不登校生徒を支援する制度とは?学校での対策のポイントや事例も紹介

2024/01/30(火)

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高校での不登校生徒数が毎年高水準で推移している中、不登校支援の在り方が問われています。しかし、不登校支援の制度についてよく理解していなかったり、具体的な支援方法が分からなかったりする教員の方も多いのではないでしょうか。本記事では、不登校支援の在り方や教員に求められるスキル、不登校支援制度の種類などを詳しく解説します。また、高校での不登校支援の方法について具体例も紹介しているため、ぜひ参考にしてみてください。

高校で不登校支援に取り組むための基礎知識


適切に不登校支援を行うためには、不登校の定義や現状などをよく理解しておくことが大切です。ここからは、不登校に関する基礎知識や現状について解説していきます。

不登校の定義とは

文部科学省は1992年の「学校不適応対策調査研究協力者会議」にて、不登校を以下のように定義しました。

引用元:不登校の現状に関する認識

ここでポイントとなるのが、以下の2つです。

・年間30日以上の欠席者であること
・病気や経済的理由による者は除くこと

毎年行われる学校基本調査でも、1998年から上記の定義に沿って調査が行われるようになりました。

不登校生徒が抱える背景や心理的状態の特徴

不登校になる生徒は、背景や心理状態別に7つのタイプに分けられます。ただし、全ての不登校生徒が以下で紹介するタイプに当てはまるわけではありません。あくまで目安として、以下7つのタイプを覚えておきましょう。

不安など情緒混乱型

学校に行きたい気持ちはあるものの、いざ登校しようとすると不安感に駆られたり、頭痛・腹痛・吐き気などの身体的不調が表れたりするタイプです。頑張り屋さんやまじめな性格の生徒に多く見られます。朝のうちに感じる不安や身体的不調は、午後には治っているケースが多いため、仮病と間違われることも少なくありません。

無気力型

不登校の明確な理由はなく、なんとなく行きたくないと感じてしまうタイプです。背景には、自己肯定感の低さや幼少期の経験などが考えられます。働きかければ登校できることもありますが、長くは続きません。本人ですら原因が分からないため、周囲からは怠けているだけだと思われやすい傾向にあります。

学校生活上の影響型

教師との関係性やいじめ、学業の遅れなどが原因のタイプです。クラスや担任が変わると登校できるようになることもありますが、そこまでには教師や保護者による十分な対応・配慮が必要です。学校生活の問題が長引くと「不安など情緒混乱型」になってしまうことも考えられます。

あそび・非行型

あそびを優先したり、非行に走ってしまったりするタイプで、中高生に多く見られます。あそびや非行に逃げ出したくなるのは、家庭環境が影響している場合があります。あそび・非行型の場合、無断欠席・早退・遅刻が続いた末、学校に来なくなるパターンが多く見られます。

意図的な拒否型

学校に通うことに意味を見出せないタイプです。意図的な拒否型の場合、不登校の理由には以下のようなものが考えられます。

・集団行動に苦手意識がある
・自宅の方が効率的に学習を進められる
・将来のために時間を使いたいと考えている

不登校生徒が自分の中に明確な理由を持っているのが、意図的な拒否型の特徴です。

複合型

さまざまな要因が複合しているタイプです。きっかけはささいなことであっても、複数の理由が重なることで不登校になりやすく、立ち直れなくなるほど深刻化してしまうケースもあります。

その他

上記で紹介したどのタイプにも当てはまらないのがその他の生徒です。不登校生徒それぞれの環境や事情を理解した上で、不登校の要因や経緯を見極めていく必要があります。

高校の不登校の現状

高校の不登校生徒数は多少の増減はあるものの、毎年高い水準で推移しています。2017年度から2021年度までの不登校生徒数(国公私立)は以下の通りです。

引用元:令和3年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について

また2021年度には、不登校生徒がどのような背景・要因を抱えているのかについても調査が行われました。

引用元:令和3年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について

上表から、不登校の高校生が抱える背景として「生活リズムの乱れ・あそび・非行」や「無気力・不安」の割合が高いことが分かります。

不登校支援の在り方


文部科学省は不登校支援について「登校できるようになる」結果を求めるだけではなく、生徒が主体的に進路について考え、社会的な自立を目指すことを基本の考えとする旨を提言しています。前項で紹介した通り、目安となるタイプはありますが、不登校になる背景や要因は生徒によって異なります。それぞれに適切な支援を行い、進路に対する主体性を持ってもらったり、社会的自立をサポートしたりすることが大切です。また不登校支援を行う際には、復学以外にもホームスクールや通信制などの選択肢があることも覚えておきましょう。

文部科学省の不登校支援の取り組み


文部科学省では、以下の不登校支援に取り組んでいます。

・教育支援センター(適応指導教室)の設置の推進
・不登校特例校の設置
・不登校児童生徒の支援を行う機関の連携体制整備、学校外の不登校支援の推進
・スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置、SNSなどを活用した相談体制構築の推進
・出席扱いについての措置

不登校特例校とは、不登校の児童生徒の実態に配慮して、特別に編成された教育課程を実施できる学校です。2023年現在、全国で24校(小学校・中学校・高校を含む)の不登校特例校があります。また、出席扱いについての措置では、小学校から高校までの不登校児童生徒が、学校外機関で指導を受ける場合や自宅でICT活用により学習を進める場合などにおいて、一定要件を満たした児童生徒に関しては「出席扱い」にできるとしています。

不登校支援で教員に求められる役割とスキル


不登校支援を行う教員には、以下の役割が求められます。

・生徒が不登校となった要因を的確に把握する
・学校関係者・家庭・関係機関と情報共有する
・生徒それぞれに合った支援策を作成する

上記の役割をこなす中で、生徒の進路選択や社会的自立をサポートすることが大切です。また不登校支援では、場合によってあらゆる関係機関を活用することが必要です。教員には、教育支援センター・不登校特例校・フリースクールなどと積極的に連携したり、協力体制をとったりする力も求められます。

不登校支援制度の種類と活用方法


不登校支援に関する制度にはあらゆる種類があります。ここでは、生徒自身が利用できる「補助金制度」「不登校支援センター」、そして教員が利用できる「不登校対応マニュアル」について解説します。

補助金制度

不登校支援に関する補助金制度は、各自治体で設けられています。たとえば、東京都には1人あたり年間最大24万円を支給する制度があります。フリースクールに通う児童生徒に実態調査に協力してもらい、協力金として月2万円を支給する制度です。フリースクール利用の負担を軽減することが目的とされており、支給の名目は協力金ですが、実質フリースクール利用料の補助となっています。この制度は不登校の小学生・中学生が対象であり、高校生は含まれていませんが、参考程度に覚えておくと良いでしょう。その他、滋賀県甲賀市では、市内の不登校児童生徒を対象に、月上限4万円までフリースクールの利用料を補助しています。補助金の支給額は、以下の規定に沿って決められます。

・生活保護受給者:10分の10
・就学援助受給者:4分の3
・上記以外:2分の1

このように、補助金制度は自治体ごとに定められているため、不登校生徒の居住地によって受けられる補助金は異なることを覚えておきましょう。

不登校支援センター

不登校支援センターとは不登校支援を行う民間団体です。カウンセリングを通して、不登校までの経緯、家庭での様子、不登校の要因を的確に把握し、不登校児童生徒それぞれに合った支援方針に沿ってサポートを行ってくれます。不登校支援センターは2009年からカウンセリング事業をスタートしました。約8万人の臨床データ、16万件のカウンセリング実績がある不登校支援の専門機関です。初回カウンセリング後は訪問カウンセリングによる学業支援プログラムで、児童生徒の学習意欲を高めるよう努めています。不登校支援では、カウンセリングの実施が重要といえます。教師と不登校生徒・保護者との関わりももちろん大切ですが、必要であれば専門機関に頼ることも大切です。

不登校対応マニュアル

各教育委員会の中には、不登校対応マニュアルを作成・公開しているところがあります。不登校対応マニュアルを公開している教育委員会の例としては、東京都の町田市教育委員会、東京都教育委員会、和歌山県教育委員会などが挙げられます。不登校対応マニュアルの中では、未然防止の取り組み、不登校早期の支援方法、長期化する不登校への対応など、段階に応じた支援の手順や方法が分かるようになっています。こうしたマニュアルを参考に、個々の生徒に合った支援を実施すると良いでしょう。

高校での不登校支援の方法と具体的な取り組み例


不登校生徒それぞれが抱える背景や要因を的確に捉えることが重要となる不登校支援。ここでは、高校での不登校支援の方法とその取り組み例を紹介します。

学校内での支援方法

不登校生徒を支援するときは、生徒との信頼関係を築くところから始めることが大切です。不登校生徒が登校してくるのをただ待っているだけではなく、コミュニケーションを取れるように工夫することも大切です。不登校生徒と信頼関係を築くための具体的な方法は家庭訪問です。家庭訪問は定期的に行うのが理想です。学校やクラスの様子を伝えると、不登校生徒に学校のイメージを持ってもらえます。また、直接教師の顔を見て話すことで、不登校生徒が安心してくれることもあります。もし、家庭訪問で生徒と直接会うのが難しければ、手紙を残して少しでも関係性を深められるようにしましょう。その際、会いたい気持ちやまた来る旨を書き残すことが大切です。不登校生徒が登校する意思を見せたときは、生徒によっては段階を経て教室に復帰できるよう支援します。いきなり教室に通わせるのでなく、保健室や図書館などの別室に登校できるようにしたり、他の生徒と時間差で登校するようにしたりと、生徒の気持ちに寄り添うことが重要です。その後は部分的な教室復帰を経て、完全復帰を目指します。もちろん、復学だけが不登校支援の目的ではないため、生徒の状況に応じて学校外の関連機関との連携も視野に入れておきましょう。

保護者との連携の取り方

不登校生徒の支援には、保護者との連携も欠かせません。保護者との連携の基本は、復学を優先せず、教師は生徒の自立をサポートする立場であることを1番に伝えることです。我が子が不登校になり、混乱している保護者も多い中で、復学を急かすような態度や姿勢は不登校の解決にはなりません。不登校生と同様、保護者が抱く願いや教師ができることをお互いに共有し、理解し合うことが大切です。話し合いの中で、保護者が支援者として活動をできるようになれば、不登校生徒の支援がより充実していきます。保護者との連携においても、家庭訪問は大事です。不登校生徒の生活状況を聞き、ささいな変化を認めたり、労ったりする言葉をかけましょう。また、学校側の受け入れ体制がどの程度整えられているのかを伝えることも、保護者および生徒の安心感につながります。スクールカウンセラーなどの人的配置の現状を伝えたり、生徒に応じた学習支援を提案したりすると良いでしょう。

不登校支援の今後の展望と改善策


あらゆる悩みや背景を抱える不登校生徒に対してより良い支援を行うためには、支援体制や方法の改善が求められます。ここからは不登校支援の今後の展望および改善策を紹介します。

教育システムの改善

高校では、2009年3月の初等中等教育局長通知にて、フリースクールなどで指導を受ける場合やICTを活用して自宅で学習する場合などに、指導要録上で「出席扱い」にする措置が認められるようになりました。文部科学省は今後の方向性として、事例の共有や学校外での学習活動の把握を進める中で、より適切な方策を検討し、上記の措置や学習内容が評価に反映できる制度の活用を促進すると打ち出しています。

不登校生徒へのキャリア教育や就労支援

前述の通り、不登校支援が目指すのは生徒の主体的な進路選択や社会的自立です。よって、不登校生徒へのキャリア教育や就労支援は大きな意味を持ちます。キャリア教育を通じて自分と向き合うことによって、不登校になったことで失いかけていた自信を取り戻せたり、前向きな思考を持てるようになったりという効果が期待できます。また、自分が好きなこと、やりたいことを考えるとともに、社会が求めていることや社会の課題・問題にも目を向けて、社会で必要な資質を身に付けられるのがキャリア教育です。不登校になり、どう生きていくのか分からなくなった生徒にとって、キャリア教育や就労支援は進路を明確にし、次の行動を起こすために必要な支援方法といえるでしょう。

教員の研修の実施

不登校を含む学校での諸課題に対して生活指導を行う力量を向上させるために、国・教育委員会・学校それぞれで教職員向けの研修が実施されています。特に、学校での研修は教育委員会などの研修で知識や方法を学んだ教職員が、全教職員に学んだ内容を周知するためにあります。常に最新の情報を全体で共有することが、個々に応じた不登校支援を可能にします。ただし、常に業務に追われている学校現場で、全教職員そろって研修を行うことは困難です。そこで、文部科学省は学年会にスクールカウンセラーを招いて事例を紹介したり、OJTとして日常の活動を研修の機会としたりなど、研修の工夫が必要だと言及しています。多様な研修方法で、教職員全体の力量を磨くことが求められます。

まとめ


不登校支援では生徒が主体的に進路を考えたり、社会的に自立したりすることを目指します。必ずしも復学が最終目標ではないことを覚えておきましょう。不登校生徒が抱える背景や要因はさまざまです。生徒および保護者を理解し、それぞれに応じた支援方法を考えることが大切です。本記事で解説した内容が参考となれば幸いです。

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