子どもの自己肯定感向上につながる「リフレーミング」とは?

2023/12/15(金)

保護者

「短所も見方を変えれば長所になる」といったように、物事の見方を変えて感じ方を変える方法である「リフレーミング」。物事に行き詰まったときやネガティブ思考に陥ったとき、リフレーミングは解決の糸口を示してくれる可能性があります。この記事ではリフレーミングの概要や効果を分かりやすく解説しながら、教育現場での実践方法やツールもご紹介します。

物事の見方をポジティブに変える「リフレーミング」とは


リフレーミングとは、物事の見方(=フレーム)を変えて感じ方を変えることです。例えばコップに水が半分入っている状態を「半分しか入っていない」とネガティブに感じるとします。しかし見方を変えれば「まだ半分も入っている」とポジティブにも捉えることができます。このように、同じ物事に対する捉え方を変え、考え方を改めることをリフレーミングといいます。

リフレーミングが子どもにもたらす3つの効果


これからの時代を生きる子どもたちには、多様性を認め合う視点を育てることが大切だといわれています。リフレーミングは物事を多様な視点から捉える方法であり、子どもたちにぜひ身に付けてほしい考え方だといえます。ここでは、リフレーミングが子どもにもたらす主な3つの効果についてご紹介します。

①ポジティブな自己分析・他者理解

自身や他者の短所にばかり目がいってしまうことも、いろいろな視点から物事を捉えるリフレーミングを行えば長所として捉えられる場合があります。例えば自分自身を「内気だ」「面白みがない」と感じていたとしても、見方を変えれば「まじめだ」「誠実だ」と捉えることができ、自己をポジティブに分析できます。他者に対しても長所に目を向けることによって、人間関係がより円滑になるでしょう。例えば批判的な意見を発言する人がいて関係がギスギスしている場合「新しい考え方を教えてくれている」「自分にはない発想を持っている」と考えれば、批判をやわらかく受け止められます。

②自己肯定感の向上

私たちは人とは違うところをコンプレックスとして捉えがちですが、リフレーミングを行うとコンプレックスが強みとして感じられ、結果として自己肯定感も向上します。例えば「心配性だ」「童顔だ」というコンプレックスを「先を見通す力がある」「若く見られてうれしい」という強みとして捉えられれば、自分自身をよりポジティブに感じられるでしょう。

③苦手意識の克服

「苦手だからやりたくない」と尻込みしてしまうことに対してリフレーミングを行うと「新しい経験を積むチャンスだ」「初めからうまくいく人なんていない」と感じ方が変わります。そうするといろいろなことにチャレンジする意欲が生まれたり、チャレンジする中で苦手を克服したりできます。結果として自分のできることの幅が広がり、ますます成長していけるでしょう。

リフレーミングの3つのパターン


では具体的に考え方をどのように変えればリフレーミングができるのでしょうか。リフレーミングを行うときに変えるものとして、シチュエーション・物事への認識・自己認識の3パターンが挙げられます。3つのパターンを知れば、物事を多様に捉える方法がより深く理解できるでしょう。

①シチュエーションを変える

「今とは別の状況だったらどうか」と考えることで、物事の長所を見出せます。例えば「繊細で傷つきやすい」という人は、リフレーミングを行えば「人の痛みに寄り添える」と捉えられます。「対自分」として考えるとネガティブに感じられる性質も「対相手」とシチュエーションを置き換えることでポジティブな作用が見つかるのです。

②物事への視点を変える

状況や環境はそのままでも、物事の視点を改めるとよさが見えてくる場合があります。例えば子どもが「雪が降っていて学校に行くのが嫌だ」というときに、親が「絶好の雪遊び日和だね」と言い換える状況が考えられます。「雪が降っている」という状況は同じですが、視点をリフレーミングし、親は子どもがポジティブな面に気付くよう声掛けを行っています。

③自己認識を変える

例えば「リーダーに選ばれたが荷が重い」という場合「自分には無理だ」「できないかもしれない」というネガティブな自己認識が影響しています。そこで周囲の人が「リーダーに選ばれるということは、みんなから信頼されているんだね」と自己認識を変えるリフレーミングを行えば、ネガティブな思い込みに対して「できる能力があるから今の状況がある」と気付きを与えられるでしょう。自己認識が変わると「どうすればできるか」「どうやったら務まるか」と行動にも変化が表れます。

子どもを指導するためのリフレーミングの練習・実践手順


ここでは子どもを指導するためのリフレーミングの練習・実践手順について説明します。子どもが悩んでいるときやうまくいっていないときに、物事をリフレーミングできるようサポートすれば、気持ちが軽くなったり、状況をよりよく捉えられたりする場合があります。子どもの教育に携わる方はぜひ参考にしてください。

ステップ①リフレーミングしたいことについて現状の枠組みを把握する

例えば子どもがクラブ活動でけがをしてしまった場合は、けがの状況や「けがのせいで大会に出られなくなった」など、けがによって生じた悩みについて子どもから話を聞き、現在の状況や子どもがとらわれている枠組みを捉えます。

ステップ②視点を変える質問をする

質問には下記の2種類があることを押さえておきましょう。

(1)状況をリフレーミングする質問

状況をリフレーミングする質問とは、異なる状況では成果が出ていることに気付かせるための問いかけです。「このことで生じたいいことはないか?」などの質問が考えられます。例えば先ほどのけがをした子どもにとって、大会に出られなくなったことはクラブ活動という状況では残念です。しかし「時間ができたことで勉強に時間を使え、テストでいい点が取れた」など勉強という状況で成果が出ることもあるでしょう。周囲の大人が、本人が認識していない成果に気付けるようにサポートすることで、子どもはけがをポジティブに捉え直せるようになります。

(2)内容をリフレーミングする質問

内容をリフレーミングする質問とは「この出来事には他にどのような意味があるのか」を考えさせる質問です。例として「このことは他のどのようなことに役立つか?」などの質問が挙げられます。けがをした子どもに「けがをして気付いたことはある?」と大人が問いかけた場合、子どもは「フォローしてくれる周囲の人のやさしさに気付いた」「けがを防止することの大切さに気付いた」などと、けがをしたことによって得たものを自認できるでしょう。

ステップ③感じ方がどう変わったか確認する

リフレーミングによって気付いたことを行動に移したり、気持ちが楽になったりしたことが確認できれば指導の成果があったといえるでしょう。一方で思ったような効果が得られなかったときには、また別の視点を試したり他の人と協力したりして、引き続き指導することが大切です。

子どもへの声かけにも使えるリフレーミングの言い換え例一覧


ここからは子どもへの声かけにも使えるリフレーミングの言い換え例をご紹介します。リフレーミングを行うとネガティブに感じられる性質や特徴もポジティブに表現できます。子どもや教育をテーマにしたフレーズを取り上げるので、現場での子どもへの声かけに生かしていきましょう。

リフレーミングノートを使ったトレーニングもおすすめ


リフレーミングの方法が分かったとしても、実践するのはなかなか難しいものです。そこで必要なのがトレーニング。特にリフレーミングノートを使ったトレーニングは手軽でおすすめです。リフレーミングノートとは、気が付いたことをノートに次々と書き出していく方法です。頭の中で考えていると混沌とすることもノートに書いて可視化すると整理でき、リフレーミングがしやすくなります。書式に特に決まりはなく、自身が見やすいように書いていけば十分です。例えばノートの左にネガティブな事項を書き、右横にリフレーミングした内容を書いていくのもいいでしょう。リフレーミングノートを使ったトレーニングを繰り返し行っていくと、ノートを使わずとも頭の中だけで自在にリフレーミングができるようになっていきます。

リフレーミングの実践で注意すること


物事をポジティブに捉えられるリフレーミングはいいことづくめのように感じられますが、実践する上で注意が必要な点が2つあります。1つ目は、ダメな部分に目をつぶるだけで終わらないようにすることです。ポジティブ思考になれることはリフレーミングのメリットですが、ダメな部分を無視していては人間として成長できません。もっと成長していきたいときにはダメな部分をしっかり見つめ直し、改善していくことが重要です。
2つ目は、ネガティブな感情は押し殺せばよいものではないということです。リフレーミングではまず自分が何で苦しんでいるのか枠組みを理解し、ネガティブな感情を認めることからスタートします。ポジティブになることばかりを心掛けていると、自分の素直な感情を押し殺している状態になり、ますます苦しさを感じるでしょう。「リフレーミング≠ポジティブ」と理解することが大切です。

まとめ


物事をポジティブに捉え直す方法であるリフレーミング。リフレーミングによって、子どもが自身や他者をポジティブに受け入れられるようになる効果が期待できます。教員としてはリフレーミングの考え方や方法を理解し、ぜひ子どもの指導や支援に役立てていきましょう。

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