人生100年時代の社会人基礎力とは?求められる能力や鍛え方を解説

2022/11/14(月)

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社会人基礎力とは、社会人が身に着けておくべき、どのような仕事にも必要な基礎能力のことです。近年は頻繁に耳にするようになった言葉ですが、「社会人基礎力とは具体的にどのような力?」「社会人基礎力を高めるための方法とは?」と疑問を持っている方もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、社会人基礎力の意味や、定義の内容について、詳しく解説します。あわせて社会人基礎能力を身に着けるための方法やチェックポイントも説明するので、社会人基礎力について知りたい人は必見です。

社会人基礎力とはどのような力?

社会人基礎力の定義は、「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」とされています。
社会人基礎力という概念は、教育界から企業などの産業界への移行を滞りなく行うことを目的として、2006年に経済産業省が提唱しました。提唱されるようになった理由は、社会人に求める能力について、企業と教育界との意思疎通が十分になされていないという課題があったためです。2009年に経済産業省は「身につけておいてほしい能力水準」について、企業と学生に対し調査を行いました。その結果、「主体性」「コミュニケーション能力」などの項目について、学生側はできているとの認識でしたが、企業側は不十分だと認識していました。一方で、「業界の専門知識」「PCスキル」などの項目について、企業側は十分できていると認識していることに対し、学生側は不十分だと認識していました。このギャップを解消すべく生まれ、企業側が求める人物像を表したものが社会人基礎力です。

社会人基礎力は3つの能力で構成される

社会人基礎力は、以下の3つの能力で構成されています。

・アクション=前に踏み出す力
・シンキング=考え抜く力
・チームワーク=チームで働く力

また、この3要素を構成するのは12の能力要素です。この章では、3つの要素と、これに伴う12の能力要素について解説します。

アクション=前に踏み出す力

アクションとは、物事に対し自ら粘り強く取り組む力のことです。
次に示す3つの能力要素がこの力を構成しています。

・主体性
・働きかけ力
・実行力

社会に出ると、答えが1つでない複雑な問題も避けては通れません。どのような課題にも失敗を恐れず主体的に取り組む姿勢が求められています。あわせて、周囲の人を巻き込んだり、解決までの道筋を定めたりして、課題解決に向け実行していく力も必要です。

シンキング=考え抜く力

シンキングとは、自ら現状への疑問を持ち深く思索する力のことです。
この力は以下の3つの能力要素から構成されています。

・課題発見力
・創造力
・計画力

現状をよりよくするためには、目の前の現状に対して疑問を持ち、課題を発見することが重要です。
また、前例に捉われず新しい視点や感覚で物事を捉えられれば、新しい価値を創造し、課題解決の近道を得られる可能性があります。加えて、課題を解決するために、より効率的・効果的な方法を探し、計画的に取り組むことが求められます。

チームワーク=チームで働く力

チームワークとは、多様な人々と協力して物事を進める力のことを指します。
下記の6つの能力要素が、この力を構成しています。

・発信力
・傾聴力
・柔軟性
・状況把握力
・規律性
・ストレスコントロール力

多様性を持つ人々と協働するためには、自分とは異なる意見を尊重する柔軟性が重要です。
自分の意見をわかりやすく発信することはもちろん、相手の意見を傾聴し、折り合いがつく道を模索していく必要があります。また、チームで円滑に活動するにあたっては、状況を適切に把握し自分に求められる役割をこなすことや、規律を守ること、ストレスとうまく付き合うことも大切です。

社会人基礎力が必要とされる理由と背景

社会人基礎力の必要性は年々高まっており、2018年には「人生100年時代の社会人基礎力」として再定義されました。
新定義において、社会人基礎力は「これまで以上に長くなる個人の企業・組織・社会との関わりの中で、ライフステージの各段階で活躍し続けるために求められる力」とされています。2006年時点において、社会人基礎力を求める対象は、大学生や新社会人に限定していました。新定義では、対象を若年層や高齢者層を含め、全ての年代の人々に拡大しています。
また、特筆すべきは、全てのライフステージ段階の人が社会で活躍できるように内容がアップデートされていることです。では、なぜ社会人基礎力の必要性は世代を超えて高まっているのでしょうか。その理由は、私たちがVUCA(ブーカ)時代に対応していく必要があるからです。また、VUCA時代へ突入した背景には、人生100年時代の到来や、終身雇用制度の崩壊があります。下記で詳しく解説します。

人生100年時代・VUCA時代への対応力が求められている

「人生100年時代の社会人基礎力」は、人生100年時代や、それに伴うVUCA(ブーカ)時代の訪れに対応するために必要だといわれています。
「人生100年時代」とは、人が100年生きることが当たり前となる時代を指す言葉です。医療の進歩等により、平均寿命は今後も伸びていくことが予想されています。人生100年時代となれば、定年の延長など、働く期間は長期化することが見込まれます。働く期間が長期化すれば、世間の変化に直面する機会もおのずと増えるものです。変化に柔軟に対応していくためには、社会人基礎力の計画力・創造力といった力が必要です。また、VUCA時代とは、将来の予想が困難になっている状態を表す言葉です。現在、世の中は経済・ビジネス・社会情勢・個人のキャリアなど、あらゆる分野が複雑さを増し、先行きが不透明になっています。予想外の出来事が次々と起こる状況においては、自ら考え行動する「シンキング」力はますます重要となります。また、状況が変われば、仕事やビジネスでも従来のやり方は通用しなくなるものです。社会人基礎力の実行力・課題発見力・柔軟性・ストレスコントロール力を発揮し、前例に捉われず、変化に柔軟に対応していくことが一層強く求められています。

終身雇用制度の崩壊により自らキャリアを切り拓く力が必要となっている

社会人基礎力が必要とされる背景には、終身雇用制の崩壊があります。2019年には、経団連より「終身雇用を前提にすることが限界になっている」と発表がありました。これまでの、新卒で入社した会社で定年まで働き続け、自動で収入が上がっていく時代は終わりを迎えようとしています。今後は、定年まで会社に守られるという考えを改め、能力を存分に発揮し活躍できる環境を自ら求める姿勢が求められます。

人生100年時代に追加された新たな3つの視点とは?

2018年提唱の「人生100年時代の社会人基礎力」では、社会人基礎力を十分に発揮するために必要な視点として、次の3点が追加されました。

・学び=何を学ぶか
・組合せ=どのように学ぶか
・目的=どう活躍するか

この3つの視点からライフステージの各段階でリフレクション(振り返り)を行い、3つの視点のバランスを適切に保つことが大切です。
これにより、社会人基礎力が向上し、持続的に社会の中で活躍していくことが可能となります。この章では、新たな3つの視点について詳しく紹介します。

学び=何を学ぶか

1つ目は、「学び=何を学ぶか」という視点です。
新たな時代に対応するためには、常に新しいことを学び、自身を成長させていくことが重要です。自分の強みや弱みを客観的に把握し、自分が学ぶべきものは何かを考え抜いた上で学ぶことが大切です。そうすることで、変化の激しい社会の中でも存分に能力を発揮できます。

組合せ=どのように学ぶか

2つ目は、「組合せ=どのように学ぶか」という視点です。
今後は、働く期間が長期化し、個人のキャリアも複雑で複層的になっていくことが予想されています。新たな価値を創造していくためには、さまざまな場で得た経験・キャリア・能力などを統合することが必要です。また、「チームワーク力」を生かして、多様な人の得意や経験を統合することで、より多様な価値観を創造できます。

目的=どう活躍するか

3つ目は、「目的=どう活躍するか」という視点です。
今後、キャリアは与えられるものという認識を取り払い、自己実現に向けてキャリアを描きながら自ら行動することが求められています。また、社会の一員としてよりよい社会づくりに貢献していくためには、社会から寄せられる期待を理解し、自己実現と結びつけることも必要です。

社会人基礎力育成のための教育段階でのチェックポイント

社会人基礎力が各教育段階に応じて適切に身に付いているかをチェックするために、経産省は「ライフステージの各段階で意識することが求められる問い」を提示しています。ここでは、就学前教育、初等中等教育、高等教育の3ステージに分けて、チェックすべきポイントをまとめてご紹介します。

【初等教育】

・学びに向かう力が付いているか
・大人との触れ合いは十分か
・他者との関わりは十分か
・よりよい生活を営もうとしているか

【初等中等教育】

・主体的に自己を発揮しながら学びに向かう態度は付いているか
・学校主幹の連携や交流は十分か
・ともに尊重し合いながら協働して生活していく態度は付いているか
・自分のよさや可能性を認識しているか

【高等教育】

・どのような専門分野を修めて社会で活躍するための礎とするか
・年代、地域、文化などを超えた多様な人々と関わっているか
・得手不得手を踏まえて、企業・社会とどのように関わりたいか

チェックポイントを参考に子供の姿を振り返ると、社会人基礎能力が十分に身に付いているかを把握することができます。周囲の大人には、足りない部分は補い、得意な部分はさらに伸ばせるように援助することが求められます。

まとめ

社会人基礎力とは、社会で他人とともに活躍していくための土台となる基礎的な能力のことです。
近年は、テクノロジーの進歩や働く期間の延長に伴い、社会人になった後も社会人基礎力を継続して磨き続けていく姿勢が重要になってきています。また、社会人基礎能力を鍛えるためには、「3つの視点」から自らの体験や能力を振り返る習慣を持つことが重要です。教育段階では、子供が社会に出たときに求められる力を把握し、育てていくことが大切です。家庭や教育現場でもチェックポイントを活用し、社会人基礎力の基礎が身に付いているか確認してみてください。

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