指導と評価の一体化とは?実現するためのポイントや具体例を解説

2023/08/24(木)

中学校

高校

評価

教育現場で重要視されている指導と評価の一体化。評価を指導に生かすことが求められています。しかし、教育関係者の方の中には、指導と評価の一体化が何を意味するのか、どのように実践したら良いのか、疑問に思う方もらいっしゃるのではないでしょうか。本記事では、指導と評価の一体化の意味・重要性・メリットなどについて解説するとともに、実践事例を紹介します。本記事が参考となれば幸いです。

指導と評価の一体化とは

指導と評価の一体化とは、言わずもがな、教育指導と児童・生徒に対する評価につながりを持たせることです。学校教育において指導と評価はそれぞれ独立したものではなく、評価の結果を受けて指導を改善し、改善した指導を再度評価するといったように、相互に作用する関係で、これを指導と評価の一体化といいます。新学習指導要領の総則において、指導と評価の一体化の必要性は明確化されました。総則の中の「第3教育課程の実施と学習評価」の1では、「知識及び技能」「思考力、判断力、表現力等」「学びに向かう力、人間性等」の3つの柱の育成と児童・生徒の深い学びの実現のために、授業改善を行うことが示されています。また2では、評価することによって、指導改善・学習意欲の向上を図り、3つの柱の育成に生かすことが明記されています。教育現場では、評価の結果を指導に反映し、より質の良い教育を提供することが求められています。

指導と評価の一体化の重要性

従来の評価方法ではいくつかの課題があり、それらを改善するために指導と評価の一体化が重要視されるようになりました。従来の評価方法における課題の例は、以下の通りです。

・学期末や学年末などの評価に留まり、児童・生徒の学習改善に生かせていない
・教師によって評価方針にばらつきがあり、学習改善に生かしにくい
・評価のための記録に手間がかかり、指導に力が入れられない
・指導要録が次学年・次年度に生かされていない

上記のような課題に対して、学習評価を児童・生徒の学習や教師の指導の改善につながるものにし、指導と評価を一体化することが必要だとされています。

指導と評価の一体化のメリット

指導と評価の一体化は、児童・生徒と指導者の両者にメリットをもたらします。ここでは、児童・生徒側のメリット、指導者側のメリットを1つずつ紹介します。

児童・生徒がより正確な評価を受けられるようになり意欲向上につながる

児童・生徒の意欲が向上する理由は、学習評価が改善されているためです。指導と評価の一体化を目指す中で、評価観点が学習指導要領が示す3つの資質・能力に沿ったものへと再整理されています。評価観点の再整理によって、児童・生徒の学習過程がより多角的に評価されるようになりました。たとえば、これまで挙手の回数やノートの取り方など表面的な部分のみが評価されていたのが、粘り強く学習に取り組む姿勢といった学習の過程が評価されるようになったことが挙げられます。こうして、児童・生徒の学習努力に対する評価の正確性が高まることで、児童・生徒の学習意欲は向上が期待できます。

指導者が児童・生徒の学習課題を特定し指導計画を立てやすくなる

観点別評価を実施することで指導者は指導計画を立てやすくなります。
指導と評価の一体化を実現するために用いられる観点別評価では、学習指導要領で示された目標に則って評価規準を設ける必要があります。教師は評価のために、児童・生徒の学習状況を見ようとすると、彼らの目標への到達度や課題が把握でき、結果、生徒の課題に合わせた指導計画を作成を容易にします。

指導と評価の一体化を実現するためのポイント

指導と評価の一体化を実現するためには、心得ておきたいポイントがあります。ここでは2つのポイントについて解説するので、これから指導と評価の一体化に取り組む教師の方はぜひ念頭に入れておきましょう。

評価だけで終わらせず指導の改善に生かす

前述の通り、指導と評価の一体化では、評価の結果を指導の改善に生かすことが大切です。評価を生かすことで指導の質もより一層向上するため、評価を指導へとつなげる意識を持ちましょう。

評価の方針を児童・生徒や保護者と共有する

指導方針の共有は、児童・生徒の学習意欲を引き出します。なぜなら、どのような努力が評価につながるのかが明確になるためです。年度初めに評価方針をシラバスに記載するなどして、どのような努力の仕方が評価につながるのかを明確に評価方針を共有してましょう。

また、保護者もどのような観点で評価が行われるのか分からない場合が多い傾向にあります。保護者会・説明資料の配布・家庭訪問・面談などで詳しく説明し、信頼を得ることが必要です。

指導と評価の一体化のための評価規準の作成手順

指導と評価の一体化のためには、適切な評価規準を作成する必要があります。ここでは、評価規準の作成手順を2ステップに分けて解説します。

①新学習指導要領の3つの観点を各教科の内容のまとまりごとに確認する

新学習指導要領では、各教科の内容のまとまりごとに育成すべき資質・能力が明記されています。評価規準を作成する際には、まず新学習指導要領で示される内容のまとまりと「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3つの観点とのつながりを確認することから始めましょう。

知識・技能

「知識・技能」は、新学習指導要領における各教科の「2 内容」で示される「知識及び技能」の項目を確認します。中学第1学年の国語を例として挙げると「知識及び技能」として以下のような事項が記載されています。

1)  言葉の特徴や使い方に関する次の事項を身に付けることができるよう指導する。
2) 話や文章に含まれている情報の扱い方に関する次の事項を身に付けることができるよう指導する。
3) 我が国の言語文化に関する次の事項を身に付けることができるよう指導する。

(1)~(3)には、それぞれ身に付けるべき資質・能力が記載されているため、それらを「知識・技能」に関する評価規準とみなします。

思考・判断・表現

「思考・判断・表現」に関しては、新学習指導要領における各教科の「2 内容」で記されている「思考力、判断力、表現力等」の項目を確認しましょう。中学第1学年の国語の「2 内容」にある「思考力、判断力、表現力等」の項目は、以下の通りです。

・A 話すこと・聞くこと
・B 書くこと
・C 読むこと

A~Cで示される育成を目指す資質・能力を「思考・判断・表現」に関する評価規準とします。

主体的に学習に取り組む態度

「主体的に学習に取り組む態度」については、「知識及び技能」「思考力、判断力、表現力等」を習得するために、児童・生徒が試行錯誤しながら調整して学習に臨んでいるのかを評価規準とします。そのため、単に挙手の回数の多さやノートの取り方など、性格や行動が一時的に表面化される場面を捉えるものではないことを覚えておきましょう。

②3つの観点をふまえて内容のまとまりごとの評価規準を作成する

「知識・技能」「思考・判断・表現」に関しては、「知識及び技能」「思考力、判断力、表現力等」で示される事項の文末を「~すること」から「~している」もしくは「~できる」に変えたものを評価規準とします。また「主体的に学習に取り組む態度」の評価規準は、「知識及び技能」「思考力、判断力・表現力等」に関する事項の文末を「~すること」から「~しようとしている」「~している」として作成しましょう。

3つの【観点別】指導と評価の一体化の具体例

ここからは、中学校・高校における指導と評価の一体化の具体例を3つの観点別に紹介します。

【知識・技能】中学校理科の例

中学第3学年「運動とエネルギー」では、身近な物体の運動の様子を調べる実験の中で、以下のような技能の習得が目標とされています。

・記録タイマーを正しく操作する技能
・物体の運動の様子を記録して処理する技能

ここでは例として、力学台車を使った実験の後、記録テープを0.1秒間隔で処理し、時間と0.1秒間の移動距離の関係を表す学習活動を挙げています。上記の目標・学習活動を踏まえて、以下2つの様子を評価規準とします。

・実験で記録タイマーを正しく操作する状況
・1秒間隔で切り取った記録テープを順に貼り付け、時間と0.1秒間の移動距離との関係を表す様子

【知識・技能】高校理科の例

高校理科の化学基礎「化学と人間生活」では、自然の事物・現象についての理解を深め、科学的に探究するために必要な観察・実験などに関する技能の習得が「知識及び技能」に関する教科目標とされています。「知識及び技能」に関する化学基礎科目の目標は、以下の通りです。

・日常生活や社会との関連を図りながら、物質とその変化について理解すること
・科学的に探究するために必要な観察・実験などに関する基本的な技能を身に付けること

上記の教科目標および科目目標を踏まえると、化学基礎の評価規準は以下の通りです。

・日常生活や社会との関連を図りながら、物質とその変化についての基本的な概念や原理・法則などを理解している
・観察・実験などに関する基本操作や記録などの基本的技能を身に付けている

【思考・判断・表現】中学校外国語の例

中学第3学年「聞くこと」の領域では、級友の「好きな言葉」をテーマにしたスピーチを聞き、要点を聞き取ることが目標とされています。スピーチを聞いて、要点・工夫点をワークシートに記入することが学習活動です。この場合、各生徒のワークシートの記述内容から、級友の好きな言葉やその理由など、要点を捉えている様子を評価基準とします。

【思考・判断・表現】高校外国語の例

高校外国語「英語コミュニケーションⅠ」では「思考力、判断力、表現力等」に関する以下のような目標が定められています。

・目的や場面・状況などに応じて、情報や考えなどの概要・要点・詳細・話し手や書き手の意図などを的確に理解する力を養う
・理解した内容を活用して、適切に表現したり伝えたりする力を養う

一方「英語コミュニケーションⅠ」の「思考力、判断力、表現力等」に関する目標も、上記で示した外国語科の目標と同様の内容です。よって、教科目標および科目目標を踏まえた「英語コミュニケーションⅠ」の「思考・判断・表現」の評価規準は以下の通りです。

・目的や場面・状況などに応じて、情報や考えなどの概要・要点・詳細・話し手や書き手の意図などを的確に理解している
・理解した内容を活用して、適切に表現したり伝えたりしている

【主体的に学習に取り組む態度】中学校国語の例

中学第3学年「情報の取り扱い方に関する事項」の目標は、以下の通りです。

・言葉が持つ価値観を認識する
・読書を通して自己を向上させる
・我が国の言語文化に関わり、思いや考えを伝え合おうとする

また、自分の書いた下書きが投書に適した表現であるかを確かめ、気が付いたことをワープロソフトのコメント機能で入力することが学習活動となっています。上記の目標や学習活動から、試行錯誤しながら表現を整え、多様な読み手に分かりやすく自分の考えを伝えるよう、丁寧に検討している様子が評価規準になります。

【主体的に学習に取り組む態度】高校国語の例

高校国語「現代の国語」における「学びに向かう力、人間性等」に関する目標は以下の通りです。

・言葉の持つ価値への認識を深める
・言語感覚を磨き、我が国の言語文化の担い手としての自覚を持つ
・生涯にわたり国語を尊重してその能力の向上を図る態度を養う

また「現代の国語」においては、「学びに向かう力、人間性等」に関して以下のような目標が定められています。

・言葉の持つ価値への認識を深める
・生涯にわたって読書に親しみ自己を向上させる
・我が国の言語文化の担い手としての自覚を持つ
・言葉を通して他者や社会に関わろうとする態度を養う

上記の教科目標・科目目標を踏まえると、「現代の国語」における「主体的に学習に取り組む態度」の評価規準は以下の通りです。

・言葉を通じて他者や社会に関わり、思いや考えを広げたり深めたりしながら、言葉が持つ価値への認識を深めようとしている
・進んで読書に親しみ、言葉を効果的に使おうとしている

まとめ

指導と評価の一体化とは、指導と評価につながりを持たせることを指します。学校現場では、評価の結果によって指導を改善し、再び評価するというサイクルを回すことで、より質の良い教育を提供することが大切です。指導と評価の一体化は、児童・生徒と指導者の双方にメリットをもたらします。本記事で紹介した評価規準の作成方法や具体例を参考に、自身の学校現場での指導と評価の一体化に取り組んでみてください。

CONTACT USお問い合わせ

「すらら」「すららドリル」に関する資料や、具体的な導⼊⽅法に関するご相談は、
下記のフォームよりお問い合わせください。

「すらら」「すららドリル」ご導⼊校の先⽣⽅は
こちらよりお問い合わせください。

閉じる