2019年にGIGAスクール構想が発表され、これまで「1人1台端末の配布」や「校内の通信環境の整備」が行われてきました。実際に学校現場では、ICT機器を活用した教育の実施が進んでいます。近年、GIGAスクール構想の第2フェーズとして注目されているのが、「NEXT GIGA(ネクストギガ)」です。しかし、「NEXT GIGAって何?」「NEXT GIGAでは、具体的にどんな取り組みが行われるの?」と疑問を抱いている方も多いのではないでしょうか。この記事では、NEXT GIGAの概要やNEXT GIGAに向けた具体的な取り組みなどについて解説します。NEXT GIGAへの理解を深めたい方はぜひ最後までご覧ください。
NEXT GIGA(ネクストギガ)とは
NEXT GIGA(ネクストギガ)とは、文部科学省が進めるGIGAスクール構想の次なるフェーズおよび取り組みを指します。
そもそもGIGAスクール構想とは、児童・生徒の能力を最大限引き出す個別最適化された学び、および協同的な学びを実現することを目的とした取り組みです。「1人1台端末の配布」や「校内の通信環境の整備」を進め、ICTを活用した教育の実施を促進してきました。義務教育段階においては、2022年度末の時点で99.9%の自治体が1人1台端末の整備を完了させています。また、高等学校においても2024年度内には全ての自治体が端末の配備を完了させる予定です。
GIGAスクール構想を進める中で、いくつかの課題も浮き彫りになってきました。その1つが、端末の更新です。端末の故障やバッテリーの劣化などから、端末の導入が早かった自治体では端末の更新が必要になってきています。その他、自治体ごとに生じている端末の利活用状況の差も、解決すべき問題点として捉えられています。教師のICTスキル・研修体制・ICT支援員などが不足している自治体では、整備したは良いものの効果的な利活用には至っていません。
NEXT GIGAとは、こうした課題や問題点を解決し、全ての自治体でのGIGAスクール構想の実現を目指すフェーズあるいは取り組みのことです。
NEXT GIGAとGIGAスクール構想第2期との関係
NEXT GIGAは、GIGAスクール構想第2期に当たります。というのも、前述の通りNEXT GIGAは、GIGAスクール構想の実現やさらなる発展を目的としたフェーズおよび取り組みを指すためです。
NEXT GIGAに向けていつから動き出す必要があるのか
NEXT GIGAに向けた取り組みは、2024年度中に開始される見込みです。NEXT GIGAで求められる取り組みの1つに「端末の更新」があります。端末のバッテリーの耐用年数は4〜5年程度で、2024年はGIGAスクール構想が発表された2019年からちょうど5年目の年です。導入が早かった自治体では、2024年度から更新時期へと入っていきます。こうした自治体から、順次NEXT GIGAに向けた取り組みが開始されていくでしょう。
NEXT GIGAに向けて行うべきこと
NEXT GIGAに向けては、自治体や学校・教職員・児童や生徒それぞれが、ICTを効果的に活用できるような取り組みを行う必要があります。ここでは、それぞれが行うべき取り組みについて解説します。
自治体・学校が行うこと
自治体や学校に求められているのは、自治体間での端末の利活用状況の差を改善することです。第一に、ICT教育に適切な人材の配置や育成は欠かせません。教員のICTスキル不足、あるいはICT支援員やICTに詳しい人材の未配置が、自治体間での利活用の差を生んでいるためです。そして、今いる教員のために研修体制を整えたり、新たな人材を配置したりするためには、予算の確保が必要になります。無駄を削減しながら、ICT環境の整備およびICT教育の適切な実施のために予算を確保することが大切です。端末の利活用が進まないのには、他にもさまざまな要因があると考えられます。自治体によっては、単独での端末の利活用の推進が難しいこともあるでしょう。そこで必要なのが、広域連携です。文部科学省では、「県域での広域連携」や「中核都市等を中心とした地域ごとの広域連携」などといった取り組みを進め、情報共有や共同調達によって端末の利活用率を高めることを推奨しています。また、1人1台端末をより効果的に活用するためには、校外・地域・家庭で端末を利用できる環境を整えることも大切です。通信環境整備が困難な家庭への支援・放課後児童クラブや学童の通信環境の整備・場所を問わず安全に端末を活用できるクラウドサービスの整備など、より端末の活用の幅を広げていくような取り組みが求められます。
教職員が行うこと
教職員が行うことは、自身のICTスキルの向上や校務DXの推進です。端末の利活用が進まない要因の1つに、教職員のICTスキル不足があります。また、小・中学校の「総合的な学習の時間」、高等学校の「総合的な探究の時間」などでは、教職員が一方的に指導する従来のスタイルではなく、児童・生徒が主体となって学習するスタイルが採用されています。こうした学習スタイルには、ICTの活用が欠かせません。だからこそ、まずは教職員がICTに関する知識やスキルを身に付けることが必要です。ICTを活用した校務DXも、教職員が実施すべき取り組みです。ICTの活用が進んだことで、教職員の業務効率化も徐々に進んではいますが、それでも完全な改善・解決には至っていません。児童・生徒へ直接指導する場面だけでなく、校務を行う場面でも積極的にICTを取り入れて、校務DXを推進していくこともNEXT GIGAの実現につながります。
児童・生徒が行うこと
児童・生徒は、ICT機器やインターネットとうまく付き合っていくための知識やスキルを身に付けていく必要があります。
ベネッセ教育総合研究所が小学4年生~高校生を対象に実施した「子どものICT利用に関する調査2023」では、学校でのICT機器の利用に対して小学4~6年生の約8割、中学生および高校生の約7割が「楽しい」と回答しています。児童・生徒にとって端末を活用することは、単に調べ学習が容易になったり、学習内容への理解を深められたりするだけでなく、楽しさを感じるものといえるでしょう。だからこそ、気を付けなければならないのが端末の使い道です。同アンケートでは、約5割の高校生が「ICT機器を勉強以外のことに使ってしまう」と回答していることが分かりました。
参考:子どものICT利用に関する調査 2023 p.11|ベネッセ教育総合研究所
端末を使いこなせるようになることは、学習面でプラスの効果をもたらす一方で、インターネットゲームに依存してしまったり、SNSなどでのトラブルに巻き込まれてしまったりといったリスクを高める要因にもなります。そのため、児童・生徒はICT機器を活用する中で、情報リテラシーやインターネットとの付き合い方を学んでいくことが大切です。
NEXT GIGA実現のために文部科学省が取り組んでいる内容
NEXT GIGAを実現するための取り組みは、文部科学省でも行われています。ここでは、文部科学省が取り組む事業を2つ紹介します。
コンピュータ端末の更新費用としての補助
2019年から進められてきたGIGAスクール構想によって各学校での端末の利活用が進み、少しずつ効果も表れてきています。しかし、GIGAスクール構想を進める中では故障端末も増えてきており、4~5年程度とされているバッテリーの耐用年数にも迫ってきました。自治体によっては2024年度中の端末更新が求められることから、文部科学省では端末の更新と万が一のための予備機の整備に対して補助を実施するとしています。
文部科学省による補助事業と補助金について
文部科学省は、当初2024年度の概算要求に「GIGAスクール構想の着実な推進〜1⼈1台端末の更新〜」として、1人1台端末の更新費用148億円を含めていました。1台45,000円を上限に、児童・生徒全体の3分の2の端末の更新、および予備機の整備の補助を目的としてます。
しかし、その後2023年度の補正予算案に「GIGAスクール構想の推進〜1人1台端末の着実な更新〜」と題した事業に2,661億円を計上し、端末の更新および予備機の整備に対する補助額を1台55,000円に引き上げました。
同事業では都道府県に5年間分の基金を造成し、当面は約7割に当たる2025年度までの更新分に必要な経費を計上するとしています。また同事業には、視覚・聴覚・身体などに障がいがある生徒に対応した入出力支援装置の整備も含まれています。
ネットワークアセスメント実施促進事業
文部科学省は、1人1台端末の利活用の推進を阻害している要因の1つに、ネットワークの遅延や不具合を挙げています。そこで必要なのが、ネットワークアセスメントの実施です。ネットワークアセスメントとは、現状のネットワークを分析・診断する取り組みです。最適なネットワーク環境を実現するために問題点をピックアップすることを目的としています。ネットワークアセスメントの例としては、通信料やセッション数の測定・通信速度や通信遅延の調査・無線の電波干渉の有無やカバーエリアの調査などが挙げられます。デジタル教科書の導入・デジタル機材の十分な活用・クラウドベースの校務システムの導入など、今後ICT環境をますます発展させていくためには、通信ネットワークの最適化が欠かせません。文部科学省は都道府県や市町村を対象に、ネットワークアセスメントに要する費用を一部補助するとしています。具体的には、補助対象となる事業費の上限を100万円とし、1校当たり333,000円を上限に補助金が交付されます。
まとめ
NEXT GIGAは、文部科学省が推進してきたGIGAスクール構想を実現するとともに、さらなる発展を目指すフェーズに当たります。GIGAスクール構想を進める中で生じたさまざまな課題を解決し、より効果的なICT教育を実現することが目的です。NEXT GIGAの実現のためには、もちろん国や自治体の取り組みも必要ですが、教職員あるいは児童・生徒にもできることはあります。この記事を参考に、今自分ができることから始めて、GIGAスクール構想の着実な実現に向けた取り組みを進めていきましょう。