近年、コロナ禍により従来の授業とは異なる授業スタイルが増えています。その中でも特に注目されているのが、反転授業です。反転授業は思考力・表現力等を育むことを目的にした近年の教育と相性がよく、多くのメリットがあります。そこでこの記事では、反転授業に注目して効果やメリットなどを解説していきます。
反転授業とは?一斉授業との違いを解説
反転授業は従来の一斉授業とは全く異なるものです。まずは反転授業について詳しく解説していきます。
反転授業とは「授業と予習を反転」させたもの
反転授業とは、「授業と予習を反転」させた授業のことを言います。従来の一斉授業といえば、学校の授業で知識のインプットを行い、宿題として授業の復習を家庭で行うものでした。一方、反転授業は従来の一斉授業の授業形態を「反転」したものです。家庭で授業内容のインプットを行い、学校の授業では予習した内容の演習やディスカッションなどを行います。
反転授業の目的と効果
反転授業を可能にした背景に、オンライン教材の充実化が挙げられます。子どもだけで行う家庭学習も、オンライン教材や映像授業によってさらに容易になります。そして、学校ではさらに高度な演習やディスカッションなど対面授業でしか行えない授業を行います。そうすることで、知識の定着や理解度を高めることができます。実際、ノースカロライナ大学の研究によると、反転授業の導入によって、試験結果が2年間で5.1%向上したという結果が出ています。
一斉授業が見直されている背景
なぜ一斉授業が見直され、反転授業が導入され始めているのでしょうか。この答えは、一斉授業の弱点にあります。従来の一斉授業は、講義形式となっており、インプット重視となっていました。しかし、インプットとアウトプットの割合は「3対7」にすると良いと言われています。これは、コロンビア大学の研究により明らかとなっています。この研究は、子どもたちをグループに分け、覚える時間(インプット)と練習する時間(アウトプット)の比率をそれぞれのグループごとに異なるように設定し、人物名を覚えさせるというものです。その結果、覚える時間(インプット)を全体の3割、練習する時間(アウトプット)を7割にしたグループが高得点を取りました。インプットの時間よりも問題演習やディスカッションなどのアウトプットの時間を増やすことが重要なのです。そして、インプットをオンライン教材や映像授業によりいつでもどこでもできるようになったため、一斉授業は見直され始めました。
反転授業を行うために必要なもの一覧
反転授業を行うためには、下記のものが必要になります。
【教員】
・スマホやカメラ
・ホワイトボード
・パソコン
【生徒】
・ICT端末
・通信環境
教員は、授業を撮影・編集するためのものが必要になります。安価なものを購入すると、生徒が見づらかったり編集できなかったりするため、注意して購入する必要があります。生徒は、授業動画を視聴するためのICT端末や通信環境を整える必要があります。必要に応じて、生徒にイヤホンやヘッドホンなどを配布して授業に集中しやすくしてあげるようにしましょう。
反転学習を行う3つのメリット
反転学習には、主に3つのメリットがあります。1つずつ確認していきましょう。
メリット①生徒の理解度や状況を把握しやすい
メリットの1つ目は、反転授業を行うことで、生徒の理解度や状況を把握しやすくなることです。これまでの一斉授業では、講師が一方的に話す時間が多くありました。一方、反転授業では既に知識を身に着けた状態で授業が始まるので、生徒とコミュニケーションを取れる時間が増えます。生徒とコミュニケーションを取る時間が増えることで、それぞれがどこでつまづき、どこまで理解できているかを把握しやすくなります。
メリット②授業内容をアウトプットメインにできる
メリットの2つ目は、授業内容をアウトプットメインにできることです。これまでの一斉授業では、授業時間に知識のインプットを行っていたため、アウトプットの時間を多く取れませんでした。一方、反転授業では、学校の授業時間で演習やディスカッションなどアウトプットをメインとします。アウトプットの時間が多いほど、知識の定着率は高くなり、思考力・表現力など、現代に必要な力を養えます。
メリット⓷生徒のレベルに合わせた学習が提供できる
メリットの3つ目は、生徒のレベルに合わせた学習が提供できることです。これまでの一斉授業では、全員が同じ授業を行うため、理解している人が暇をしたり、理解できていない人が置いていかれたりという事態が起きていました。一方、反転授業では事前に自分のペースでインプットの時間を作れるため、苦手な分野であれば時間をかけて学ぶなど勉強量の調整が可能です。また、学力が高い人にとっても、さらに深い知識を得られるというメリットがあります。
反転授業の課題と対策
先述したメリットと共に、まだまだ課題もあります。ここでは、反転授業の課題とともにその対策についても解説します。
授業で使う教材準備の負担が増える
1つ目の課題は、授業で使う教材準備の負担が増えることです。一斉授業から反転授業にすることで、生徒が家庭で学習できるように、オンライン教材などの準備を行う必要があります。これまでの一斉授業の教材準備とは異なる部分も多いため、困惑する教員が多いことが想定されます。
タブレットやPCなどの授業環境の整備が必須
2つ目の課題は、タブレットやPCなどの授業環境の整備が必須だということです。ICT端末の配布やインターネット環境の整備は、まだまだ地域によって差があります。まずは、全国の児童生徒がICT端末を所持し、家庭学習の環境を整える必要があります。
反転授業を失敗させないための4つのポイントと注意点
最後に、反転授業を失敗させないためのポイントと注意点について解説します。
ポイント①良質な動画の準備
ポイントの1つ目は、良質な動画の準備をすることです。家庭学習で観る授業動画は、生徒が飽きないように工夫する必要があります。飽きない授業動画を作成するために、下記のポイントを意識して作成しましょう。
・動画時間はできるだけ短く
・板書はあらかじめ書いておく
・要点を絞った授業にする
eラーニング教材「すらら」のような授業動画付きの教材を利用すれば、教員が自分で動画を作成する必要がありません。良質な授業動画の準備が難しい場合は、授業動画付きの教材を導入するようにしてみましょう。
ポイント②生徒に反転授業に対する予習の大切さを理解してもらう
ポイントの2つ目は、生徒に反転授業に対する予習の大切さを理解してもらうことです。反転授業は、予習ありきの授業となっています。予習を怠ってしまうと、反転学習のメリットが発揮されません。生徒がしっかりと予習をしてくるように、生徒だけでなく保護者にも予習の大切さを十分に伝えておくことも重要です。
ポイント③予習にかかる時間を事前に教えておく
ポイントの3つ目は、予習にかかる時間を事前に教えておくことです。予習が大事と理解してもらえたとしても、放課後は部活などで忙しい生徒も多いでしょう。そんな中、やみくもに予習させると、生徒は負担を感じてしまいます。生徒に予習をしてもらうためには、工夫が必要です。予習の負担を感じないよう、事前に「予習は◯分程度かかるよ」と伝えておくことで、計画性を持って予習に臨めます。
ポイント④確認問題で知識を定着させる
ポイントの4つ目は、確認問題で知識を定着させることです。予習をさせて事前にインプットさせているとはいえ、確実に定着しているかどうかは分かりません。確認問題を行うことで、自身で定着できていない知識や問題を確認できます。特に定着できていない部分に関しては、もう一度授業動画を視聴してもらうのも有効です。
反転授業導入時の注意点
ポイントの他に、注意点についても解説します。集団指導の場合と個別指導の場合で注意点が異なります。それぞれ見ていきましょう。
集団指導の際の注意点
集団指導の際の注意点は、予習の習慣づけがうまくできるかどうかです。反転授業は予習をした前提で授業が進むため、予習をしていなければ授業についていけません。生徒が予習をする習慣を作れるように、使用する教材を工夫したり、家族に協力を求めたりするようにしましょう。例えば、家庭で一人でも予習できるように、ゲーム要素を取り入れた教材などがおすすめです。
個別指導の際の注意点
個別指導の際の注意点は、集団指導とは違って、予習時間よりも授業時間を工夫できるかどうかが重要です。個別指導の場合は、集団指導と違って予習ができていなくても、その生徒のペースに合わせられます。そのため、予習よりも授業内容を充実させることが重要です。
授業時間に、その子に合わせた演習問題などアウトプットの質を高めましょう。予習がバッチリできている子には応用問題を、できていない子には復習問題を提示するなどの工夫が必要です。
まとめ
今回は反転授業について解説しました。反転授業は一斉授業よりも思考力や表現力を育てられることが期待できます。ただし、反転学習には意識すべきポイントや注意点などもあります。オンライン教材などを効果的に活用し、充実したアウトプットの時間を作りましょう。