「アダプティブラーニング」とはなにか。「アダプティブラーニングとアクティブラーニングって何が違うの?」このような疑問を抱えている方に対して、アダプティブラーニングについて解説していきます。
アダプティブラーニングとは?注目される背景や関連用語も解説
そもそもアダプティブラーニングとは何を表す用語なのでしょうか。アダプティブラーニングと関連して使われるEdTechやe-ラーニングなどの用語についてもあわせてご紹介してきます。
アダプティブラーニングとは「個別に最適化した教育・学習」のこと
「アダプティブ」は最適化と訳され、それに「ラーニング」が付くことで、一人ひとりに最適化された教授・学習法のことを指します。ICT教育が推進されたことで注目されるようになりました。
というのは、これまでは「個別に最適化した教育・学習」を行うためには、一人一人の情報を把握する必要がありますが、教員の目のほかには、テストの点等限られた情報でしかその生徒の特徴を把握できませんでした。そのため、教員によって把握の度合いに差がありました。ICTを活用することで生徒の成績や学習履歴の可視化ができるようになりました。集めたデータや成績から自動で「個別に最適化した教育・学習」のカリキュラムの設計ができたり、これまでと比べると、「個別最適化」なアプローチは相対的に、ずっと容易にできるようになってきました。
何故広まったのか、注目されている背景
アダプティブラーニングは、教育へのICT導入が進んだことで注目されるようになりました。
アダプティブラーニングの肝は、生徒の学習状況の把握と、それに基づく最適な学びの提供です。前提としての学習データが肝要であるため、ICT環境が必要となります。この環境が整ったことにより、概念や手法としては存在していたものの「現実的には難しい」から、「工夫次第で実現できる」となってきました。GIGAスクール構想等や世の中の変化に伴い、ICT機器やソフトが飛躍的に普及したことこそ、注目を集めた理由となります。
EdTechとe-ラーニング、何が違う?
アダプティブラーニングについて説明される際、EdTechとe-ラーニングという言葉がよく使われます。では、この両者の違いとは一体何なのでしょうか。
EdTechとは、Education(教育)とTechnology(テクノロジー)をかけ合わせた造語です。簡単に言うと、IT機器を活用した教育方法、または教材、それらを取り扱う企業のことを言います。
e-ラーニングとは、IT機器を活用し、インターネット技術を用いて学習するシステムやサービスを指します。eラーニングと比べるとEdtechは指し示す範囲がやや広いと言えます。
その他の間違えやすい関連用語
EdTechとe-ラーニングの他にも、アダプティブラーニングと間違えやすい用語があります。
ここでは、下記の3つの用語について解説します。
・アクティブラーニング
・ゲーミフィケーション
・LMS
まず、アクティブラーニングとは、学習者が自ら学びに向かうように設計された教授・学習方法です。ディベートやグループワークなどの手法は代表的な手法として良く用いられます。次に、ゲーミフィケーションとは、競争やレベルアップなどゲーム要素を利用して生徒の意欲を向上させながら学習する方法です。ゲーミフィケーションを行うことで、生徒は勉強している感覚なく、知識を得られます。最後にLMSは生徒の教材、それを配信する機能、学習履歴などを確認する機能など、それらを統合したシステムを指します。
アダプティブラーニング導入のメリット
アダプティブラーニングには様々なメリットがあります。主なメリットとして、下記の5つが挙げられます。
・個別の学習効果を高められる
・指導の質を均一にできる
・過去の学習データを抽出し活用できる
・授業の質の向上
・教材やカリキュラムの見直しの役に立つ
1つずつ確認していきましょう。
個別の学習効果を高められる
メリットの1つ目は、個別の学習効果を高められることです。
例えば、苦手な問題に対して、同じような間違いを繰り返し行ったとします。アダプティブラーニングでは、この苦手問題の克服に特化した問題が繰り返し提示されます。また、なぜ間違えているのかという原因についても提示することができます。
また、得意な問題に対しては、どんどんレベルの高い問題が出題されます。苦手に対してすぐに対処でき、得意を伸ばせるため、生徒一人ひとりの学習効果を高められます。
指導の質を均一にできる
メリットの2つ目は、指導の質を均一にできることです。
これまでの授業は、教員の指導力や生徒との相性により、指導の質には偏りが生まれてしまいます。一方、アダプティブラーニングは、客観的な学習データを分析し、提供することで学習を進めるため、指導の質を均一かつ一定以上にすることができます。
過去の学習データを抽出し活用できる
メリットの3つ目は、過去の学習データを抽出し活用できることです。
これはアダプティブラーニングというよりも、前提として活用するLMSなどによるものですが、例えば、合格者の学習計画や成績などを抽出して活用できます。これにより、生徒が目標達成に向けて何をすべきかが明確になります。
授業の質の向上
メリットの4つ目は、授業の質の向上です。
アダプティブラーニングによって、問題に対する正答率や学習にかかった時間などを把握できます。これにより、授業でどこを重視して指導すべきか、どのようなフォローが求められるのか、が明らかになります。
このように、教員を支援することで授業の質の向上を支援します。
教材やカリキュラムの見直しの役に立つ
メリットの5つ目は、教材やカリキュラムの見直しの役に立つことです。
これまでの教育は、固定されたカリキュラムに生徒が合わせていく必要がありました。一方、アダプティブラーニングは生徒一人ひとりに合わせたオーダーメイドのカリキュラムを提供します。そのため、カリキュラムや教材が合っていなければ、その都度見直して更新することが可能です。
アダプティブラーニング導入のデメリット
アダプティブラーニングには、メリットとともにデメリットもあります。アダプティブラーニング導入の主なデメリットは下記の2つです。
・環境整備が必要不可欠
・初期費用がかかる
詳しく見ていきましょう。
環境 整備が必要不可欠
デメリットの1つ目は、環境整備が必要不可欠であることです。
ICT環境が整っていなければ、アダプティブラーニングを行えません。しかし、現在の日本は諸外国に比べ、学校におけるICT環境の整備が遅れています。また、自治体や家庭による格差も見られます。
初期費用がかかる
デメリットの2つ目は、初期費用がかかることです。
ICT機器を揃えるためには、ある程度の費用がかかります。学校現場では、自治体が機器を揃えてくれることが多いですが、自分で設備を準備しなければならない私塾などでは、費用面で大きな負担になっているのが現状です。
アダプティブラーニングができるツールはすららがおすすめ
アダプティブラーニングが利用できるツールはいくつかあります。その中でも今回は、おすすめの「すらら」について解説します。「すらら」は、先生役のキャラクターと一緒に、生徒一人ひとりの理解度に合わせて進められるICT教材です。理解度が重視されているため、学年関係なく進められます。また、ゲーミフィケーションの要素も取り入れており、楽しく学習を続けられる工夫がなされています。子ども一人で学習を進められるので、大人は学習記録を把握するだけで安心して子供に学びを与えることができます。
アダプティブラーニングの現状と今後の見通し
アダプティブラーニングは注目を集めていますが、現状はどの程度普及しているのでしょうか。今後の見通しとともに解説していきます。
日本の教育機関への普及状況の現状
アダプティブラーニングは、現状あまり普及していません。先述のように、アダプティブラーニングにはICT環境の整備が必須です。しかし、今の日本はICT環境の整備があまり進んでいません。そのため、アダプティブラーニングに関しても普及しにくい状態となっています。
今後の見通し
アダプティブラーニングは現状あまり普及していませんが、今後はさらに普及していくことが予想されます。総務省が出している「教育ICTガイドブック」によると、小・中・高等学校を中心にアダプティブラーニングの実践が積極的に進められています。今後、多くの教育現場でアダプティブラーニングが実践されていくことでしょう。
まとめ
ICT教育の推進により、ICT機器を活用して生徒の成績や学習履歴を可視化できるようになりました。学校では、ICT機器を活用した生徒一人ひとりに適応した教育が重要です。
アダプティブラーニングは、個別の学習を高められ、授業の質も向上します。また、それらのデータを蓄積し、多くの生徒の支援を行えます。
現状は、まだ大きく普及していないアダプティブラーニングですが、今後多くの学校で実践されることが予想できます。アダプティブラーニングとは何かを理解し、いつでも対応できるようにあらかじめ準備しておけるとよいですね。