子どもの幸福度と教育の関係は?日本の順位が低い理由と上位国の特徴

2023/12/21(木)

ユニセフで実施されている「子どもの幸福度ランキング」では、日本は20位で、ランキングの真ん中より下に位置しています。20位という順位は決して高いわけではなく、過去の子どもの幸福度ランキングよりも順位は低下しています。そこで、この記事では日本が子どもの幸福度ランキングで真ん中よりも下の理由や、子どもの幸福度が高い国の教育の特徴について解説します。併せて、子どもの幸福度向上のために必要な取り組みについてもご紹介します。

ユニセフ「子どもの幸福度ランキング」とは


ユニセフ「子どもの幸福度ランキング」とは、ユニセフ研究所が下記の観点を基に算出した幸福度に関するランキング表のことです。
・精神的幸福度
・身体的幸福度
・スキル
ユニセフが発表しているような幸福度ランキングを確認することで、各国の子どもに対する指導や教育に関する内容を理解できます。また、今後必要な取り組みについても明らかになるため、このような世界的なランキングを参考にして活用するのがおすすめです。

子どもの幸福度ランキング、日本の順位は真ん中より下

子どもの幸福度ランキングで日本は20位と真ん中よりも下に位置しており、2011年に行われた同一のランキングよりも順位を落としています。日本の分野別順位は以下の通りです。

ここからは、なぜ日本の子どもの幸福度ランキングが真ん中よりも下の位置に推移しているのかを分析していきます。

身体的健康は高い一方で精神的幸福度は最下位に近い

日本では、身体的健康が1位に対し、精神的幸福度は最下位に近い37位に位置しています。生活全般への満足度を0から10までで示す質問で、6以上と回答した日本の子どもは60%以上でした。世界各国の平均よりも高いことから、最下位に近い順位を付けられています。しかし、身体的健康に着目してみると、日本の子どもの死亡率は世界で見てもかなり低い数値で推移しています。また、過体重・肥満に関しても日本は2位を大きく離し1位です。食習慣やライフスタイルなどにより、日本は身体的健康を保っているといっても過言ではありません。

学力の習熟度は高い一方で社会的スキルは低い結果に

日本のスキルの順位は27位です。日本は、学力の指標である基礎的熟練度に達している子どもの割合では世界5位以内に位置しています。しかし、社会的スキルを見るとかなり低く、コミュニケーションスキルなどが大きな課題となっています。実際の質問として「すぐに友達ができる」と回答した日本の子どもの割合は、世界で2番目に低い数値です。こういった回答から、社会的スキルが低いと判断されています。

日本の子どもの幸福度ランキングが低いのは教育政策が一因?


日本の幸福度ランキングが低下しているのは、日本の教育政策が原因との声もあります。そういった声が上がる理由は、勉強ができたとしても社会は明るくないと感じたり、現在の教育指導にストレスを感じたりしている子どもが多くなっているからです。ここでは、日本の教育施策が原因といわれる理由についてさらに深掘りし、解説していきます。

自己肯定感が育ちにくい従来の学力偏重型学校教育

学力偏重型学校教育では、子どもたちの自己肯定感がどうしても育ちにくくなってしまいます。なぜなら、日本では勉強ができるからという1つのことで、子どもたちの能力を評価してしまうからです。そのため、スポーツができたり、絵が得意だったりする子どもであっても「自分なんか」と自己肯定感を下げてしまいます。また、学力偏重型学校教育では、子どもたちの間でも学力によってグループができたり、いじめに発展したりといったケースが生じやすくなります。学力だけではなく、子どもたちの特徴に合わせて評価する教育方法の導入が、子どもたちの精神的幸福度の向上にもつながると考えられます。

学校生活に起因しやすいいじめや自殺の問題解決も急務

日本では、生活満足度が高い15歳の割合が約60%とそれほど低いわけではありません。しかし、約15〜19歳の自殺率の高さは年々増加傾向にあります。自殺だけではなく、うつなどの精神疾患を抱えた子どもが多いのも課題の1つ。全てが学校生活に起因しやすいことで起こる内容ではありませんが、少なからず教育現場ではいじめが発生しています。教育現場で生徒を実際に見ている教員は、どういった状況の生徒が自殺を考え、精神疾患を抱えているのかどうかを見抜く必要があります。また、教育現場でいじめなどの自殺や精神疾患を引き起こす状況があれば、今すぐに問題解決を求められるでしょう。

子どもの幸福度が高い国の教育の特徴


子どもの幸福度が高い国として、オランダ・デンマーク・ノルウェーの3カ国が挙げられます。どの国にも共通していることは、子どもを尊重して個性を育むスタイルを大切にしている点です。日本とは大きく異なる教育方法を導入しているため、子どもの幸福度を高めるためにも各国の教育方法を参考にしましょう。

自由度が高いオランダの教育モデル

オランダでは、イエナプランと呼ばれる教育モデルを導入しています。イエナプランとは「共生」という意味を持つ名の通り、全ての子どもが会話や遊びを通して自分を見つめ、協力することを学んでいく教育方法のことです。日本の教育方針とは異なり、年齢や健康状態に関係なく、クラス編成が行われます。イエナプランでは、学力を基に個々の能力を見極めるのではなく、生徒1人1人の個性を伸ばすことで、社会貢献につながるようなレベルまで引き上げる指導方法が取られています。こういった指導方法は、生徒1人1人の自由度を高めることにつながり、精神的幸福度にも直結します。とはいえ、イエナプランはオランダの全学校の3%ほどでしか行われていません。しかし、イエナプランを導入していなくても生徒1人1人の個性を伸ばす教育方法を取る学校は多いため、精神的幸福度が高いまま維持されています。

子どもを尊重するデンマークの教育制度

一般的にデンマークの教育制度では、10年間の小中一貫制度が取られています。日本よりも1年早く義務教育が始まりますが、子どもたちの成長が追いついていないと判断された場合は、義務教育の開始を遅らせることが可能です。また、それぞれの進学を考える際に、学生が将来を見据える期間が必要と判断すれば、高校入学前の1年間を10年生として中学に残すといった方法が取れます。さらに、フリースクールに通う選択肢もあります。日本とは異なり、決まったルールがないため、生徒のペースで教育を受け続けることが可能です。その結果、学校に対する不信感や焦り、ルールなどを取り除くことができ、精神的幸福度の向上にもつながります。

自由な発言に力を入れるノルウェー式教育

男女平等法をはじめとした平等精神が培われ、男女差別や貧困、民族などに不平等が発生しないような教育機会を子どもたちへ与え続けています。現に、ノルウェーの学校は大学に至るまで学費が無料です。また、私立高校の割合は10%ほどしかなく、公立学校のほうが多く存在しています。一般教育と職業教育などの取り組み、オンライン教育などもノルウェーでは早い段階で取り入れられていました。さまざまな教育が導入されているのは、政府が教育への関心が高いことが大きな理由といえるでしょう。

子どもの幸福度向上のために必要な取り組みは?


最後に子どもの幸福度向上のために日本で必要な取り組みについて3つ解説します。子どもの幸福度は、これからの日本の未来につながります。教員側で子どもが学生生活を幸福に感じられるよう1つ1つ理解し、取り組んでいきましょう。

子どもの意思や意見に耳を傾ける

ユニセフが管理する研究所では、子どもの意思や意見は大人とは全く異なる観点を持っていることを強調しています。そのため、教員は子どもたちの意思や意見に対して真剣に耳を傾け、可能であれば取り入れていく必要があります。

子どもの主体性を尊重した授業づくりができる教員スキルの養成

子どもの意思や意見に耳を傾けることも大切ですが、子どもと長時間接する教員の指導スキルが劣っていれば、子どもの意思や意見を叶えられません。教員スキルを磨いていくためにも、子どもの幸福度を対象とした研修や授業計画の学びなどは必須といえるでしょう。

地域と連携できる仕組みづくり

子どもの精神的成長は、学内だけでなくさまざまな環境で感じるものです。そのため、子どもの成長を促進させるためにも、学校のイベントや行事だけでなく、地域と連携できる仕組みづくりを行いましょう。結果的に、地域と連携することで精神的な成長とともに、子どもたちの楽しみや幸せを生み出します。

まとめ


日本の子どもの幸福度が低いのは、全ての教育政策が原因というわけではありません。しかし、現状として学校内でのいじめや自殺が増加していることで、精神的幸福度が低いことは事実です。少しでも、子どもたちの幸福度を高めるためにも、教員側でできる施策や取り組みを徹底的に行いましょう。

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