教育データ利活用の目的や現状、メリット・デメリットは?事例も紹介

2024/06/25(火)

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教育データの利活用は、個別に最適な学習指導を実現することが目的の1つです。学校のICT(情報通信技術)環境は整備され、GIGAスクール構想などで生徒1人1台の端末利用も進みつつあります。

本記事では、教育データの利活用の目的と現状やメリット・デメリットについてさまざまな視点から解説します。最新の取り組み事例も紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。

教育データ(教育ビッグデータ)とは


従来の教育データは、日時・正誤・得点などの事前に定めた構造に整えた構造化データと呼ばれるものが中心でした。現在は教育のデジタル化の推進に伴い、文字情報はもちろん、動画・音声・写真などの非構造化データも生徒たちの日々の学習記録として収集可能になりました。

教育ビッグデータとは、学校側が生徒の学習用タブレットやスマートフォンを経由して収集した、生徒の学習履歴や行動記録のデータです。コンピュータによる分析が加わり、生徒の苦手な点やつまずきが把握しやすくなるため、いち早くアドバイスできるようになります。


教育データ利活用の意義や目的


教育データを利活用することで、それぞれ事情の違う生徒へ向けて「誰1人取り残すことのない、公正に個別最適化された学び」の提供を目指せることから、ICT技術や教育データには大きな可能性があるといえます。

教育データ利活用の背景と意義

社会構造や雇用環境の大きな変化により、生徒に求められる能力も従来の理解中心型から大きく変化しました。

生徒には創造的な力や発見などで社会をけん引する能力や、数学的思考等の基礎的学力が求められています。他の生徒との学習が困難、ASDやLDなどの発達障害を抱えている、特異な才能を持っている、というように生徒側も多様化しています。

教育データの利活用には「子どもの力を最大限引き出す」ことで、以下の意義が認められています。

– 学びにおける時間・距離などの制約の除去
– 個別に最適で効果的な学びや支援
– 学びの知見の共有や生成
– 校務の効率化

教育データ利活用の3つの目的

毎日の学習等で生まれる教育データは、以下のように利活用することが目的です。

1. 個人の活用による学習等のサポート
2. 学校教員等の指導改善
3. 新たな知見の創出・政策への反映

生徒個々人の学習等では、デジタルで記録するため、生徒が後で振り返って利用することが可能です。

教職員はこれまでの生徒の記録等を見れば、生徒1人ずつへの個別で最適な指導の実現につながります。

教授法や学習法などの新たな知見の創出や政策への反映は、蓄積された教育ビッグデータを分析することで可能です。データは匿名加工した上で、個人の特定が全くできないように利活用できます。

一方で、デジタル庁は「政府が学習履歴を含めた個人の教育データを一元的に管理することは全く考えていない」と明言しており、教育データの一元管理が目的ではありません。

デジタル庁等が教育データ利活用のロードマップを策定


2022年1月に策定されたロードマップでは、ICTをフル活用し学習する子ども主体の教育への転換や教職員が子どもたちと向き合う環境を視野に入れています。

教育データ利活用の現状

教育データの利活用には、文部科学省が開発したオンライン学習システム「MEXCBT(メクビット)」が推進されています。2023年6月時点で公立小学校の70%超、公立中学校のほぼ全てが登録しました。

「MEXCBT」を利用すると、国や地方自治体等の公的機関が主に作成した約4万問の問題を利用できます。


短期・中期・長期での目指す姿

教育データ利活用のロードマップは、短期・中期・長期の3つに大別され、そのフェーズごとに実現を目指す姿を設定しています。

1. 短期(~2022年頃)
– 教育現場対象の調査・手続きは原則オンライン化
– 校務のデジタル化を進め、学校の負担を軽減
– ネットワーク環境の整備などインフラ面の阻害要因解消
– 教育データ基本項目の標準化

2. 中期(~2025年頃)
– 生徒が端末を日常的に使い、教育データ利活用のためのログ収集が可能に
– 内容・活動情報が一定の構成単位の大きさで標準化、学校・自治体間でのデータ連携
– 学校・家庭・民間教育の間でそれぞれの学習状況を踏まえた支援の一部を実現

3. 長期(~2030年頃)
– 生徒がPDS(個人情報を安全に構造化された方法で蓄積し管理するシステム・サービス)を活用し、生涯の自らのデータを蓄積・活用
– 内容・活動情報がさらに深い構成単位の大きさで標準化が実現
– 支援を要する生徒へのプッシュ型支援の実現
– 真に個別最適な学びと協働的な学びが実現

教育データ利活用推進のための文科省の主な取り組み


ここでは、教育データ利活用推進関連の主な取り組みを3つ解説します。

地域・学校間の格差解消

優良事例の普及や自治体支援の強化が行われる一方で、指導者の確保が難しいという課題もあり、地域・学校間の格差が生じています。

地域間格差解消のため、国が「ICT活用教育アドバイザー」を手配して各教育委員会等に助言や支援を行います。アドバイザーは大学教員や先進自治体の職員で、ICT環境整備の計画等やICT活用の適切な助言が可能です。

また、ICT支援員は日常的に教員へのICT活用の支援をすることで学校間の格差解消を図ります。

他にも地域と協働することで、学校教育の改革を図る事業があります。高等学校が自治体や高等教育機関、産業界等との協働で地域課題の解決等を実現する「地域との協働による高等学校教育改革推進事業(地域との協働プロジェクト)」です。

下記のとおり、高校生と地域課題のマッチングを効果的に行う取り組みです。

・地域との協働活動を学校の教育活動として明確化
・専門人材の配置等、校内体制を構築
・学校と地域をつなぐコーディネーターを指定
・将来の地域ビジョン・求める人材像の共有
・地域協働に資する学習カリキュラムの開発

参考資料:https://www.mext.go.jp/content/20211118-mxt_zaimu-000019059_05.pdf

参考資料:https://www.mext.go.jp/content/2022-0606-mxt_koukou_02-100002275-2.pdf

基盤となるツール・コンテンツの整備

教育DXを支える基盤的ツールの整備・活用事業があります。教育データの利活用促進には、基盤となるツールの整備が欠かせません。従来はツールを各自治体などがそれぞれ整備していたため、せっかくの成果が散在していました。

文部科学省が国として共通で必要なツールを整備するため、効果的な分析と教育データの利活用に向けて共通ルールやコンテンツを効率的に整備できます。

教育データの標準化

GIGAスクール構想により、1人1台の端末環境が前倒しで整えられています。教育データの標準化を推進するのは、サービス提供者や使用者が違っても、お互いに交換・蓄積・分析が可能となるように収集データの意味をそろえることが必須条件です。

データ内容の規格や技術的な規格をそろえる教育データの標準化では、データの種類や単位がサービス提供者や使用者ごとに異なることがないようにしています。

教育データの利活用がもたらすメリット


教育データの利活用では「誰もが、いつでもどこからでも、誰とでも、自分らしく学べる社会」を実現できることがメリットです。教育のデジタル化により、教育データの利活用の第一歩が始まります。

発達障害を抱える生徒が増えているため、学校に行きたくても行けない生徒が増加しています。教育データの利活用により「誰1人取り残すことのない、公正に個別最適化された学び」が提供されることは大きなメリットです。

生徒はこれまでの学習を簡単に振り返ることができ、興味のある分野について学習を広げていけます。教師は、生徒1人ひとりに対し、今までよりきめ細かな指導や支援を行うことができます。

教育データの利活用に伴う留意点や課題


教育データには、個人情報が含まれる場合があります。個人情報保護法および各地方公共団体の個人情報保護関係条例にもとづき、適正な取り扱いが必要です。

個人情報保護法の遵守は当然ですが、教育データを取り扱

地域との協働活動を学校の教育活動として明確化

専門人材の配置等、校内体制を構築
学校と地域をつなぐコーディネーターを指定
将来の地域ビジョン・求める人材像の共有
地域協働に資する学習カリキュラムの開発
参考資料:https://www.mext.go.jp/content/20211118-mxt_zaimu-000019059_05.pdf

参考資料:https://www.mext.go.jp/content/2022-0606-mxt_koukou_02-100002275-2.pdf

基盤となるツール・コンテンツの整備

教育DXを支える基盤的ツールの整備・活用事業があります。教育データの利活用促進には、基盤となるツールの整備が欠かせません。従来はツールを各自治体などがそれぞれ整備していたため、せっかくの成果が散在していました。

文部科学省が国として共通で必要なツールを整備するため、効果的な分析と教育データの利活用に向けて共通ルールやコンテンツを効率的に整備できます。

教育データの標準化

GIGAスクール構想により、1人1台の端末環境が前倒しで整えられています。教育データの標準化を推進するのは、サービス提供者や使用者が違っても、お互いに交換・蓄積・分析が可能となるように収集データの意味をそろえることが必須条件です。

データ内容の規格や技術的な規格をそろえる教育データの標準化では、データの種類や単位がサービス提供者や使用者ごとに異なることがないようにしています。うにはプライバシーの保護も重要です。教育データの利活用は、本人の理解と同意の上で行われる必要があるためです。

また、教育データのセキュリティの確保にあたっては、個人情報保護法等の他、地方公共団体が設置している学校対象の教育情報セキュリティポリシーに従う必要があります。教職員等は、文部科学省策定の「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」にもとづき、研修や訓練を受けなければなりません。

教育データの利活用においては、多くの留意点と課題があり、今後も新たなものが出てくると予想されるため、1つひとつ対応していく必要があります。

教育データ利活用の取り組み事例

各市区町村の教育委員会や学校等では、さまざまな取り組みを行っています。ここでは、スモールスタートで簡単に始めることができるものを中心に事例を紹介します。

東京都渋谷区の事例

東京都渋谷区の教育委員会は、マイクロソフト社提供のクラウドサービスのプラットフォーム「Microsoft Azure」を利用しています。区内の公立学校の教育データを見える化し利活用した結果、学校の状況把握が即時にできて教員の経験もデータで補っています。

渋谷区が目指すのは学力の向上ではなく「子ども一人ひとりが安心して、自分の個性を伸ばし、未来をよりよく生きるための力を身に付けることができる学校づくり」です。厳密なセキュリティ対策を取りつつ、生徒へのきめ細やかで具体的な支援や指導に活用しています。

埼玉県戸田市の事例

埼玉県戸田市では教育データの利活用で教育現場が戸惑わないために、最初はスモールスタートで少しずつ取り組みを開始しました。

戸田市の教育委員会は、以下の3つの方向性を打ち出しています。

授業を科学する
生徒指導を科学する
学級・学校経営を科学する

「授業を科学する」では、生徒の学力を特に伸ばした教師へインタビューをし、指導内容を分析することで効果的な指導方法をまとめました。

「生徒指導を科学する」では、教育データを利活用することで生徒の不登校などのSOSの早期発見と早期対応につなげて、積極的な生徒指導の補強を打ち出しています。

「学級・学校経営を科学する」では、教育総合ベースの学校カルテ機能や学校訪問時におけるデータの利活用を通じ、学級・学校経営の可視化・定量化への取り組みを推進します。


まとめ


GIGAスクール構想が前倒しで進み、端末の整備環境もほぼ整いつつあります。教育データの利活用は、現在中期のフェーズで年月とともに目指す姿も変化しています。政府や文部科学省にも常に新しい動きが見られるため、動向には注意が必要です。

教育データの利活用は今後もさらに進み、教師の側にも変化が求められています。ポイントを押さえた上で、適切に対応していきましょう。

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