「放課後等デイサービスを立ち上げたいけれど初期費用はいくらくらいかかる?」「放課後等デイサービスの開業条件は?」
福祉事業の中でも比較的新しい放課後等デイサービスは、利用者が年々増加していることから現在特に注目すべき福祉サービスです。しかし、スタートを正しくするためには知るべき情報や準備しなければいけない項目が山ほどあります。
そこで本記事では、放課後等デイサービスを立ち上げるための初期費用や条件、ランニングコストなどについて詳しく紹介します。ぜひ最後までご覧いただき、放課後等デイサービス開業の参考にしてください。
この記事を読む方で、放課後等デイサービスの運営・経営において 下記のようなお悩みはございませんか?
- 「近隣に競合施設が多く、生徒確保が難しい」
- 「離職率が高い・指導員の確保が難しい」
- 「学習支援は行いたいが、宿題の対応しかできない」
- 「職員が不足している時間帯の児童支援が難しい」
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放課後等デイサービスとは?障がい福祉サービスの1つ
放課後等デイサービスは障がい福祉サービスの1つです。2012年(平成24年)の障がい者自立支援法改正によって創設された許認可事業で、発達障がいなどのさまざまな課題を抱えている子どもが利用できる施設を指します。
生活能力向上のための支援・自立を促すプログラムなどを提供し、集団生活への適応や日常生活における動作の習得を目的としており、障がいのある6歳から18歳までが利用可能です。例外として20歳まで通うことが可能になるケースもあります。
放課後等デイサービスの現状は?利用者数も事業所数も増加傾向
放課後等デイサービスは、利用者数・事業所数のどちらも増加傾向となっています。
2012年 | 2,887カ所 |
2013年 | 3,832カ所 |
2014年 | 5,239カ所 |
2015年 | 6,999カ所 |
2016年 | 9,306カ所 |
2017年 | 11,288カ所 |
2018年 | 12,833カ所 |
2019年 | 14,046カ所 |
引用:厚生労働省「障害児通所支援の現状等について」
上記は、放課後等デイサービスが始まった2012年からのひと月あたりの事業所数の推移です。年々多くの事業所が開設していることが分かります。また、利用者数も下記の表のように年々増加しています。
2012年 | 53,590人 |
2013年 | 68,035人 |
2014年 | 88,360人 |
2015年 | 112,162人 |
2016年 | 140,442人 |
2017年 | 170,884人 |
2018年 | 201,803人 |
2019年 | 226,610人 |
引用:厚生労働省「障害児通所支援の現状等について」
上記は、ひと月あたりの利用者数の平均です。2012年から2019年の7年間でひと月の利用者数は約4倍にも増加しています。
数万人単位で利用者は増加しており、事業所数とあわせてみても全国的に放課後等デイサービスが拡大し続けていることが分かります。
放課後等デイサービスを立ち上げるには?開業するための条件
放課後等デイサービスを立ち上げるためには、定められている開業条件をクリアしなければいけません。ここで紹介する2つのそれぞれの内容をしっかりと把握し、徹底した準備を整えておきましょう。
【放課後等デイサービスを立ち上げる条件】
- 法人格を有していること
- 指定基準を満たしていること
法人格を有していること
放課後等デイサービスは法人格がなければ立ち上げることはできません。株式会社・合同会社などの営利団体はもちろん、NPO法人や一般社団法人といった非営利団体でも設立登記すれば法人格の取得が可能です。
既に法人格を有している会社が放課後等デイサービスに参入する際には、登記簿謄本に記載されている事業目的に「実施事業」という文言が必須になります。もしもない場合は事業目的変更の手続きをしてください。
指定基準を満たしていること
放課後等デイサービスの立ち上げは、法人格を有するだけではなく指定基準を全て満たすことが欠かせません。それぞれの基準とはどのようなものなのか、人員・設備・運営の3つの基準についてしっかりと正しい情報を把握しておきましょう。
人員に関する基準
まず重要となるのが、適切な支援を提供するのに欠かせない人員です。施設の規模によって変動する部分はありますが、基本的な人員基準はしっかりと把握しておかなければいけません。
管理者(常勤) | 必要人数:1人以上 | ・資格要件なし ・他職務との兼用も可能 |
児童発達管理責任者(常勤) | 必要人数:1人以上 | 実務経験・研修修了者などの要件を満たす必要あり |
保育士または児童指導員 |
・預かり人数が10名までの場合2人以上 |
1名は常勤必須 |
上記は最低限の必要人員です。経営者1人では運営できないので、必ずこの基準を満たせるように人を雇いましょう。
施設の設備に関する基準
放課後等デイサービスの立ち上げでは、施設の設備に関する基準も忘れてはいけません。
指導訓練室 | ・都道府県により広さの基準が異なる ・支援提供に必要な備品などを揃える必要あり |
事務室 | ・書類保管用の鍵付き棚が必要 ・備品を保管するためのスペースが必要 |
相談室 | ・相談内容を漏らさないため、さらにプライバシー確保のために工夫する ・静養室を兼ねるケースもあり |
トイレや手洗い場 | ・衛生面に関する配慮が必須 ・トイレの手洗いと洗面所の兼用が不可になるケースがある |
静養室 | 地域によっては必須ではない |
預かる子どもに適切な支援を提供し、快適に過ごせる環境を整るために重要となる部分です。抜けがないようにチェックしておきましょう。
施設の運営に関する基準
放課後等デイサービスは運営に関する基準もあり、事業所ごとの規定を定めて利用する保護者に重要事項として説明する必要があります。
施設の定員数 | ・利用定員10人以上であること ・重症心身障がいが主となる場合は5人以上 |
個別支援計画 | ・利用する子どもの発達や特性を理解し、状況に応じたサービス計画を行うこと ・学校の個別教育支援計画などと連動させる |
サービス内容・手続きの説明と同意 | ・利用する子どもやその保護者に対し、サービスを円滑に利用できるように詳しく説明して同意を得る ・同時に必要な支援を正しく行う責務がある |
サービス利用者の指導や訓練などの実施 | ・子どもを預かるだけでなく、自立生活支援のための適切な訓練を行う ・積極的に参加したいと思うプログラムを実施し、成功体験を通して自己肯定感を高める |
利用している子どもやその保護者からの相談・援助 | ・保護者と情報を共有し、相談があった際には適切な助言と支援が行えるようにする |
緊急体制整備 | 協力医療機関を定め、急な事態に備えておく |
非常時や災害時対策 | 防災マニュアルの策定や消火設備、訓練実施をする |
放課後等デイサービスでは、運営に関しても多くの基準が設けられており、預かりだけではなく適切な支援・サポートを行わなければいけません。また、緊急時や非常時に備えた準備も必須です。
放課後等デイサービスの立ち上げ・新規開設にかかる初期費用(イニシャルコスト)
放課後等デイサービスの立ち上げには、必ずかかる初期費用があります。開業資金について事前に把握しておかなければ、思わぬ出費で苦しくなってしまうケースもあるでしょう。
ここでは、新しく放課後等デイサービスを立ち上げる際にかかる初期費用について詳しく紹介します。
【放課後等デイサービスの立ち上げに必要なイニシャルコスト】
- 法人設立の費用
- 不動産の費用
- 施設の保険費用
- 求人広告費用
- 集客費用
- 設備・備品の費用
- 車両購入費用
法人設立の費用
前述しましたが、放課後等デイサービスを立ち上げるには法人設立をしなければいけません。その際に必要となるのが法人設立の費用です。ここでは、株式会社と合同会社について紹介します。
株式会社 | 20万円以上 |
合同会社 | 6万円程度 |
費用だけで考えれば合同会社がおすすめですが、株式会社の方が高い信用力があり、利用者の募集・金融機関からの融資などで有利に働きます。また、株式による資金調達も可能です。
合同会社のメリットは、官報掲載費や重任登記にかかる費用が不要でランニングコストを抑えられること。しかし、社会的信用の部分で不利になることがあります。
不動産の費用
初期費用の中で最も高額となるのは不動産の費用です。地域や立地にもよりますが、およそ50万円ほどの敷金や補償金を想定しておきましょう。また、さまざまな諸経費などを合わせるとおよそ100万円〜500万円ほどが不動産費用として必要になります。
ただし、「購入」「賃貸」「ワンフロア」「一軒家」など不動産の条件によってこの金額は大きく変動します。あらかじめ規模を決めておき、不動産費用を計算しておきましょう。
施設の保険費用
立ち上げた施設の保険も忘れずに加入するようにしてください。目安として、施設賠償保険がおよそ5万円〜7万円・火災保険がおよそ2万円前後必要です。
火災保険や地震保険 | 災害時に必要となる保険です。施設自体の保険は、契約の際に強制的に入るケースが少なくありません。 |
怪我や事故に備えた保険 | 施設外での怪我や事故などに備えた保険です。 |
福祉事業向けの損害賠償保険 | 預かりの時間内で転んで怪我をしてしまった・提供した食事が原因で食中毒になったなど、さまざまなトラブルに対する保険です。 |
賠償責任の保険に関しては、必ずしも入らなければいけないという規則はありません。
しかし、気を付けていてもトラブルを100%防ぐのが難しい場面もあります。そういった際に困ることがないよう、立ち上げと同時に加入しておくことをおすすめします。
求人広告費用
放課後等デイサービスを運営していくためには働くスタッフが必要不可欠です。新規立ち上げをする場合、縁故採用で職員を集めるというケースも少なくないため、こういった場合は求人広告のための費用は不要になります。
しかし、1から集める場合は求人広告の媒体に掲載することになるので、およそ30万円〜50万円程度の費用が発生します。
集客費用
近年、放課後等デイサービスの事業所数は増加傾向となっているため集客が難しくなっています。ただ単に新規開設するだけでは人は集まりません。
利用者の募集は、Web公式サイトやパンフレットの作成・広告媒体への掲載・名刺の作成などの方法があり、それらは約60万円〜100万円程度の費用が必要となります。
効率よく集客するためには施設のアピールポイントを全面に押し出して、どのようなプログラムを提供するのか・どのような思いで開設したのかを伝えられるようにしましょう。
設備・備品の費用
不動産を入手し職員や利用する子どもが集まっても、施設の設備や備品がなければ支援の実施やプログラム提供ができません。
【放課後等デイサービスで必要な設備・備品】
- 子どもが使用する机や椅子
- ロッカー
- PC
- 鍵付きの書類保管庫
- 冷蔵庫や電子レンジなどの家電
- 絵本やおもちゃ
- 嘔吐した際に必要な消毒や掃除用具、衛生管理用品
- 指はさみなどを防止するための安全備品
- テレビ
主に必要な設備・備品は上記の通りです。これらの購入費用として約80万円〜100万円は見込んでおきましょう。
車両購入費用
利用している子どもを送迎するためには車が必要です。施設の規模や通う子どもの人数により必要となる車両も大きく変わりますが、通常は2台〜3台ほど準備しておきます。
車両の種類、中古か新品かなどによっても費用は異なりますが、1台あたり100万円〜150万円程度の予算を目安にしておきましょう。また、自動車保険に加入する場合は追加で費用が必要になります。
放課後等デイサービスの運営にかかる費用(ランニングコスト)
初期費用を準備できても、運営をスタートさせれば継続的に必要となるランニングコストが発生します。経営に必要な費用について理解できていなければ、資金が足りずに運営を続けることが難しくなってしまうので、ランニングコストについてもしっかりと把握しておきましょう。
ここでは、定員10名の放課後等デイサービスで、管理者兼児童発達管理責任者が1名・児童指導員などが2名の合計3名で運営をスタートした場合にかかる3ヶ月分のランニングコストを紹介します。
家賃 | 約45万円 (月の家賃を15万円とした場合) |
光熱費 | 4万5,000円 (月の光熱費が1万5,000円ほどの場合) |
人件費 | 3ヶ月分・240万円 (3名分の給与合計が月80万円の場合) |
営業費や雑費 | およそ30万円 |
利用者がいない状況でも、3ヶ月のトータルで約320万円の支出があります。規模が大きい施設や職員の数が多い場合はさらにプラスされるため、中には300万円や400万円以上となるケースも少なくありません。
家賃が安かったり光熱費が抑えられれば支出も少なく済みますが、このくらいの費用は継続して必要となることをしっかりと頭に入れておくようにしてください。
放課後等デイサービスに関するよくある質問
放課後等デイサービスを立ち上げる際にはさまざまな疑問が生じますが、気持ちが焦りそれらを解決せずに事業をスタートさせてしまうと、思わぬところで躓いてしまうこともあります。
まずは不安要素を解決し、スムーズな運営ができるよう最初の準備を完璧にしておくことが大切です。
放課後等デイサービスに関してよくある質問の中から代表的な2つの疑問をピックアップしたので、しっかりと内容を把握しておきましょう。
【放課後等デイサービスに関するよくある質問】
- 放課後等デイサービスの立ち上げには資格が必要?
- 放課後等デイサービスの立ち上げで利用できる助成金は?
放課後等デイサービスの立ち上げには資格が必要?
自分ではない他の有資格者が児童発達管理責任者や指導員として配置が可能な場合、施設のオーナーは資格を有している必要はありません。
資格を持っていない場合は、障がいのある子どもへの直接的な支援やサポートは現場の職員に任せ、スタッフが働きやすい環境作りや障がいのある子どもが自立できる仕組み作りなどに専念することをおすすめします。
管理者と密なコミュニケーションを取り、質が高い施設作りを目指していくようにしてください。
放課後等デイサービスで利用できる助成金・補助金は?
放課後等デイサービスでは助成金・補助金の利用が可能です。利用できる主な助成金・補助金をピックアップしました。
人材確保等支援助成金 | 従業員の定着率向上・離職率低下を目的とした助成金。職場環境の改善や管理制度の整備をすることで受給が可能。 |
特定求職者雇用開発助成金 | シングルマザーや高齢者など、就職が難しいとされる人の労働市場を広げるための助成金。労働時間などさまざまな要件あり。 |
IT導入補助金 | 業務フローの改善や効率化を図るために、ITツールや情報の一元管理が可能なシステムを導入することで受けられる補助金。 |
キャリアアップ助成金 | 非正規雇用の従業員のキャリアアップに取り組むことで得られる助成金。キャリアアップ管理者を置いている・計画を立てているなどの要件あり。 |
まとめ:放課後等デイサービスの立ち上げは余裕のある資金作りから!
本記事でもお伝えしているように、放課後等デイサービスを立ち上げるためにはいくつか条件があり、多くの開業資金も必要となります。準備を徹底的にしておかなければ、運営がスタートしてから思わぬトラブルが生じてしまうでしょう。
また、必ずしも開業したらすぐに利用者が集まるということではないため、3ヶ月ほどのランニングコストも用意しておかなければいけません。
スムーズな運営で働く従業員の生活を守るためにも、利用できる助成金を使いつつしっかりと資金を準備しておくことが新規立ち上げには何より大切です。
この記事を読んだ方で、放課後等デイサービスの運営・経営において 下記のようなお悩みはございませんか?
- 「近隣に競合施設が多く、生徒確保が難しい」
- 「離職率が高い・指導員の確保が難しい」
- 「学習支援は行いたいが、宿題の対応しかできない」
- 「職員が不足している時間帯の児童支援が難しい」
すららネットでは上記問題を解決するためのセミナーを“期間限定”で開催中です。
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