「STEAM教育とは何のこと?」
「STEAM教育が必要とされる理由は?」
教育業界の新しい取り組みについて疑問を抱く人もいるでしょう。
STEAM教育とはどのような内容なのか、注目された背景は何かについて徹底解説。STEM教育との違いやSTEAM教育の具体的な事例、抱える課題についても説明します。この記事を読めばSTEAM教育について理解が深まります。
STEAM教育とは?頭文字をとった5科目も解説
STEAM教育とは5教科の頭文字から付けられた名称です。STEAM教育の概要と、構成する5教科の内容を詳しく解説します。
STEAM教育とはさまざまな分野を横断して学習する教育方針
STEAM教育は教科ごとに分けず、さまざまな分野をつなげて学習する教育方針です。教科の中身は以下5つです。
・科学(Science)
・技術(Technology)
・工学(Engineering)
・芸術(Art)
・数学(Mathematics)
教科の枠にとらわれず、横断的に学習していくのがSTEAM教育です。
STEAM教育の5つの科目について詳しく解説
STEAM教育では主な5科目を取り上げ、科学や技術を活用できる人材の育成や市民リテラシーの向上を目標としています。STEAM教育に欠かせない5教科について項目ごとに解説します。
S:Science(サイエンス・科学)
科学はSTEAM教育でも重要視されている教科です。産業の経済的発展に役立つ人材育成が目的とされているためです。国際数学・理科教育動向調査(TIMSS2019)によれば「理科が楽しい」と答えた日本の小学生は92%と、国際平均を上回っています。ところが、中学生になると70%に減少し、国際平均より低い結果に。
科学を学び、仕事に生かせる人材を育てるため、生徒が興味を持って科学に取り組めるような授業が求められています。
T:Technology(テクノロジー・技術)
テクノロジーや技術分野にも力を入れるのがSTEAM教育の特徴です。学校ではプログラミング教育が技術分野にあたります。
小・中学校ではプログラミング教育が取り入れられ、2022年度から高等学校でのプログラミング教育も必修となりました。ゴールを目標にプログラミングを行うことで、情報活用能力や問題解決能力を身に付けることができるのです。
また、デジタル機器を使いこなせるITに強い人材の育成も兼ねています。学校現場もIT教育を充実させ、生徒のITリテラシーを高める工夫が必要です。
E:Engineering(エンジニアリング・工学)
STEAM教育の工学では、生産力を高めるような人材育成が目標です。物の作り方やアイデアの生み出し方を学びます。
例えば、実際にロボットを作りプログラミングで動かすなどの活動です。設計図や電子回路の作成も学びます。
現在使われている道具がどのように生み出されたのかを知る学習も工学分野です。ものづくりの現場を知ることで、技術開発の方法や新製品を生み出すプロセスを学べます。
A:Art(アート・芸術、教養、政治など)
芸術分野では、美術や芸術だけでなく、教養や政治など幅広い分野を取り扱います。自分の思いを表現したり、伝えたりする力を養うのが目標です。
未来がどうなるか予測できない状態を「VUCA(ブーカ)」と表現します。不安定な時代、感性を大事にして創作や探究活動を行うのもSTEAM教育の目的です。STEAMのAには、基礎的な教養を表す「リベラルアーツ」も含まれます。学校で習う主要教科やコミュニケーション、環境や自然など幅広い分野を学び、教養を高める狙いがあります。
M:Mathematics(マスマティクス・数学)
数学分野では、計算や図形などの学習を行います。課題を解く中で、倫理的な考え方が身につき問題解決に役立ちます。
数学で身につく根拠に基づいた考え方は、相手を納得させる話し方につながります。論理的思考が身につくと、根拠に基づいた課題解決ができるようになります。
文部科学省もSTEAM教育を推進している
STEAM教育は文部科学省が推進している事業です。変化の時代に対応する能力の育成と産業を担う人材育成が目的です。
AIによるビジネスの変革が起こっていますが、新たな技術やビジネスを生み出すのは人間です。社会に出ると課題を多面的に見て解決しなければなりません。STEAM教育での横断的な学習を通し、物事をさまざまな方向から見て問題解決につなげる力が求められています。
1人1台端末やMEXBCTの導入、高等学校の「総合的な探究の時間」など、教育が大きく転換しています。STEAM教育を行うを進めるには最適な時期といえるでしょう。
S TEAM教育はなぜ必要?注目された背景は?
STEAM教育はなぜ注目されたのでしょうか。今の時代に注目された背景について分かりやすく解説します。
IT化やグローバル化に伴う社会の変化
IT化やグローバル化で社会が変化したのもSTEAM教育推進の一因です。
今までは人がデータ分析を行い、提案を行ったり機械を動かしたりしていました。AI技術の発展したSociety 5.0に入ると、AIが人に提案したり、自動で判断し機械を動かしたりする時代に変化します。
また、日本の人口は減少傾向にあり、国内需要だけでは企業の成長が見込めません。国際社会でも競争できる力を身につけ、世界を相手にビジネスできる力も求められています。
社会の変化により求められる人材も変化している
昔と比べると、求められる人材も変化しています。AIの発展で今まであった仕事がなくなるなど、働き方が変化しているためです。
今後は、ITを使って新たな産業を生み出したり、国際社会に通用する技術を身につけたりする必要があります。STEAM教育はSociety 5.0時代に活躍できる人材育成を目指しているのです。
STEAM教育のもとになった「STEM教育」
STEAM教育を知るため、前身のSTEM教育について確認しておきましょう。どのような教育が行われていたのか詳しく解説します。
STEM教育とは理系人材の育成を目的とした教育方針
STEM教育とは、理系分野で活躍できる人材育成を目的とした教育方針です。科学・技術・工学・数学を重点的に学習し、データを活用したAIを開発したり、技術開発を行ったりする人材の育成に力をいれていました。
「A」には社会問題の解決や創造性などが含まれる
STEM教育に芸術やリベラルアーツなどの分野が付け足され、現在のSTEAM教育に進化しました。SDGsの考え方が普及したように、今後の産業発展には社会問題や環境問題なども考慮しなければなりません。
複雑に絡み合った課題を解決するには、創造性も必要と考えられるようになりました。
STEAM教育の事例を紹介
STEAM教育は実際どのように行われているのでしょうか。日本と海外の取り組み事例を紹介します。
日本でのSTEAM教育の取り組み事例
日本での取り組みとして、プログラミング学習が挙げられます。小学校から高等学校まで導入され、論理的な思考力と問題解決能力が身につき、ものづくりについても考えるきっかけとなります。
兵庫県では「STEAM教育実践モデル校事業」を立ち上げ、高等学校で実践しています。企業と連携し、求める人材にマッチした教育を探るなど兵庫型STEAM教育モデルの作成を目指しています。
⽂部科学省のウェブサイトにおいて、STEAM教育の実践例や卒業後の姿など、現場の様子も発信していく予定です。コンテンツを利用したSTEAM教育が進められるでしょう。
海外でのSTEAM教育の取り組み事例
海外でもSTEAM教育は活発に行われています。アメリカには、STEAM教育を推進する「High Tech High」という公立学校があります 。授業料無償で貧困層でも入学でき、平等な学習環境で学習できるのが特徴です。
学習スタイルもユニークで、教科書を使わず定期試験もありません。自ら課題を決め、解決していく学習が中心です。熱心な生徒や教員が多いため学力が高く、ほとんどの生徒が大学に進学します。
STEAM教育にはさまざまな課題が
STEAM教育にはどのような課題があるのでしょうか。ここではSTEAM教育を推進する上での課題を3つ紹介します。
課題①専門的なスキルを持ち合わせた教員の不足
STEAM教育を理解し、授業に取り入れられる教員が不足しています。科学や数学に特化した教師はいますが、教科の区別なく横断的に取り入れるのは経験不足であるためです。
教科の枠を超えた問題解決学習を目指すなら、課題の設定も重要です。社会問題や環境問題などに着目し、科学や工学などを組み合わせて解決できそうな課題を準備する必要があります。STEAM教育を行うには、教員も着眼点を変えていくことが求められるのです。
課題②ICT環境整備の遅れ
ICT環境整備が遅れているのも大きな課題です。1人1台端末は実現したものの、学校によってはインターネット環境がまだ十分に整備されていないことが課題です。
生徒が一斉にネット接続をすると、表示が遅くなったり動画が途切れたりするケースが実際にあります。指導案で動画を使った授業を考えても、インターネットが使えないのではデジタルを生かした授業作りができません。高速で安定したICT環境整備が必要です。
課題③家庭や地域による環境格差
STEAM教育の課題として、家庭や地域による環境格差もあります。ネット環境がない家庭に向け、モバイルルーターの貸し 出しも行われていますが、通信契約は各家庭のため費用がかかります。
地域的に貧困世帯など費用面で回線契約の維持が難しい場合も。家庭のネット環境が整っていないことで、家庭学習にデジタル教材を導入できない地域もあるでしょう。
まとめ
社会が激しく変わる時代、情報を多面的に取り入れ課題解決を行える人材の育成が求められています。学校では、教科の枠を超えて横断的に学び、課題発見や解決していく学習が必要です。
STEAM教育の中心となる5科目を中心に、高等学校なら総合的な探究の時間などに取り入れるとよいでしょう。
問題解決能力や想像力を養うには、基礎的な学習の定着も大事です。例えば、AI×アダプティブ学習「すらら」を活用すれば、生徒の苦手な部分を重点的に復習できます。基礎力を定着させた上でSTEAM教育を行うと生徒の能力アップが期待できます。