高校卒業後の進路は専門学校・大学・専修学校など、いくつかの選択肢があります。具体的な将来の夢を持っている生徒に適切な進路指導をするために、専門学校の知識を深めたいと考えている教員も多いのではないでしょうか。
本記事では、専門学校の概要や特徴を紹介します。併せてメリットやデメリットも解説するので、進路指導に関わる方はぜひご一読ください。
専門学校とはどのような教育機関?
専門学校とは大学と同じ高等教育機関に位置付けられており、就業に必要な知識や技術を学び資格取得を目指す職業教育機関です。修業は2年制という学科が多く、学科によって1年制から4年制までさまざまです。専門学校は平成30年の時点で全国に約2,800校存在し、約59万人の生徒が将来の夢に向けて学習しています。
また、定められた条件を満たせば専門学校卒業後に大学や専門職大学に編入することも可能です。
専門学校のカリキュラムや授業内容の特徴
専門学校では専門的な知識や技術を学びつつ就職に必要な能力や資格を身に付けることを目指しています。実践を重視したカリキュラムを組んでいるため、現場体験学習やインターンシップを通して実践的な知識・技能を習得することが可能です。
また専門学校では、高校までと同様に学級制・担任制を導入している学校もあり、学習面と生活面のサポート体制が整っています。資格取得や技能の習得に向けて、小テストや放課後の補習を行うことで、知識や技能が確実に身に付くようにサポートしています。
無認可校や大学・専修学校との違い
特徴 | 修業年限 | |
専修学校 | ・中学校卒業見込みの生徒 ・就業後に生かせる資格取得 ・個性を尊重し自立を目指せる | 主に1~3年 |
専門学校 | ・専門性の高い技術・知識を学ぶ ・実践的なカリキュラム ・就職後に即戦力として活躍 | 1~4年制(2年制が多い) |
大学 | ・学習の追求や研究が中心 ・幅広い分野の知識を学習できる ・教養科目が多い | 大学:4年 短期大学:2~3年 |
進路を選ぶ際に注意したい点が1つあります。専門学校をイメージさせる名前の学校の中には、無許可校も存在します。無認可校の場合母体は民間企業であることが多く、認可校では可能な編入や国家試験の一部免除が適用されません。
学校名に専門学校と入っていれば認可校ですが「専門スクール」「専門学院」など似た校名の中には無認可校もあるので、事前にしっかり調べましょう。
入学資格と入試の内容
専門学校の入学資格として、以下に該当する「高等学校卒業程度」であることが求められます。
・高等学校卒業
・3年制の高等専修学校卒業
・高等学校卒業程度認定試験に合格
試験内容は学校によってさまざまですが、主に一般選抜・学校推薦型選抜・AO入試(総合型選抜)が行われています。中には、出願条件として事前に行われる説明会やオープンキャンパスへの参加が条件とされている専門学校もあるため、漏れがないように入学案内を十分に確認しましょう。
平均的な学費
専門学校の学費には次の費用が含まれており、専攻分野によって大きく異なるため各専門学校のパンフレットやホームページを参考に調べましょう。
・入学金
・授業料
・教材費
・実習費
・施設費
・後援会費
また、専門学校によっては奨学金制度や助成金制度などの学費支援制度を設けているため、併せて参考にしてください。
専門学校で得られる技能や資格、卒業後の進路について
専門学校へ進学を希望している生徒には、専門学校卒業後どのような道に進みたいかも含めて指導する必要があります。以下で紹介する専門学校を卒業することで得られる称号や卒業後の進路について知識を深め、生徒のサポートにお役立てください。
専門学校修了で得られる称号
文部科学大臣が認めた専門学校の修了、かつ以下の要件を満たした修了者に「専門士」の称号が付与されます。
1. 修業年限2年以上
2. 総授業時数1,700時間(62単位)以上
3. 試験等により成績評価、その評価にもとづいて課程修了の認定を行っていること
上記の専門士の称号を取得することで、大学への編入が可能になります。生徒の将来の選択肢を広げるためにも、専門学校を選ぶ際に「専門士」の称号を付与できる認定がされているか、併せて確認しましょう。
専門学校の8種類の分野と卒業後の職業
専門学校は8分野に分類されており、専門的な知識・技術を学び国家資格を含むさまざまな資格取得が可能です。卒業後は以下の職業において即戦力として役立てられるでしょう。
分野 | 卒業後の職業 |
1. 工業 | 自動車整備士/システムエンジニア/ゲームクリエイター/電気工事士 |
2. 農業 | 食品安全管理スタッフ/園芸家/生花デザイナー/農業法人・農業研究機関 |
3. 医療 | 看護師/歯科衛生士/歯科技工士/作業療法士 |
4. 衛生 | 調理師/パティシエ/メイクアップアーティスト/エステティシャン |
5. 教育・社会福祉 | 保育士/幼稚園教諭/介護福祉士/社会福祉士 |
6. 商業実務 | 医療事務/税理士/公認会計士/秘書 |
7. 服飾・家政 | スタイリスト/ファッションデザイナー/パタンナー/コーディネーター |
8. 文化・教養 | 通訳/公務員/司法書士/行政書士 |
専門学校から大学編入や大学院入学の道もある
「専門士」を取得すると、大学3年次もしくは2年次への編入が可能です。また、4年制専門学校修了者は大学卒業者と同様に大学院入学資格が得られます。
専門学校で専門分野の知識・能力・資格を身に付け、より将来の夢へ近づくために大学へ編入の道を選ぶ生徒も少なくありません。
専門学校に進学する4つのメリット
専門学校は専門分野に特化した学びを提供しているため、就きたい仕事が明確な生徒に適しているでしょう。実践的な能力を身に付けられたり専門分野の求人が多かったりと、将来の夢に近づくことが期待できます。ここからは、専門学校に進学することで得られるメリットを紹介します。
①専門分野の実践的な能力を身に付けられる
専門学校は就職した企業において即戦力として活躍できる能力を身に付ける学校です。企業と連携し、現場体験学習やインターンシップを通じて、実務に直結した知識や能力を磨くことができます。
また実習施設の環境が整っているばかりでなく、経験豊かな教員が指導するため、より実践的な知識・技能を習得できる点がメリットです。進路が明確な生徒にとっては、自分の興味を深く掘り下げて学べるでしょう。
専門分野の求人が多い
専門学校では、毎年多くの卒業生が関連した分野の企業に就職します。そのため業界や企業の人事担当者とのつながりが強く、実績や即戦力になる人材がそろう専門学校に求人票が出されることにより専門分野の求人が充実しています。
さらに専門学校では現場で働いていた教員が指導にあたることから、企業との情報交換をしたり、求められている人材像をより詳細に把握したりすることが可能です。そのため就職活動に有利な要素があるといえるでしょう。
③同じ業界・職業を目指す学友と切磋琢磨できる
専門学校には同じ分野へ就職を目指す生徒が集まるため、同じ目標に向かって互いに競い合ったり助け合ったりして、高めあうことができます。
また、考えが似た友人ができることで、学習以外でも大切なものを得られるといった利点もあるでしょう。さらに専門学校を卒業した後もクラスメイトとしてだけでなく業界仲間として関係を深めていくことも期待できます。
④大学より短い期間で卒業できる
2年制の専門学校は4年制の大学に比べると短期間で卒業できるため、早期に社会に出て活躍したいと考えている生徒に向いています。専門学校では資格取得に力を入れており、専門分野の中でもあらゆる資格取得や条件に合えば免除なども受けられるため、さまざまなサポートを受けられる点も魅力の1つです。
将来の夢が明確な生徒にとっては、専門学校へ進学して集中的に学ぶのも夢に近づく近道といえるでしょう。
専門学校に進学する3つのデメリット
専門学校は専門分野について深く学べるが故に、いくつかのデメリットも考えられます。将来の夢が定まっていない生徒にとっては不向きなため、以下で紹介するデメリットを踏まえつつ生徒に適した進路指導を行いましょう。
①専門分野以外の知識を身に付けづらい
専門学校は専門分野に特化した知識や技能を習得する教育機関です。授業などのカリキュラムは専門分野に焦点を当てて構築されているため、専門分野以外を学ぶ機会があまりありません。
そのため、他の分野について知りたいときは自ら講習に参加したり独学したりして知識を養う必要があります。幅広い分野を学びたい生徒や視野を広げたい生徒には、専門学校でなく別の選択肢を提供できると良いでしょう。
②専門学校卒業では就職できない職業がある
採用の応募条件を「大学卒業」としている企業も少なくありません。就職したいと考えている企業が大卒以上を条件にしている場合は、専門学校を卒業しても条件を満たすことができないため応募できません。
仮に就職したい業種や企業が決まっている生徒は、その企業の過去の採用条件として「大学卒業」が含まれているか確認すると良いでしょう。ただし、毎年同じ応募要項とは限らないため、一例として参考程度にとどめてください。
③進路の変更が難しい
専門学校へ進学すると専門分野を学ぶためのカリキュラムが用意されているため、途中で将来の夢が変わっても進路変更が難しい傾向にあります。仮に、専門学校を継続せずに中退すると最終学歴が高校卒業となるため注意が必要です。
将来の夢が明確ではない生徒はリスクが生じる可能性があるため、慎重に進路指導を行いましょう。
まとめ
専門学校は、将来の就職において即戦力となる能力を養う学校です。将来の夢が明確な生徒にとっては、知識・技能などを習得できる点がメリットです。しかし、一方で将来の夢が曖昧なまま進学してしまうと、後で選択に疑問を抱く可能性もあるかもしれません。
進路指導はこのようなメリット・デメリットを踏まえつつ、生徒1人ひとりの興味や関心に合わせて、あらゆる選択肢を提供する必要があります。生徒の将来の可能性を広げるためにも、専門学校についての知識を深めて進路指導にお役立てください。