英語の話す力を測定するための「スピーキングテスト」。東京都では2023年度入学の都立入試から導入することが決定し、2022年11月に初めて実施されました。しかし全国的な導入はまだ先であり、新たな導入ということでその内容や対策方法が分からない方も多いのではないでしょうか。そこで本記事では、スピーキングテストの概要や実施体制、実施に対する問題点などを詳しく解説します。スピーキングテストの出題内容やテスト対策などもまとめましたので、都立入試を控えている中学生やその保護者の方はぜひ参考にしてみてください。
2023年度入学の都立入試からスピーキングテストを実施
東京都教育委員会は2023年度入学の都立入試からスピーキングテストの導入を決定し、2022年11月には初めて実施されました。実施方法は、東京都教育委員会監修のもと作成されたスピーキングテスト「ESAT-J」の結果を、学力調査と調査書の点数に加算するというものです。スピーキングテストが行われたのは現時点では東京都のみであり、全国的な始動はこれからであるため、どのように評価されるかは今後注視が必要になります。
スピーキングテストを行うことで「話す力」を測るのが目的
話す力は英語習得に必要な4技能「読む」「書く」「聞く」「話す」の1つです。読む力と書く力はこれまで通りペーパーテストで測ることができ、聞く力もリスニングテストによってスキルの習得度を評価できます。しかし、話す力を測るためのテストは、全国的に見ても実施が少ないのが現状です。国が定める学習指導要領では、英語4技能をバランス良く習得することを目指しており、中学校では話すことに重きを置いた授業が取り入れられています。スピーキングテストは、中学校で培った話す力を測るために導入が決まったといえるでしょう。
「成果と課題の検証」と「評価の導入」の役割を持つ
東京都教育委員会が公表した「実施方針」では、中学校で学んだスピーキングスキルの習得状況や中学校における英語指導の成果と課題を検証することをスピーキングテストの役割と示しています。また、検証結果をもとに指導の改善・改良を試みることが、スピーキングテストの目的とされています。さらに、これまで都立入試で実施されていなかった話す力に関する評価の導入もまた、スピーキングテストの持つ役割です。
スピーキングテストの実施体制
東京都教育委員会は、スピーキングテストを実施するためにいくつかの施策を講じました。ここでは、スピーキングテストの実施体制について解説します。
大手教育企業のベネッセが実施
スピーキングテスト「ESAT-J」の実施は、大手教育企業のベネッセが担うこととなっています。東京都の中学3年生全8万人にスピーキングテストを実施するにあたり、十分な人員の確保や実施から評価の方法など、いくつかの課題がありました。そこで、東京都教育委員会は、民間の資格検定試験業者を募り、スピーキングテストの実施を任せることにしたのです。公募の結果、資格検定試験の実績があるベネッセが実施企業に選ばれました。
企業が用意したタブレット端末にて受験
スピーキングテストは、実施企業であるベネッセが用意したタブレット端末を用いて行われます。ベネッセは試験用に開発した独自のタブレット端末を相当数保有しており、都立入試のスピーキングテストでもベネッセの用意したタブレット端末が使われることになりました。タブレット端末を使用した試験は、ベネッセが実施する資格検定試験をもとにした形式で行われます。受験者の音声をタブレットに録音し、録音された音声を受験者の解答として採点します。
スピーキングテスト実施に対する不安や問題点
これまで実施例が少ないスピーキングテスト。それゆえ、スピーキングテスト実施に対する不安や問題点もいくつか存在します。ここでは、どのような不安点・問題点が挙げられているのか確認しましょう。
①器具の不具合や想定外のトラブルの対処法
前述の通り、スピーキングテストはタブレット端末を使用して行われるため、タブレット端末に不具合が生じることは十分に考えられます。また、試験中に想定外のトラブルが起きることもあるでしょう。東京都教育委員会は試験監督も企業に任せていますが、スピーキングテストの試験監督人員が単発の仕事としてネット上で募集されていたため、器具の不具合やトラブルに的確に対処できるのか信頼性を問う声が挙がりました。このように、不具合やトラブルへの対処法が明示されていないことが不安要素の1つになっています。
②実施企業の個人情報の取り扱い
スピーキングテストを受験する際、受験者は個人情報を入力しなければなりません。個人情報の取り扱いに対して不安を持つ方は少なからずいるでしょう。しかし、今回スピーキングテストの実施企業とされているベネッセは、過去に個人情報漏えい問題を2度も起こしていることから、個人情報の扱い方について不安視する声の多さがうかがえます。
③採点者が不明瞭
都立入試のスピーキングテストにおいて、実施はもちろん、採点も実施企業の責任で行われます。実施企業であるベネッセはフィリピンで採点を行うとしていますが、採点方法や採点者は明らかにされていません。他にも、採点を行うにあたってどのようなトレーニングを実施しているのか、評価が割れてしまった際はどのように判断するのかなど、不明瞭な点が多いことも問題視されています。
④不受験者への対応
東京都教育委員会は欠席者の学力調査の点数を見て、同じ点数を獲得している受験者たちのスピーキングテストの平均点を欠席者の評価とするとしています。しかし、筆記テストとスピーキングテストの相関性は明らかにされていません。受験者の中には、筆記試験が得意でもスピーキングが苦手な生徒もいるでしょう。学力調査の点数を参考にスピーキングテストの評価が決まるという不受験者への対応が果たして適切なのかどうか問題となっています。
⑤親の経済力が話す力に影響を及ぼす可能性
スピーキングテストを受験するにあたっては、話す力をいかに身に付けるかが問われます。もちろん、各学校でもスピーキングテスト対策が行われることは予想されますが、塾などで集中的に力を付ける受験生も出てくるでしょう。子どもを塾などに通わせられる経済的に余裕のある家庭が存在する一方、そうでない家庭も当然あります。このように、家庭の経済力によって話す力に差が出ることが心配されています。
都立入試におけるスピーキングテストの出題内容は?
都立入試におけるスピーキングテストは、パートA~Dの4つで構成されています。ここでは、パートA~Dそれぞれの出題内容を確認しましょう。
パートA:音読問題
パートAは英文を音読する問題が出題されます。パートAの出題内容は以下の通りです。
音読には制限時間(30秒)が設けられているため、時間内に読み上げることが重要になります。
パートB:質疑応答
パートBで出題される問題は問いに答えたり、反対に問いを出したりする問題になっています。パートBの出題内容は、以下の通りです。
絵や図をもとに記載されている問い(英語)に答える
<No.4>
絵や図、日本語の指示に従い、自ら問いを考えて英語で発する
出題数4問中、問いに答える問題は3問、質問を発する問題は1問です。
パートC:内容説明
パートCの問題では、ストーリーの要点をおさえて、英語で説明するよう指示されます。パートCの出題内容は、以下の通りです。
パートCの内容説明では、登場人物の目線でストーリーを説明することがポイントです。
パートD:意見発信
パートDは、問いに対して自分なりの意見を述べる問題です。パートDの出題内容を、以下にまとめています。
パートDでは何を聞かれているのかを正確に理解し、質問内容に即した意見を述べることが重要です。
都立入試のスピーキングの対策や勉強法は?
都立入試のスピーキングテストには、どのような対策や勉強法が有効なのでしょうか。前項で紹介した出題内容を把握しつつ、効率の良い対策を講じましょう。
英文を読むスピードを上げる訓練をする
パートAでは音読問題が2問出題されます。前述の通り、1問の解答時間は30秒です。つまり、30秒以内に5文程度の英語を読み切る必要があります。時間内に読み切るためには、英文の音読に慣れること、そして読むスピードを上げることが求められます。音読の練習をする際には時間を決めて行いましょう。時間を設けて、とにかく止まらずに英文を読み上げることが大切です。仮に、発音が分からない単語があっても、発音を予測して読んだり、ローマ字読みしたりして、読み進める努力をしましょう。練習を重ねることで、英文の音読に慣れます。そして、時間を設けた訓練を繰り返せば、時間内に読み上げられる英文数は徐々に増え、結果としてテストでも30秒以内に英文が読めるようになるでしょう。英文の音読に慣れるよう、そして時間内に英文を読み切れるよう、訓練を重ねることが大切です。
タブレットに向かってしっかりと発声する訓練をする
スピーキングテストは、人間に向かって話すのではなく、タブレット相手に英語を発します。人間と違い、タブレットは受験者の声が小さいときに聞き返してくれることはなく、声が届かなければ採点されなくなってしまいます。タブレットに対して十分な声量で発音することが大切です。対策として、自分の声をスマートフォンやタブレットなどに録音して、声量を確認してみましょう。自分ではしっかり出しているつもりでも、実際に録音された声は小さい場合があります。録音した音声が聞き取りづらければ、より声量を上げることを意識してみましょう。また、録音した声を第三者に聞いてもらうことも効果的です。録音・確認を繰り返して、十分な声量で発声できるようにしましょう。
まとめ
2023年度入学の都立入試から導入が決定したスピーキングテスト。スピーキングテストは「話す力」の測定を目的とし、今後全国的に導入されていく見込みです。スピーキングテストの実施を担うのはベネッセです。資格検定試験についてのノウハウを活用し、タブレット端末を用いたスピーキングテストが行われることとなりました。スピーキングテストに対する不安や問題点は存在しますが、都立入試を控える中学生、そしてその保護者の方は、本記事で紹介した出題内容やテスト対策を参考にして、きたる受験に備えましょう。