかを整理しやすくなります。
子どもの気持ちに寄り添う対応
文部科学省は、不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)の中で、支援は「学校に登校する」という結果だけを目標にせず、子どもが社会的に自立することを目指すべきだと示しています。また、不登校の期間には、休養や自分を見つめ直すといった積極的な意味を持つ場合があることにも触れています。家庭ではこの考え方を踏まえ、登校させることより先に、子どもの安心を取り戻すことを優先します。
登校を無理に促さず休息を認める
学校に行けなくなった直後の子どもは、腹痛や頭痛、朝の不調などの身体症状が出たり、強い不安を感じていたりすることがあります。この段階で「いつになったら行くの」「みんな頑張っている」と登校を促すと、子どもは「親にも分かってもらえない」と感じ、さらに心を閉ざしやすくなります。「今日は休んでいいよ」と休息を認めると、子どもは学校に行けない罪悪感から少しずつ解放されます。
身体症状を「仮病」だけで説明しないことも大切です。症状が続く場合や、食事や睡眠に大きな乱れがある場合は、医療機関の受診を検討してください。
理由を問い詰めず話を聴く
不登校のきっかけは一つとは限らず、子ども自身も理由をうまく言葉にできないことが少なくありません。「なぜ行けないの」と繰り返し尋ねると、答えられない子どもを追い詰めてしまいます。理由の追及は控え、子どもが自分から話し始めたときに、途中で否定や助言をはさまずに最後まで聴くようにします。
話を聴くときは、「そう感じていたんだね」「話してくれてありがとう」のように、子どもの気持ちをそのまま受け止める言葉を返すと、子どもは「話しても大丈夫だ」と感じられます。いじめなど深刻な事情が打ち明けられた場合は、子どもの了解を得たうえで学校と情報を共有し、対応を相談してください。
家庭を安心できる居場所にする
学校の話題を避けたい子どもにとっては、登校や勉強と関係のない日常会話が安心につながります。好きなゲームや動画、趣味の話に保護者が関心を持つと、親子の会話のきっかけが増えます。
ゲームやスマートフォンの使いすぎが気になる場合も、一方的に取り上げると、子どもが家庭でくつろげる時間を失うことがあります。利用時間などのルールは、子どもと話し合って一緒に決めるほうが守られやすくなります。
なお、自分を傷つける行為や「消えたい」「死にたい」といった言葉が見られた場合は、家庭だけで抱えず、すぐに専門の相談窓口や医療機関に相談してください。
生活リズムを整えるためのサポート
学校に行かない日が続くと、起床や就寝の時間が遅くなり、昼夜逆転に陥ることがあります。生活リズムが乱れると、日中の気力や体調にも影響するため、登校の再開やフリースクールなどへの通所を考えるときの負担が大きくなります。ただし、子どもの気持ちが落ち着いていない段階で生活習慣を厳しく正そうとすると、親子関係が悪化するおそれがあります。心の安定を優先しながら、できるところから少しずつ整えていくことが大切です。
起床・就寝時間を少しずつ整える
昼夜逆転している場合、いきなり登校時刻に合わせて起きるのは難しいため、起床時間を30分ずつ早めるなど、段階的に目標を設定します。起きたらカーテンを開けて朝の光を浴びる、朝食をとるといった行動をセットにすると、体内時計が整いやすくなります。
夜は、寝る直前までスマートフォンやゲームの画面を見ていると寝つきが悪くなりやすいため、就寝の1時間前には使用を終えるなど、寝る前の過ごし方を子どもと一緒に決めておきます。
日中の過ごし方と学習の工夫
日中にすることが決まっていないと、生活にメリハリがなくなります。食事の準備や洗濯物をたたむといった家事の手伝い、散歩や買い物への同行など、子どもが負担なくできる役割をお願いすると、一日の中に区切りが生まれます。家族から「ありがとう」と言われる経験は、子どもが自信を取り戻すきっかけにもなります。
勉強の遅れを心配する保護者は多いものの、学習は子どもの気力が戻ってきてから、短い時間・得意な教科から始めるほうが続けやすくなります。文部科学省の前述の通知では、一定の要件を満たせば、自宅でICT等を活用して行った学習を指導要録上の出席扱いとすることができるとされています。オンライン教材の利用などを検討する際は、在籍校に相談してみてください。
朝起きられない場合に考えられる体の不調
朝どうしても起きられない、午前中に立ちくらみや頭痛がひどく午後になると元気になる、といった状態が続く場合、起立性調節障害などの体の不調が関係している可能性があります。起立性調節障害は思春期に多いとされ、本人の意思や努力だけで改善するものではありません。「怠けている」と判断する前に、小児科などで相談することを検討してください。
親自身のストレスケアと相談
子どもが学校に行けない状況が続くと、保護者は将来への不安や周囲の目、仕事との両立などで大きなストレスを抱えがちです。親の焦りや不安は表情や言葉を通して子どもに伝わり、子どもが「自分のせいで親が苦しんでいる」と感じる原因にもなります。子どもを支え続けるためには、親自身の心身の健康を保つことが欠かせません。
親が自分を責めないための考え方
不登校は、友人関係、学業、心身の不調、家庭環境など、さまざまな要因が重なって起こるものであり、特定の家庭だけで起こることではありません。「育て方が悪かった」と自分を責め続けても、状況は改善しにくいものです。過去の原因探しよりも、「今、子どもが安心して過ごすために何ができるか」に目を向けるほうが、具体的な行動につながります。
趣味の時間や睡眠を確保するなど、親が意識的に休むことも支援の一部です。親が落ち着いて過ごしている姿は、子どもの安心感にもつながります。
家族で方針を共有し役割を分担する
父親と母親で対応が異なると、子どもは混乱し、家庭内の緊張も高まります。「当面は登校を急かさない」「朝の学校への連絡はどちらが担当するか」など、対応の方針や役割を夫婦や同居する家族の間で話し合っておくと、特定の一人に負担が集中するのを防げます。
きょうだいがいる場合は、不登校の子どもに保護者の関心が集中し、きょうだいが寂しさや不公平感を抱えることがあります。きょうだいと一対一で過ごす時間をつくるなど、家族全体のバランスにも目を配ってください。
親が利用できる相談先
悩みを家族以外の人に話すだけでも、気持ちが整理されることがあります。同じ経験を持つ保護者が集まる「親の会」は、各地のNPO法人や支援団体が運営しており、先輩保護者の体験談から見通しを得られる場として活用されています。
夜間や休日にすぐ相談したいときは、文部科学省が案内している24時間子供SOSダイヤル(0120-0-78310)を利用できます。子ども本人だけでなく保護者も相談でき、原則として電話をかけた地域の教育委員会の相談機関につながります。学校や地域の支援機関への相談は、次章以降で紹介する窓口も参考にしながら、家庭だけで抱え込まないようにしてください。
- 「休む日の過ごし方をどう相談しよう」
- 「本人が話しやすい声のかけ方を知りたい」
- 「家庭での関わり方を相談したい」
こうした疑問があるときは、日々の声かけや関わり方を学べる場も選択肢になります。
ほめビリティは、日々の声かけや関わり方を実践しながら学ぶ、保護者向けのオンラインプログラムです。
ほめビリティ・ラウンジでは、関わり方の学習や保護者同士の交流の機会を紹介しています。ご家庭に合う支えを検討する際に、内容をご確認ください。
学校と連携した不登校支援

子どもが学校を休んでいても、在籍する学校は出席の扱い、学習の評価、校内の居場所づくり、進級・進学に関わる情報提供を担います。学校とのつながりを保つと、登校するかどうかを決める前の段階でも、学習や進路の選択肢を残しやすくなります。
文部科学省は「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」で、不登校児童生徒への支援は「学校に登校する」という結果のみを目標にするのではなく、児童生徒が自らの進路を主体的に捉えて社会的に自立することを目指す必要があると示しています。学校との連携では、教室に戻ることだけを目標にせず、子どもの状態に合わせて関わり方を決めることが大切です。
担任やスクールカウンセラーへの相談
学校への相談は、多くの場合、担任が最初の窓口になります。心理面の相談はスクールカウンセラー、家庭環境や福祉サービスに関わる相談はスクールソーシャルワーカーというように、内容によって相談先を使い分けると支援が進みやすくなります。
担任に相談するときに伝えたいこと
担任には、休み始めた時期、家庭での様子、子どもが話している理由や不安、体調の変化を具体的に伝えます。原因がはっきりしない場合は、「わからない」と伝えたうえで、学校での様子を聞いてみましょう。家庭と学校で見えている姿を突き合わせると、友人関係や授業の負担など、きっかけが見えることがあります。
あわせて、次のような連絡方法の取り決めをしておくと、親子双方の負担を減らせます。
- 連絡の手段と頻度(電話、連絡帳、メール、学習用端末など)
- プリントや配布物の受け取り方法
- 家庭訪問の可否と、子ども本人が会うかどうか
- クラスメイトへの説明の仕方と、伝えてほしくない内容
- 子ども本人に直接連絡してよいかどうか
面談の内容や学校と決めたことは、日付とともにメモに残しておきます。担任の交代や進級時に経緯を正確に伝えられ、同じ説明を何度も繰り返す負担を減らせます。
スクールカウンセラーの役割と相談方法
スクールカウンセラーは、公認心理師や臨床心理士などの資格を持つ心理の専門職です。子ども本人のカウンセリングだけでなく、保護者からの相談も受け付けています。子どもが相談を嫌がる場合は、まず保護者が相談し、家庭での接し方について助言を受ける方法もあります。
勤務日は学校や自治体によって異なり、週1回程度など限られた日にしか在校しない学校も少なくありません。予約は担任、養護教諭、教頭などを通して行うのが一般的なため、相談を希望する場合は早めに学校へ申し出ておくとよいでしょう。相談内容を担任など他の教職員と共有するかどうかは、事前に確認しておくと安心して話せます。
スクールソーシャルワーカーとの連携
スクールソーシャルワーカーは、社会福祉士や精神保健福祉士などの資格を持つ福祉の専門職です。家庭の経済的な困りごと、きょうだいの世話や家族の介護、保護者の心身の不調など、子どもを取り巻く環境に課題がある場合に、福祉や行政の窓口との調整を担います。教育委員会に配置され、学校からの要請で派遣される形をとる自治体も多いため、利用したい場合は学校に相談します。
支援の方針を学校と共有する
担任、学年主任、養護教諭、スクールカウンセラーなど複数の教職員が関わる場合、学校内でケース会議が開かれることがあります。保護者が参加を希望する場合は、その旨を学校に伝えましょう。文部科学省の通知では、支援の目標や内容を記録し関係者で共有するための「児童生徒理解・支援シート」の活用が示されています。学年が替わるときや小学校から中学校へ進学するときは、これまでの経緯や配慮事項が引き継がれているかを確認しておくと、新しい環境で一から説明し直す負担を減らせます。
保健室登校や別室登校の活用
教室に入ることに強い不安がある子どもでも、教室以外の場所であれば登校できる場合があります。保健室登校や別室登校は、学校とのつながりを保ちながら、子どもが過ごす場所や時間を段階的に選べる方法です。
保健室登校の特徴
保健室登校は、養護教諭のいる保健室で過ごす登校の形です。養護教諭は体調の変化に気づきやすく、腹痛や頭痛など身体症状を訴える子どもが安心して過ごしやすい環境です。一方、保健室にはけがや体調不良で他の児童生徒も出入りするため、同級生と顔を合わせることを避けたい子どもには負担になる場合があります。滞在する時間帯や過ごし方は、養護教諭や担任と事前に相談して決めておきましょう。
別室登校と校内教育支援センター
別室登校は、空き教室や相談室などで過ごす登校の形です。自習やプリント学習、教員との面談、タブレット端末を使った授業の視聴などが行われます。
文部科学省は「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策(COCOLOプラン)」で、学校内の空き教室などを活用した「校内教育支援センター(スペシャルサポートルーム等)」の設置促進を掲げています。自分のクラスには入りづらくても学校には行ける子どもが、自分のペースで学習したり相談したりできる場所として位置づけられています。設置状況や名称、利用のルールは学校によって異なるため、在籍校にこうした部屋があるか、利用できる曜日や時間帯はいつかを確認しましょう。
出席扱いと学習の評価
保健室登校や別室登校は学校の敷地内で過ごすため、出席として扱われるのが一般的です。自宅での学習についても、文部科学省の通知では、一定の要件を満たす場合、ICT等を活用した自宅での学習活動を校長の判断で出席扱いにできるとされています。主な要件は次のとおりです。
- 保護者と学校との間に十分な連携・協力関係が保たれていること
- ICTや郵送、電話などを活用した学習活動であること
- 訪問等による対面指導が適切に行われていること
- 子どもの学習の理解の程度を踏まえた計画的な学習プログラムであること
- 校長が対面指導や学習活動の状況を十分に把握していること
学習の成果を成績の評価に反映できるかどうかも、学校との話し合いによって決まります。出席扱いや評価の方法は、進級や高校受験の調査書に関わるため、取り組みを始める前に学校と確認しておくことが大切です。
段階的に登校するときの注意点
別室登校や保健室登校を始める際は、子ども本人が納得していることが前提です。保護者や学校が「別室なら行けるはず」と判断して進めると、登校そのものへの抵抗感を強めることがあります。
始める場合は、次のような工夫で子どもの負担を軽くできます。
- 始業前や放課後など、他の児童生徒が少ない時間帯に登校する
- 1時間だけ、週1日だけなど短い時間から始める
- 他の児童生徒と会わない出入り口や経路を学校と決めておく
- 登校できない日があっても、欠席を責めずにその日は休む
別室で過ごせるようになっても、教室への復帰を急ぐ必要はありません。子どもの表情や体調、家庭での様子を学校と共有しながら、過ごす時間や場所を少しずつ調整していきます。
学校内で利用できる居場所を詳しく知りたい方は、あした研究室の校内教育支援センターと別室登校の解説も参考になります。記事中の実践例を参考にしつつ、実際の職員体制や学習の支援は在籍校へ確認してください。
小中学生の自宅学習について学校と相談する際は、あした研究室の出席扱い制度と学習評価の案内で全体像を確認できます。具体的な適用要件は文部科学省の通知と在籍校の説明を照合し、出席扱いや成績への反映が保証されるものとして扱わないようにしましょう。
学校と家庭学習の進め方を相談するときは、本人の理解度や取り組める量に合う教材も検討できます。
無学年式オンライン教材「すらら」は、学年を超えて理解できる内容まで戻り、自宅で自分のペースで学べます。
不登校中の家庭学習や出席扱い制度の活用もサポートしています。出席扱いは教材の利用だけで決まるものではなく、要件に基づく在籍校の判断が必要です。
外部機関による不登校支援の種類

学校以外にも、不登校の子どもと保護者が利用できる相談先や学びの場があります。運営主体によって、公的機関、民間施設、医療・福祉機関の3つに分けられます。2017年に全面施行された教育機会確保法(義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律)では、学校以外の場で行う多様な学習活動の重要性や、不登校の子どもの休養の必要性が示されています。
| 種類 | 主な運営主体 | 主な支援内容 | 費用の目安 |
|---|---|---|---|
| 教育支援センター(適応指導教室) | 市区町村・都道府県の教育委員会 | 学習支援、集団活動、教育相談 | 原則無料 |
| フリースクールなど民間施設 | NPO法人、一般社団法人、株式会社など | 居場所の提供、体験活動、個別の学習支援 | 有料(施設により異なる) |
| 医療機関 | 病院、クリニック | 心身の症状の診断・治療 | 保険診療(自治体の子ども医療費助成の対象になる場合あり) |
| 児童相談所 | 都道府県・政令指定都市など | 子どもと家庭に関する相談、心理判定、関係機関との調整 | 無料 |
教育支援センターや適応指導教室の役割
教育支援センターは、市区町村や都道府県の教育委員会が設置する公的な施設です。以前は「適応指導教室」と呼ばれていましたが、現在は教育支援センターという名称が使われています。自治体によっては「ふれあい教室」「〇〇教室」など独自の名称で運営されています。
主な支援内容は次のとおりです。
- 教員経験者や心理の専門職による学習の個別指導
- スポーツ、調理、野外活動などの集団活動
- 子どもと保護者を対象にした教育相談
- 在籍校との情報共有や連絡調整
公的機関のため利用料は原則無料で、在籍校や教育委員会を通じて申し込むのが一般的です。通室の頻度や時間は子どもの状態に合わせて調整できる場合が多く、週1回や午前中のみの利用から始めることもできます。
文部科学省の「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」では、学校外の公的機関や民間施設で相談・指導を受けている場合、保護者と学校の間に十分な連携協力関係があることなど一定の要件を満たせば、校長の判断で指導要録上の出席扱いにできるとされています。教育支援センターへの通室は、この出席扱いが認められやすい支援先の一つです。ただし、判断は在籍校の校長が行うため、利用前に学校へ確認しておくと安心です。
一方で、設置状況は自治体ごとに差があり、自宅から遠い、定員が限られている、学習の進め方が決まっていて子どもに合わないといった理由で利用しにくいケースもあります。その場合は、次に紹介する民間施設も含めて検討します。
フリースクールなど民間施設の活用
フリースクールは、NPO法人や一般社団法人、株式会社などが運営する民間の学びの場・居場所です。法律上の学校ではありませんが、在籍校に籍を置いたまま通うことができます。フリースペース、オルタナティブスクール、通信制高校のサポート校が運営する中学生向けコースなど、形態はさまざまです。
フリースクールの主な種類
- 居場所型:安心して過ごせる場の提供を重視し、活動内容を子ども自身が選ぶ
- 学習支援型:学校の授業内容に沿った学習指導や高校受験への対策を行う
- 体験活動型:農業体験、ものづくり、野外活動など実体験を通じた学びを中心にする
- オンライン型:自宅からパソコンやタブレットで授業や交流に参加する
費用と補助制度
民間施設のため利用料がかかります。文部科学省が平成27年に実施した民間の団体・施設への調査では、月額会費の平均は約3万3千円でした。入会金や教材費、行事費が別途必要な施設もあるため、見学時に総額を確認することが大切です。
東京都など一部の自治体では、フリースクールの利用料を補助する制度を設けています。対象や金額は自治体ごとに異なるため、住んでいる自治体の教育委員会や公式サイトで確認してください。また、在籍校の校長が出席扱いを認めている場合など、条件を満たせば通所に通学定期券を利用できることがあります。
施設を選ぶときの確認ポイント
フリースクールは施設によって方針や雰囲気が大きく異なるため、見学や体験入学をして子ども自身が「通いたい」と思えるかを確かめることが重要です。見学時には次の点を確認します。
- 活動内容と1日のスケジュール
- スタッフの人数と、教員免許や心理職などの資格の有無
- 在籍校との連携の有無と、出席扱いの実績
- 通所頻度を子どもの状態に合わせて変えられるか
- 利用料の総額と解約時の条件
医療機関や児童相談所への相談
不登校の背景に心身の不調や家庭環境の問題がある場合は、学びの場とは別に、医療機関や福祉機関の支援が必要になります。
医療機関に相談したほうがよいケース
次のような状態が続く場合は、医療機関の受診を検討します。
- 朝起きられない、立ちくらみ、頭痛や腹痛が続く
- 眠れない、食欲がない、体重が大きく減った
- 強い不安や落ち込み、気力の低下が続いている
- 自分を傷つける行為や「消えたい」といった発言がある
朝の体調不良が続く場合は、自律神経の働きが関係する起立性調節障害の可能性があり、まずはかかりつけの小児科で相談できます。不安障害やうつ病、発達障害の特性が関わっていると考えられる場合は、児童精神科や心療内科が相談先になります。児童精神科は予約から初診まで時間がかかることがあるため、早めに問い合わせておくとよいでしょう。診断がつくことで、学校に配慮を求める際の根拠になる場合もあります。
児童相談所に相談できること
児童相談所は、18歳未満の子どもに関するあらゆる相談を受け付ける公的機関で、相談は無料です。不登校は児童相談所の相談種別の一つに位置づけられており、児童福祉司や児童心理司が子どもや保護者と面接し、必要に応じて心理検査や関係機関との調整を行います。
家庭内暴力がある、親子関係が悪化して家庭だけでは対応が難しい、虐待が疑われるといった場合は、特に児童相談所への相談が適しています。最寄りの児童相談所がわからないときは、児童相談所相談専用ダイヤル「0120-189-783」に電話すると、地域の児童相談所につながります。
子ども自身が利用できる電話相談
子どもが保護者や先生に話しにくい悩みを抱えている場合は、子ども本人が直接相談できる窓口もあります。文部科学省の24時間子供SOSダイヤル(0120-0-78310)は、夜間や休日も含めて24時間、無料で相談を受け付けており、原則として電話をかけた場所の教育委員会の相談機関につながります。保護者からの相談にも対応しているため、親子で窓口を共有しておくと、必要なときに利用しやすくなります。
通う形と自宅から参加する形を比べたい方は、あした研究室の通所型・オンライン型フリースクールの過ごし方をご覧ください。活動の違いを知る参考になりますが、対象学年や現在のサービス内容は各施設に確認します。出席扱いの要件は利用する形によって異なり、在籍校への事前相談が必要です。
まとめ
文部科学省の調査では、不登校を年間30日以上の欠席のうち、病気や経済的理由によるものを除いたものとしています。原因は子どもごとに異なります。
家庭では、登校を急がせずに子どもの気持ちを聞き、生活リズムを整える手助けをします。親自身も相談先を持つことが支援の土台になります。
学校では担任やスクールカウンセラーに相談でき、保健室登校や別室登校も選べます。学校外には教育支援センター、フリースクール、医療機関、児童相談所があります。
家庭だけで抱え込まず、子どもの状態に合わせて複数の支援を組み合わせることを検討しましょう。