通信制高校とは?多様化する学びの場で増える選択肢

2023/10/31(火)

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発達障がいや不登校といった理由から全日制の高校に通いづらい、家庭の経済的事情で学費の捻出が難しいなど、さまざまな事情を抱えている生徒がいます。生徒が抱える事情をくんで、通信制高校への転入・編入が選択肢に上がってくる場合もあるでしょう。そこで教員には通信制高校についての知識を身に付け、生徒の相談や進路指導に役立てることが期待されます。本記事では通信制高校について概要やメリット・デメリット、卒業までの流れなどを詳しくまとめました。教育に携わる方は生徒の対応にぜひ役立ててください。

生徒の多様性を育むために教師が知っておきたい「通信制高校」の基本

通信制高校とは、基本的に毎日通う必要はなく、インターネットを使った通信教育などを通して単位を取得する学校です。卒業すると高校卒業資格が得られます。自身の状況やライフスタイルに合わせて通いやすい通信制高校は、多様な生徒の実態に応じて教育の機会を提供できる場でもあります。ここでは通信制高校の基本的な情報について説明していきます。

どのような生徒が通っているのか

通信制高校にはさまざまな状況・年齢の生徒が通っています。例えば下記のような生徒が挙げられます。

・中学校から通信制高校へ進学した
・全日制の高校から転入してきた
・働きながら高卒資格取得を目指している
・不登校や発達障がいのため全日制高校に通いづらい
・スポーツや芸能活動など、学業以外の活動に専念したい

通信制高校の仕組み・卒業に必要なこと

通信制高校を卒業するためには、主にレポート・スクーリング・テストの3つを経て必要な単位を取得する必要があります。

レポートを提出し添削指導を受ける

通信制高校では自宅での自主学習がメインです。教科書やワークに取り組むほか、動画授業や練習問題などで学習を行う場合もあります。分からないことは電話やメールで教員に質問します。自主学習の進捗状況や理解度を報告するために必要なのがレポートです。レポートといっても論述形式ではなく、基本的な問題を解く方法が主流です。レポートは添削後に返却され、生徒はアドバイスを読みながら復習を行います。

スクーリングで直接指導を受ける

通信制高校では単位の取得や卒業のために、定められた時間以上の授業を学校で受けることが必要です。この通学のことを「スクーリング」といいます。スクーリングの頻度やスタイルは学校によってさまざまです。全日制高校と同じように毎日のスクーリングを行う学校もあれば、合宿などで集中的にスクーリングを行う学校もあります。また、オンラインでの面談やラジオ・テレビ、インターネット配信の視聴など、オンラインを活用したスクーリングを行っている学校もあります。

単位認定試験(テスト)を受ける

単位取得のためには、レポートの内容に沿った単位認定試験(テスト)に合格する必要があります。単位認定試験の難易度はそれほど高くなく、普段のレポート課題にしっかりと取り組んでいれば対応可能な場合が多いようです。

全日制や定時制との違い

通信制高校と全日制や定時制高校では、登校頻度や時間帯・学習方式が異なります。ここではそれぞれの違いについて解説します。

登校頻度・時間帯

通信制では基本的に毎日登校する必要はなく、好きな時間に自主学習を行います。スクーリングに通うことは必要ですが、頻度を決められたり、年に数回の登校や合宿への参加のみを義務付けたりする場合もあります。全日制や定時制では時間割を採用しており、基本的に平日は毎日登校します。時間帯は全日制の場合日中の5~8時間ほど、定時制の場合は夕方から夜にかけて4時間程度です。基本的には教員が対面での授業を行います。

学習方式

学習方式には大きく分けて下記2つのタイプがあります。

・学年制:学年ごとに修めるべき教育内容が決まっている学習方式
・単位制:卒業する条件として決められた単位を取得する学習方式

通信制では単位制、全日制では学年制を採用する場合がほとんどです。定時制では学校によってどちらを採用するか判断が分かれています。

通信制高校に通う生徒は増えている

文部科学省が行った「学校基本調査」の結果を見てみましょう。平成元年の高校生の数は約580万人でした。これに対し令和元年の高校生の数は約340万人と、約6割に減少しています。生徒数全体の減少に伴い、生徒数は全日制では約6割、定時制の高校では約5割に減っています。しかし通信制高校の生徒数は2割ほど増え、高校生全体に占める割合も3%から6%に増加しています。上記の結果からも、多様な生徒を受け入れる通信制高校の需要は高まっていることがうかがえます。

通信制高校で学ぶ生徒にとってのメリット

日本では高校に進学する際、全日制を選ぶのが主流です。しかし通信制高校で学ぶからこそ得られるメリットもあります。

メリット①通学や対人関係のストレスから解放される

全日制高校などに通学するときには、通学自体に時間がかかったり、電車が混雑したりとさまざまな負担がかかる場合があります。しかし通信制高校では主に自宅で学習を行うため、通学のストレスが軽減されます。起立性調節障がいで朝起きづらい人や病気・けがなどで身体的なつらさがある人にとってこのメリットは大きいでしょう。また通信制高校では周囲の生徒のペースを気にせず学習に集中できます。リラックスできる環境でストレスに悩まされず学習できるというのは通信制高校ならではの良さです。

メリット②一人ひとりの状況に合わせたサポートが受けられる

通信制高校には不登校や病気・障がいのある人など、さまざまな事情を抱えた生徒が在籍しています。通信制高校では個別サポートが充実している学校が多いため、事情を抱えた人も無理のない範囲で学習ができます。

メリット③ICT教育の導入が進んでいる

通信制高校に通う生徒はICTツールを活用して学習したり生徒同士でコミュニケーションを取ったりできます。さらに動画配信などを利用した臨場感のある授業を自宅にいながら受けることも可能です。学校が動画やアニメーションなどを活用した授業を行うと、生徒の興味関心が高まると考えられます。加えて高校生のうちにビジネスでも使う可能性の高いツールを経験しておくことで、生徒のICTリテラシーが高まります。

メリット④高卒資格を取得して大学進学を目指せる

高卒資格と似た制度として「高卒認定」という高校卒業程度の学力があることを証明するための試験があります。高卒認定の取得でも大学等の受験資格は得られます。しかし高卒認定を取得しても高校を卒業したことにはならず、履歴書などに書ける学歴は「中学卒業」のままです。通信制高校を卒業すれば全日制や定時制の高校を卒業したのと同様に高卒資格が得られ、大学等の受験票や履歴書には「高校卒業」と記載できます。

通信制高校を選択するデメリット

通信制高校を選択することにはメリットが多い一方で、デメリットもあります。そこを理解し、生徒に伝えることが重要です。下記では通信制高校を選択するデメリットやその解消法を紹介します。

デメリット①面と向かってのコミュニケーションが希薄になりやすい

通信制高校では登校回数が少ないため、面と向かってのコミュニケーションが希薄になりやすい側面があります。それゆえ友人をつくる機会が必然的に少なくなる可能性があることを、学校側が把握しておかなければなりません。ただし通信制高校では1クラスの人数が少ないため、登校時に特定の生徒や教員とじっくり関わり深い関係を築けるケースもあります。また、時間に融通が利く点を利用してアルバイトや好きなことに打ち込み、そこでさまざまな人との関わりを持つ選択もできます。学校によっては行事を豊富に用意し、生徒同士の交流の機会を設けているところもあるようです。

デメリット②自主的に計画を立てて学ぶ必要がある

通信制高校は家庭での自主学習を基本とするため、卒業するには生徒が自分で計画を立てて学習を進めていく必要があります。用意された内容を受け取るのではなく、主体的に学習する姿勢が常に求められます。

デメリット③大学進学を志望する生徒には学習内容が易しすぎる場合がある

通信制高校は学校にあまり通えず学力が不足している人にも門戸を開いているために、全日制高校と比べると学習内容が易しく設定されています。それゆえ大学への進学を希望する生徒にとっては、学習内容が不足するケースが考えられます。大学進学を希望する生徒には、通いたい通信制高校の大学進学実績を確認したり、進学コースがある学校を選んだりするようアドバイスを行うとよいでしょう。

通信制高校のデメリットを埋める「サポート校」とは

通信制高校に通う生徒を支援するための施設として「サポート校」があります。サポート校には講師やカウンセラーが所属し、通信制高校を3年で卒業するためのサポートを行います。具体的には授業や学習計画の相談・精神的なケアなどが実施されています。通学日数はサポート校によって異なりますが、週に1~5回程度です。サポート校の多くは通信制高校と連携しており、通信制高校入学と同時にサポート校にも入学します。通学日数が多いため、友達づくりにつながるケースもあるようです。

生徒が通信制高校への進学や転入・編入を希望するときの注意点

生徒が通信制高校への転入・編入を検討する際に、教員として相談に乗ったり進路指導をしたりする場合があるでしょう。転入とはいわゆる転校のことを指し、編入とは学校を退学した人がもう一度別の学校へ入りなおすことを指します。通信制高校に転入・編入する際には注意したい点があります。教員としては注意点を把握し、生徒の相談や指導に役立てていきましょう。

学校によって募集時期が違う

通信制高校は編入学や転入学をしてくる生徒が多いため、1年に複数回入学の機会が設けられています。しかし入学者を募集する時期は学校によって異なるため、事前に情報収集をしておくことが大切です。中には通信制高校に転入したくてもその時期に募集がなく、やむなく一度退学してから編入しなおすといったケースもあるようです。教員としては生徒の希望に合った時期に転入や編入がかなうよう、ホームページなどで情報収集をしておく必要があることを生徒に伝えましょう。

単位の把握が大事なことを生徒に伝える

生徒が通信制高校へ転入して同級生と同じタイミングで卒業したい場合、教員は単位の把握がいかに重要かを生徒に伝えることが大切です。卒業に必要な単位数をそろえるためには、全日制高校から引き継いだ単位に加え、転入後に単位を取得する必要があります。しかし、転入の時期によって取得できる単位の上限は決まります。それゆえ卒業時期にこだわる場合は、期間内に必要な単位数を取得できる通信制高校を選ばなくてはなりません。通信制高校を選ぶ際には、期間内に取得できる単位の上限を確認することが大切だと生徒に伝えていきましょう。

まとめ

通信制高校は生徒の多様性を受け入れる教育機関として、近年ますます需要が高まっています。通信制にはストレスが少ない環境でマイペースに学習を進められる、ICT教育の導入が進んでいるといった多くのメリットがある一方で、学習への計画性が求められるなどのデメリットも存在します。生徒が通信制高校の特性をしっかりと理解した上で適切な進路を選択できるよう、教員はサポートを行っていきましょう。

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