近年教育現場で注目を集めているものとしてカリキュラムマネジメントがあります。一言でいうと、子供や地域の実情に応じて学校の特色を考え、学校を作っていくことです。現在はそれぞれの学校が主体性をもって行うことが求められています。この記事では、カリキュラムマネジメントについて解説します。
カリキュラムマネジメントは学校全体で作るものです。そのため、管理職だけでなく全教職員がポイントをおさえておく必要があります。作成スケジュールの具体例なども交えながら、詳しく見ていきましょう。
カリキュラムマネジメントとは?注目されている背景も解説
まず、カリキュラムマネジメントとは何なのでしょうか。注目されている背景や文部科学省の見解にも触れながら、解説していきます。
カリキュラムマネジメントとは全教職員で学校の特色を構築していく活動のこと
カリキュラムマネジメントとは、簡単にいうと学校の特色を全教職員で作り上げることです。子供にどのような能力を身につけてほしいか、どう育ってほしいかを考え、それに沿った教育活動を行っていきます。
もちろん、子供に身につけてほしい力は多々ある上、教職員一人ひとりの考えもあるでしょう。しかし、時間や予算には限りがあります。そのため、一丸となって同じ方向を向き、学校を作っていく必要があるのです。
カリキュラムマネジメントの概要
学校の特色で代表的なものといえば、各学校ごとに立てる教育目標とカリキュラム(教育課程)があります。子供や地域・社会の現状から作られた教育目標に基づき、さらに具体的な計画(カリキュラム)が作られます。
マネジメントには管理も含まれるため、ただこれらを作って終わりではありません。実際に年間計画に沿って学校を運営しながら、適宜問題なく運営できているか、子供たちに合っているか、振り返りや改善を行います。管理には運営に必要な地域人材の確保や機材の準備なども含まれます。
カリキュラムマネジメントが今注目されている理由
カリキュラムマネジメントが今注目されている理由として、文部科学省が重要視していることが挙げられます。
文部科学省は、将来の変化予測が難しい時代、かつグローバル化や情報化が進む中で、社会に対応できる人材を育てる必要があると提唱しています。その理念のもと、新学習指導要領が作られています。
新しい社会や考え方に対応するためには、学校のあり方自体も変える必要があります。そのため、各学校が主体性をもってカリキュラムマネジメントを行うことが重要視されているのです。
カリキュラムマネジメントの対象となる4つの項目
カリキュラムマネジメントには対象となる4つの項目があります。具体的に一つずつ解説します。
教育目標のマネジメント
まず、カリキュラムを作成・実施する上で大事な教育目標の作成です。子供に身につけてほしい資質や能力を考え、教育目標を決定します。
これは、学校にいる子供の様子や地域の状況を考慮し、現実的に作る必要があります。目標自体は大枠のものであっても、目標に向かうためにどのようにしていくかの道筋を立てなければいけません。
カリキュラムの運営
目標が決まったら、それに沿ったカリキュラムを作成します。具体的にどのように授業単元を組むのか、教科間や学年間の連携はどのように行うかなど、実施可能なレベルに落とし込んで考えます。
作成ができたら、次は実際の運営に入ります。実施して終わりではなく、適宜振り返りや改善が必要です。改善が必要であれば、その都度年度当初の計画から変えていきます。これにより、さらに子供に合ったよりよいカリキュラムとなるからです。振り返りや改善を含めた運営は、全ての教職員が教育活動を通して行うものです。
カリキュラムの管理
文書形式の作成や校内研修・授業実践の共有など、管理方法の決定や機会を設けることも大切です。大きな学校組織をまとめるために、カリキュラムをどのように管理するかが求められます。
また、教職員は入れ替わりもあるので、適切な管理を行い引き継いでいくことも必要です。管理は必ずしも管理職だけではなく、教務主任や学年主任など中核的な教職員も役割を担うことがあります。
カリキュラムのための条件整備
カリキュラムを計画通りに実施できるように、条件の整備も大切なポイントです。カリキュラム検討時間の作成・学校体制作り・地域人材の活用・学校設備の利用など、条件は多岐にわたります。どれも運営に必要なものです。
条件整備は、特に管理職が力を発揮すべき分野です。適切な条件整備が行われると、カリキュラムマネジメントを行いやすくなります。
カリキュラムマネジメントで気をつけるべき3つのポイント
文部科学省は「学習指導要領等の理念を実現するために必要な方策」において、3つの側面からカリキュラムマネジメントをとらえています。
ポイント①教科にとらわえれない横断的な視点をもつ
これからの時代に必要な資質・能力は、各教科の知識を覚えるだけではなく、幅広い視点から自分で考え行動することが求められます。そのためには、教科にとらわれない横断的な視点をもつことが必要です。
そのためには、教科間で連携してつながりを作っていくことが求められます。特に教科担任制である中学や高校では独立した授業を行う傾向がありますが、連携を意識することが大切です。学校が一丸となってカリキュラムマネジメントを行うことで、つながりが作りやすくなります。
ポイント②地域との連携や教育に必要な人材を外部に求めるのも重要
学校も地域社会の一部であり、今後はより社会に開かれた学校にしていくことが求められています。文部科学省も、社会に開かれた教育課程を推進しています。そのためには教職員だけの力では不十分であり、地域との連携や教職員にとらわれない人材の活用が重要です。
外部人材が行う授業や体験学習を通して、子供が地域とのつながりを実感できます。今後地域社会で活躍するためのよい経験にもなるでしょう。
具体的には、教職員でカバーしきれない専門的な内容を地域人材に伝えてもらったり、地域活動体験や職場体験を行ったりするなどがあります。
ポイント③客観的な視点に基づいた教育課程の編成をする
カリキュラムマネジメントは教職員の主観だけでは成立しません。教育課程の編成は、子供の状況や地域の現状など客観的に考えて行う必要があります。
また、実際に学校を運営する中でとれたデータを活用し、評価や改善を行うことも求められます。
カリキュラムマネジメントの年間スケジュール例を紹介
では最後に、カリキュラムマネジメントを実施するにあたって、年間のスケジュール例を紹介します。
前年度:来年度に向けての準備
カリキュラムマネジメントは、前年度からの準備が必要です。来年度に向けて、今年度の振り返りやカリキュラムの再検討などの準備を行います。
カリキュラムの作成にあたっては、長期的な視点や振り返りデータの活用が求められるため、ある程度の時間が必要です。年度当初は特に忙しいこともあり、新年度が始まってからでは準備が間に合わない可能性があります。そのため前年度から来年度に向けた準備を行います。
4月(新学期):年間計画表に基づいた授業の実施
まず、新学期が始まる前に教育目標・教育課程・年間計画の共通理解を改めて行います。理由として、新転任職員に伝達し、カリキュラムマネジメントを全員で行えるようにする必要があるためです。また、旧職員にとっても年度スタートのタイミングで改めて意識できます。
そして、教育目標やカリキュラムに基づいた年間計画表にしたがって授業を実施します。このとき、今後の計画や振り返り用に実態把握を行う場合もあります。
8月(夏季休暇中):振り返り、今後の準備
時間に比較的余裕がある夏季休暇中に、一度カリキュラムの振り返りを行います。カリキュラムマネジメントは全体で進めるものなので、管理職だけでなく全教員で行うことが望ましいです。
目標や実施状況の振り返りをして、必要であれば今後の計画の修正を行います。また、9月からの準備で教員研修を行ったり、必要な機材等を整理したりもします。
9~10月:今までの授業の改善内容を実施
夏季休暇中の振り返りを踏まえた上で、改善した授業内容を実施していきます。研究授業を行ったり、教員間で教育実践の交流を図ったりすることも適宜行っていきます。これにより、学校全体で授業レベルが上がっていくことが期待できます。
12~1月:目標に対する振り返り
年度末に向けた今年度の振り返りに繋げるために行うのが、教育目標に対する振り返りです。目標に改善が必要な場合、今後のカリキュラムや考え方を大きく変更する必要性も出てくるため、年度末に先立って早めに振り返りを行います。
振り返りは教職員のみの評価だけではありません。アンケートなどで子供や保護者からの評価をもらうこともあります。教育目標は達成できたのか、年度初めと比べてどう変わったのかを振り返ることで、来年度はどのようにしていくか方向性が見えてきます。
3月(年度末):今年度全体の振り返り、来年度に向けての準備
年度末は今年度全体の振り返りを行うとともに、再び来年度に向けた準備を行います。カリキュラムは教育目標達成に役だったか、達成するための体制に無理はなかったかなど、さまざまな角度から振り返ります。
この振り返りは、1年の総まとめとして学校全体で行い、共通理解すべきものです。振り返りを踏まえて来年度に向けた準備を行います。
まとめ
カリキュラムマネジメントは、学校が子供たちに教育を施していく上で重要なものです。教育目標はどうするか、目標達成に向けて実際の授業はどう運営していくかなど、日頃から意識して考える必要があります。学校ごとにあるカリキュラムマネジメントを理解した上で、教育活動を行うことが大切です。