大学無償化とは?いつから始まるのかや条件などを分かりやすく解説

2024/03/22(金)

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大学無償化について、子ども3人以上を扶養する世帯に対し、世帯所得の制限なしで大学入学金などを無償とすることが「子ども未来戦略」に盛り込まれました。従来よりも支援が拡充される方向性です。本記事では、生徒や保護者の方に説明する際の一助となるよう、教員の方向けに大学無償化の条件を分かりやすく解説します。ぜひ最後までご覧ください。

大学無償化(高等教育の修学支援新制度)とは?


大学無償化は2020年4月1日から実施されており、正式には「高等教育の修学支援新制度」といいます。大学無償化は、以下の2つで構成されています。

・返済不要の支給が受けられる「給付型奨学金」
・授業料の一部または全額が免除される「授業料等減免」

無償化の対象となる学校の種別は大学・短期大学・高等専門学校(4~5年生対象)・専門学校です。これらの学校に在籍し、世帯年収や学業成績などで一定の基準を満たしている生徒が対象となります。国が要件を満たしていると認める学校であれば、国公立や私立の区別はありません。大学無償化の制度は、金銭的理由で高等教育への修学が困難な状況にある世帯の子どもを支援する制度です。

大学が無償化になる条件・要件


基本的に、後述の「経済状況に関する条件・要件」および「成績・意欲に関する条件・要件」を満たす学生全員が大学無償化の対象です。次の条件などによって支援金額も異なります。

・経済状況に関する条件
・成績・意欲に関する条件
・その他の条件

以下では、具体例を挙げて解説します。

経済状況に関する条件・要件

対象者は、意欲はあるが金銭的理由によって進学できない子どもです。世帯年収や資産要件を満たしていなければなりません。所得要件は、世帯所得が一定以下であることです。世帯所得の目安は、市町村民税の所得割額で決まります。世帯収入や資産要件により異なりますが、両親と子ども2人の4人世帯の場合、支援を受けられる年収目安は下表の通りです。

制度の対象に該当するか、給付型奨学金の額はいくら受けることができるかについては日本学生支援機構のホームページでシミュレーションが可能です。
参考:文部科学省「高等教育の修学支援新制度」(※)
参考:日本学生支援機構ホームページ進学資金シミュレーター(※)

成績・意欲に関する条件・要件

経済状況に加え、下記の要件を満たす必要があります。

なお、上記基準を満たさない場合でも、レポートの提出や入学試験の成績(上位1/2以上)などにより学力や学習意欲が認められて申請可能なケースもあります。成績の基準を満たしていないからと生徒・保護者が諦めてしまわないよう、進路指導に当たる教員は自身や奨学金の担当窓口に相談するようアドバイスを行いましょう。

その他の条件・要件

進学後に、大学や自治体などから奨学金などの各種支援を受ける予定であっても、高等教育の修学支援新制度との併用に制限はありません。ただし、各種支援事業の実施主体が当制度との併用を制限している場合もあるので、実施主体への確認が必要です。浪人中の方であっても高校卒業後2年以内なら、卒業した高校を経由して進学前に申し込む「予約採用」の申込みが可能です。なお、職業訓練として大学などに通学するための給付支援を受ける方には給付型奨学金の支給はありません。2024年度からは、多子世帯や私立の理工農学部系などに通う学生などの所得中間層の方(世帯年収としては約600万円が目安)へと、さらに対象範囲を拡大予定です。こちらについては後述します。
参考:文部科学省「学びたい気持ちを応援します高等教育の修学支援新制度(Q&A)」(※)

2025年から新たに始まる「子ども3人以上で大学無償化」とは?


2025年度から開始される新制度は、異次元の少子化対策の一貫として行われます。2024年12月末時点では、大学授業料を無償化する方針で入学金も無償化の対象となる模様です。今回の新制度では、親の所得制限を設けない見通しです。対象となるのは3人以上の子どもを扶養している世帯とされています。4年制大学の他に医学部、歯学部や薬学部を有する6年制大学が無償化の対象になる予定です。他に短期大学や高等専門学校(4~5年生)、専門学校なども含まれると見られています。ただし、子どもが3人いても1人が就職するなどして扶養から外れると無償化の要件を満たさなくなってしまいます。3人の子どもがいれば全ての場合で無償化となるわけでなく、3人の子ども全員が扶養されていなければなりません。扶養3人目以降の子どもに対する、1人当たりの上限金額は下表を目安にしてください。

目安としての段階であるため、文部科学省などからの最新情報に注意しておきましょう。
参考:文部科学省「高等教育の修学支援新制度」どのくらい支援してもらえる?(※)

大学無償化はいつから申請できる?手続方法も解説


ここでは無償化の申請時期と手続きの方法を紹介します。

手続きの時期

手続きの申請時期および手続きの内容は下表の通りです。

参考:文部科学省「高等教育の修学支援新制度」手続きのスケジュールを教えて(※)

手続きの方法

申請手続きの方法と流れは以下の通りです。

1.申請の手続き

授業料などの減免を申請する場合、在校生は学校から申込書類を入手して学校に申し込みを行います。高校生の場合には、進学したときに進学先の学校で定めている手続きに従います。また、給付型奨学金の申請では、在学中の専門学校や大学から関係書類を入手して、インターネットで日本学生支援機構へ申し込む流れです。

2.決定後の流れ

上記の通り申し込んだ後に審査が行われます。支給決定後には、日本学生支援機構から学校を経由して通知されます。高校生の方の場合、交付された必要書類一式を進学先に提出しなければなりません。

大学無償化のメリット


ここでは大学無償化の主なメリットを3つ紹介します。

教育の普及と平等

本来、教育を受けることに金銭的格差の影響はふさわしくありません。大学無償化の目的は、授業料などを免除することです。経済的事情により、大学への進学を諦めざるを得なかった生徒が高等教育への参画が可能になることで教育の普及につながります。
日本国憲法第26条の教育を受ける権利についての規定は以下の通りです。(一部要約)
「全ての国民は法律の定める所により能力に応じ等しく教育を受ける権利がある」
また、教育基本法第4条では誰もが教育を受ける権利を有していることを述べています。
上記のことから、義務教育は無償とする旨が定義されていますが、高等教育にあっても無償ではないものの、同様に国民に保障されていることが分かります。

知識経済の促進

知識経済とは知識の生産管理面の経済活動、知識を基盤とした経済について使用されます。大学の無償化は、知識経済の促進につながる要素の1つです。無償化されることで、経済的な制約のために高等教育を受けられなかった方に対しても教育の機会が与えられ、多くの方が高等教育を受けることにつながります。生まれ持っている開発されるべき能力や才能が発揮されます。知識経済が促進されることで、ひいては競争力のある産業経済が育成されていく可能性があるといえるでしょう。

若者の将来への投資

フランスなどでは、大学などの高等教育の無償化を既に実施しています。現時点では、日本の家庭において子どもに大学で教育を受けさせることの経済的負担は比較的大きいといえます。学習意欲と学習能力を兼ね備えた若者に対しては、大学無償化は将来への大きな投資となるため、コストパフォーマンスも大きいといえるのではないでしょうか。

大学無償化の課題・注意点

メリットが多いように見える大学無償化ですが、一方では注意したい点も存在します。ここからは、大学無償化の課題や注意点を見ていきましょう。

大学無償化対象ではない大学も存在する

大学無償化の対象とならないのは、経営上の条件を満たしていない大学や、小規模であることから対象者を見込むことが難しい大学などです。大学などが無償化制度の対象になるには、経営面や財務面などの一定要件をクリアする必要があるためです。また、学校独自の充実した奨学金制度などがある場合、利用を見送る大学もあるでしょう。志望大学が無償化の対象となっているかどうかは、文部科学省のホームページなどで確認しておきましょう。

一定の学力が求められる

学習意欲があることが、大学無償化の対象となる条件です。それとともに一定程度の学力を有することが求められています。高校3年生と大学1年生の場合には、高等学校の成績が評定平均3.5以上でなければなりません。また、大学2~4年生の場合には、大学のGPA(平均成績)が上位1/2以上であることが条件です。上記から、一定程度の学力を有しているかを判断します。

扶養する子供が3人以上の多子世帯が対象である

新制度では所得制限が撤廃されたものの、以下の注意点があります。前提条件として扶養する子どもが3人以上であっても、1番上の子どもが大学を卒業し就職などの理由で扶養から外れると無償化の対象外になります。扶養する子どもが2人以下になれば無償化の新制度は利用できないようになります。逆に、扶養する子ども3人全てが大学生である場合には全員が無償化の対象となり得ます。また、扶養する子ども3人のうちの2人が大学生である場合には、2人の大学生が無償化の対象となります。

まとめ


異次元の少子化対策の一貫として開始される大学無償化については、2023年12月に閣議決定されたばかりです。本記事では最新の情報にもとづき、扶養される子どもが3人以上の多子世帯に対する大学無償化には、親の所得制限がないことをお伝えしました。また、扶養している子どもの数が3人以上でなければ、多子世帯に対する大学無償化の対象ではありません。進路指導に際し、本記事の内容が参考になれば幸いです。今後も文部科学省などからの最新情報に注意していきましょう。

※参考:
文部科学省「高等教育の修学支援新制度
日本学生支援機構ホームページ進学資金シミュレーター
日本国憲法第26条、教育基本法第4条

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