- 1 不登校になる理由は家庭環境だけではない
- 1-1 文部科学省の調査からわかることと、わからないこと
- 1-2 家庭の変化があるときは、生活上の負担を確認する
- 1-3 学校生活や体調の困りごとも確認する
- 2 家庭の責任を探す前に、今の状態を確かめる
- 2-1 「愛情不足」「甘え」という言葉では状態を説明できない
- 2-2 子どもが理由を話さないときは、話し方を選べるようにする
- 3 現在の困りごとに合わせた対応と相談先
- 3-1 家庭で休める環境と、無理のない過ごし方を考える
- 3-1-1 登校の相談と日常の会話を分ける
- 3-1-2 生活リズムやスマートフォンの使い方は、体調も含めて相談する
- 3-1-3 困りごとに応じて、家庭と相談先の役割を分ける
- 3-1-4 保護者自身も相談できる相手を持つ
- 3-2 学校や専門機関と連携する
- 3-2-1 担任やスクールカウンセラーに相談する
- 3-2-2 別室登校や学校外の学びの場を検討する
- 3-2-3 体調の相談や外部の相談窓口につなぐ
- 4 まとめ
不登校の理由は、当然ながら家庭環境だけで説明できるものではありません。学校での人間関係や学習の負担、体調、生活の変化など、複数の背景を含めて考える必要があります。家庭の状況を確認するときも、家族の形や育て方を評価するのではなく、子どもが現在どのようなことに困り、どんな支えを必要としているかを整理します。
この記事では、主に小中学生の不登校について、国の調査を読む際の注意点、家庭や学校で確認したいこと、理由を話せないときの関わり方、相談先を紹介します。
不登校になる理由は家庭環境だけではない

学校での人間関係、勉強のつまずき、本人の体調、家庭内の変化など、不登校に関係する背景は一人ひとり異なります。学校に行きづらくなったきっかけと、今も登校が難しい理由が同じとは限りません。「いつから」「どんな場面で」「何が負担か」を、本人の話せる範囲と周囲が確認した事実から整理していきましょう。
文部科学省の調査からわかることと、わからないこと
文部科学省の令和6年度調査では、不登校児童生徒について学校が把握した事実として、学校生活への意欲、生活リズム、不安・抑うつ、学業、友人関係に関する相談や情報などが挙がっています。これは、学校がどのような相談や状況を把握しているかを示すものであり、個々の子どもの不登校の原因を特定した結果ではありません。
令和5年度からは、それまでの「主たる要因」から、把握した事実を複数回答する形式へ調査方法が変わっています。異なる年度の項目や割合をそのまま比較し、家庭の影響の大きさを判断することはできません。また、学校に伝わっていない困りごとがある可能性も考慮する必要があります。
調査は社会全体の状況を知る手がかりとして使い、本人の言葉、家庭で見られる様子、学校での出来事を別々に確認することが大切です。参考:文部科学省「令和6年度調査結果を踏まえた対応について」、調査方法の見直しに関する説明。
家庭の変化があるときは、生活上の負担を確認する
引っ越しや家族の病気などがあったときには、生活のどこが変わったかを具体的に確認します。次の項目は「不登校になりやすい家庭」の特徴ではなく、必要な支援を考えるための確認例として参考にしてください。
- 引っ越しや転校に伴い、通学方法や友人関係、生活時間が変わっていないか。
- 家族の病気や介護、きょうだいの世話などで、本人の睡眠や学習、休む時間が不足していないか。
- 住まいや家計の事情によって、食事、学用品、安心して過ごす場所などに困っていないか。
- 家庭内の争いや大きな音など、本人が怖いと感じる場面がないか。
- 成績や進路について、本人が困っていることや希望を伝えられる機会があるか。
離婚・再婚などの家族構成や、共働きといった働き方だけから、不登校の原因を判断することはできません。同じ変化でも、本人の受け止め方や必要な支援は異なります。困りごとがあれば、学校や自治体の相談窓口と、家事・養育の負担や利用できる支援を整理します。
暴力や育児放棄など、虐待が疑われる場合は、安全の確保を優先し、児童相談所虐待対応ダイヤル189や市区町村の窓口へ相談してください。家庭内だけで解決する必要はありません。
学校生活や体調の困りごとも確認する
家庭で見える様子だけでは、教室や通学中の負担がわからないこともあります。学校と相談するときは、次のような場面について、本人が話した内容と学校が確認できた情報を照らし合わせます。
- 友人や先生との関係:いじめ、仲間外れ、SNS上のやり取り、強い叱責など。
- 学習や活動の負担:授業でわからない内容、宿題の量、発表やテスト、部活動の練習など。
- 教室や予定の負担:騒がしさ、まぶしさ、集団での活動、急な予定変更など。
- 体調と生活:頭痛や腹痛、朝のだるさ、睡眠や食欲の変化など。
音や光がつらい、朝起きられないといった様子だけで、特定の病気や発達の特性を判断することはできません。体調の不調が続く場合は、症状の出る時間や頻度を記録し、小児科やかかりつけ医に相談してください。学校には、診断の有無にかかわらず、現在困っている場面と希望する配慮を伝えられます。
家庭の責任を探す前に、今の状態を確かめる

家庭での関わりを考えることと、保護者に不登校の責任を帰すことは別です。本人が話す困りごとをもとに、休む場所、会話の仕方、学校との連絡など、今から調整できることを考えてみましょう。保護者自身にも支援を受ける機会が必要かもしれません。
「愛情不足」「甘え」という言葉では状態を説明できない
不登校という事実だけで、親の愛情が足りなかった、子どもが甘えていると判断することはできません。家では笑ったり趣味を楽しんだりできても、学校で過ごせるかどうかは別に確かめる必要があります。家庭で元気な時間があることだけでは、授業や人間関係の負担、体調の問題の有無はわかりにくいことがあります。
たとえば、朝のだるさが続くなら体調の相談を、特定の授業をつらいと話すなら課題や参加方法の相談をします。「休んでいる理由を説明できるか」だけで支援を始めるのではなく、見えている困りごとにも対応することが大切です。
家庭での対応を振り返りたいときは、「昨日はどんな話をしたか」「そのあと本人はどうしていたか」と場面を区切ると、相談相手に状況を伝えやすくなります。
子どもが理由を話さないときは、話し方を選べるようにする
本人にも理由を整理できない、今は話すこと自体が負担、誰にどこまで伝わるのかが気になるなど、話さない背景にはさまざまな可能性があります。沈黙だけから気持ちを読み取ることはできないため、説明を急がせず、伝えやすい方法を一緒に探します。
- 今の状態を尋ねる:「今日は体の調子はどう?」
- 返事の時期を選べるようにする:「今は話さなくても大丈夫。話したくなったら聞くよ」
- 方法を選べるようにする:「話すのと、メモで伝えるのと、どちらがよさそう?」
- 共有する範囲を確かめる:「先生には、どこまで伝えてよいかな」
これらは会話例であり、同じ言葉がすべての子どもに合うわけではありません。質問に答えにくそうなら、その日はやり取りを短くすること1つです。話し始めたら、まず本人の説明を聞き、わからない部分は推測で埋めずに確認しましょう。
学校への共有は、可能な範囲で本人に説明してから進めます。ただし、暴力や自傷など安全に関わる心配がある場合は、本人から詳しい説明が出るのを待たず、学校や医療機関などへ相談する必要があります。
現在の困りごとに合わせた対応と相談先

支援は原因が一つに定まってから始めるものではありません。いじめなどの危険があれば安全を確保し、体調が悪ければ医療につなぎます。休養を続けながら、学校との連絡や学び方の相談を並行して進めることもできます。
家庭で休める環境と、無理のない過ごし方を考える
本人が落ち着いて過ごせる場所や時間を確認し、登校の可否だけで一日を評価しないようにします。文部科学省も、支援の目標を登校という結果だけに置かず、本人の希望や状況に応じた支援を行う方針を示しています。参考:不登校児童生徒への支援の在り方について。
登校の相談と日常の会話を分ける
登校や学校との連絡について話す必要があるときは、「夕方に少し相談してもよい?」など、時間や話題を予告する方法があります。食事や趣味の話をする時間も持ち、毎回の会話が学校の確認だけにならないよう工夫します。
本人が登校を希望するときには、教室で一日過ごす方法だけでなく、短時間の参加や別室の利用なども学校と相談できます。難しい日は、理由の説明を求め続けるより、体調と安全を確かめ、連絡方法を整理しましょう。
生活リズムやスマートフォンの使い方は、体調も含めて相談する
就寝や起床の時間が変わったときは、何時に眠れているか、日中につらさがあるかを確認していきましょう。睡眠の困りごとが続く場合は、生活習慣だけの問題と考えず、医療機関にも相談してみてください。起床時刻を一律に早めるなどの方法を、体調を確認せずに求める必要はありません。
ゲームや動画については、利用する目的、睡眠や食事への影響、本人が困っていることを聞き、実行できる時間帯や区切りを話し合ってみてください。取り上げることや自由に任せることのどちらか一つにせず、状況に応じて見直す必要があることを留めておきましょう。
困りごとに応じて、家庭と相談先の役割を分ける
| 現在の困りごと | 家庭で整理すること | 相談先の例 |
|---|---|---|
| いじめや対人関係の不安 | 安全を確保し、本人の言葉と出来事の日時を記録する | 担任、管理職、教育委員会 |
| 強い不安や気分の落ち込み | 休める環境を確保し、生活上の変化を伝える | スクールカウンセラー、医療機関 |
| 頭痛・腹痛、朝の不調 | 症状の時間帯、頻度、睡眠の様子を記録する | 小児科、かかりつけ医 |
| 授業や課題の負担 | 困る教科や課題を確認し、量や進め方を相談する | 担任、教育支援センター |
| 家事・養育、生活費などの負担 | 本人や家族が担っていること、必要な支援を整理する | スクールソーシャルワーカー、自治体の窓口 |
複数の相談先を利用しても構いません。学校への相談は、欠席が一定の日数に達するまで待つ必要はなく、行きづらさが見られる段階から始められます。
保護者自身も相談できる相手を持つ
仕事や家事と学校への連絡を両立することが難しいときは、家族などと役割を分担し、学校には連絡しやすい時間や方法を伝えましょう。保護者だけで学校の相談担当者や自治体の窓口へ相談する方法もあります。
同じ経験を持つ保護者と話したい場合は、地域の親の会を探す選択肢もあります。参加や発言を無理に求められないか、費用や活動方針はどうかを確認し、自分に合う場を選んでください。保護者が休む時間や支えを確保することも、支援の一部です。
- 「理由を話さないとき、どう声をかけよう」
- 「休養中の過ごし方をどう相談しよう」
- 「家庭で試した関わり方を誰かに相談したい」
こうした場面での声かけや、子どもの話を聞く方法をさらに学びたいときは、日々の実践を相談できる場を持つことも選択肢になります。
ほめビリティは、日々の声かけや関わり方を実践しながら学ぶ保護者向けのオンラインプログラムです。ほめビリティ・ラウンジでは、講座や交流を通じて、学びと実践を続ける場を提供しています。
家庭での関わり方を考える際の学びの場として、内容や参加方法をご確認ください。不登校の改善や登校再開を保証するサービスではありません。
学校や専門機関と連携する
学校や相談機関には、本人の言葉、家庭で確認できた様子、まだわからないことを分けて伝えます。「なぜ行けないのか」をすべて説明できなくても、相談はできます。
担任やスクールカウンセラーに相談する
面談では、学校での友人関係や授業中の様子を確認するとともに、課題の量、休める場所、登校する時間帯、連絡の窓口などを具体的に相談します。担任に相談しにくい場合は、学年主任、養護教諭、管理職など、話しやすい相手につないでもらって構いません。
スクールカウンセラーは心理面の相談、スクールソーシャルワーカーは生活環境の調整や福祉機関との連携などを担います。利用日や申込方法は地域・学校によって異なるため、保護者だけで相談できる日程も含めて確認してみてください。
いじめや教職員の不適切な言動が心配な場合は、本人が伝えた言葉や日時を残し、安全確保と対応を学校に求めるのも1つです。学校での対応が進まないときは、教育委員会にも相談してみてください。対応を依頼した内容と、次に確認する日を記録しておくと、経過を共有しやすくなります。
別室登校や学校外の学びの場を検討する
教室で過ごすことが難しい場合も、校内の別室、短時間の登校、オンラインでの学習支援などを利用できることがあります。学校ごとに実施状況が異なるため、本人の希望と負担を伝えて相談しましょう。学校外には、次のような選択肢もあります。
- 教育支援センター(適応指導教室):教育委員会などが設置する公的な支援の場です。相談や学習支援、集団での活動などを行います。対象学年、通所方法、活動費などは地域の窓口で確認します。
- フリースクール:民間団体などが運営する学びや居場所の選択肢です。対象年齢、活動、費用、在籍校との連携方法は施設によって異なります。
- 学びの多様化学校:不登校の児童生徒に配慮した特別な教育課程を編成する学校です。設置地域や対象学年、入学・転入の条件を確認します。
教育支援センターの役割や学習支援の例を詳しく知りたい方は、あした研究室の教育支援センターの支援内容をまとめた記事も参考にしてください。利用できる支援は地域や施設で異なるため、具体的な条件は窓口へ確認しましょう。
小中学生については、学校外の施設での相談・指導や、自宅でICT等を活用した学習が、一定の要件のもとで指導要録上の出席扱いになる場合があります。施設を利用したり教材を購入したりするだけで、自動的に認められる制度ではありません。学校との連携や学習状況の把握などが必要で、校長が判断します。
小中学生の自宅学習について学校に相談する際は、あした研究室の出席扱いにできる制度(ネット出席)の案内で、学校との連携や学習計画などの確認事項を整理できます。制度の適用を保証するものではなく、現在の要件と手続きは在籍校に確認してください。
学校外の学びを選ぶときには、本人が続けられる内容や量と、学校への報告方法を先に相談します。出席扱いと成績評価は同じ判断ではなく、高校では制度や履修・単位の扱いも異なるため、それぞれ在籍校へ確認してください。
体調の相談や外部の相談窓口につなぐ
頭痛や腹痛、朝のだるさ、眠れない状態などが続く場合は、小児科やかかりつけ医に相談します。気分の落ち込みや強い不安についても伝え、必要に応じて専門の医療機関や相談先を紹介してもらいましょう。家庭で病名を判断する必要はありません。参考:厚生労働省「困ったときの相談先」。
相談先がわからないときには、学校や自治体の教育相談窓口のほか、24時間子供SOSダイヤル(0120-0-78310)も利用できます。子ども本人だけでなく保護者も相談できます。
自分を傷つける行動など、今すぐ安全を守る必要があるときは、一人にせず、医療機関や緊急時の119などに連絡してください。一般の教育相談だけで対応しようとせず、安全のための支援につなぎます。
まとめ
不登校と家庭環境の関係を考えるときは、家族構成や育て方だけを原因として考えるのではなく、学校生活、学習、体調、生活上の負担を含めて状況を整理します。統計や家庭での一場面だけで、個々の子どもの理由は判断できません。
本人が話せる範囲で聞き、休める環境を整えながら、学校や相談機関と支援を分担しましょう。理由がまだわからなくても、現在の困りごとを一つ伝えることから始められます。本記事が参考になりましたら幸いです。