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不登校の子どもが食べないとき、どうする?栄養士めいめいさんに聞く「何を食べるか」より大切なこと

不登校になった子どもが食事をとらなくなったり、昼夜逆転によって食事の時間が不規則になったりすると、「栄養が足りているのだろうか」「好きなものだけ食べさせていて大丈夫なのだろうか」と不安になる保護者も少なくありません。

今回は、栄養士として働きながら、不登校を経験した息子さんを育ててきた「めいめい」さんにお話を伺いました。

栄養士であるめいめいさんが息子さんとの食事で大切にしてきたのは、栄養バランスを整えることよりも、「本人が食べたいものを用意すること」や「一緒に食べる時間を楽しむこと」。

不登校の子どもの食欲低下や偏食を、家庭でどのように受け止めればよいのでしょうか。食卓の雰囲気づくりから医療機関へ相談する目安まで、詳しく伺いました。

食を愉しむプロジェクト代表  めいめい

めいめい

栄養士・調理師

食を愉しむプロジェクト代表
めいめい

乳幼児から高齢者、障害のある方まで、幅広い方々の食事を担当。
年齢や体の状態に合わせた食事作りと、食事相談に携わってきました。

めいめいさんのnoteはこちら

「給食のおばさんになる」と決めて、金融関係の仕事から栄養士へ

――まず、栄養士としてどのようなお仕事をされているのか教えてください。もともとは金融関係のお仕事をされていたそうですね。

めいめい:金融関係の仕事を10年くらいやって、そのあとに栄養士になりました。

料理を作ることが好きで作っていたら「それを仕事にしたらいいよ」と言ってくれた人がいたんです。その言葉が何となく心に残っていて、ある朝起きたときに「給食のおばさんになろう」と思ったんですよね。

当時は今のようにインターネットで調べる時代ではなかったので、本を借りに行きました。職業として給食の仕事を調べたら「栄養士」と書いてあって、「じゃあ、栄養士になろう」と。

――思いついたら、すぐに行動されたんですね。

めいめい:そうですね。ひらめくと、すぐ行動します。

――栄養士になってからは、どのような現場で働いてきたのでしょうか。

めいめい:最初は高齢者施設で、その後は身体障がいや知的障がいのある方の施設、乳児院など、いろいろな現場に行きました。エリアマネージャーをしていた時期もあります。

現在は、子どもたちの食と成長を支える現場で働いています。献立作成や栄養管理、発注、調理、調理指導を担当し、行政との連携業務に加え、食育活動や保護者支援にも幅広く携わっています。

子どもたちの食に関わる現場では、災害時にも応用できるように、袋の中でパン生地をこねる活動を、小さな子どもたちと一緒に行っています。その取り組みが区で取り上げられ、食や子どもの育ちに関わる専門職の方々に、活動の様子を公開する機会も設けるようになりました。

――高齢者から子どもまで、幅広い年代の「食」に関わってこられたんですね。

めいめい:高齢者施設では介護食も作っていました。ただ食事をミキサーにかけて出すのではなく、食材ごとに分けてミキサーにかけ、フランス料理のように盛り付けていたんです。

障がいのある子どもの支援では、食べやすさが一人ひとり違います。1対1、あるいは多くても1対2くらいで、丁寧に食事を支援していました。

そうした経験から、その人に合った食べ方や、食事を楽しめる形を考えるようになったのだと思います。

栄養士だからこそ、「正しい食事」にこだわらなかった

――さまざまな現場で得た経験が、息子さんとの食事にも役立ったのでしょうか。

めいめい:役立ったというより、むしろ逆かもしれません。

私は栄養士なので、仕事では、いわゆる「正しい食事」を規則的な時間に提供しています。でも、息子が不登校になったときの食事は、そうではありませんでした。

食べる時間も不規則だったし、ほとんど食べられない時期もありました。でも、それはそれでいいかなと思っていたんです。

基本的には、おいしいものを作ればいいんじゃない、という感じでした。本人が好きなものを作って、一緒に食べる。一緒に過ごす時間が作れればいいと思っていました。

――好きなものばかり食べていたり、市販のものやカップ麺を食べたがったりすると、栄養面が心配になる保護者も多いと思います。

めいめい:私は、全然いいと思います。

偏った食事をしたからといって、急に健康を害するわけではありません。スナック菓子やカップ麺でも、その子が今食べたいと思うものを食べたほうが、精神的にも楽なことがあります。

知的障がいのある方の施設で働いていたときには、一つのものしか食べない方もいました。それでも、長い間生活している方はいます。

不登校の親御さんから食事について相談されることが増えるなかで、「正しい食事にこだわらないほうがいいこともある」と、自分の中に落とし込まれていったように思います。

――息子さんが不登校になった頃は、どのような変化がありましたか。

めいめい:もともと食が細かったのですが、学校に行きづらくなった最初の頃は、本当に食欲がありませんでした。

箸を少し落としただけでも激しく怒るくらい、気持ちが落ち着いていなかったんです。食べることに至るまでのところで、つまずいていたんですよね。

食欲とメンタル面は直結しています。元気がないから食欲もない、という状態でした。

――そのようなとき、食べられるものはありましたか。

めいめい:もともと桃が好きだったので、行き渋りが始まった頃は桃を用意していました。あとは揚げ物が好きだったので、朝からアジフライを作ることもありました。

元気になってくると、少しずつ1食分を食べられるようになりました。成長期に入ったことも関係していたと思います。

不登校になると運動量が大きく減ることがあります。活動量が少なければ、以前ほど食べないこともありますよね。食事量が減ったということだけで、心配しすぎなくてもよい場合はあると思います。

大切なのは「何を食べるか」より「どう食べるか」

――息子さんとの食事で、工夫していたことはありますか。

めいめい:食事は楽しいものだと思ってほしかったし、私自身も楽しく食べたかったので、ホットプレートやカセットコンロはよく使っていました。

例えば、「今日は天ぷら屋さんをやろう」と言って、目の前で天ぷらを揚げたり、近所の子どもたちを呼んで、ずっとお好み焼きを焼いたり。そうすると、誰かが自然に食べに来るんです。

家にあるパンやハム、チーズ、マヨネーズ、残り物などをトートバッグに入れて、ピクニックに行くこともありました。家で残り物を食べるのとは、まったく違う味に感じるんですよね。

――以前伺った、そのピクニックのお話がとても印象に残っています。

めいめい:冬にはポットにスープやお湯を入れて持っていきました。多摩川が近かったので、石を積んで、100円ショップで買った網にウインナーや肉を載せて焼いたこともあります。

私たち親子だけではなく、近所の子や同じように不登校だった子、カウンセリングで知り合った方にも声をかけていました。雨の日には高速道路の下でやることもありましたね。

――息子さんを誘うと、すぐに一緒に出かけてくれたのでしょうか。

めいめい:「多摩川で、こういうことをやろう」と言うと、「うん」という感じでした。小さい頃から当たり前のようにやっていたので、行けば楽しいと分かっていたのかもしれません。

――食事を通して、楽しい経験を重ねてきたんですね。

めいめい:栄養のことは、ほとんど言ったことがありません。

「これ、すごくおいしいから食べてみて」と言うことはありました。でも、「栄養があるから食べなきゃ」「ちゃんと食べなきゃ」とは言わなかったですね。

ホテルのビュッフェに行ったとき、低学年だった息子が取ってきたのが、アメリカンドッグとフライドポテトだけだったことがありました。

「せっかく来たのにもったいない」とは思いましたよ。でも、そこで怒ったら、楽しい雰囲気を壊してしまいます。「こういうものもあるよ」と勧めて、「いらない」と言われたら、「そう」と言って私が食べました。

食べる内容よりも、一緒に楽しく過ごした経験のほうが大切だと思っています。

「食べてほしい」という圧を減らし、子どもが選べる食卓に

――不登校の子どもの昼夜逆転や、食事の時間帯を心配する声もあります。家庭では、どのようなことができるでしょうか。

めいめい:無理に食べさせたり、栄養を摂らせようとしたりするより、その子が部屋から出てきやすいように、食卓を整えておけばいいと思います。

カップ麺を食べたいなら用意しておく。「新しいカップ麺が発売されたらしいよ。一緒に選びに行こう」と誘ってもいいですよね。

栄養満点の「正しい食事」ではなく、起きてきたときに、その子が好むものを食べられるようにしておく。そのほうが効果的なこともあると思います。

――息子さんの食事の時間は、決まっていましたか。

めいめい:時間を決めるというより、私が食事を作り終えたら呼んでいました。

ゲームの時間を制限しない代わりに、「食事は呼んだら来てね」ということだけが約束でした。何時間ゲームをしてもいいし、何をしていてもいい。でも、食事に呼ぶと、友達とゲームをしている途中でも必ず来ました。

――ご家庭のルールは、それくらいだったんですね。

めいめい:そうです。家の中だから、基本的には自由でいいと思っていました。

今も「ご飯だよ」と呼ぶと、降りてきます。本人が気に入るものを用意しておけばいいんだと思います。

――偏食がある子どもに、苦手な食材を細かく刻んで入れる方法もありますが、その点についてはどう考えていますか。

めいめい:気づかれないように入れることは、あまり勧めません。気づかれたときに、食事や親に対する信用を失うことがあるからです。

親は栄養を摂らせるためにやっているかもしれません。でも、実際に口に入れるのは本人です。その子にとっては、食べたくないものが入っていること自体が、とても怖いこともあります。

刻んで入れたいのであれば、「少し刻んで入れてもいい?」と聞いたほうがいいと思います。

食べてほしいものは大皿で出して、自分で選べるようにしてもよいですよね。わが家も、今でもあまり個別には盛りません。本人が食べたいものを、食べたい量だけ取る形です。

――「食欲がない」「何も食べたくない」と言われたときは、どうすればよいでしょうか。

めいめい:食べなくても、食事を出すことは大切です。もともと好きだったものを出したり、アニメや映画に出てきた料理を作ってみたりする方法もあります。

ただ、「食欲がない」と言う子は、本当に食欲がないのだと思います。食べなかったとしても、「食べてほしい」という圧をかけず、いつも通りにしてあげればいいのではないでしょうか。

それから、食卓で学校や勉強の話をしないことも大切です。食べるものの種類を工夫するより、食卓を居心地のよい場所にするほうが先だと思います。

朝起きてきたときも、「今日は学校に行くの?」という気持ちを込めて接するのではなく、普通に「あ、おはよう。お茶飲む?」でいいんです。

食べないことだけでなく、「実際に困っていること」があるかを見る

――「肉を食べない」「野菜を一切食べない」といった相談を受けることもありますか。

めいめい:あります。でも、「食べないことで、実際に困っていることはありますか」と聞くと、特に問題が起きていないことも多いんです。

「食べないことによって、今起きている問題は何かな」と考えてみて、特にないのであれば、食べないことだけを深刻に捉えなくてもよいと思います。

以前、「子どもが甘いものをすごく欲しがる」と相談されたことがあります。話を聞いてみると、その子は自分で飴を作り始めたというんです。

私は「すごいですね」「べっこう飴ですか」「飴屋さんになれそうですね」と、そちらに興味を持ちました。

お母さんは、それまで「甘いものを食べすぎる」「虫歯になったらどうしよう」と危機感でいっぱいだったそうです。でも、違う見方があると知って、笑顔になりました。

――問題として見るだけではなく、子どもがしている工夫や、そこから生まれた興味に目を向けたんですね。

めいめい:私は本当に「すごいな」と思ったんです。

食べることで気持ちを発散することは、大人にもあります。不登校の子どもは、楽しめることが少なくなっている場合もあります。食べることまで禁止する必要はないと思います。

親がどうにかしようとしすぎず、食べ物についても、ある程度は子どもに任せてよいのではないでしょうか。

――一方で、医療機関への相談を考えたほうがよい状態もありますか。

めいめい:目に見えてどんどん痩せている状態や、何か月も継続して体重が減り続けている場合は、相談したほうがいいと思います。

過食だけでなく、嘔吐が見られる場合にも注意が必要です。摂食障がいが疑われる状態であれば、栄養士だけでなく、医療機関への相談を考えてください。

本人が受診したがらない場合には、まず保護者が相談に行く方法もあると思います。

※体重の急激な減少や嘔吐、著しい体調不良などが見られる場合は、自己判断で様子を見続けず、早めに医療機関へ相談してください。

完璧な食事より、一緒に過ごす時間を楽しんでほしい

――めいめいさんのお話からは、食事を通して親子の関係をつくることの大切さが伝わってきます。

めいめい:何でもいいから、お惣菜を買ってきてもいいので、一緒に食べて、一緒に楽しむ。そういう時間の共有は大事だと思います。

食事は、一緒に過ごすきっかけとして一番簡単ですよね。食べていればいいんですから。

料理は話題にもなります。「これ好きだわ」とか、「それ、どう?」「おいしくない」とか。それなら「そうだね。ちょっと今ひとつだね」と話せます。

無理をしないことが大切だと思います。

――不登校の子どもを心配する保護者に、伝えたいことはありますか。

めいめい:不登校になると、「このまま引きこもるのではないか」「働けなくなるのではないか」「将来の道が閉ざされるのではないか」と心配すると思います。

でも、それは親の価値観でもあります。子どもの心の中は、親にも全部は見えません。本人が言葉にしたとしても、それが気持ちのすべてとは限りません。

必要な情報だけ渡しておいて、あとは否定しないことです。

学校へ行くか行かないかに、一喜一憂しすぎない。学校に行くかどうかは、その子が選び、その子が歩いていく人生の一部です。

――以前伺った「子どもを見つめすぎない」というお話にもつながりますね。

めいめい:そうですね。

子どもの学校や進路、将来のことばかり気にしていたら、親も楽しくないじゃないですか。親が自分の好きなことを楽しんでいる姿のほうが、子どもによい影響を与えることもあると思います。

私も、息子が話すことに対して、最初は意識して「あ、いいじゃん」と言うようにしていました。子どもの世界は、親にはよく分からないこともありますよね。そんなときは、「それってどういう意味?」と聞いて、「そうなんだ。いいね」と返していました。

今では「あ、いいじゃん」が口癖のようになっています。

子どものために完璧な食事を作らなくても大丈夫です。本人が食べたいものを用意して、食べる量は本人に任せる。学校や勉強の話はいったん横に置いて、一緒に「おいしいね」と食べる。

そうした時間が、子どもにとって「自分のことを分かってくれている」「ここにいても大丈夫」という安心につながるのではないでしょうか。

▼めいめいさんが主宰する親の会
あじさいサロン(川崎市)めいめいサロン(オンライン)インタビューはこちら

執筆者
あした研究室編集部 (あしたけんきゅうしつへんしゅうぶ)
あした研究室編集部は、(株)すららネットの子どもの発達支援室に所属するスタッフと、学び・発達支援に関心を持つ編集チームによって運営されています。教育・発達支援・子育て・学習法などのテーマについて、現場視点と実証的な知見を大切にしながら、企画・取材・執筆・編集・校正・発信まで一貫して取り組んでいます。私たちの使命は、保護者や教育関係者、子ども自身が次の一歩を見つけられるような 信頼できる知見とアイデアを届けること。読者の皆さまには、根拠ある情報と温かい視点を通じて、学びと成長を支えるパートナーでありたいと考えています。