科学と人間生活とは?学習の内容や指導のポイントと実践例を紹介

2024/04/06(土)

授業方法

高校

2012年から高校理科の必修科目に加わった科学と人間生活。科学技術や人間生活の中の科学への関心を高め、科学的に思考するために必要な能力を学習するという特色を持っています。本記事では科学と人間生活の内容や学習における指導のポイントなどを解説していきます。情報や実践例を参考にし、生徒にとって効果的な学習に役立てていきましょう。

科学と人間生活とはどんな科目?


2021年から高校において理科の必修科目に加わった科学と人間生活。ここでは科学と人間生活とはどのような科目であるか、3つの項目に分けて解説していきます。

2012年から高校理科の必修科目に加わった科学と人間生活

科学と人間生活は、中学校までに学習した内容を基礎として、これまで以上に科学に関心を高め、科学的に探究するために必要な能力や資質を学習するという特色を持っています。現在、地球規模で環境問題やエネルギー問題を抱えているため、その中でできるだけ自然界と調和しながら持続可能な社会を構築することが求められています。問題解決のためには、まずは身の回りの物事や現象から、続いて地球規模の環境問題までを視野に入れて、総合的に判断できる力を身に付けておく必要があると考えられます。

科学と人間生活の特色

科学と人間生活は他の教科との間に履修の順序に決まりがありません。科学と人間生活を通して、生徒が科学に対する興味や関心を高めることがねらい の1つであるため、それを踏まえて教育課程編成上で配慮されることが望ましいでしょう。科学と人間生活は中学校で学習した理科の基本的な内容をもとに、懸念や探究方法を学習することを目的として、以下の4つの科目に分けて観察・実験・探究活動などを行います。

(1)物理
物体の運動と力・物理現象とエネルギー
(2)化学
科学と人間生活・物質の構成と変化
(3)生物
細胞と遺伝子・生物の多様性と生態系
(4)地学
宇宙における地球・変動する地球

科学と人間生活で身に付けさせたい資質・能力

科学と人間生活で身に付けさせたい資質や能力は、科学に関する関心を高め、科学的な見方や考え方を養うことです。今日現在、科学技術は社会のあらゆる場面にまで活用されています。将来のために、1人ひとりの科学に対する関心を高めながら、科学の知識を増やすことが重要であると考えられます。科学の原理や法則が日常生活でどのように結びついているのかを具体的に学習しながら、科学を学ぶ意義や有用性を実現させたり、自然の物事を科学的に探究したりするために必要な能力を身に付けることが重要といえるでしょう。

科学と人間生活の学習内容


科学と人間生活の学習内容は、物理・化学・生物・地学の4つの分野を含みます。ここからはそれぞれの学習内容について具体的に解説していきます。

科学技術の重要性を学ぶ「科学技術の発展」

時代とともに科学技術は進歩し、人間生活がより豊かになりました。これは、今までの科学技術の発展があったからといえます。そのため科学と人間生活の学習内容では、自然現象の中から新たな理論が発見されたことをもとに新しい発明や技術を生み出し、人間生活の中にどのように受け入れられてきたのかを取り上げます。

日常生活や社会の中の科学技術を学ぶ「人間生活の中の科学」

日常生活や社会と関わりの深い自然現象や科学技術を学ぶことによって、生徒の科学への興味や関心を高めることが期待できます。そのため、幅広い分野の学習を目指して、学習内容を以下の4つの項目に分類しました。

・光や熱の科学
・物質の科学
・生命の科学
・宇宙や地球の科学

自然や科学技術と人間生活の関わりを探求する「これからの科学と人間生活」

一例を挙げると、自然や科学技術に関連した問題等は将来、日常生活や社会に影響を及ぼす可能性が考えられると仮定します。このような問題に対して、どのような原因が考えられるのか、どのように対処していくかなど、人間生活の中の科学で学習した内容を踏まえながら探究していきます。これによって、自然現象を科学的に探究する力を養い、科学に対する興味関心を高めることが期待できるでしょう。

科学と人間生活の指導内容とねらい


科学と人間生活は、①科学技術の発展②人間生活の中の科学③これからの科学と人間生活の3つの分野から構成されています。指導内容は、日常生活や社会に関わる自然や科学技術について理解・関心を深めるというねらいから、生徒にとって身近な内容となっています。

「科学技術の発展」の指導内容とねらい

科学技術の発展では身近な科学技術の例を通して、科学技術の発展により人々の生活を豊かで便利にしてきたことを理解させるとともに、思考力・判断力・表現力を養うねらいがあります。科学技術の発展の学習事例として、私たちにとって身近な衣食住・交通・医療に関することから、情報伝達・防災・エネルギー資源の有効活用まで幅広く挙げられます。これらが人間生活の中に受け入れられてきた過程を学ぶことで、科学技術の発展と人間生活との関わりについて科学的に考察・表現する力を養うことが期待できます。その他に思考力・判断力・表現力などを養うためにディスカッション・発表・レポートの作成などを行うことも効果的でしょう。

「人間生活の中の科学」の指導内容とねらい

「人間生活の中の科学」のねらいは、身近な自然現象や日常生活の中で利用されている科学技術に関して、人間生活と関連付けて科学的に考察し表現することです。また、観察や実験などに関する技術を身に付けたり、思考力・判断力・表現力などを養うことも重要視しています。人間生活の中の科学を幅広く学ぶために次の4つの項目を設け、それぞれの課題を観察や実験を通して日常生活と関連付けて理解に導く指導を行います。

(1)光や熱の科学
・光に関する電磁波の性質や利用法について
・熱の性質やエネルギーの変換と保存および有効利用について
(2)物質の科学
・金属やプラスチックの種類・性質・用途や、資源の再利用について
・衣料材料の性質や用途、食品の主な成分の性質について
(3)生命の科学
・ヒトの生命現象について
・微生物の働きについて
(4)宇宙や地球の科学
・太陽などの天体運動や太陽の放射エネルギーについて
・自然景観の成り立ちや自然災害について

「これからの科学と人間生活」の指導内容とねらい

これからの科学と人間生活のねらいは、関わりについて認識を深め科学的に考察したり表現したりする力を身に付けることです。生徒の興味や関心に応じて、自然現象や科学技術に関連した課題を設定し考察することに加え、思考力・判断力・表現力を育成することが大切だと考えられます。一例を挙げると、生徒が自然や科学技術と人間生活との関わりについての課題を設定することからはじめ、課題について調査・考察し、それらについて報告書にまとめて発表することも効果的です。数名ごとのグループで協働的に活動することで、これからの科学と人間生活に関心を持つ生徒が増えることも期待できるでしょう。

科学と人間生活の指導のポイント


科学と人間生活の指導のポイントは以下の通りです。

・科学と人間生活のとの関わりについて理解させ、観察や実験などを中心に行い、自然や科学技術に対する関心を高める
・資質や能力を養うために探究に考慮した学習活動を行い、学習内容に応じて課題の把握・研究・解決における探究方法を習得する
・身近な事例をもとに科学技術への関心を高める
・これからの科学と人間生活においては、生徒に課題の設定、考察、報告書の作成・発表の機会を設けること

科学と人間生活の授業の事例


科学と人間生活は、どのような授業の事例があるのでしょうか。衣料と食品・熱や光の科学の2つに分けて解説していきます。

「衣料と食品」単元の事例

「衣料と食品」の単元では、食品の成分について主体的・対話的で深い学びの視点から思考・理解し探究するといった授業の事例があります。授業のねらいは、食品添加物である漂白剤・保存料・着色料などの用途について理解することや、身の回りの食品添加物がどのように応用されているか調査することです。以下の流れで授業が行われました。

1,既習事項を確認したあとに、授業の課題について説明・見通しを行う
2,生徒が食品添加物の用途を予想
3、実験から食品添加物の効果を考える
4,食品添加物の他の効果を考察

「熱や光の科学」単元の事例

「熱や光の科学」単元では、熱の伝わり方について考察した授業事例があります。熱の伝わり方について生徒が自ら意欲的に学び、観察や実験を通して熱の伝わり方を正しく理解することが授業の目標です。次の流れで授業が行われました。

・既習事項を復習したあとに、当日の学習内容を説明する
・実験を通して、熱の伝わり方を体験・観察
・生徒が実験結果をまとめる
・教員が学習内容をまとめ、次回の課題につなげる

授業に実験を取り入れることで視覚的に関心を持たせ、体感を伴った理解を得られました。

科目と人間生活は大学入試の受験科目ではない


令和6年度大学入学者選抜における大学入学共通テスト問題作成方針を確認すると「科学と人間生活」は大学入試の受験必修科目ではありません。また科学と人間生活は基礎分野のみの履修となることから、理系学科の個別試験で採用される可能性は低いといえるでしょう。それに加えて、理系に進学希望の生徒にとっては履修するメリットがあまりないと捉える見方があるようです。

まとめ


身近な科学への関心を高め、科学的思考を身につけることは重要です。科学と人間生活を学ぶことで、日常生活と科学がどのように関連しているかを理解することができるため、授業では実験や説明を通して生徒の興味を引き出すことがポイントです。指導内容や実践例を活用して、生徒の学力向上に役立てましょう。

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