自己調整学習とは?実施のプロセスやポイントと取り組みの具体例

2024/06/03(月)

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本記事では、自己調整学習への取り組み方や授業で取り組む際のポイントを解説します。併せて、高校における自己調整学習を促す取り組みの具体例を紹介しますので、教育に関わる方はぜひご一読ください。

目標に向けて自ら学びをコントロールする「自己調整学習」とは

自己調整学習とは、生徒自身が能動的に学習活動に関わり、自身の学習を調整しながら取り組む学び方を指します。生徒が自己調整学習を習得することで、自身が立てた目標達成のためにどのように学習に取り組むかを自ら考察し、学習を進めていけると考えられています。

社会が大きく変化していく中で、生徒たちには常に学び続け情報をアップデートしていくことが求められています。このような現代だからこそ、学校教育において自身が能動的に学ぶことが重要視されており自己調整学習も大切な要素です。

自己調整学習と文部科学省が提唱する「個別最適な学び」の関わり

「個別最適な学び」は指導の個別化と学習の個性化に分類されており、生徒が自己調整をしながら学習を進めていけるように指導することの重要性が指摘されています。
基礎的な知識や技術などを確実に修得しながら、自ら調整しつつ粘り強く学習に取り組む態度を育成するためには、特性や学習進捗状況に応じて指導方法を変えたり教材を利用したりして柔軟な対応を行う「指導の個別化」が必要です。
また、学習の基盤となる資質や能力となる土台を養い、子どもの興味や関心に応じた最適な学習活動や課題に取り組む機会を提供する「学習の個性化」も必要です。

自己調整学習に取り組む姿勢は「主体的に学習に取り組む態度」の評価観点でもある

新指導要領の1つである主体的に学習に取り組む態度では、生徒が学習に対して粘り強く取り組む側面や、自ら学習を調整しようとする側面の2つの観点から評価を行います。
たとえば、諦めずに最後までやり遂げる姿勢や、目標を達成するために工夫をする姿が求められます。ただし、これらは生徒任せではなかなか習得することが困難なため、教師が学び方について丁寧に指導し、その上で評価することが大切です。

自己調整学習の土台になる3つの要素

生徒が能動的に学習に取り組むために必要な要素が3つあります。自己調整学習の土台となる3つの要素について解説します。

何のために学習するのかという「動機付け」

動機付けにはさまざまな種類がありますが、なじみ深いものとして「外発的動機付け」が挙げられます。褒められることや叱られることを避けるために努力することから、外発的動機付けはネガティブなイメージを持つ方も少なくないでしょう。
しかし、能動的に学習に取り組む姿勢をつくるためには何らかの動機付けが欠かせません。動機がないまま取り組む状態の方が好ましくないため、教師は生徒に動機付けを促し学習に向かう姿勢をつくるのも1つのポイントです。

どのような方法で学習するのかという「学習方略」

学習方略は次の2つに分類されます。

認知的な学習方略
→どのように覚えるか、どのように理解するかなど、認知に関わる学習方略
情意的な学習方略
→自ら目標を立て、やる気を引き出す学習方略

この2種類の学習方略は全ての生徒に適しているとは限らないため、1人1人の性格に適した学習方略を見付けることがポイントです。

自分を客観視する「メタ認知」

メタ認知とは自身を客観的に認知する能力のことを表し、将来社会で役立つスキルの1つです。
メタ認知にはモニタリングとコントロールの2つの段階があります。まずは自信を客観的に観察することから始め、その上で自身の行動を改善できるようになります。
このように、メタ認知能力を鍛えることで自身がどのような状況か理解できるようになります。生徒が学習に対して能動的に行動することで、主体的な学びの実現が期待できるでしょう。

自己調整学習の3つのプロセス

ここからは、自己調整学習を実践するための「見通す」「実行」「振り返り」3つのプロセスを紹介します。

①見通す:計画を立てる

以前からも教育現場では学習内容について見通しを立てながら授業を進めてきました。自己調整学習を実践するにあたり、そこからもう1歩踏み込み、より精度の高い計画を立てることが必要です。
たとえば、学習計画表を配布し、具体的な内容(単元の課題)・自身の目標(頑張りたいこと)・学習方法・学習時間などを生徒に記入してもらい生徒と教師で共有しましょう。

中には、自身で計画を立てるのが難しい生徒もいるため、教師と共有したあとに学習計画表を見て手伝いながら適切な計画になるように調整するのも1つの手です。生徒は繰り返し調整することで、目標や計画を立てる力を身に付けられるでしょう。

②実行:計画にもとづいて学習する

授業を進める際に学習計画表を参照してもらうことで、生徒は学習の課題や目標を理解しながら学んでいけると考えられます。

また、授業時間内に目標を達成できるように効率の良い方法を生み出したり、時間を調整したりする生徒の姿が増えることも期待できるでしょう。このような経験を繰り返すことで、生徒は次第に学習を調整する力を習得していきます。
学習計画表の目標を達成するには教師の段取りも重要となるため、生徒と教師が力を合わせて進めていくことが最大のポイントといえるでしょう。

③振り返り:学習方法・学習内容を振り返る

学習内容が定着したか判断することも大切ですが、自己調整学習では学習方法について「達成できた」「達成できなかった」という視点で振り返り記述しましょう。

達成した場合・しなかった場合どちらも、その理由や原因を探り次の授業に生かしていくことが大切です。そのため、次の授業を始める際に前の時間での振り返りを改めて確認することで、生徒がより意識して授業に取り組め、学習方法の改善にもつながるでしょう。

自己調整学習に授業で取り組む際のポイント

授業で自己調整学習に取り組む際のポイントは3つあります。以下で詳しく解説しますので、ぜひ授業にお役立てください。

単元を見通した授業づくりを行う

次の2つのポイントを踏まえながら、単元の1時間目の授業が始まる前に考えておきましょう。

・単元の最後に生徒にどのような力を身に付けてほしいのか
・生徒がそれぞれの疑問を持ちながら、学習の出口に向かって主体的に授業に取り組むためにはどのような授業づくりが適しているのか

授業づくりを計画する際に役立つのが単元縦断型プロセスです。学習を進めていく中で生徒が主体的・対話的に学びながら目標を達成するために開発した学習プロセスです。これらを活用した授業づくりを行いましょう。

教師の基準で計画変更を行わない

通常であれば生徒の取り組みを見つつ、頑張っているからと教師の判断で予定の時間を延長する場合もあるでしょう。
しかし自己調整学習においては、生徒が主体となり理解し納得した上で決めることが大切です。そのため延長するか終了するかの判断を生徒に任せ、生徒と教師がともに授業をつくっていくことで、学びに対する意識が変わっていくでしょう。

知的好奇心を刺激して自ら学びたいと思える道筋をつくる

生徒が主体的に学習するために自ら学習方法を選択することは重要ですが、学習内容がおろそかになっては意味がありません。生徒は未熟な子どものため、興味を持つことにだけ追求してしまうと、教科のねらいから外れやすくなる場合もあります。

その際は、教師が目標からずれていないか確認する時間を設けたり、必要な知識を活用する場面を意図的に組み込んだりすることが重要です。生徒の知的好奇心を刺激しつつ、適切な道筋をつくっていきましょう。

ICTを活用して一人ひとりの情報を蓄積する

現代の生徒は1人1台端末を持っているため、動画や写真などこれまでノートでは残せなかった情報の記録が可能です。目標を達成した場合もできなかった場合も、振り返る手段としてICTの活用は有効です。
また、大学生になると履修登録という時間割を自ら作成するため、カレンダー機能に慣れておくことも大切です。端末のカレンダー機能を活用して、やるべきことをスケジュール管理したり友人と予定を共有したりすることも可能です。

このように端末を生かして自己調整学習に取り組めるように指導していきましょう。

自己調整学習を促す取り組みの具体例


ここからは、自己調整学習を促す取り組みを実施している高等学校の事例を2つ紹介します。

高校の事例①

島根県の開成中学・高等学校では、自己調整学習を育むために授業改革が必要と考えています。2018年度からは教科横断型の「総合探究」という授業を新設し、国語や美術の授業では俳句を学習してから、俳句をもとにして絵を描く俳画に取り組みました。

テーマは教師が自由に設定し、学習したことがどのように社会で活用できるのか実感できるような授業を目標にしています。
教科書の内容を教えるだけではなく、教科を学習することで何が分かるかを生徒に感じてもらえるような授業が、自己調整学習に取り組む姿勢を育てると考えられています。

高校の事例②

東京都品川区の品川翔英中学校・高等学校では、さまざまな取り組みを通して自己調整学習の考え方を育成しています。生徒が自ら学習する姿勢を育むために、以下のような予見・遂行・省察の3つの学習サイクルの活用によって生徒が自律的に学習する能力を身に付けることを目的としています。

1.予見 自己効力感・興味喚起
・フォーサイト手帳
・Big/Small シラバス
2.遂行 行動・メタ認知
・毎日の授業
・ICT教材の導入
3.省察 判定・評価
・ルーブリックによる評価
・確認テスト
・学期に1回の全国模試

上記の予見・遂行・省察の各課程を繰り返すことで、自身をモニタリングしたりコントロールしたりと、生徒が自ら学習する姿勢を習得できることを期待しています。

まとめ


生徒が能動的に学ぶ力を身に付けるために欠かせない自己調整学習。生徒自身が学習を調整することは簡単ではないため、教師の環境づくりやサポートが重要です。
生徒が取り組みやすい環境づくりのために、本記事で紹介した自己調整学習の3つのプロセスや授業で取り組む際のポイントをよく理解し、これからの教育に役立てていきましょう。

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