HSPは不登校の原因になることも|特徴や寄り添い方を解説

2023/03/30(木)

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最近「HSP」と呼ばれる非常に繊細な気質を持つ人について耳にする機会が増えた方もいるのではないでしょうか。それだけ彼らの存在に注目が集まっていると考えられます。HSPは統計的にクラスの中にも数人存在するといわれています。またHSPは不登校に結びつきやすいとも指摘されています。教育現場でHSPの子どもと関わる可能性のある人は、適切な対応や配慮ができるよう、HSPへの理解を深めることが重要です。この記事ではHSPの概要や対応方法、不登校につながりやすい理由について解説します。HSPについてよく知り、HSPの子どもが過ごしやすい環境づくりに役立てるためにもぜひ参考にしてみてください。

HSPとは非常に敏感な気質を持つ人のこと

HSPとは、Highly Sensitive Personの略称で、非常に敏感な気質を持つ人のことを指します。この概念は1960年にアメリカの心理学者 Elaine N. Aron博士によって提唱されました。HSPの人は周囲の環境に過剰に反応する、些細なことで傷付きやすいといった特徴を持っています。子どもの場合はHighly Sensitive Childの頭文字を取ってHSCと呼ばれます。統計的には人口の15~20%がHSPだとされています。つまりHSPの人は5人に1人ほどの割合で存在している計算になります。HSPは少数派であり、社会の中で生きづらさを感じる場合があるといわれています。

HSPが持つ4つの特徴的な性質

HSPを提唱したElaine N. Aron博士によると、HSPのほとんどの人はDOES(ダズ)と呼ばれる4つの性質を持つとされています。DOESは生まれつきの気質であり、育った環境などに左右されるものではありません。ここではDOESの内容について詳しく見ていきましょう。

D:プロセスの処理が深い

HSPは少しの情報から多くを察したり、場の空気を敏感にキャッチしたりする能力に長けており、プロセスの処理が深いといえます。同時に何事も深く考えすぎてしまうため、間違いを恐れて慎重になりやすい側面があります。

O:刺激を強く感じやすい

多くのHSPは刺激を強く感じやすい性質を持っています。例えば暑さ・寒さに弱かったり、痛みを感じやすかったり、音やにおい・感触に敏感だったりするようです。それゆえ肌触りがチクチクした服や大音量が流れる場所など、HSP以外の人と比べて日常の中で苦手とするものが多い傾向にあります。

E:感情面の反応が強い

HSPはポジティブな感情にもネガティブな感情にも反応しやすい一面を持っています。例えば学校で他の子どもが怒られるのを見ると、自分が怒られているように感じるのもHSPゆえの性質といえるでしょう。

S:些細な刺激に敏感で共感力が高い

HSPは些細な刺激に敏感で共感力が高いことが多く、表情や声の調子から他人の機嫌を敏感に察知したり、髪型など微妙な変化に気付いたりするのが得意です。このような鋭い観察力はHSPの長所でもあります。

HSCは病気ではなく生まれつきの気質

HSCは医学的に診断されることはなく、生まれつきの気質のため治療方法もありません。生まれつきの気質は成長しても変わらないことが多く、HSCからHSPになるケースがほとんどです。親の育て方や生活環境が原因で後天的になるものでもありません。ここで留意が必要なのは、HSCは決してネガティブなものではないということです。HSCだからこそ得意なこともたくさんあり、ポジティブな側面を認めていくことが大切です。

HSPが不登校の原因であるケースも多い

学校はHSPにとって刺激が多く不安や苦痛、ストレスを感じやすい環境です。例えば子どもが大勢集まったときの騒がしさがHSPにとっては過剰にうるさく感じられる場合があります。席替えやクラス替えも、環境の変化に敏感なHSPが不安になる原因の1つです。加えて、HSPにとっては学校=気質に合わないことを強いられ、自分のペースで行動できない場所であることが多く、こういった精神的負担に耐えられなくなり不登校になる子どもが多いといわれています。学齢別では以下のようなことが不登校を起こしやすい原因といわれています。

小学生では先生との相性が影響しやすい

小学校ではほとんどの授業を担任が担当します。HSCが先生と相性が合う場合には、敏感になる機会が少なく落ち着いて過ごせるでしょう。しかし怒りっぽい先生などに当たり敏感に反応してしまう機会が多い場合には、HSPの子どもが不安定になることもあります。また先生との相性がよくても、学級崩壊しているような落ち着かないクラスなどでは、HSPの子どもが不安を感じやすい場合もあります。小学校の場合は先生の性格やクラス経営の力量が、HSPの不登校の起因に大きく影響しやすいといえるでしょう。

中学生では中1ギャップが引き金になりやすい

中学校に上がると小学校とは違い、授業ごとに先生が変わります。また部活やテスト・先輩後輩関係など、小学校にはなかったさまざまな変化が生じます。この中1ギャップに適応できず、不登校になるパターンも少なくありません。

HSPの子どもの学校生活への拒否感を和らげる寄り添い方のポイント

多くのHSPの子どもにとって、学校は刺激が多く苦手だと感じやすい場所です。学校生活への拒否感を和らげるためには、寄り添い方のポイントがあります。下記で詳しく見ていきましょう。

HSPについて正確に理解する

HSPはネガティブなものと捉えられがちですが「よく気が付く」「共感性が高い」などポジティブな側面もたくさん持っています。何が苦手で何が得意なのか、ありのままの子どもを理解できれば、その子に合った対応の仕方が自ずと見えてくるでしょう。

本人のペースややり方を尊重する

例えば、子どもを無理やり周囲に合わせようとせず本人が好むものを選べるようにしたり、本人がやり出すタイミングまで待ったりすることが挙げられます。また本人のペースが崩れ不安にならないように、教員が干渉しすぎないことも必要です。HSPの場合、初めてのことに対しては不安を抱きやすく、無理強いするとトラウマになってしまう危険性もあります。できるだけ子どもが自発的に動けるように見守りましょう。

周りと比べて否定しない

クラスの子どもや兄弟など、周りと比べて否定しないことも重要です。HSPは繊細なので比較された事態を重く受け止めてしまい、自己肯定感が下がる恐れがあります。否定的な言葉を使わないように注意することが大切です。

不安を和らげる声かけをする

不安を和らげる声かけをすることで、安心して学校生活を送れるようになる場合があります。HSPは周囲の刺激を敏感に受け止めるものの、特に子どもの場合は受け取った感情を言葉などで表現するのが難しいものです。感情を自分だけで抱えていると不安になることもあります。そこで教員は「○○な気持ちになったんだね」などと、悔しかったことや嫌だったこと・怖かったことなど、子どもが感じた気持ちを代弁して受け止めます。子どもは自分の感情が受け入れられたと感じ、徐々に落ち着いて元気になるでしょう。

自己肯定感を高める工夫をする

HSPは自分の苦手なことやできないことにもよく気が付くため、自分自身で自己肯定感を高めたり保ったりするのが難しい傾向にあります。できたことは積極的に褒めるなど、教員が自己肯定感を高めるための声掛けを行うことが重要です。またHSPは人と異なる感性を持っていることから、否定されたり馬鹿にされたりする場合が多い傾向にあります。まずは周囲の大人が子どもの感性を否定せず「いろいろな考え方があるね」などと認めることで、子どもは「自分はこれでいいんだ」と自身を肯定的に捉えられるようになります。

十分に休息を取れるように配慮する

HSPは人一倍周囲の情報を吸収するため、疲れやすかったり不安・恐怖を感じやすかったりする特徴があります。心を休めるためにはHSP以外の人よりも多くの休息が必要なのです。休息を取りながら学校生活を送ることで、HSPの子どもは少しずつ敏感な自分と上手に付き合えるようになります。

苦痛から逃げられる場所を用意する

刺激を敏感に受け取るHSPは、大きな音など強い刺激を苦手とします。苦手とする場面では、いざというときにその場から離れて落ち着ける「避難場所」を確保できるようにするのがベストです。本人にとって避難場所の存在が安心材料になり、落ち着いて学校生活を送れると考えられます。

教育者が知っておきたい!不登校でも出席扱いになる制度がある

出席日数が足りないと高校受験の内申書の点数が低くなるなど不利になることがありますが、出席扱いになる制度を利用すればこれを防げます。文部科学省は不登校の児童・生徒に対しても多様な教育機会を確保する必要がある観点から、不登校の児童・生徒がITなどを利用して自宅学習を行った場合に出席扱いにする方針を定めました。制度を利用するには下記7つの要件を満たす必要があります。

1.保護者と学校との間に十分な連携・協力関係があること
2.ICTや郵送、FAXなどを活用して提供される学習活動であること
3.訪問等による対面の指導が適切に行われること
4.学習の理解の程度を踏まえた計画的な学習プログラムであること
5.校長が対面指導や学習活動の状況を十分に把握していること
6.学校外の公的機関や民間施設等で相談・指導を受けられない場合に行う学習活動であること
7.学習活動の評価は、計画や内容を学校の教育課程に照らし判断すること

生徒側から出席扱い制度を使いたいとの打診があれば、学校は連携を取れるように対応していくことが求められます。また教員としては不登校で出席日数の確保に悩む生徒や保護者に対して、状況に応じて制度利用の選択肢を示すなどの対応もできることを覚えておきましょう。

まとめ

 

自分のペースを保ちにくく、音や人間関係などの刺激が多い学校は、人一倍敏感で刺激を受け取りやすいHSPにとっては過ごしにくさを感じやすい場所です。それゆえHSPは不登校にもつながりやすいといわれています。教員としてはHSPの子どもが落ち着いて過ごせるように、子どもの特性を理解した上で、個別の声掛けや環境づくりを行っていきましょう。

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