就労継続支援とは、障がい者総合支援法に基づく福祉サービスでA型とB型の2種類があります。就労継続支援A型では、障がいが原因で一般的な企業での就労が困難な方が、一定の支援がある職場で雇用契約を結んだ上で働くことが可能です。
就労継続支援B型は、A型と同様の方を対象にしており、就労に必要な知識やスキルなどを向上させるために必要な訓練を提供します。一般就労だけでなく、就労継続支援A型への移行も目標の一つです。
本記事では、就労継続支援B型を新規で開設する際に満たすべき基準や必要な費用について解説します。「B型とA型の違いは?」「新しく開設するために必要となる基準は何?」など、気になるポイントをみていきましょう。
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もくじ
就労継続支援B型の概要
「そもそも就労継続支援B型ってどんなサービス?」と疑問を抱えている方も少なくありません。少しは内容を知っていても、詳しくは理解できていない方も多くいるのではないでしょうか。
まずは就労継続支援B型の基本的な情報について紹介します。新規開設を目指すためにも事業について正しく理解しておきましょう。
【就労継続支援B型についての基本的情報】
- 就労継続支援B型とは
- 就労継続支援B型と就労継続支援A型の違い
- 就労継続支援B型の利用者
- 就労継続支援B型の報酬算定の構造
就労継続支援B型とは
就労継続支援B型は指定障がい福祉サービスの1つです。障がいがあることによって一般的な企業で雇用形態に基づいた就労が困難な方に対し、就労に必要な知識やスキルなどを向上させるために必要な訓練を提供します。
障がいがある方は、20歳から障がい年金の受け取りが可能になりますが、それだけで生活をするのは難しいのが現状です。そのため、無理のないペースで働きながら能力アップを目指せる就労継続支援B型は、障がいがある方が生きていくために欠かせないサービスと言えるでしょう。
就労継続支援B型と就労継続支援A型の違い
障がい者就労継続支援事業にはA型とB型があります。雇用契約を結んで最低賃金以上の給与を支払うA型に対し、B型は雇用契約に基づいた就労ができない方に工賃という形で賃金を払うことで就業してもらう形態です。
種類 | 賃金の種類 | 雇用形態 | 目的 |
就労継続支援A型 | 給与 | 雇用契約に基づく就労 | 一般就労を目指す |
就労継続支援B型 | 工賃 | 雇用契約を結ばずに就労 | A型の就労、もしくは一般就労を目指す |
この賃金や雇用形態の違いがA型とB型の大きな異なる点です。
就労継続支援B型の利用者
就労継続支援B型の一般的な利用対象者は、通常の企業への就労ができない方、もしくは雇用契約に基づいた就労が困難となる方になります。具体的な内容を見ていきましょう。
【就労継続支援B型の利用対象者】
- 就労経験はあるが年齢や体力面などによって一般企業への就労が困難な方
- 50歳に達している、もしくは障がい基礎年金1級の受給者
- 上記どちらも該当しないものの、支援事業者がアセスメントを行い就労に対する課題が把握できて就労継続支援B型が妥当と判断された方
障がい手帳を持っていない方であっても、医師からの診断によって利用することが可能になるケースもあります。
就労継続支援B型の報酬算定の構造
就労継続支援B型は令和3年に報酬改定され、下記で紹介する2つの報酬体系から選ぶ仕組みとなっています。
1つ目は「平均工賃額に応じた報酬体系」です。以下のように月額工賃の平均額と利用定員によって単位数が変化します。
利用定員\平均工賃 | 10,000円未満 | 10,000円から15,000円未満 | 15,000円から20,000円未満 | 20,000円から25,000円未満 | 25,000円から30,000円未満 | 30,000円から35,000円未満 | 35,000円から45,000円未満 | 45,000円以上 |
20人以下 | 566単位 | 590単位 | 611単位 | 631単位 | 643単位 | 657単位 | 672単位 | 702単位 |
21人以上40人以下 | 504単位 | 525単位 | 541単位 | 551単位 | 572単位 | 584単位 | 598単位 | 625単位 |
41人以上60人以下 | 473単位 | 493単位 | 508単位 | 518単位 | 537単位 | 549単位 | 562単位 | 586単位 |
61人以上80人以下 | 464単位 | 484単位 | 498単位 | 508単位 | 527単位 | 539単位 | 552単位 | 576単位 |
81人以上 | 448単位 | 468単位 | 482単位 | 491単位 | 510単位 | 521単位 | 533単位 | 557単位 |
上記の表は、利用者:職員=7.5:1の場合の1日あたりの報酬です。利用者:職員=10:1の場合は以下のようになります。
利用定員\平均工賃 | 10,000円未満 | 10,000円から15,000円未満 | 15,000円から20,000円未満 | 20,000円から25,000円未満 | 25,000円から30,000円未満 | 30,000円から35,000円未満 | 35,000円から45,000円未満 | 45,000円以上 |
20人以下 | 516単位 | 538単位 | 554単位 | 565単位 | 586単位 | 599単位 | 613単位 | 640単位 |
21人以上40人以下 | 461単位 | 480単位 | 494単位 | 504単位 | 523単位 | 534単位 | 547単位 | 571単位 |
41人以上60人以下 | 427単位 | 445単位 | 458単位 | 467単位 | 485単位 | 495単位 | 507単位 | 529単位 |
61人以上80人以下 | 418単位 | 436単位 | 449単位 | 458単位 | 475単位 | 485単位 | 497単位 | 519単位 |
81人以上 | 404単位 | 421単位 | 434単位 | 442単位 | 459単位 | 468単位 | 480単位 | 501単位 |
もう1つが「利用者の就労や生産活動などへの参加を一律に評価する報酬体系」です。平均工賃額に応じた報酬形態のように利用定員や職員の割合によって変化します。
利用定員\職員の割合 | 利用者:職員=7.5:1 | 利用者:職員=10:1 |
20人以下 | 556単位 | 506単位 |
21人以上40人以下 | 494単位 | 451単位 |
41人以上60人以下 | 463単位 | 417単位 |
61人以上80人以下 | 454単位 | 408単位 |
81人以上 | 438単位 | 394単位 |
就労継続支援B型を新規開設するための4つの基準
就労継続支援B型を新規で開設するためには、満たすべき4つの基準があります。これらをしっかりと守らなければ、事業所を新しく開設することはできません。
まずはここでお伝えする4つの基準について、それぞれの内容を詳しく理解しておきましょう。
【就労継続支援B型を新規開設するために必要な4つの基準】
- 法人基準
- 人員基準
- 設備基準
- 運営基準
①法人基準
就労継続支援B型を新しく開設する場合、まずはじめに会社を作らなければいけません。障がい福祉サービスは個人では許可がもらえないため、必ず法人格を取得する必要があります。
法人格はさまざまな種類がありますが、就労継続支援B型を開設するにあたってはどの法人格でも問題ありません。
【法人格の主な種類】
- 株式会社
- 合同会社
- 一般社団法人
- NPO法人
- 医療法人
- 特定非営利法活動
- 社会福祉法人
株式会社の場合、設立するための費用が高くなってしまうデメリットがありますが、ほかの法人格と比較しても社会的信用があります。合同会社はスピーディに設立することが可能で初期費用も安いのが大きなメリットですが、株式会社と比べると社会的信用はさほど高くはありません。
法人格にはそれぞれこのような特徴やメリット・デメリットがあるため、必要な費用や期間などをよく比較し、最も適した種類を選べるようにしておきましょう。
②人員基準
就労継続支援B型は、障がいがある方のサポートをするための事業所となるため、必要な知識や経験を持つスタッフを一定数正しく配置しなければいけません。就労継続支援B型の人員基準は下記のとおりです。
管理者 | 常勤で1名以上が必要。 |
サービス管理責任者 | 常勤で1名以上が必要。 |
職業指導員 | 利用者数÷7.5または利用者数÷10以上の人数が必要。 |
生活支援員 | 利用者数÷7.5または利用者数÷10以上の人数が必要。 |
上記以外にも、事業所によっては生産性を高めるための「目標工賃達成指導員」や昼食を提供する「調理員」を配置しているケースもあります。
③設備基準
就労継続支援B型の新規開設では、人員のみではなく建物の設備基準も満たさなければいけません。正しく設備基準について把握する前に物件を決めてしまうと、思わぬトラブルが発生してしまうケースも多くあります。
どのような設備が必要なのかを事前にしっかりと把握し、物件選びをスムーズに行えるよう準備しておきましょう。具体的には、下記の項目を問題なく満たす必要があります。
訓練・作業室 |
|
相談室 |
|
多目的室 | 常に利用する部屋ではないため、相談室との併用が可能 |
トイレ・洗面所 |
|
事務室 | 業務遂行のためのスペースを十分に確保し、必要な備品を備える |
④運営基準
就労継続支援B型を運営するにあたって、上記で紹介した内容の他にもさまざまな基準があります。
【就労継続支援B型の満たすべき主な運営基準】
- 事業目的・運営方針
- 事業所に配属となる職員の職種・人数・職務内容
- 営業日・営業時間
- 事業所の利用定員
- サービスを利用するにあたっての注意事項
- 災害が起きた際の対策・緊急時における対策案
- 事業実施の地域
- 虐待防止のための措置に関する事項
- そのほか運営に関する重要事項
上記の項目について事前に自治体に確認して、運営規程として定めておく必要があります。必ず決められた規定を守り、問題なく運営をスタートさせることができるよう徹底した準備を行いましょう。
就労継続支援B型の開設費用
新しく就労継続支援B型をスタートさせる上でとくに気になるのが開設のための費用です。
一般的に就労継続支援B型の開設では、イニシャルコストが約300万円〜1,000万円となり、ランニングコストは月に約100万円〜200万円が必要と言われています。
ここからは、それぞれの詳しい内訳についてみていきましょう。
【就労継続支援B型のに必要な開設費用】
- イニシャルコスト(初期費用)
- ランニングコスト(運転資金)
イニシャルコスト(初期費用)
イニシャルコストとして必ず必要となる費用は下記のとおりです。
【就労継続支援B型のイニシャルコストの内訳】
- 法人格取得のための費用:約10万円〜25万円
- 物件の賃貸費用:約100万円〜300万円
- 必要な事務用品の準備:約30万円〜60万円
- 消防設備の設置:約15万円〜100万円
- 利用者の就労に必要な備品:約40万円〜60万円
- 送迎用車:1台あたり約40万円〜100万円
事業所を開設するエリアや施設の規模によって金額は大きく異なりますが、平均金額は上記のようになります。
もしも消防署から自動火災報知機の設置を求められた場合、それだけで費用は約100万円以上必要となります。しかし、消火器のみの設置で可能な場合は約15万円程度です。
これだけでも大きな差となりますが、さらに送迎サービスを導入するとなると車のスペックによっても金額は大きく変動します。
まずは何を優先的に準備すべきかを明確にし、無駄なコストをかけないように工夫しながらすすめていきましょう。
ランニングコスト(運転資金)
ランニングコストは利用者の有無にかかわらず、新しく開設すれば必ず毎月発生する費用です。継続して運営していくためにはランニングコストについてもしっかりと把握しておかなければいけません。
【就労継続支援B型のランニングコストの内訳】
- 家賃:約10万〜
- 人件費:約100万円〜
- 光熱費:約2万円〜
- 雑費:約30万円〜
主なランニングコストは上記のとおりですが、費用については施設の場所・規模などによって大きく変化します。金額は参考程度にしておきましょう。
ランニングコストの中でとくに大きな割合を占めているのが人件費です。本記事でもお伝えしているように、就労継続支援B型は基準通りに人員配置の規定を守る必要があります。そのため、本来いるべきはずのスタッフを削って人件費を安くすることはできません。
就労継続支援B型を開設するまでの流れ
ここからは、新しく就労継続支援B型を開設する際の基本的な流れについて紹介します。自治体により異なる点があるため、必ず最初に管轄エリアの自治体に確認してから行うようにしてください。
【就労継続支援B型を開設するための流れ】
- 管轄の自治体に相談に行く
- 指定基準を満たす
- 必要な書類を準備する
- 申請書類の提出
- 実地確認
- 指定書の交付
①管轄の自治体に相談に行く
まずは管轄の自治体に相談に行きます。物件を決めたりスタッフを採用したからといっても、物件に対して許可が下りなかったり人員の要件を満たしていない場合は却下されてしまいます。そうならないように、まずはじめに自治体に相談に行きましょう。
この際に、事前に電話して相談に行きたい旨を伝えておくとスムーズです。事前の連絡なしでも対応してくれることもありますが、担当者が不在であったり、そもそも窓口業務に対応していないケースも少なくないため、前もって連絡を入れておくようにしてください。
②指定基準を満たす
前述した「法人基準」「人員基準」「設備基準」「運営基準」のすべてにおける基準を満たします。自治体に相談へ行った際に、それぞれの基準について詳しく聞くことができるため、しっかりと内容を把握しておきましょう。
自治体によっては、「相談室はパーテーションではなく専用の個室を準備する」「事務室はとくに用意しなくても構わない」などの細かな基準もあります。誤って開設準備をすすめることがないようにしてください。
③必要な書類を準備する
次に準備するのが、申請に必要な書類です。種類が豊富にあるため、必ず抜けや漏れがないようにチェックしておきましょう。主な書類は下記のとおりです。
【就労継続支援B型の開設に必要な主な書類】
- 指定申請書
- 役員名簿
- 指定に係る記載事項
- 組織体制図
- 管理者・サービス管理責任者の経歴書
- スタッフの資格証明書
- 事業所の平面図・内外の写真
- 事業計画書
提出する写真は、備品などが全て揃っており、いつでも開設できる状態となっているものを撮影します。「まだスタッフを雇っていない」「物件が決まっていないけれど開設は決定している」など、曖昧な状況のままで申請を出すことはできないので注意してください。
④申請書類の提出
準備した申請書類を提出します。書類を提出しても基本的にはそのまま受理されることはあまりないので、提出後に自治体に何度か足を運ぶことになります。
記載方法の細かな修正や追加書類の提出などを求められるケースが多いです。そのため、1度の提出で受理されるとは考えず、最低でも2回以上は確認や修正などをする必要があると思っておきましょう。
⑤実地確認
自治体によっては、開設する就労継続支援B型の物件に実際に担当者が訪問してくる場合があります。ここでは、提出した書類に記載されている広さ・間取り・スタッフなどがしっかりと確保されているかチェックをします。
このように自治体によって厳しく審査が行われているので、書類に嘘を記載したり曖昧な受け答えをしないようにしましょう。
⑥指定書の交付
ここまでの流れでとくに問題がなければ指定書が交付されます。指定書が交付されるまでの期間は早くても2ヶ月程度で、基本的に特別な理由がない限りは毎月1日に下ります。
たとえば10月に事業所を開設したい場合、期間を逆算すると7月ごろには行動を始めないと間に合いません。スケジュールを綿密に立てて、計画的にすすめていきましょう。
就労継続支援B型の開設に関するよくある質問
最後に就労継続支援B型の開設に関する質問のなかから、とくに多くの方が気になっている2つの内容について紹介します。
【就労継続支援B型の開設に関する2つの質問】
- 就労継続支援B型の開設に資格は必要?
- 就労継続支援B型は利用者が集まらない?
後から困ることがないように少しでも多くの情報を知っておきましょう。
就労継続支援B型の開設に資格は必要?
就労継続支援B型の新規開設では、本記事でもお伝えしているように人員基準を満たす必要があります。この基準を問題なく満たすことが可能であれば、オーナーには資格は不要です。
もちろん、障がいに対する知識や経験があることは望ましいですが、資格がなくても基準を満たして申請が受理されれば、無資格でも開設は可能です。
就労継続支援B型は利用者が集まらない?
「新しく就労継続支援B型の事業所を開設したのに利用者が集まらない」と悩む方は少なくありません。当然ですが、開設しただけで何の対策も行わなければ利用者を集めることは困難です。
利用者を集めるためには、知名度を高めて事業所の存在を認知してもらわなければいけません。下記のような宣伝やアピールをして、効率よく集客を行えるようにしましょう。
【就労継続支援B型の主な集客方法】
- パンフレットの作成
- ホームページの運営
- Googleマイビジネスの登録
- 異なる事業も立ち上げて他サービスにも対応する
- 他の就労継続支援B型の事業所に声をかける
- SNSの活用
- 広告に掲載
まとめ:就労継続支援B型の開設では満たすべき基準をしっかりとチェックしておきましょう!
本記事では、就労継続支援B型を開設するために必要な要件や費用などについて解説しました。就労継続支援B型を立ち上げるためには、4つの基準を満たす必要がある上に、費用面でも明確な計画を立てて運営できるようにしなければいけません。
また、物件選び・スタッフの雇用・申請書類の準備なども行う必要があり、指定書の交付までに2ヶ月程度はかかります。スムーズに開設をすすめていくためにも、ぜひ本記事度伝えしている情報について深く理解し、就労継続支援B型を始める際の参考にしてください。
この記事を読んだ方で、放課後等デイサービスの運営・経営において 下記のようなお悩みはございませんか?
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