近年注目を集めているリメディアル教育とは?実施内容や注目を浴びるようになった背景を解説

2022/09/30(金)

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授業についていけない学生に対して学習の補習を行うリメディアル教育。日本では特に大学で行われることが多い教育です。この記事では近年注目を集めているリメディアル教育について、具体的な内容や注目を浴びるようになった背景を解説します。

リメディアル教育とは?概要と実施されている種類を解説

リメディアル教育とはそもそもどのような教育なのでしょうか。まずはリメディアル教育の概要と、具体的な種類を紹介します。

リメディアル教育とは「学習の遅れている学生に対する基礎学力を高める補修教育」のこと

リメディアル教育とは、学習の遅れている学生に向けた基礎学力を高める補習教育のことです。もともとは約100年前にアメリカの大学が、移民の学生に向けて授業に必要な英語力を身に付けさせるために始めたものとされています。現代の日本では大学でリメディアル教育を取り入れていることが多いです。学生自体の学力の低下も一因ですが、授業内容が高度のため、授業についていけない学生が多いからと考えられます。

現在実施されている主なリメディアル教育は4種類

現在実施されている主なリメディアル教育は次の4種類です。ほとんどが大学で実施されているものですが、一部大学入学前に行われるものもあります。それぞれの内容を解説していきます。

高等学校までの基礎教育復習型

1つ目は高等学校までの基礎教育復習型です。大学に入ったは良いものの高校までの学習内容が抜けており、大学の授業に付いていけないという状況を防ぐために行われます。入学後に数学や英語など教科テストを実施し、学生の学力を判定する大学もあります。そこで習熟度別に分かれ、必要な場合はリメディアル教育で補習をするという流れです。また、入学当初など学生全員にリメディアル教育を行う場合もあります。リメディアル教育の単位が必修の場合、学生はきちんと授業に参加して成績を修める必要があるので、単位を落とさないように集中して学ぶきっかけとなります。

大学の専門課程教育の基礎学習型

2つ目は大学の専門課程教育の基礎学習型です。理学や工学など、高等学校までの学習範囲には含まれていないものの、今後大学の授業を行う上で身に付けるべき基礎的な内容を学びます。入学当初や大学一年時に行われることが多いです。学習に遅れがある学生だけでなく、全学生に向けて行われる場合があります。また、最近では文系理系どちらからでも入れる文理融合学部が増えてきました。しかし、文系選択だった学生が急に理系の授業を受けたり、逆に理系選択の学生が文系授業を受けたりするのは大変です。そこで、授業の導入として基礎的な内容をリメディアル教育を通して学習する文理融合学部もあります。

大学教育の学習支援型

3つ目は大学教育の学習支援型です。こちらはリメディアル教育を授業で行うのではなく、学生支援センターや学習支援室など、専門の組織が授業外でサポートします。学生一人ひとりに個別にサポートできることが多いので、より学生の困難さや学習ニーズに対応したリメディアル教育を行いやすいです。一方で、リメディアル教育が必要な学生をどう学習支援につなげていくかという課題もあります。現在は何らかの学習支援サポートを行っている大学が多く、教員だけでなくより相談しやすい学生サポーターがいる場合もあります。

大学入学前教育型

4つ目は大学入学前教育型で、名前の通り大学の入学前に行うものです。特にAO入試や推薦入試で早期に合格が決まった学生に向けて行われます。レポートや通信教材など、自宅での学習を促すものが多いです。AO入試や推薦入試では学力以外の観点が重視されますが、大学に入る以上やはり一定の学力は必要です。また、合格が決まった安心感から、学生が勉学から更に離れてしまうこともあります。そうならないために、入学前から教育を始めているのです。

リメ ディアル教育が必要になった背景とは


では、このようなリメディアル教育はなぜ必要になったのでしょうか。これには時代の背景によって学生の質が変わったことが影響しています。具体的に解説していきます。

入試 の多様化による一部の学生の学習頻度の低下

1つ目はAO入試や推薦入試など一般入試以外に入試制度が多様化したためです。文部科学省が2020年に英語の入試方法を調査した結果によると、全体の約半数弱が一般入試以外で入学しています。特に、私立大学では一般入試以外で入学する傾向が強いです。少子高齢化が進んだ現在、定員割れする大学も増えているため、定員数を確保するのに必死だからだと考えられます。定員数の確保のためには、一般入試前の早い段階で学生を合格させたほうが安泰です。もちろん、全ての推薦・AO入試がその限りではありません。しかし、学生の確保のために中には名前さえ書けば受かると言われるほどの入試もあるくらいです。そうなると、一部の学生は学習頻度が高校時代から低かったり、大学が求める学力に追いついていなかったりします。そのため、大学の授業についていけない事態が起こり、リメディアル教育が必要になるのです。

「ゆ とり教育」による全体的な学力の低下

2つ目はゆとり教育によって全体的な学力が低下したためです。ゆとり教育によって元々の学習内容が以前より削減されたので、大学の授業をゆとり教育前と同じように行っても理解できない学生が増えているのです。しかしその一方で、ゆとり教育世代はもうすぐ全ての学年が大学を卒業します。その後どう変わるかは注目ですが、ゆとり教育以外にも学力低下の要因は絡んでいるので、リメディアル教育が必要な傾向は続くのではないかと考えられます。

リメ ディアル教育を行うのに有効なタイミングは入学前?


このように、大学で実施されることが多いリメディアル教育ですが、本来有効なタイミングは大学入学前だといわれています。なぜなら、やはり大学にはリメディアル教育以外の本来の学習もあるので、学生にとって二重の負担となってしまうからです。さらに「大学生になったのに、今更高校までの学習を受けなければならないとは」と感じ、モチベーションが低下してしまう学生もいます。そのため、入学前にリメディアル教育を行ったほうが効果は上がると考えられています。

今注目されているリメディアル教育の手法


今注目されているリメディアル教育の手法として、インターネットを使ったオンライン学習が挙げられます。なぜなら、オンライン授業は対面授業と比較し、個人のニーズに合わせた教育がより容易だからです。具体的に解説していきます。

オンラインで個別のレベルに合わせた学習を

オンライン学習では、個別のレベルに合わせた学習がしやすいです。学習の遅れを補講するといっても、どの程度遅れがあるのかは学生によって違います。それに対応するためには、習熟度別にいくつかの授業を行う必要があります。しかし、対面授業では授業ごとに教員や教室の確保が必要となるため、困難です。オンラインの場合は一度授業動画を撮ればインターネット上にアップするだけでよく、それ以上のコストはかかりません。結果的に学生がレベルに合わせて授業を選択することができます。

個別学習ができる「e-ラーニング」が効果的と有力視されている

さらに、eラーニングで個別学習を行うこともリメディアル教育に役立ちます。eラーニングでは学習履歴や成績をインターネット上で一括管理することができます。そのデータを利用して一人ひとりに応じた個別学習がよりしやすいのです。eラーニングは学習に遅れがある部分だけをピンポイントで補習することができるので、より効果的であると有力視されています。

リメディアル教育の今後の課題


こうして実用が広まっているリメディアル教育ですが、今後に向けた課題もあります。ここではリメディアル教育の課題を解説します。

高等学校と大学の連携も重要になってくる

リメディアル教育をより効果的に行うためには、高等学校と大学の連携が必要になります。特に大学入学前のリメディアル教育は高等学校在籍中に行うことになるので、より連携が重要です。大学では入学してしまえば教員や学生支援スタッフなどの学習支援体制があります。しかし、入学前にリメディアル教育の教材を渡しても学習をそれ以上サポートすることができません。そこで、高等学校の教員が学生をサポートすることができれば、リメディアル教育の効果は高まります。高等学校の負担もあるので、連携の実現には高等学校と大学の綿密な調整が必要になりますが、両者が連携することでリメディアル教育はさらに進むと考えられます。

小・中・高等学校それぞれ在籍中に基礎学力を習得しておくこと

リメディアル教育はもちろん必要ですが、本来であれば大学に行く前に基礎学力を習得しておくことが大事です。小学校は小学校のうちに、中学校は中学校のうちに学力を身に付けることが理想的です。この基礎学力とは国語や数学など教科の知識だけではありません。思考力や判断力といった力も、高等学校までに習得しておくことで大学の授業で役立ちます。

海外版リメディアル教育の事例【3選】


では最後に、海外の教育制度もふまえながら海外版リメディアル教育の事例を紹介します。

アメリカの事例

アメリカでは日本の大学にあたる4年制の総合大学以外に、コミュニティカレッジと呼ばれる2年制の大学があります。アメリカの4年制大学に入学するには高等学校までの成績が条件となりますが、コミュニティカレッジは誰でも受け入れることが方針です。コミュニティカレッジには4年制大学レベルの学力を目指して基礎から学べるコースがあります。そこから4年制大学に編入できる道も用意されているのです。学生に対して履修相談や個別指導などを行う、アカデミック・アドバイザーと呼ばれるスタッフもいます。留学生や社会人学生などを含めた多様な学生がいるためです。

フランスの事例

フランスでは義務教育段階でも留年制度があります。現在留年自体は減ってはきているものの、学習の理解度が足りずに留年することはそう珍しいことではないのです。学習の遅れが出てきたら、無理に進級せずもう一年同じ学年でゆっくり学び直すことができるので、結果的には本人にとっても良い制度でしょう。

カナダの事例

カナダもアメリカと同じように2〜3年制のコミュニティカレッジがあります。コミュニティカレッジは通常の4年制大学に比べて入りやすく、一般教養コースを選べば大学で通用する学力を身に付けることが可能です。こちらもコミュニティカレッジから4年制大学に編入するルートがあります。

まとめ

学習の遅れを取り戻し基礎学力を身に付けるために行われる教育、リメディアル教育について解説しました。リメディアル教育では個人のニーズに応じた学習が効果的です。その方法として、オンライン学習が注目されています。今後オンライン学習の活用が広まるにつれ、よりリメディアル教育も進んでいくと考えられるでしょう。

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