私立高校無償化とはどんな制度?所得制限の詳細や制度利用時の注意点

2024/04/22(月)

制度・政策

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私立高校の無償化は、進路指導にどのように影響するのでしょうか。私立高校無償化の対象になる費用は、授業料のみです。本記事では、私立高校の無償化制度の概要と実質的に無料になる世帯収入の目安についてまとめました。自治体独自の取り組みや利用時の注意点についても解説するので、進路指導の際にぜひお役立てください。

2020年にスタートした「私立高校無償化」の制度内容


以下では、高等学校等就学支援金制度と制度の対象者および申請方法について解説します。

私立高校無償化は国の「高等学校等就学支援金制度」の一環

高等学校等就学支援金制度(以下「制度」という)は、家庭の教育費負担を軽減することを目的とした国の支援制度です。この制度は、国による授業料支援制度であり、全国で約80%の方が利用しています。制度の利用は授業料の免除ではなく、家庭からの出費をゼロにするか負担軽減を図ります。授業料が支援金を上回る場合、差額を自己負担しなければなりません。この制度の利用により、経済的に不安のある家庭の生徒も私立高校への進学が可能です。支給の有無や金額は、世帯の所得や学校の種類によって異なります。この制度は一般的に「私立高校無償化」と呼ばれますが、国公立高校の生徒も対象に含まれます。

参考:文部科学省「高等学校等就学支援金手続きリーフレット

制度の対象者

制度の対象者は、日本国内の以下の高校など(国立・公立・私立の全てを含む)に在学し、日本国内に住所を有する方です。
・全日制の高等学校
・中等教育学校後期課程
・定時制の高等学校
・特別支援学校高等部
・高等専門学校1学年から3学年
・専修学校の高等課程と一般課程
・その他各種学校で国家資格者の養成施設や指定された外国人学校など

制度の対象にならない方は下記のとおりです。
・専攻科および別科
・高校などをすでに卒業
・3年を超え在学
・定時制と通信制で4年を超え在学
・科目履修生と聴講生
・一定基準を超える収入がある世帯

受給するための申請方法

利用者(保護者または生徒自身)の申請により、制度を利用できます。ただし、たとえ支給対象であっても、自治体の定めた期限内に必要書類を提出しなければ支援金の支給を受けることはできません。申請月からの支給開始となるため、早めの申請がおすすめです。申請後は都道府県の審査を経て適正と認められれば支給が許可され、支援金は学校側に振り込まれ授業料に充当されます。家庭側の自己負担ですでに授業料が納入されていた場合には、学校は支援金を家庭に返金します。返金の時期は学校ごとに異なるため、学校への問い合わせが必要です。

【入学年度から3年生までの支給申請の流れ】

入学年度は自分で授業料を支払います。支払った後で支援金により補填されるため注意が必要です。

私立高校が実質無償になる世帯の年収の目安


支給対象者の判定は次式により行います。
【算定式】
市町村民税の課税標準額 × 6% – 市町村民税の調整控除の額
(※政令指定都市では調整控除の額に3/4を乗じて算出)
以下は、支援対象になる世帯年収の目安です。

・全日制の私立高校の場合の支給額です。
・両親の働き方は給与所得以外の収入はなく、共働きでは両親の収入は同額として計算しています。

あくまで参考の目安であるため、申請に当たっては学校または都道府県に問い合わせて確認する必要があります。

自治体独自に支給額増額や所得制限撤廃の動きも


以下では、大阪府・奈良県・東京都の3つを例に挙げ、自治体独自の個性ある取り組みを紹介します。

大阪府の取り組み

大阪府の私立高校無償化では、府内在住で府内の私立高校などに通う場合に適用されるのはもちろんのこと、近畿1府4県の私立高校などに通う大阪府民の生徒にも拡大する予定です。大阪府の新制度では、2024年度から入学金などで保護者の負担はあるものの、授業料の完全無料化を目指しています。正式には、2024年2月の大阪府議会定例会を経て決定されます。2024年度と2025年度は経過措置のため、授業料の一部負担が生じることがあります。新制度の開始時期は下記のとおりです。

・2024年度:高校3年生(段階的に実施予定)
・2025年度:高校3年生、高校2年生
・2026年度:高校1年生も含め全学年が対象

また、大阪府の私立高校などに通う周辺府県の在住者は、大阪府の新制度には適用されません。ただし、2023年12月時点の大阪府の発表によると、滋賀県や奈良県では大阪府の制度の対象となる「私立高校生等就学支援推進校」への指定を希望していない学校も多く見られます。
参考:大阪府「よくある質問について(私立高校生等への授業料支援・令和6年度新制度)

奈良県の取り組み

奈良県の取り組み案では、2024年度から世帯年収910万円未満とする所得制限を設けつつ、63万円を上限に公費負担する予定です。(年間生徒1人当たりの支援額)所得制限の世帯年収910万円以上でも、23歳未満の子を3人以上扶養している場合には県が独自で5万9,400円を上限に支援する予定です。県外へ通学する生徒は支援の対象外としているものの、財政状況と大阪府など近隣府県の動向と合わせて支援対象の実施の判断を考えています。

東京都の取り組み

東京都では、2024年度からの所得制限の撤廃に向けて検討しています。所得制限の撤廃は、高校授業料の実質的な無償化につながります。2023年度現在、東京都内の高校の授業料について、世帯年収910万円未満を目安とした支援は下記のとおりです。

・都立高校:国の支援で無償化
・私立高校:東京都が国の支援に上乗せし、都内の高校授業料の平均額47万円余りを上限として助成

東京都では、他にも公立小中学校の給食費の負担軽減に向けて取り組む予定です。

就学支援金制度の充実で生徒の進学先選択の幅は広がる


高校の選択肢として、国公立と私立高校があります。一般的に私立高校では、高校2年生終了時に高校3年間の授業を完了するなど、進路指導に手厚い環境にある高校もあります。進路指導面だけでなく、国公立高校と比較すると教育施設が充実している私立高校も多いといえるでしょう。進路指導に優れていれば、進学先も国公立大学や私立大学の難関校といわれる大学や生徒が希望している進学先を選択できる可能性が高くなります。修学支援金制度の充実により国公立と私立高校の両方で授業料が実質無償化されれば、よりレベルの高い教育を受けるために、私立高校を軸とした進学先を選択できるようになるでしょう。

私立高校無償化制度を利用するときの注意点


助成対象を中心に、利用に当たっての3つの注意点を見ていきましょう。

助成の対象は授業料のみ

支援金制度の対象はあくまで授業料のみであり、入学金や教科書費用、修学旅行費用などは対象外です。教育施設の充実した私立高校では、家庭の負担が公立高校より高くなる恐れがある点には注意しなければなりません。

初年度の授業料は一時的に自己負担になる場合がある

無償化制度においては、学校を設置した都道府県や学校法人などが、生徒本人に代わって支援金を受け取ります。支援金は授業料に充当されるため、保護者または生徒自身が直接受け取るわけではありません。特に入学初年度の授業料と支援金の差額については、保護者または生徒自身が一時的に自己負担しなければならない可能性があります。また、先に授業料を全額徴収後に後から差額を還付する方法を採用している学校もあるので、還付時期については学校への確認が必要です。

通信制高校のサポート校は制度の対象外

通信制高校の授業料は、就学支援金制度の対象です。ただし、サポート校に通う費用は支援金制度の対象ではないことに注意しなければなりません。サポート校は、添削課題に取り組む場合のサポートなどを行う施設です。サポート校には法令上の根拠がなく、高等学校等就学支援金制度の高校等に含まれないためです。

まとめ


私立高校が実質無償になる世帯年収の目安は、両親の働き方や子の人数などにより目安は異なります。就学支援金制度で生徒の進学先の選択肢が広がったことで、進路指導は今まで以上に準備に時間を要する可能性があります。今回紹介した自治体独自の支援策や、制度利用時の注意点なども参考にしていただければ幸いです。

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