「0か100しかなかった子の中に、第3の選択肢が生まれた」──関わり方を見直す中で深まった親子の信頼と、子どもの世界を楽しむ視点
「『もし行ってダメだったら、お母さんに伝えて帰ってくればいいやって思ったから』。今まで行くか行かないかの0か100しかなかった子の中に、第3の選択肢が出てきたんです」
小学4年生の息子さんが不登校になり、理由のわからない行動や行き渋りを前に「どうしていいかわからず、可愛いと全く思えなかった」と振り返るWさん。過去のペアレントトレーニングでは挫折してしまった経験を持つWさんが、『ほめビリティ・プラクティショナー』に春・夏と2期連続で参加。「否定しない」関わりを続け、伴走してくれる人たちの支えを得ながら、少しずつ親子の信頼関係を築き直していきました。子ども自らが「第3の選択肢」を見つけ出すまでの軌跡や、親自身の“イライラ”が“新たな発見を楽しむ笑い”へと変わっていったエピソードを伺いました。
【ほめビリティ公式サイト】「可愛いと思えない」苦しい日々──病院で突きつけられた「しつけ」という言葉

── 『ほめビリティ・プラクティショナー』(以下『ほめビ』)に参加される前、どのようなことにお悩みだったのでしょうか。
子どもが不登校になって、学校に行かないと言っていたので、なんとかして行かせた方がいいのか、それとも別の関わり方をした方がいいのか。どうすればいいのか分からず、子どもとの向き合い方をすごく探っていた状況でした。
何を考えているのかあんまり話してくれない子だったので、どうして学校に行かないのかを聞いても、「行かないから行かない」と言うだけで、理由がよく分からなくて。
子どもの行動がどういう思いから来ているのか、本当に分からなかったんです。
── お友達やご家族との間でも、気になる行動があったと伺っています。学校に行かないことだけでなく、普段の人との関わりの中でも、「なぜそうするんだろう」と感じる場面があったのでしょうか。
お友達との付き合い方でも、私が「こうした方がうまくいくのにな」と思っていても、そういう付き合い方をしないんです。相手をわざと怒らせてしまったり、煽るような言い方をしたりしていました。
家族の中でも、お兄ちゃんのものをわざと隠して困らせてみたりすることがあって。学校に行かないということもきっかけの一つでしたが、お友達や家族に対する態度を見ていても、「どうしてこの子はこういう行動を取ってしまうんだろう」と分からずにいたのが、受講前の状態でした。
── 理由が分からないままそうした行動が続く中で、当時のWさんご自身はどのような対応をされていたのですか。
「なんとかしてその発言や考え方を直さなきゃいけない」と思っていたので、「そんなことをすると、あなたが困るよ」「社会から受け入れてもらえないよ」と、その都度言っていました。何か行動を起こした時にも、「なんでそんなことしちゃったの」「そういうことしていいと思ってるの」と声をかけていて。今振り返ると、常に否定するような言葉をかけていたんだと思います。
そうすると、子どもはだんだん暴れるようになっていきました。心を閉ざして自分の部屋にこもるか、家にあるものを全部なぎ倒すか、バリケードを作って部屋に入れないようにするか。私が少しでも何か言おうとすると、その瞬間から「ぐちぐちうるさい」と耳を塞いでいました。
── 「直さなきゃ」と思って声をかけるほど、息子さんとの距離が開いていく。ご自身のお気持ちとしても、かなりお辛い状況でしたね。その頃、Wさんの中ではどんな思いがありましたか。
もう、どうしていいのか分からなくなっていました。「薬を飲ませた方がいいのかな」「病院に行って、入院しなきゃいけないのかな」と考えることもあって。
子どもを責める気持ちと、自分自身を責める気持ちの両方があって、その頃は、子どものことを全く可愛いと思えないような状況でした。
── そこまで追い詰められていた中で、どのようにして『ほめビ』にたどり着いたのでしょうか。
息子がどういうふうに物事を認知しているのか知りたくて、病院の先生に相談したんです。すると、「薬物療法はできるけれど、心理療法にはそこまで人手をかけられない。お母さんが知りたいことは、家庭でのしつけの範囲ですよね」と言われました。
でも、家に帰って考えてみた時に、「そもそも親だって、どういうふうにしつけをすればいいのか、きちんと学んだことってないよな」と思ったんです。「じゃあ、どうすればいいんだろう」という疑問がずっと頭の中にありました。
その後、不登校に関する講演会で紹介してもらった『不登校の親ネット』という不登校について考える親のオープンチャットで、「今日もまた叱ってしまった」という記事を見かけました。「親が叱るということは、しつけについて書いてある記事なのかな」と思って、読んでみたのがきっかけです。
以前、個別のペアレントトレーニングを受けたこともあったのですが、フィードバックまで2週間空いてしまうこともあり、結局、最後まで続けられずに終わってしまった経験がありました。だからこそ、日々フィードバックをもらえる仕組みに惹かれて、参加を決めました。
実践が日々の習慣に──伴走があるから、確かめながら続けられた

── 今回、春期(思春期前編)から続けて夏期(思春期編)と、2回連続でご受講いただきました。Wさんが「もう一度続けよう」と思えたのは、どんなところが大きかったですか。
たぶん、私の中では実践することが毎日のルーティーンになっていました。やらないと、なんとなく気持ちが悪いというか。
あとは、親も人間なので、やっぱり承認欲求はあると思うんです。自分一人で取り組むよりも、一緒にメンターが伴走していただけるのはすごくありがたかったですね。
今やっていることが間違った方向に進んでいないか、その都度確認しながら方向修正していきたいという思いもありました。そうやって伴走してもらえたからこそ、息切れせずに続けられたんじゃないかなと思います。
── 夏期の「思春期編」は、春期の「思春期前編」とは少し内容が異なりましたが、2つの講座を続けて受けたことで、息子さんとの関わり方にはどんな違いを感じましたか。
春期の「思春期前講座」では、15分間の「スペシャルタイム(※1)」に取り組む必要があって、それがすごくいいトレーニングになりました。
小学4年生って、ちょうど思春期前と思春期の狭間のような時期なのかなと感じていて。息子の言動を見ていても、一人立ちしたいから放っておいてほしいと思うところもあれば、まだまだ甘えたくて、親に見てもらいたいところもあるんです。
だからこそ、春期でかなりしっかりトレーニングをしたあとに、夏期の「クオリティタイム(※2)」では、少し力を抜いて自分のペースで進められるようになったのは、すごくいい流れでした。息子との関わり方としても、両方を学べたことがちょうどよかったなと、今は思っています。
※1:保護者と子どもの二人きりで否定や指示をせず、子どもの行動や気持ちを受け止めながら子どもが好きなことをして遊べる時間。この時間は遊びの主導権を子どもが持ち、親は子どもの好ましい行動を見つけて具体的に褒める練習する。
※2:時間を決めずに保護者が質問や指示を控え、子どもの良いところを見つけて伝える思春期向けの褒める練習の時間のこと。
「行ってダメだったら帰ればいい」。0か100だった子が見つけた“第3の選択肢”

── そうして関わり方を重ねていく中で、この夏休み、息子さんの選び方に大きな変化を感じた出来事があったそうですね。
夏休みだったので、いろいろな体験を本人に確認しながら予約していたんですが、その中で一番印象的だったのが、練り切りの体験に行く日のことです。前日までは行くと言っていたのに、当日になって「行かない」と言い出して。いつもだったら、「なんで行かないって言うの」「もう予約しちゃってるから行ってほしい」とぐちぐち言いながら、なんとか連れて行こうとしていたと思います。
でも今回は、「行かない」と言っていることにはあえて反応せず、少し様子を見てみようと思ったんです。もし本人が行く気になった時にすぐ出られるように、私の準備だけは全部済ませていました。そして時間になって、「じゃあ、お母さんは行くけどどうする?」と聞いたら、息子が車に乗ってきたんです。
そのあと、「行きたくないって言っていたのに、気持ちを切り替えられたんだね」と話したら、息子が「もしダメだったら、面白くなかったってその場でお母さんに伝えて、帰ってくればいいやって思ったから」と言ったんですよね。
── 以前なら無理に連れて行こうとしていた場面で、「スルーして待つ」ことができたのですね。Wさんの中では、その時どんなふうに息子さんの言葉を捉えていたのでしょうか。
これまでのやり取りの中でも、「行きたくないって言ってみたら、お母さんはどういう反応をするんだろう」と、私の反応を試しているように感じることがあったんです。
だから今回も、もしかしたら本当に行きたくないわけではなくて、不安になって、その気持ちが言葉に出ているだけなのかもしれないと思えました。そう考えられたのは、子どもとの信頼関係が、ある程度私の中にもできてきていたからなのかなと思います。
もし本当に行かないとなったら、その時は「すみません」と電話をすればいい。そう割り切ることができて、「この子はどうしたいんだろう」と様子を見ながら対応しようと、冷静に思えていました。
── Wさんがどっしりと待っていたからこそ、息子さんもご自身で答えを出せたのかもしれませんね。
そうかもしれません。たぶん今までは、「行くか、行かないか」の0か100しかなくて、どちらかしか選べなかったんです。でも今回は、自分の中で「第3の選択肢」を見つけられたんですよね。しかも、それは私が提案したわけではなくて、息子自身が考えて選んだことだったというのが、すごく大きな進歩だなと思いました。
さらに、「嫌だったら、お母さんに言って一緒に帰ればいい」と思えたということは、自分が「嫌だ」と言っても、お母さんならちゃんと話を聞いてくれるだろうという信頼があったからこそ、そういう選択肢が浮かんだのかなと思っています。自分で新しい選択肢を見つけ出せたことは、この夏休みの中でも、すごく大きな転換だったと感じています。
「そりゃ辛いよね」。見えている世界がわかると、イライラが愛おしさに変わる

── 子ども自身の変化はもちろんですが、前回のインタビューでもおっしゃっていたWさんご自身の「子どもの見方」もさらに深まっているように感じます。
はい。子どもが少しずつ話してくれるようになったことで、子どもの見ている世界から物事を見ると「あ、そりゃつらいよね」と理解できるんだなと、すごく実感した出来事がありました。
息子がプールに行くことになった時、透明なゴーグルを「嫌だ」と言って、「新しいものを買いたい」と言い出したんです。最初は、どうしてそこまで嫌がるのか分からなかったんですけど、よくよく話を聞いてみると、ゴーグルをかけた時に自分の目が「プクッ」と膨らんで見えるのが嫌だったみたいで。
透明なゴーグルだと、その目が相手から見えてしまう。それがすごく嫌だから、ミラータイプのゴーグルじゃないと嫌なんだ、ということが分かったんです。
── ゴーグル越しに目が大きく見えるのが嫌だったのですね。そこまで理由を聞いてみて、初めて「なぜ嫌なのか」がWさんの中でも腑に落ちたのでしょうか。
理由が分からなければ、「なんで嫌なの?新しいゴーグルなんてお金がないし買えないよ」という反応しかできなかったと思います。なるほど、自分の目がぷっくり広がっているのは、普通に気になる人は気になるかもしれない。だったらそれを隠そうと思ってミラーリングのゴーグルにしようと思ったんだなと、すごく腑に落ちました。
嫌だと言っている理由を聞くことによって子どもなりの見え方が分かってくるから、「じゃあどういう方法があるね」と一緒に考えられるようになってきているかなと思います。
── 理由が分からないとワガママに見えてしまうことも、見えている世界を知ることで親の受け止め方が全く変わるのですね。
そうなんです。だから今は、イライラするというよりも、「あ、この子はこういうふうに考えているんだな。そりゃつらいよね」と思えるようになりました。なんというか、愛おしいというか、以前ならイライラしていたことも、今は興味深く思える要素がたくさん出てきたなと思います。
「ああ、この子の世界はこう見えているんだ」って、4コマ漫画が描けそうなくらい、その子なりの考え方を楽しみながら見られるようになったというか。
以前は「あぁ……」とため息をついていたような場面でも、今は「今日はまた、どんな面白い発言が出てくるんだろう」と思えるようになりました。息子の新しい一面や、新たな発見を楽しみながら接することができているなと感じています。
── お母さんが余裕を持って受け止めてくれる安心感があるからか、最近はお子さんご自身も自分のことを客観的に見られるようになってきているそうですね。息子さんの方にも、自分自身について話す変化が出てきていますか。
「自分のこと、もう知ってるでしょ? 僕がメンタル弱いことぐらい知ってるでしょ」みたいな発言もあって(笑)。
自分の苦手なところも人に伝えられるようになってきていて、隠そうともしていないんです。良いところも苦手なところも含めて「これが自分なんだ」と、彼なりに少しずつ認識できるようになってきたのかなと思える発言が、ちょこちょこ出てくるようになりました。
最近では、自分から「5年生になるし、1年間何もやってなかったから、そろそろ勉強しないとまずいよね」と言い始めて。学校の体験や支援センターにも自分から足を運ぶようになりました。苦手な算数の図形も「嫌だ」と言いながら、いざやってみるとまんざらでもなさそうに取り組んでいます。
怖がらずに、まずは一歩踏み出してみてほしい

── ご自身で「まずい」と気づいて動き出したのは素晴らしいですね。2回の受講を経て、これからの子育てで大切にしていきたいことを教えてください。
息子なりの世界の見え方やペースがあるので、そこは尊重したいです。でも一方で、私自身の価値観も伝えていきたいと思っています。何かトラブルが起きた時ではなくて、たとえば車の中でニュースを見た時などに、「お母さんはこう思うんだけど、どう思う?」と話しながら、お互いの価値観をすり合わせていけたらいいなと感じていて。
息子の考え方を尊重しながら、「この子にはどういうサポートができるだろう」と考えられる引き出しを、親としてたくさん持っておきたいです。
── 最後に、同じように悩む親御さんへ、メッセージをお願いします。
親としての子どもとの接し方って、考えてみれば、誰かからきちんと学ぶ機会ってあまりないですよね。自分がこれまで受けてきた関わり方をもとに、そのまま子育てをしていることも多いと思います。私も友人と、「子どもとの接し方、ちゃんと学びたいよね」と話していました。
今うまくいっている方でも、何かトラブルを抱えている方でも、親として子どもとの接し方を学ぶことは、決してマイナスにはならないと思います。むしろ、知っておいてよかったと思えることばかりでした。
『ほめビ』は、「こうすべき」と正解を押しつけるような教え方ではなくて、自分なりに試行錯誤しながら、それを報告していく中で、自分自身の気づきを促してくれる場所なんです。だから、自尊心を傷つけられるような感覚もなく、安心して続けることができました。正解を教えてもらうというよりも、「これが今の自分たちにとっての正解かもしれない」というものを、自分で探していける場所だと思います。
だから、少しでも気になっている方には、あまり怖がらずに、「騙されたと思ってやってみよう」くらいの気持ちで、一度飛び込んでみてほしいです。
── ありがとうございました。

不安や戸惑いを抱えながらも、「子どもとどう関わればいいのか」を模索している方にとって、ほめビリティは一つの支えになるかもしれません。日々の小さなやりとりを変えることで、親子の関係性が少しずつ前向きになっていく。その一歩を安心して試せるように、LINE相談も承っております。よかったら、公式サイトで詳しくのぞいてみてください。
【ほめビリティ公式サイト】