我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」に見る日本の若者が抱える問題とは

2024/06/27(木)

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生まれたときからインターネットが普及しており「デジタルネイティブ」とも呼ばれるZ世代の若者たち。特に現在の日本の若者には諸外国と比べ大きな特徴があることが分かりました。

本記事では「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」を通して見えてきた、日本の若者の特徴や抱えている問題について解説していきます。また教育現場におけるこれからの課題や実践例も取り上げていますので、ぜひ参考にしてください。

「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」とは


「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」とは、2018年11月と12月に日本を含めた7カ国の満13歳から満29歳までの男女を対象に、内閣府がインターネットで実施した調査のことです。2018年の前は2013年に行われています。調査目的は「我が国と諸外国の若者の意識を比較することにより、我が国の若者の意識の特徴及び問題等を把握し、子供・若者の育成支援に関する施策の参考とするため」とされています。
調査領域は以下の通りです。

(1)人生観関係
(2)国家・社会関係
(3)地域社会・ボランティア関係
(4)職業関係
(5)学校関係
(6)家庭関係

調査対象国は以下の7カ国です。
・日本
・韓国
・アメリカ
・イギリス
・ドイツ
・フランス
・スウェーデン

「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」の結果が示す日本の若者の自己肯定感の低さ

自分自身に満足している若者の割合が低い


「人生観関係」という調査領域の中に「私は、自分自身に満足している」という質問項目があります。この項目で「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と肯定的な回答をした数値をまとめました。それぞれの国の回答結果は以下の通りです。

・日本     45.1%
・韓国     73.5%
・アメリカ   86.9%
・イギリス   80.0%
・ドイツ    81.8%
・フランス   85.8%
・スウェーデン 74.1%

日本の若者は諸外国の若者と比べ「自分自身に満足している」と感じている割合が圧倒的に低いことが分かります。

自分に長所があると感じている若者の割合が低い

同じ調査領域で「自分には長所がある」という質問項目があります。これも「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と肯定的な回答をした数値をまとめました。それぞれの国の回答結果は以下の通りです。

・日本     62.3%
・韓国     74.2%
・アメリカ   91.2%
・イギリス   87.9%
・ドイツ    91.4%
・フランス   90.7%
・スウェーデン 72.7%

「自分には長所がある」という質問項目においても、諸外国と比べ日本は肯定的な回答が低いことが分かります。

自己有用感と自分満足度の相関関係の特徴

「自分は役に立たないと強く感じる」という自己有用感についての質問項目について、「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と答えた調査対象7カ国の結果は以下の通りです。

・日本 51.8%
・韓国 50.8%
・アメリカ 55.2%
・イギリス 56.5%
・ドイツ 31.7%
・フランス 39.4%
・スウェーデン 37%

この結果からは日本の若者と諸外国の若者との間に大きな差は見られませんでした。一方で、日本の若者の自己有用感と自己満足度の間で諸外国には見られない相関関係が分かりました。

日本の若者は「自分は役に立たないと強く感じる」との質問に「そう思う」または「どちらかといえばそう思う」と回答した人ほど、「自分自身に満足している」との質問に「そう思う」または「どちらかといえばそう思う」と回答した人の割合が低いことが分かりました。つまり、自己満足度が低い若者は自己有用感も低いことを示しています。これは諸外国の若者には見られなかった傾向で、日本の若者の大きな特徴といえます。

自己肯定感の低さがもたらす悪影響


自己肯定感とは、ありのままの自分自身を肯定することです。他者と自分を比べず、自分自身をかけがえのない存在として肯定することで生まれます。

自己肯定感が高い人はポジティブで情緒が安定しています。一方で、自己肯定感が低いとどのような悪影響があるのか見ていきましょう。

失敗を恐れて挑戦を避ける

自己肯定感が低い人は、自分自身に対して信頼や期待の気持ちが抱けず、本来持っている自分の能力を十分に発揮できなくなってしまうことがあります。自分に自信がないため「成功のイメージ」がつきにくく、「失敗したらどうしよう」「どうせ失敗するだろう」とネガティブなイメージにとらわれてしまいます。

加えて、失敗したときの他者からの評価を気にするあまり、新しいことへの挑戦を避けてしまう傾向があります。

ネガティブ思考

自己肯定感は人から認められたり、褒められたりすることで高まります。自己肯定感が低い人はこの経験が少ないため、他者と比べて自分の劣っている点ばかりを気にして「どうせ自分なんて」というネガティブな思考に陥りやすくなります。無意識に自分にダメ出しをし、自分自身を否定する場面が増えることで、生き苦しさやストレスを感じる機会が増えてしまいます。

また自己肯定感が低い人は、辛いことから離れるための手段として何かに依存する傾向があるといわれています。人によってゲームだったり、人間関係だったりとさまざまですが、若者の場合はゲーム依存に陥りやすく、そこから不登校や昼夜逆転の生活につながってしまう可能性があります。

評価を気にする

自己肯定感の低い人は常に周囲の目を気にして行動する傾向があり、他者からの視線や批判に敏感です。幼いころに親のしつけが厳しく、怒られないように親の顔色を伺って育った場合などに多く、大人になってからも他者からの評価を気にしすぎる傾向があります。

人の目を気にしすぎることでストレスがたまったり、人と会ったり学校や職場に行くのが怖くなったりします。

人と比較する

自己肯定感の低い人は、他者と自分を比較して一喜一憂したり、優劣を気にしたりする傾向があります。自信のなさから、相手より自分のほうが優れている点を見つけては歓喜し、劣っている点を見つけると「自分は劣った人間だ」と勝手に誤解し落胆するなど、情緒が安定しません。

これを繰り返していくうちに、ますます自己肯定感の低下を招いていきます。

自己肯定感を高める学校教育の在り方


自己肯定感は学習意欲や進路意識にも大きく関わるといわれています。日本の若者の自己肯定感を高めるために、学校教育ではどのようなことをするべきか、中教審の提言やいくつかの学校の実践例をもとに解説していきます。

過程を認める

日本の教育は「成果主義」が強く、結果が全てとされがちです。しかし、自己肯定感を高めるためには過程を大切にすることも必要です。つまり、失敗してもそれを受け入れ、その過程で成長できたことを評価することが重要です。

例えば、プレゼンテーションの成績が悪かったとしても、その過程で調査や準備をきちんと行い、チームメンバーとのコミュニケーションが円滑に取れた、という点を評価することで、自己肯定感を高めることができます。

フィードバックの重視

学校教育では、単なる評価だけでなく、フィードバックを通じて生徒の成長を支援することが大切です。ただし、そのフィードバックは建設的で具体的なものであることが重要です。生徒が何ができたか、何がうまくいかなかったかを指摘し、次にどのように改善できるかを示すことで、自己肯定感を高めることができます。

自己表現の機会を提供する

自己肯定感を高めるためには、自己表現の機会を積極的に提供することが大切です。授業やクラブ活動、学校行事など、さまざまな場面で生徒が自分の意見や考えを発表し、自分らしさを表現できるようにすることが重要です。

また、自己表現の機会を通じて他者とのコミュニケーション能力やリーダーシップ能力を高めることもできます。

自己理解を促す

自己肯定感を高めるためには、まず自己理解が必要です。学校教育では、生徒が自分の長所や短所を理解し、自分の興味や関心を把握する機会を提供することが重要です。

自己理解を深めるためには、自己分析や自己探求を促す授業やアクティビティを導入することが有効です。また、キャリア教育の一環として、将来の進路や職業選択について考える機会も設けることが重要です。

心理的安全性の確保

最後に、自己肯定感を高めるためには、心理的安全性の確保が欠かせません。生徒が自由に意見を述べたり、失敗を恐れずに挑戦したりするためには、学校全体で安全で支援的な環境を作ることが重要です。

生徒が失敗や困難に直面したときには、教師や同級生、学校カウンセラーなどが適切な支援を提供し、生徒の成長と自己肯定感の向上をサポートすることが大切です。

以上が、自己肯定感を高める学校教育の在り方についての解説でした。自己肯定感の向上は、生徒の学習意欲や精神的な健康に大きく影響を与えるため、学校教育の改善や実践が重要となります。

まとめ


自己肯定感の向上は、若者の心理的な健康や社会的な適応力を高める上で非常に重要です。特に学校教育においては、生徒が自己肯定感を高めるための環境や支援が提供されることが求められています。

自己肯定感を高めるためには、以下のような取り組みが有効であると考えられます。

・過程を重視し、失敗を受け入れる文化を醸成する。
・フィードバックを通じて生徒の成長を支援する。
・自己表現の機会を提供し、自己理解を促進する。
・心理的安全性を確保し、生徒が自由に意見を述べたり挑戦したりできる環境を整える。
・これらの取り組みを通じて、生徒が自己肯定感を高め、自己の可能性を信じ、積極的に学び、成長することが期待されます。

また、教育関係者や保護者、地域社会など、さまざまなステークホルダーが協力し合い、若者の自己肯定感の向上に取り組むことが重要です。そのためには、情報共有や連携強化が必要とされます。

自己肯定感の向上は、個々の若者のみならず、社会全体の発展にも貢献する重要な課題であり、今後もその取り組みがさらに推進されることが期待されます。

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