情報モラル教育とは、小学校・中学校・高等学校の生徒を対象に、情報に関する理解を道徳や家庭・技術などの教科内などで身に付ける取り組みのことです。導入され始めているとはいえ、情報モラル教育について馴染みがないと感じる教員の方も多いのではないでしょうか。そこで本記事では、情報モラル教育の概要や指導内容、指導手順について解説します。併せて、指導に役立つ資料や教材についても紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
情報社会で生きる子どもたちに欠かせない「情報モラル教育」とは
情報モラル教育とは、小学校・中学校・高等学校の生徒を対象に、道徳・家庭・技術などの教科内で情報モラルを身に付ける教育のことです。日本は、さまざまな情報が生徒の耳に入る情報社会であるため、従来の教育現場でも生徒が得た情報を把握することはできません。インターネット上の情報となれば、さらに難しくなるでしょう。生徒が得た情報によっては、いじめや自殺に発展することもあります。生徒を守るためにも、小学生から倫理観や道徳を正しく理解してもらう情報モラル教育が導入されました。
情報モラル教育が必要な背景
情報モラル教育は、トラブルに巻き込まれる児童が増加する状況の変化に対応するために導入されました。情報社会は日々発展しており、小学生や中学生などの児童がスマートフォンやコンピューターを手にする社会生活も当たり前になりつつあります。スマートフォンやコンピューターは便利な反面、使用方法によってはいじめや自殺などのトラブルに発展することも少なくありません。トラブルを防ぐためにも、1人1人の生徒が情報モラルを身に付け、トラブルに巻き込まれないようにするのが何よりも重要です。
情報モラル教育の5つの柱と具体的な指導内容
情報モラル教育には、5つの柱があります。また、5つの柱の領域内で考える具体的な指導カリキュラムも文部科学省から示されています。
情報モラル教育の5つの柱
情報モラル教育は下記5つの柱を基に指導内容が例示されています。
・情報社会の倫理
・法の理解と遵守
・安全への知恵
・情報セキュリティ
・公共的なネットワーク社会の構築
5つの柱は情報の処理や判断、収集を確実に身に付けさせるように定められたものです。そのため、文部科学省が示すモラル教育のモデルカリキュラムで5つの柱が指導内容として例示されています。
文部科学省が示す情報モラル教育のモデルカリキュラム
文部科学省が示す情報モラル教育のモデルカリキュラムは、5つの柱を基に下記年代の指導内容が示されました。
・小学校1~2年生
・小学校3~4年生
・小学校5~6年生
・中学生
・高校生
年代によって指導内容は異なります。ここからは、年代に合わせて文部科学省が示す情報モラル教育のモデルカリキュラムについて解説していきます。
小学校1~2年生の指導目標
小学校1〜2年生の指導目標は以下の通りです。
小学校1〜2年生の指導目標では、情報社会の倫理と安全への知恵がメインになります。基本的な指導内容から安全や危険に対する予防的な観点での指導内容が含まれています。
小学校3~4年生の指導目標
小学校3〜4年生の指導目標は以下の通りです。
小学校3〜4年生からは、法の理解と遵守や情報セキュリティなどの指導内容が導入され始めます。情報の基礎から他人との協力まで、幅広い指導が行われます。
小学校5~6年生の指導目標
小学校5〜6年生の指導目標は以下の通りです。
小学校5〜6年生では、スマートフォンやパソコンを所有していることを想定した情報モラルの指導内容がメインになります。また、他人や社会への影響など広い視点を持った情報モラル教育が行われます。
中学生の指導目標
中学生の指導目標は以下の通りです。
中学生の情報モラル教育では、情報社会に関する内容から情報セキュリティの基礎的な知識まで学びます。また、安全性や健康面から情報メディアとの関わり方に関する指導内容も含まれています。
高校生の指導目標
高校生の指導目標は以下の通りです。
高校生の指導目標では、具体的な情報に関する内容の理解やルール・法律などさまざまな内容が指導目標となっています。社会人になる1歩手前として、より具体的な内容が求められます。
情報モラル教育の学習指導要領上の取り扱い
情報モラル教育の学習指導要領上の取り扱いとして、小学校では道徳の時間や特別活動、学校教育全体での指導が示されています。中学校・高等学校では、技術・家庭の時間内で学校教育全体での指導が示されています。道徳・技術・家庭以外にも、その他の教科や特別活動など、タイミングがあれば指導が求められることを理解しておきましょう。
情報モラル教育の指導手順
ここからは、情報モラル教育の指導手順を4ステップにわたって解説していきます。
ステップ①児童・生徒の実態を把握し整理する
1ステップ目は、児童・生徒の実態を把握し整理するところから始まります。児童・生徒がスマートフォンやパソコンなどの情報が手に入るデバイスを所有していることは当たり前になりつつあります。そこで、まず生徒に向けたアンケートなどを実施し、スマートフォンやパソコンなどの所有有無・利用状況などを把握し、整理しましょう。
ステップ②年間指導計画を作成する
2ステップ目は、年間指導計画を立てることです。年間指導計画は、文部科学省が公開する教材や資料を参考に作成しましょう。年間指導計画書は作成したら終了ではありません。何度か見直しを行い、計画書に不備がないかどうかをチェックしましょう。
ステップ③指導方法を検討する
3ステップ目は、指導方法を検討することです。情報モラル教育の指導方法はさまざまです。例えば、DVD鑑賞を活用した指導方法やプレゼンテーションなどのアウトプットを中心とした学習方法などがあります。指導方法は教育環境によって大きく異なります。多くの生徒に響くような指導方法を取り入れるためにも、実例を参考にし、指導の幅を広げましょう。
ステップ④指導を実践し評価する
4ステップ目は、指導を実践し評価することです。情報モラル教育に限らず、指導方法の探求に終わりはありません。そのため、授業終了後には指導内容を振り返り、適宜修正する必要があります。振り返るための資料として指導を受けた生徒たちからアンケートや感想文をもらうなどの方法があります。指導の実践後は、振り返りを行い、次の指導に生かしていきましょう。
情報モラル教育の指導に役立つ教材・資料
情報モラル教育を導入していくといっても、世の中には決められた教科書も指導時間数もありません。そこで、情報モラル教育について参考になる教材・資料について知りたいといった教員の方々へ向け「国や自治体が提供する資料・教材」「その他の資料・教材」についてご紹介します。
国や自治体が提供している資料・教材
情報モラル教育の指導に役立つ参考資料として、国や自治体が提供している資料が挙げられます。国や自治体が提供しているおすすめの資料・教材は以下の通りです。
・情報化社会の新たな問題を考えるための教材<児童生徒向けの動画教材、教員向けの指導手引き>
・情報モラルに関する指導の充実に資する〈児童生徒向けの動画教材、教員向けの指導手引き〉
〈保護者向けの動画教材・スライド資料〉 等
・情報モラル学習サイト
・とうきょうの情報教育
・情報モラル実践事例集
(※ リンクはページ下部)
その他の資料・教材
文部科学省や情報モラル学習サイト、とうきょうの情報教育が提供している資料・教材の他にも、下記のサイトで情報モラル教育の指導に役立つ資料・教材が提供されています。
・スマホ・リアル・ストーリー
・考えよう、ケータイ
・ネット社会の歩き方
(※ リンクはページ下部)
情報モラル教育に関する内容が複数含まれていますので、ぜひ1度確認しておくことをおすすめします。
情報モラル教育の問題点とデジタルシティズンシップ教育
近年では情報モラル教育について「もう少しデジタルを上手く使う教育を導入しては?」という声が広まり始めています。その理由は、情報モラル教育が情報に関する危険性だけを抑制し、制約をかける取り組みが実施されてきているからです。その結果、今まで当たり前だったことにルールを付け加え、厳守させるようになってきました。しかし、アメリカでは情報モラル教育ではなく、デジタル・シティズンシップ教育という指導方法が取られています。デジタル・シティズンシップ教育とは、情報について正しく理解し、楽しく幸せに暮らすために活用しようといったポジティブな教育方法のことです。情報モラル教育について疑問を持たれ始めている日本では、今後ポジティブな教育方法であるデジタル・シティズンシップ教育が活用される可能性が高まっています。
まとめ
小学生の年代からスマートフォンやパソコンを所有し始める日本では、情報モラル教育の需要が高まり続けています。しかし「今の情報モラル教育の指導内容・手順で本当に十分なのか?」と疑問を持つ方も少なくはありません。情報モラル教育を導入することを考えている方は、ぜひ情報モラル教育の理解とともにさまざまな教育方法についても知っておきましょう。
参考:
〇情報モラル指導カリキュラム
〇国や自治体が提供している資料・教材
・情報化社会の新たな問題を考えるための教材<児童生徒向けの動画教材、教員向けの指導手引き>
・情報モラルに関する指導の充実に資する〈児童生徒向けの動画教材、教員向けの指導手引き〉
〈保護者向けの動画教材・スライド資料〉 等
・情報モラル学習サイト
・とうきょうの情報教育
・情報モラル実践事例集
〇その他の資料・教材
・スマホ・リアル・ストーリー
・考えよう、ケータイ
・ネット社会の歩き方