インクルーシブ教育とは何か?日本における課題とメリット・デメリットを解説

2026/02/10(火)

授業方法/学習指導

インクルーシブ教育とは、国籍や障がいの有無、性別にかかわらず、すべての子供が同じ場で共に教育を受けるという考え方です。この記事では、インクルーシブ教育とは何かという基本的な定義から、現在の日本が抱える課題、そして導入によるメリット・デメリットまでを解説します。

インクルーシブ教育とは?すべての子供が共に学ぶ教育の考え方

インクルーシブ教育の定義は、すべての子どもを包み込むという考え方に基づき、多様性を尊重し、一人ひとりの教育的ニーズに合わせて適切な支援を行いながら、すべての子どもが共に学ぶことを目指す教育システムの理念です。

その目的は、子どもたちが社会の一員として、共に支え合う力を育むことにあります。この考え方は、単に同じ教室で学ぶだけでなく、すべての子どもが授業や学校活動に積極的に参加できる環境づくりを重視しています。

インクルーシブ教育と特別支援教育の違いとは


インクルーシブ教育と特別支援教育は、その前提となる考え方に違いが見られます。

  • 特別支援教育:障がいの種類や程度に応じて、特別支援学校や特別支援学級といった専門的な「特別な場」で指導を行うことを主眼としてきました。
  • インクルーシブ教育:すべての子どもが原則として同じ教室で学ぶことを前提とし、その中で個別のニーズに応じた支援を提供しようとします。

つまり、特別支援教育で培われた専門的な知見や指導内容は、インクルーシブ教育のシステムの中で、一人ひとりに合わせた支援を行うための重要な要素として活かされる関係にあるといえます。

2024年4月義務化「合理的配慮」と学校の責務

2024年4月から、改正障害者差別解消法の施行に伴い、これまで公立学校にのみ課されていた障害者への「合理的配慮」の提供が、私立学校を含むすべての事業者に義務化されました。これにより、高校や私立の教育現場においても、障害を理由とした不当な差別的取り扱いを禁止するだけでなく、本人の意思表明に基づき、個々の特性に応じた調整や変更を行うことが法的な責務として求められています。

今、インクルーシブ教育が世界的に推進される理由


インクルーシブ教育が世界的に推進される背景には、障がいのある人を教育から排除しないという人権を基盤とした考え方が国際的に共有されるようになったことがあります。海外では、障害の有無によって学ぶ場を分ける「分離教育」が、差別の問題につながり得るとの認識が広まりました。

すべての人の権利を保障した「サラマンカ声明」

1994年にスペインで開催されたユネスコの会議で採択された「サラマンカ声明」は、インクルーシブ教育の理念を国際社会に明確に示した画期的な宣言です。この声明では、障がいのある子どもを含め、すべての子どもが通常の学校で教育を受ける権利を持つことを強調しました。

SDGs目標4「質の高い教育をみんなに」との関連性

インクルーシブ教育は、国連が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)とも深く関連しています。特に、目標4「質の高い教育をみんなに」では、2030年までに「すべての人に包摂的かつ公正な質の高い教育を確保し、生涯学習の機会を促進する」ことが掲げられています。

インクルーシブ教育がもたらすメリット【障害のある子・ない子双方の視点】


多様な個性を持つ子どもたちが同じ環境で学ぶことは、お互いの成長に良い影響を与える利点があります。

障害のある子供にとってのメリット

多様な子どもたちと日常的に関わることで、社会性やコミュニケーション能力が自然と育まれます。また、地域の学校に通うことで地域社会とのつながりを築きやすく、学校卒業後も円滑に社会参加できる可能性が高まります。

障害のない子供にとってのメリット

障害のある仲間と共に過ごす中で、多様な人がいることを自然に学び、自分とは違う他者への理解を深めることができます。これは、固定観念や偏見を持つことなく多様性を受け入れる力を養い、責任感やリーダーシップを育むことにもつながります。

インクルーシブ教育のデメリットと懸念される問題点

インクルーシブ教育は多くのメリットを持つ一方で、個別のニーズが多様化する教室で、教員がすべての子どもに十分な配慮を行うことは時に難しい場合があります。特に、教員の専門性や加配人員が不足している場合、授業の進行に遅れが生じたり、教員の負担が増大したりする可能性も指摘されています。

日本のインクルーシブ教育が抱える課題|国連からの勧告内容も解説


2022年、国連の障害者権利委員会から、日本の教育現場では依然として特別支援学校などに通う「分離教育」が主流であるとして、通常の学校で学べる体制を整備するよう勧告を受けました。

教員一人ひとりの専門性やスキルアップの必要性

通常学級の担任が特別支援教育に関する十分な知識を持っているとは限らないため、研修の充実や、合理的配慮の提供に関する具体的なスキルを習得できる体制を整えることが急務です。

物理的なバリアフリー環境や教材の整備不足

観点具体的な課題解決へのアプローチ
物理的バリアエレベーター、トイレ等の未整備施設改修計画の策定
教育的バリア教材の不適合、一斉指導の限界デジタル教材による個別最適化
意識のバリア保護者や周囲の不安、偏見丁寧な意図説明と共生文化の醸成

周囲の子供や保護者の理解を得る難しさ

「授業の進度が遅れるのではないか」といった保護者の不安に対し、学校側はインクルーシブ教育の理念を丁寧に説明し、理解と協力を得ていく地道な努力が必要です。

【高等学校】教科の専門性と「評価・単位認定」の壁

高等学校においては、各教科の専門性が高くなることが推進の大きな壁となります。特に進学校などでは、高度な内容の授業進度を維持しながら個別のニーズに応える難しさが指摘されています。

さらに深刻なのが「評価と単位認定」です。一律の評価基準が一般的であるため、学習障害などで従来の方法では実力を発揮できない生徒に対し、公平性をどう担保しながら評価するかが課題です。

こうした課題には、「すらら」などのシステムを導入し、学習ログを可視化することで、客観的データに基づいた個別習熟度評価を行う方法が注目されています。ICTの活用により、教科担当者の負担を抑えながら多様な生徒の学びを保障する道が開かれます。

国内外におけるインクルーシブ教育の具体的な実践例


インクルーシブ教育を実現するICTツールの活用法

対話型デジタル教材「すらら」は、一斉授業の場においても個別最適化された学びを提供できます。すららの「無学年学習」は、学年の枠にとらわれず、個々の理解度に合わせて遡り学習や先取り学習が可能です。

授業内容が難しすぎて理解が追いつかない生徒には、つまずきの原因となっている過去の単元まで自動で遡って提示し、基礎の定着を促します。一方で、既習内容を完璧に理解している生徒には、より高度な内容を提供することで学習意欲を維持します。これにより、高校現場で課題となる「浮きこぼれ・吹きこぼれ」の解消に寄与します。

個々のニーズに応じた「合理的配慮」の提供事例

テスト問題へのルビ振り、図解教材の用意、クールダウンできる場所の確保、一部の授業を少人数で受ける「通級」の活用などが挙げられます。

交流及び共同学習を通じた相互理解の促進

神奈川県の「インクルーシブ教育実践推進校」のように、地域の特別支援学校と連携して合同授業や部活動、学校行事を実施する取り組みも、共生社会の土台作りに効果的です。

まとめ

インクルーシブ教育が目指すのは、すべての子どもが個々の能力を最大限に発揮できる共生社会です。教員の専門性向上や評価基準の策定といった課題はありますが、ICTツールの活用や合理的配慮の工夫を通じて、着実に前進することが可能です。

個別最適化学習を支援する「すらら」も、多様なニーズに応える教育を実現するための一助となり得ます。

 

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