「どんなに丁寧に説明しても、子どもに伝わらない」
「同じ方法なのに、うまくいく子といかない子がいる」
放課後等デイサービスの支援現場で、そんな壁にぶつかった経験はありませんか?実は、その原因のひとつに「認知特性」が関係しているかもしれません。
認知特性とは、子どもが情報をどう受け取り、どのように理解するかという“見えにくいスタイル”のこと。支援者と子どもの特性がズレていると、思いがけず伝わらないということが起きます。
今回は、放課後等デイサービス向けに開発された簡易アセスメントツール「Surala LIFT(すらら・リフト)」の活用法をご紹介。認知特性を“見える化”することで、日々の支援がどう変わるのか、現場での導入事例も交えてお伝えします。
すららでは、導入施設向けに毎月WEB勉強会を開催し、全国の実践例を共有しています。本記事は、そこで取り上げられた内容をもとに、認知特性に基づく支援の可能性と、LIFTを活用した実践方法をわかりやすく解説するものです。
もくじ
認知特性とは?支援が伝わらない理由を探る
「どう伝えたら理解してもらえるのか?」
支援者として日々考え続けるこの問いのヒントになるのが、「認知特性」という考え方です。
認知特性とは、目や耳から入った情報をどのように処理し、理解するかというスタイルの違いのこと。子ども一人ひとりに異なるこの特性は、支援の“伝わり方”や“学び方”に大きな影響を与えます。
すららでは、主に以下の2タイプで説明しています。
継次処理型(順序立てて理解するタイプ)
- 音声情報(聴覚)からの理解が得意
- 段階的に説明されるとわかりやすい
- 例)「まず○○をして、次に△△をしよう」など、順序を明確に伝えると理解が深まる
同時処理型(全体を一気に捉えるタイプ)
- 視覚情報や空間認識が得意
- 結論を先に知ると意欲が湧く
- 例)「この写真のようにしてみよう」など、ゴールイメージを先に示すとやる気が出る

たとえば「部屋を片付けよう」という支援場面でも、継次処理型の子には「床のものを拾って→棚に戻して→掃除機をかけよう」と順序を分けて伝えるのが効果的。
一方、同時処理型の子には「きれいになった部屋の写真を見せる」といった完成イメージの提示が響きます。
同じ「片付けてね」でも、伝え方によって受け取り方がまったく変わってしまう。これが認知特性の力であり、支援が届かない原因のひとつです。

認知特性のズレに気づくことが第一歩
子どもに伝わらないと感じたとき、「自分の説明が悪かったのかな」と反省しがちですが、実は支援者側と子どもの認知特性がズレているだけというケースが少なくありません。
支援者自身も継次処理型/同時処理型のどちらかに偏っているため、自分が“わかりやすい”と思う説明スタイルが、相手にとっては“理解しづらい”ことがあるのです。
そのズレに気づき、子どもの特性に合わせた伝え方を意識するだけで、支援がスムーズになる場面は多々あります。
放課後等デイサービスにおける活用価値
療育の現場では、子どもの特性に応じた個別支援が求められています。
しかし、実際には子どもの“理解の仕方”をどう把握するかという点で悩む支援者も多いはず。
ここで役立つのが、認知特性を簡易的にアセスメントできるツール「Surala LIFT」です。
次章では、このツールの内容や使い方について詳しくご紹介します。
Surala LIFTとは?放課後等デイサービスで使える簡易アセスメントツール
「認知特性が大事なのは分かったけれど、実際にどうやって把握すればいいのか分からない」
そんな現場の声に応える形で、すららでは認知特性を簡易的に“見える化”できるアセスメントツールを提供しています。
それが「Surala LIFT(すらら・リフト)」です。
Surala LIFTの特徴
- 所要時間:約20〜30分
- Web上で完結(ICT教材「すらら」内コンテンツ)
- 放課後等デイサービスでのすらら契約者は追加費用なしで利用可能
- 診断結果は「3つの動物タイプ」で表示され、わかりやすい
Surala LIFTは、子どもの認知特性を3つのタイプに分類し、イラストと解説で示してくれる仕組みになっており、現場でも子どもと一緒に確認しやすく、支援者間や保護者との共有にも役立ちます。
認知特性3タイプの説明(Surala LIFT分類)

| タイプ | 認知特性 | 特徴 |
|---|---|---|
| イルカタイプ | 継次処理・聴覚優位 | 段階的説明や音声情報での理解が得意 |
| ハヤブサタイプ | 同時処理・意味のある視覚情報 | 全体像を捉える力に優れ、イメージ先行で理解 |
| チータータイプ | 同時処理・シンプルな視覚情報 | 直感的・図形的に理解するのが得意 |
支援者にも嬉しい“すぐ使える”設計
診断結果には、PDFマニュアル(ダウンロード可)が付属しており、
- スタッフ間の支援方針共有
- 保護者とのコミュニケーション
- 個別支援計画の材料
など、日常業務とすぐに連携できるような実用的設計になっています。
また、文字が苦手な子どもでも楽しく取り組めるよう、イラストやストーリー形式の設問が用意されているのも特徴。
診断というより「ゲーム感覚」に近い印象で、子どもが自然に答えやすい工夫が詰まっています。
認知特性に応じた学習スタイルのカスタマイズ|すらら漢字アドベンチャー
Surala LIFTで認知特性が“見える化”されたら、次に活きてくるのが学習スタイルのカスタマイズです。
その代表的な活用法が、「すらら漢字アドベンチャー」という漢字学習コンテンツ。

この教材では、LIFTの診断結果に応じて3タイプ別の漢字の覚え方が提案されます。
タイプ別の学習アプローチ例
| タイプ | アプローチ |
|---|---|
| イルカタイプ | 声に出してリズム良く覚える (聴覚優位) |
| ハヤブサタイプ | 間違い探しで覚える (意味ある視覚情報) |
| チータータイプ | 部品の組み合わせを使った図形的理解 (直感的な視覚情報) |
たとえば、従来の「書いて覚える」が苦手だった子でも、
- 「パズルみたいで面白い」
- 「違いを探すのがゲームみたい」
- 「声に出すとスッと入ってくる」
といったふうに、タイプに合わせて“できた!”と感じられる体験が生まれるのです。
これは、支援者にとっても「この子にはこう伝えれば良い」という仮説を持ちやすくなり、教材を通じた日常的な支援のアップデートにもつながります。
書く以外の学び方を肯定する意味
「漢字は書いて覚えるもの」という常識が、苦手意識を持つ子どもを追い詰めることもあります。
すらら漢字アドベンチャーは、“書く”以外にも正解があるというメッセージを支援現場に届け、子どもたちにとっても「学び方の選択肢がある」ことを示してくれる教材です。
こうした学習支援の多様性は、認知特性に配慮した支援方針とも直結しています。
【事例】現場からの声|LIFT活用による支援の変化
実際に「Surala LIFT」を導入した放課後等デイサービスでは、どのような変化が起きているのでしょうか?
ここでは、現場から届いた導入事例をご紹介します。
大分県「放課後等デイサービス真愛 萩原」様の成功事例

導入のきっかけ
「すららでの学習にマンネリを感じていた子どもたちに、新しい刺激を与えたい」との思いから、LIFTの導入を検討。
フォロー担当とのやりとりを経て、Zoomでの個別研修を実施し、即座に現場での活用がスタートしました。
成功のカギは、最初の“成功体験”
最初にLIFTを受けたのは、「心理テストが好き」という自己理解に興味のあるお子さん。
結果に対しても非常に好反応で、「これ、自分のことかも」と自己理解を深めながらスムーズに取り組んでくれました。
その様子が他の子どもたちにも波及し、現在では利用者の半数以上がLIFTを受検済み。スタッフの皆さんは、その結果を支援方針の参考に活用しています。
“支援の答え合わせ”としてのLIFT
以前から、避難訓練や調理活動の事前学習に動画や写真付き手順書を活用していた同施設。
LIFTでの診断結果により、「この方法はチータータイプ(同時処理が得意な子)にとって効果的だった」と裏付けが取れたそうです。

実際の手順書には、通所中の子どもの写真を使っており、「○○くんもやってる!自分もできそう」と、子どもにとっての“見通し”や“安心感”にもつながっています。
これらの手順書は、イベント報告として保護者にも共有され、翌年には事前学習教材として再活用されるという、支援の省力化と質の両立を実現しています。
子どもたちの未来の幸せのため、真心と愛情をもった支援を理念とし、大分県大分市に放課後等デイサービス3店舗運営。そのうち1店舗ですららを導入し、20名弱のお子さんがすららで学習中。個別に学習目標を設定され、お子さんの自主的な学習を促進している。
見えない“理解スタイル”を見える化する意味
支援を考える際、支援方法の工夫にばかり目が向いてしまうことは少なくありません。
でも、その前に大切なのは、「この子はどんな理解スタイルを持っているのか?」を知ることです。
Surala LIFTは、この“見えない理解スタイル”を見える化できる強力なツールです。
- 自分では気づけない子どもの特性がわかる
- それに応じた支援の仮説が立てられる
- 学び方の選択肢が広がる
結果として、子ども自身が「できた!」を実感し、自己肯定感が育ちます。
支援者にとっても「伝わった」という確かな手応えが得られる。これが、認知特性アセスメントを支援に取り入れる意義です。
「簡易アセスメントツールに興味はあるけれど、導入に不安がある…」
そんな方のために、すららでは契約後のサポート体制も充実させています。
導入後のフォロー体制(一部抜粋)
- 毎月のWEB勉強会開催 テーマ別に事例共有+質疑応答の場を提供
- 個別相談対応(オンライン・訪問) 事業所ごとの課題に合わせたカスタマイズ支援
放課後等デイサービスでのICT教材活用をご検討の方へ
認知特性アセスメント「Surala LIFT」をはじめ、すららでは子どもの“わかる”と“できる”を支える学びの仕組みをご用意しています。
ご関心をお持ちの方は、以下よりお気軽にお問い合わせください。無料相談・資料請求も受付中です!
