学校におけるICT教育の現状や課題を解説・活用事例も紹介

2022/10/19(水)

ICT

小学校

中学校

高校

ICT教育はネットワーク技術の発展という背景や、今後の激動の時代を生き抜くための手段として、国を挙げて進めている教育です。2020年には新型コロナウイルスの流行もあり、ICT教育推進の勢いがさらに加速しました。この記事では、学校におけるICT教育がどうなっているのか、現状や課題・活用事例を解説します。

学校におけるICT教育とは

「ICT」はさまざまな分野で日常的に聞かれる言葉です。では、学校で推進されているICT教育とはどのようなことを指すのでしょうか。具体的に解説していきます。

そもそも「ICT」とは情報と通信の技術を意味する

「ICT」とは情報通信技術のことで、「Information and Communication Technology」の略語となります。具体的には、インターネットなど通信技術を使い、人と人が繋がるコミュニケーション技術です。例えば、私たちの生活になじみがある、インターネット検索やチャット・通販などがあります。

「ICT」と「IoT」の違い

IoTは人が間に入らず、インターネットとモノが繋がる技術のことです。「Internet of Things」の略語となります。具体的には、インターネットを通して家電や機械を操作することです。

ICTとの違いは間に人が入るか入らないかという点があります。

「ICT」と「IT」の違い

ITは「InformationTechnology」の略語で、日本語では情報技術を指します。

ICTとITの意味はほぼ変わりません。厳密に違いをいえば、「IT」はパソコンやインフラなど技術そのものを意味するのに対し、「ICT」はどう活用していくかという技術の使い方を意味します。

現在、国際的にはICTのほうがよく使われており、日本でもICTという言葉を使うことが増えています。
例えば、2000年に政府が掲げたIT戦略であるe-japan構想ではITという言葉が使われていましたが、2004年以降のu-japan構想ではICT表記になりました。

ICTはさまざまな分野で欠かせない存在

ICTはいまや世界中に浸透しており、医療・福祉・観光・農業などさまざまな分野で欠かせない存在です。
データの共有や働き方改革など様々な目的で、さらにICTの活用が進んでいくことが予想されます。

ICT教育とはデジタルを活用した教育方法のこと

ICT教育とは、デジタルを活用した取り組み・教育方法のことです。ここでいうデジタルとは、パソコンはもちろん、タブレット端末・デジタル教科書・学習用ソフトなどさまざまな物が含まれます。

また端末を使って学習することだけでなく、それを使いこなすための学習もまた、ICT教育に含まれます。
ICT教育は、情報化社会において必要不可欠なスキルを育成する手段とされていますが、同時にICTの活用方法や安全に使うための決まりなどを学ぶインターネット・リテラシーも求められています。

文部科学省は「GIGAスクール構想」を推進している

ICT教育を進めるべく、文部科学省は2019年からGIGAスクール構想を推進しています。
GIGAスクール構想は、児童・生徒一人ひとりに端末を配布し、情報通信技術を活用して学ぶことを目的としています。

この背景にあるのが、「Society5.0」です。「Society5.0」とは日本政府が提唱する未来社会のビジョンで、この社会では、AI(人工知能)やIoT、ビッグデータ、ロボットなどの先端技術を活用して、経済発展と社会課題の解決を両立させることを目指しています。「Society5.0」の時代を生き抜いていくため、小中高等学校の児童・生徒にICTやその他スキルが求められているのです。

学校におけるICT教育の効果

ICT教育推進は国の方針ではありますが、どのような効果があるのでしょうか。

①遠隔授業を可能にする

②教育課題を解決できる

③将来のスキルにつながる

少子高齢化によって遠隔で学習できる環境が必要

現在日本では少子高齢化が進んでおり、特に地方では児童生徒数の減少から学校の統廃合につながっています。

学校の統廃合が進むと毎日遠方から時間をかけて通わなければいけない子供が出てきます。通学路が遠く送り迎えなど親の援助を必要とするケースもあるので、何らかの都合で行けない日が出てくるかもしれません。

また地方の子供以外にも不登校や病気などさまざまな理由で学校に通えないことや感染症や自然災害発生時で学校に通えない状況も考えられます。
この問題に対応するための解決策の一つが、ICTを活用した遠隔授業です。遠隔授業では、学校に行けない日も自宅からオンライン授業を受けられます。

これにより、遠方に住む生徒でも質の高い教育を受けることが可能になります。また、コロナ禍での経験を通じて、ICTの重要性が再認識されたことも、遠隔授業の普及に寄与しました。
ICTを活用することで、通常の授業形式では難しい生徒一人ひとりに合わせた学びの提供が実現し、よりパーソナライズされた教育が可能になります。このように、少子高齢化社会において、ICT教育と遠隔授業は今後の教育環境の重要な要素となるでしょう。

今までの教育課題をICTで解決することができる

多数の子供を教師1人が指導する従来の教育スタイルでは個に応じた指導に難しさがありました。
ICT化を進めることで一人ひとりの成績を管理しながらそれぞれに合った学習を提供するなど、個に応じた細やかな指導を行いやすくなります。

さらにICTのインタラクティブな教材を使用することで、生徒の理解度をその場で確認し、適切なサポートを迅速に提供できるようになります。
これにより、従来の教育方法では見逃しがちだった生徒の弱点を早期に発見し、改善することが期待されます。

ICT教育は各学校の特性に応じたカスタマイズが可能であり、教師と生徒の関係性も深化させる要因となります。
このように、ICTを通じた教育の進化は、教育の質向上の効果が見込まれています。

子供が生きる未来の社会で役立つスキルを身に着けられる

未来ではICTがより生活に密接していくでしょう。そうした未来を生きる子供たちには、無数の情報に流されずに正しくICTを活用する力が求められます。ICT技術の発展は凄まじい速度で進んでおり、今後もAIやロボット・VRなどさまざまな技術の進歩が予想されています。

しかし、技術発展がどのように進み、活用されていくかは不透明です。こうした変化が激しい社会に対応するためにも、ICTを使いこなして自分に役立てる力が必要です。

また、ICT教育を通じて、効率的に協働やコミュニケーションの方法を学ぶことができます。チームで問題解決に取り組む力を培うことで、将来の社会で必要とされるスキルを身につけることができます。

このように、ICT教育は未来の子供たちが社会で自立し、成功するために不可欠な要素となるでしょう。

GIGAスクール構想によって広がった学校におけるICT教育の現状

小・中学校でのICT教育の導入において、1人1台端末やインターネット環境などハード面はおおむね完了しています。
その結果、学校現場ではICT機器を利用した授業の実施が増え、生徒一人ひとりの学びのスタイルに合った教育が試みられています。

これにより、生徒の主体的な学びを促進し、意欲的に情報を活用する力を育む土壌が整いつつあります。
さらに、教育現場では教師のICTスキル向上も求められており、研修や支援が充実化されています。
そのため、ICT教育の効果を最大限に引き出すためには、環境整備だけでなく、教師と生徒が共に成長し続けるための取り組みが重要です。

ICT教育のメリットを解説

ICT教育は、教育を行なう教員側と教育を受ける児童・生徒側、それぞれにメリットが存在します。

児童・生徒側のメリット

・今までには実現できなかった授業で理解が深まる
ICT教育ではICT機器を使うことで、動画や音声などを含んだ、今までにない授業を実現できるため、授業の幅が大きく広がり、児童・生徒としても理解が深められます。

・生徒のモチベーションが向上する
授業に対して退屈だと思っていた生徒たちが、画像や映像などを使うICT教育になると、興味や関心を高めて、モチベーションが向上します。

教員側のメリット

・生徒に対して、効果的な授業を行える
教員はパソコンやタブレットを利用することで、黒板に書く時間やプリントを配る時間など、多くの時間を軽減することができ、その分個別指導に充てるなど効果的な授業が可能です。

・教員の時間短縮が可能になる
紙媒体の書類や問題を用意していた教員にとって、電子データでの準備に変わると非常に時間を短縮できます。また、インターネットを利用して、情報を早く集め、教材を作成することができるので、短縮した時間で授業の質も向上します。

ICT教育は、児童・生徒にとって新しい学びの形を提供するだけでなく、教員にとっても授業の効率化や質の向上に寄与します。これにより、全体的な教育環境が改善され、生徒の学習成果を高める期待も大きくなります。さらに、ICTを通じて、生徒同士のコミュニケーションや協働学習が促進されることも、将来的に求められるスキルの向上につながるでしょう。

ICT教育のデメリット・課題

ICT教育の導入には多くの利点がある一方で、いくつかのデメリットや課題も存在します。

地域格差

ICT環境の整備は進みつつも、デジタルデバイドの解消が求められています。地域や家庭環境に影響されることなく、平等に学べる環境づくりが重要視されています。
また教員のICT活用スキル向上が追いつかない場合もあります。このようなスキルの格差が、地域間での教育の質に影響を及ぼすことを懸念されています。

予算の確保が難しい

文部科学省や各自治体はすでに1人1台端末や高速インターネット環境の配備に多額のお金を掛けています。
しかし、ICT教育に必要なものはそれだけではありません。

デジタル教科書や学習システム・ソフトウェアなどのソフト面の充実や、ICT支援員・教員へのICT研修など人材育成が求められます。
これらの要素に対する予算を確保することが難しいため、全体的なICT教育の質を向上させるための取り組みがまだ十分に進んでいない状況です。
そのため、多くの学校が導入したICT機器を有効活用できず、教育現場での効果的な活用が妨げられてしまっています。

教員がICTによる授業をイメージできていない

ICT教育の効果を最大化するためには、教員自身のICTリテラシーの向上が不可欠です。授業においてICT機器をどのように活用するかを実践的に学ぶ機会が不足しており、その結果、教師がICT教育を行う際に不安や抵抗を感じることもあります。

加えて、ICT教育の導入には多くの時間とリソースが必要であり、教員の業務負担が増える可能性もあります。このような状況の中で、確実にICT教育が浸透していくためには、専門的な支援体制や研修が求められます。

【事例】学校でのICT教育はどのように進めるべきか

これから学校でのICT教育はどう進めるべきでしょうか。
先行している学校の事例を紹介します。

小学校でのICT活用事例

ICTで写真や動画を使うことで視覚的に授業を伝えられ、授業への理解度や意欲の向上につながっています。
どの年齢の子供にも視覚的支援は有効ですが、特にまだ読解力や理解力が発達途上にある小学校段階では大いに役立ちます。
調べ学習やレポートにも活用事例があります。例えば理科の植物観察レポートでは、1人1台のタブレットで写真を撮ることで、簡単に分かりやすくまとめることができました。

さらに、アートの授業においてもICTの活用が進んでいます。生徒たちはデジタルアートツールを使い、自分の作品を作成したり、他の生徒と共同作業を行ったりすることで、創造力を養う環境が整っています。

また、授業の終わりには、制作過程や完成作品のプレゼンテーションをICTを通じて行うことがあり、これがコミュニケーション能力や発表技術の向上にも寄与しています。

このように、小学校におけるICT活用は、学びの幅を広げるだけでなく、生徒一人ひとりの成長に寄与する多様な可能性を秘めています。

中学校でのICT活用事例

中学校では数学の問題をICTを使って分かりやすく表すことで、直観的な理解が容易になりました。
また、理科実験や技術授業などで作業を説明するときにも便利です。
タブレットで撮影したものをプロジェクタに投影したり、デジタル教科書を使ったりすることができます。

教師の説明だけでなく生徒の活動も、同じようにタブレットを使ってリアルタイムで共有可能です。
さらに、中学校ではグループ活動を行う際にもICTが活用されています。

例えば、生徒たちがプロジェクトに取り組む際、協働ツールを使って意見をまとめたり、調べたことを共有したりすることで、円滑なコミュニケーションが促進されます。
また、オンラインプラットフォームを利用すれば、授業外でも仲間と連携し、学びを深めることが可能です。
これによって、生徒は自らのペースで学習でき、サポートし合う関係性が生まれます。

ICT活用により、授業の幅が広がるだけでなく、生徒同士の協力を通じて深い学びが実現されています。

高校でのICT活用事例

英語や国語では、文章の音声を好きな速さで繰り返し再生することができます。これにより、分からない部分も再度取り組んで理解することが可能です。

また、生徒人数が多い高等学校では、タブレット上でテストを行うことで簡単に採点でき、結果を見比べることができました。
さらに、出欠状況や学習時間などもタブレットで一括管理し、教員や生徒のコストを削減している高等学校もあります。
加えて、高校ではオンライン学習が進んでおり、遠隔地にいる生徒とも同じ授業を受けられる環境が整っています。

これにより、時間や場所を選ばずに学ぶ機会が増え、生徒の自律的な学びを促進することが可能になっています。
加えて、ICTを活用することで、プレゼンテーションやグループディスカッションなど、より多様な学び方を実現する取り組みも増えてきています。
生徒は、情報を効果的に収集し、分析し、発表する能力を身に付けることができ、将来的な職業選択にも大いに役立つでしょう。

まとめ

ICT教育は各自治体や学校で次々と進んでいます。2021年は学校でICT環境の配備が進んだことからGIGAスクール元年と呼ばれるほどです。ICT教育のゴールはただICTを活用することではありません。

ICTを使いこなして変化の大きい未来に対応していく人材の育成です。これからはICTをどう授業に取り入れ、子供の成長につなげるかという活用方法に重点が移っていくでしょう。

特に、教育現場ではデジタル技術に対する理解を深めることが重要です。教師自身がICTをスムーズに活用できるスキルを持つことが、効果的なICT教育の実施に繋がります。
また、生徒たちにとってもICTは今後の社会で必須のスキルを身につけるための手段となります。彼らがICTを利用して学ぶことで、情報活用能力や問題解決能力が育まれます。

今後も学校のICT教育の動向から目が離せません。教育の質を向上させ、多様な学びの機会を提供するためには、継続的な改善と支援が求められます。

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