小学校からデジタル教材は必要? デジタル教科書との違いやメリット・デメリット、今後の見通しを解説

2022/06/10(金)

ICT

小学校

「Society 5.0」「GIGAスクール構想」の名のもとに、小学校へもどんどんICT機器やソフトウェアが導入されています。

この記事では、子どもたちが触れることになるデジタル教材やデジタル教科書について解説します。また、両者の違いや使用するメリット・デメリット、現在の教育政策が目指す姿などを紹介していきます。

小学校に導入予定のデジタル教科書・教材とは?

ITを生かしたシステムやサービスが身近にある昨今、小学校においてもデジタル教科書・教材の開発が推し進められています。具体的にどのようなものがあるのかを紹介します。

2022年から導入が始まったデジタル教材

2022年度の主な動きとして、文部科学省が行っている「学習者用デジタル教科書普及促進事業」があります。

朝日新聞HP
2022年、小学校へも外国語(英語)のデジタル教科書が提供されました。事業は2021年度にも行われ、このときには希望した学校に対して1教科分のデジタル教科書と動画等のデジタル教材が提供されています。
文部科学省のロードマップによれば、2021~2023年度はデジタル教科書の検証と促進が行われ、2024年度の教科書改訂に合わせて本格導入が予定されています。

デジタル教材とデジタル教科書の違いはこちら

「教材」は教育のために使われる素材を指す言葉です。学習ドリルや工作の材料、模型や資料集の他、もちろん教科書も含まれます。

一方「デジタル教材」はデジタルデータによる教材を指す言葉です。パソコンやタブレットを介して視聴、操作することがきます。デジタルデータとしての特性を生かすことで今までの教材とは違う教育効果が期待されています。

デジタル教材の特徴については別記事でも紹介しておりますので、こちらをご覧ください。

デジタル教材はどうやって使う?

デジタル教材は中身も特徴もさまざまです。ひと括りにまとめてしてしまうと、使い方やイメージも漠然としたものになってしまいます。教材のタイプ別に、効果的な活用方法について紹介していきます。

デジタル教科書とデジタル教材は一体的に使う

教科書について定める学校教育法では、デジタル教科書は以下のように定められています。

(以下引用)
学習者用デジタル教科書とは、紙の教科書の内容の全部(電磁的記録に記録することに伴って変更が必要となる内容を除く。)をそのまま記録した電磁的記録である教材です(学校教育法第34条第2項及び学校教育法施行規則第56条の5)。
文部科学省HP

しかし、実際のデジタル教科書ではデータ内にコンテンツが含まれていることも。出版している会社によっては、合わせて使える教材が別途用意されている場合もあります。これらの「デジタル教科書とセットになっているデジタル教材」は授業を進めるうえで子どもたちが体験・理解する助けになります。積極的に活用していきましょう。

デジタル教材は小学校の塾代わりとして今注目を集めている

ドリルやワークブック形式のデジタル教材を、塾の代わりとして活用する動きがあります。ただ問題を解くだけでなく、「行動に対してその場で反応できる」というデジタルデータの特性を生かすことで、採点機能やヒント機能が利用できます。

また、蓄積したデータを活用することで、問題の難易度を調整したり、不得意分野の分析ができたりするものもあります。機能を活用することで、使用する際に指導者がそばにいなくても、間違えたまま・分からないままになることが防げるのです。

デジタル教材は「学習用」と「指導用」の2種類ある

デジタル教材を「学習用」と「指導用」に分ける考え方もあります。これは、主に使い手の違いによる分類です。学習者が直接使うものと、指導者が授業等で使用するための教材では、必要な仕組みや見せ方が変わってきます。

個別学習に対応した学習用デジタル教材

学習用のデジタル教材は、通信教材の発展型としてみられるものが多数を占めます。スマートフォンにダウンロードできる小規模なアプリなども含めれば相当な数になります。

基本的にデジタル教材は一人で使用できる前提で構成されています。しかし、無料のアプリなどでは問題と回答のチェックのみという場合もよくあります。質を確実に求めるのであれば、無料版ではなく有料で網羅的に学習できるデジタル教材を選ぶようにしましょう

プロジェクター等で使用できる指導用デジタル教材

指導用デジタル教材としてのメインは、教科書の出版社からデジタル教科書とともに配布されているデジタル指導書になるでしょう。教科書や指導書に出てくる動画や図、モデルをプロジェクターや電子黒板に映しながら解説することができます。

他には、文部科学省のサイト内で紹介されているデジタル教材もあります。

学習支援コンテンツポータルサイト内小学校カテゴリ
一部は学習者が自分で使うことを想定されたものもありますが、多くは資料として指導者の解説を必要としています。

デジタル教材を小学校で用いるメリット

デジタル教科書・デジタル教材は、設備も内容もどんどん充実しつつあります。小学校で行うことにはまだ賛否両論ありますが、低年齢を対象に行うことのメリットも見逃せません。ここでいくつか挙げてみましょう。

勉強に対するハードルを下げることができる

デジタル教材の中に含まれた多種多様なデータが、従来の方法では困難だった子どもたちの学びを助けてくれます。

●字を読むことが苦手 → 文字の拡大、表示する文章量の削減、ふりがな(ルビ)
●イメージすることが苦手 → アニメーション・動画

この他にも、音声による補助や解説があります。これらデジタル教材の持つ特徴により、学習のハードルを下げることができます。

音声や動画での学習が可能

デジタル教材では、音声や動画による学習が可能です。これまでの教材では、文章・静止画像が中心でした。中には朗読や歌唱のテープやテレビ番組などが使われることもありましたが、設備は少なく操作が複雑でした。

デジタル教材では、音声や動画などもワンタッチで見られるので、小学生でも簡単に扱えます。

自分で主体的、対話的に学ぶことができる

デジタル教材を使うことで、子どもは自ら主体的かつ対話的に学ぶことができます。なぜなら、デジタル教材はコンピュータにより、こちらの操作に応じて必ず反応を返すように作られているためです。

そのため、使用者は行動と反応の対話的な繰り返しができます。よって、子どもは自分からどんどん新しい情報に触れ、学ぶことができるようになります。

また、デジタル教材のつくりによっては、教材と学習者だけで学習が完結させることも可能です。

生徒や子供の学習状況を把握できる

デジタル教材を通して学習したデータは蓄積されていきます。AIを駆使することで、大量の回答結果から瞬時に苦手なポイントについての詳細な分析が可能です。

分析結果は指導者が子どもの状況を把握するためにも活用できます。また、保護者と共有することでより丁寧に子どもの学習をサポートすることができます。

デジタル教材を小学校で用いるデメリット

メリットも多いデジタル教材。しかし、小学校で使う場合は6歳~12歳の子どもにとっての安心・安全を考える必要があります。デジタル教材を安心して導入するために、デメリットについて知っておきましょう。

視力が悪くなる可能性がある

視力の発達は6~8歳ごろに完成すると言われていますが、完成前に負担をかけてしまうと以降の視力に影響が出ることがあります。視力の低下を防ぐために日本眼科医会が出している資料の一部を紹介します。

(以下引用)
●画面は眼から 30 ㎝以上離して見る
●30 分に 1 回は、20 秒以上、画面から眼を離し、遠方を 見るなどして眼を休める
●近視の抑制効果が期待される屋外活動を奨励
引用元:学校保健ポータルサイト内
「ICT 教育・GIGA スクール構想と眼科学校医の関わり ●眼科学校医が知っておくべき 25 のポイント◆」
(ページ内リンクよりPDF参照)
(以上引用)

このデメリットについては子ども自身に理解させることも重要です。しかし、子どもが自分で気を付けることは難しいものです。周囲の大人が意識して声をかけていく必要があります。

タブレットへの依存が懸念される

タブレットは教科書やノート、ドリルにテストなど便利に使える一方で、依存状態になる可能性があります。

●タブレットなしの授業では落ち着きがない
●休み時間もずっと画面を見ている
●タブレットを取り上げると感情が爆発する

「子どものタブレット依存」は起こり得ない未来ではありません。適宜休憩を挟むなど連続で使う状況は避けましょう。

セキュリティや、故障時の対策が必要になる

子どもたちがインターネットを利用する場合には、有害・不適切なコンテンツから子どもを守る仕組みも必要です。コミュニケーションツールとして利用する場合は個人情報の管理も重要になっていきます。

機器の故障やセキュリティはシステムで防ぐこともできますが、子どもたちにもITリテラシーとして教えていく必要があります。

2024年小学校にデジタル教科書本格導入・今後の見通し

2019年12月に発表された文部科学省のGIGAスクール構想では、「2024年に小学校へデジタル教科書を導入する」と定められました。

そのほか、デジタル教科書だけではなく、IT技術を教育へ活用する態勢を作るためにさまざまな目標が定められています。

文科省はGIGAスクール構想の実現を目指す

GIGAスクール構想は「学校における一人一台端末」と「学校内で端末を自由に使える通信環境整備」が大きな柱となっています。

一人一台端末については、2021年度時点で2023年度中に達成する見込みが立てられており、更に加速するための予算組みがなされています。

ほかにも、緊急時に家庭でオンライン学習ができる環境づくりやICTを活用した学習活動のための教員用資料作成、経済産業省と連携したEdtechサービスによるデジタル教材の導入など、積極的に教育の情報化を推し進めています。

複数の教科書がタブレット1つに置きかわっていく

2022年度は1~2教科のデジタル教科書の整備が行われました。

デジタル教科書のデータ自体は、多くの教科・出版社で揃いつつあります。そのため、予算や設備の問題が整えば、すぐに複数の教科書をタブレットに置きかえられる状況です。

実際に2022年度の事業で行われたデジタル教科書の導入では、少なくとも23を超える出版社がデータを提供しています。デジタル教科書の「質」についてはまだ実証の途中とされていますが、「机の上にタブレット一つで十分」となる日も目前となっています。

今からデジタル教材を使ってICT学習に親しもう

小学校におけるデジタル教科書の本格導入は「2024年までに」とされています。積極的な活用がされている学校がある一方で、「導入ができていない」、「導入したが十分な活用ができていない」という学校も少なくありません。

デジタル教科書のような授業で一斉に使う教材は、導入や活用法の周知など環境が整うまで時間がかかります。しかし、個人向けのデジタル教材であればインターネットから誰でもアクセスできるものがたくさんあります。操作が難しいものばかりではなく、簡単に利用できる教材も数多く存在します。パソコンでもタブレットでもスマホでもいいので、まずは実際に使ってみることが大切です。

まとめ

ここまで、小学校におけるデジタル教材の状況と今後について紹介しました。

●現在進められているデジタル教科書の導入について
●デジタル教科書やデジタル教材の活用について
●小学生を対象にデジタル教材を使う場合のメリットとデメリットについて
●GIGAスクール構想を中心とした今後の流れについて

タブレットもスマホも、子どもたちにとっては最早ペンやノートより身近なアイテムです。既に欠かせなくなったこの便利な道具を、子どもたちがより上手に使えるようにしてあげましょう。

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