あなたはラーニングピラミッドという言葉を聞いたことがありますか。
ラーニングピラミッドとは、学習方法と学習定着率の関係を表したものです。
テスト勉強や自主学習をしても、なかなか覚えられなかったという経験は誰しもあることでしょう。何かを学びたいときにラーニングピラミッドを覚えておくことで、より効率的な学習が可能です。
この記事では、ラーニングピラミッドについて内容を詳しく解説します。
ラーニングピラミッドは学習方法と学習定着率を表した図のこと
ラーニングピラミッドはアメリカ国立訓練研究所が発表しました。
ラーニングピラミッドで示す学習方法は、例えば、教師が大勢の生徒に一斉に教える講義形式や、実際の実技を取り入れながら学ぶ実習など、全部で7つに分類されています。各学習方法ごとの、学習内容の定着度をまとめたところ、ピラミッド状に表せたことが、その名の由来です。
ラーニングピラミッドを構成する7つの要素
ラーニングピラミッドは学習方法によって全部で7つの要素に分けられています。ここではそれぞれの方法と学習定着率をまとめました。
1.授業やセミナーなどの「講義」:5%
まずは、教師の話を大勢の生徒が聞くだけの講義です。
講義の学習定着率はわずか5%しかありません。つまり、普通に授業やセミナーを受けるだけではすぐに忘れてしまう可能性が高いということです。
もし内容を覚えておきたいのであれば、教師の話を聞きながらノートをとったり、予習や復習を行ったりするなど、話を聞くだけにしない学習に変えるのが有効です。
2.学習内容に関連する「読書」:10%
続いて、学習に関係する本を読む読書です。
本を読むことは、講義をただ受けるよりも自発的な分、定着しやすくなります。しかし、ただ何となく文字を目で追っているだけの読書では学習が身につくとはいえません。定着率も低く、わずか10%です。
読書においても、読む前に何が知りたいか考えたり、読後は学んだ内容を要約したりするなどの作業を取り入れると、より効果的な学びにつながります。
3.ビデオ・音声を用いた学習「視聴覚」:20%
読書より覚えやすいのが、ビデオや音声を用いた学習です。定着率は20%になります。
視聴覚教材を通して理解しやすい形で示されることで頭に入りやすく、学習の定着につながります。言葉や文字だけでは伝わりづらいことでも、図や音声効果を用いることでイメージしやすくなるためです。
現在はオンライン教材やYouTube上でも、さまざまな分野の学習動画があるため、比較的容易に取り入れることが可能です。
4.実験や見学などの「実演」:30%
実演とは、実験や見学など誰かが行っているものを見ることです。たとえば、理科の実験を見たり、社会科見学に行ったりするなどが該当します。学習定着率は30%です。
その場で体感すると、音・におい・手触りなどその場で感じたリアルな印象が強く残ります。結果的に学んだことを忘れにくくなるのです。
5.ディベートなどによる他人との「議論」:50%
ここからはより能動的な学習方法になります。まずはディベートなどによる他人との議論です。
他人と意見を交わすには、議論するテーマや内容について深く理解しておく必要があります。そうでないと、リアルタイムで話を聞きながら自分の意見をまとめることが難しいからです。
また、自分の考えを話すことで、頭の中にある漠然とした学びも整理されます。結果的に定着率は50%と高くなっているのです。
実際に体を動かす「実践による経験・練習」:75%
次は、身体を動かしながらの学びとなります。たとえば、学校の実技科目や現地でのフィールドワークなどがあります。
頭だけでなく体全体を使って学ぶので、より学んだことが身につきやすいです。定着率は75%に伸びます。
数学や英語といった実技ではなく座学が中心の学びであっても、練習問題を”解く”、外国人と”会話する”などの実践を取り入れることで、定着率は大きく向上します。
研究・論文の発表を通して「他人に教える」:90%
最後は、他人に学んだ内容を教える行為です。
一見、学習方法には見えないかもしれませんが、定着率は90%と高い効果があります。教えるためには、内容についての理解やわかりやすく伝えるための応用力、質問に答えられる深い知識が求められるからです。付け焼き刃の知識では難しい行為といえるでしょう。
たとえうまく教えられなくても、準備や実際の経験は大きな学びとして身につきます。教える中で自分の課題やわからない点が見つかれば、他の方法でさらに学び直すことも可能です。
ラ ーニングピラミッドはなぜ注目されるのか?
ラーニングピラミッドが注目されている要因として、2つの学習方法に分けられることと、その効果を分かりやすく示していることにあります。
学びの種類と効果がわかりやすい
まず、ラーニングピラミッドでは、受動的な学びと、能動的な学びがあることをわかりやすく示しています。受動的な学びは、講義・映像などの視聴・実演などの視聴等です。能動的な学びは、議論する・自ら実践する・他人に教える、等が該当します。
この2種類の学びの方法と学習定着率という観点からの効果が、1枚の絵でわかりやすく整理されているため、効果的な学びについて自ら確認したり、人に伝えたりする際に、利用しやすいという特徴があります。
アクティブラーニングの学習定着率以外のメリット
アクティブラーニングには学習定着率以外に、自分で動いて学びを身につけようとする主体性や、教師や生徒同士での対話から身につく対話力が向上するといったメリットがあります。
このメリットは現代社会に求められる能力と重なることもあり、各国の教育で重要視されています。現代ではITなどの技術進歩の影響を受け、主体的に行動して新たなものを生み出せる人材が求められているからです。
日本も各国と同様にアクティブラーニングを推進しており、新しい学習指導要領にも「主体的・対話的な深い学び」として登場しています。
ラ ーニングピラミッドを活かした授業のポイント
ラーニングピラミッドを活かして学習を身につけるための授業を行うときには、いくつかのポイントがあります。段階的に生徒が能動的に学べるように、ポイントをおさえながら授業を行っていきましょう。具体的に気をつけるべきポイントを紹介します。
学習者の状況を考える
より効果の高いアクティブラーニングを実施するためには、実は、基礎力を磨くことが前段階として大切です。学習の評価は単純なテストの点数だけではありませんが、たとえば、基礎が身についていない状況でディベート形式の授業を行っても、十分なアクティブラーニングは成立しにくいです。
もちろん、基礎を磨くうえでも、シンプルな授業以外の取り組みは有用です。例えば、授業で発表させるといった取り組みは、比較的容易かつ、自らの声を使うという点で能動的です。
すでに多くの教員がされているように、テストの点以外にもさまざまな観点から、生徒の状態を把握に努めることも大切です。
個人に合わせたフィードバックやフォローを行う
続いて、生徒個人に合わせたフィードバックやフォローを行いましょう。たとえば、現在の学習課題を伝えたり、具体的な苦手分野やその学習方法復習を提示するなどです。
生徒もどこが課題かが分かり、やみくもに学習を進めるよりもはるかに効率的に復習できるためです。
AIドリルを利用することで、対多人数で把握しにくい生徒一人一人の弱点の把握や、必要箇所の学習提示が飛躍的容易になります。またスタディログを参考にすることで、日の目を浴びにくい個々の努力を確認し、承認して上げやすくなるという利点もあります。
生徒同士で教え合う時間を作る
ある程度学習が身についてきたら、生徒同士で教え合う時間を作るのも効果的です。
わかりやすく教えようとする活動は、学びの振り返りや応用につながります。また、お互いの考えを交わすことで、新たな観点の発見など学びが広がることもあります。教え合う時間は学びを定着させたいときに有効です。
生徒の学習モチベーションを保つ施策を考える
ラーニングピラミッドを活かした授業では、生徒が能動的に学んでいく必要があります。そのためには生徒自身の学習モチベーションが重要です。
教師側は、生徒がドロップアウトしないように、モチベーションを保つ施策を考えることが求められます。たとえば、生徒の興味をひく実演をしたり、面白くなるよう学習にゲームを取り入れたりするなどです。
ラーニングピラミッドが嘘だと言われる理由は?
ラーニングピラミッドは嘘だという意見もあります。その理由は、科学的根拠がないからです。特に、学習定着率の数字が5%や20%など非常にきれいな数字で表れるので、嘘らしいと言われることがあります。
確かに科学的根拠はなく、実際の数字通りに学習が定着するとも言い切れません。しかし、経験としては実感できる方が多いのではないでしょうか。ただ教師の話を聞くだけの講義よりも、自分から動いて学習したほうが学びになったはずです。
またさまざまな学習方法を知ることで、より自分に合った学習を試す活用方法もあります。
このように、ラーニングピラミッド自体に根拠がなくても、活用することで学習を身につけたいときに役立つでしょう。
まとめ
さまざまな学習方法と、その学習定着率を示したラーニングピラミッド。何かを学ぶときに覚えておくことで、効率的に学習したり、学んだ内容を身につけたりするのに役立ちます。
特に、学習したことがあまり頭に入らないという人は、部分的にでも定着率が高い学習を取り入れることで学習が身につく可能性があります。ぜひラーニングピラミッドを活用して、学習や授業を行ってみてください