2026/02/26(木)

2022年度施行開始の新学習指導要領により、高校では「情報Ⅰ」の授業が新たにスタートしました。本記事では、情報Ⅰの概要や新設された背景、学習内容などについてわかりやすく解説します。記事の後半では、大学入学共通テストでの扱いや指導に役立つコンテンツも紹介しているため、ぜひ最後までご覧ください。
新学習指導要領の新科目「情報Ⅰ」とは

情報Ⅰは、2022年度から施行された新学習指導要領に基づき、全ての高校生が履修する必修科目として新設されました。これまでの「社会と情報」と「情報の科学」という選択制の2科目を再編・統合し、科学的な理解と実践的な活用力をバランスよく養う内容へと進化を遂げています。
旧課程との主な違いを整理すると、以下の通りです。
| 項目 | 旧学習指導要領(2013年度~) | 新学習指導要領(2022年度~) |
|---|---|---|
| 内容 | 選択必修(「社会と情報」または「情報の科学」のいずれかを選択) | 共通必修(全員が「情報Ⅰ」を履修) |
| 特徴 | 「社会と情報」は情報モラルやメディアリテラシーが中心。「情報の科学」はコンピュータの仕組みやプログラミングを重視。 | 両方の要素を統合。プログラミング、ネットワーク、データサイエンスの基礎が必修化され、文系・理系を問わず高度なITリテラシーの習得を求められる。 |
このように情報Ⅰは、単なるPC操作の習得にとどまらず、情報技術を道具として使いこなし、社会の諸課題を解決する資質を育てるための重要な柱となっています。全ての生徒が共通の土台に立って学ぶことで、大学入試や将来のキャリア形成においても、より公平で高度な情報活用能力の育成が期待されています。
情報1が必修科目となった背景・目標

人工知能(AI)の進化やIoTの発展など、私たちの社会や生活は大きく変化しており、新たな時代「Society5.0」の到来も予測されています。また、情報化やグローバル化の急速な進展も、社会変化の大きな要因の1つです。こうした社会の移り変わりに対応するためには、生徒が情報を見極める力や、情報や情報技術を利用して課題解決を実現する力などを、学校教育において養う必要があります。生徒が複雑化する社会に順応し、積極的に社会参画していけるよう設けられたのが情報Ⅰです。
「情報に関する科学的な見方・考え方」とは、「事象を、情報とその結び付きとして捉え、情報技術の適切かつ効果的な活用(プログラミング、モデル化とシミュレーションを行ったり情報デザインを適用したりすること等)により、新たな情報に再構成すること」と定義されています。
参照:高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 情報編 イ共通教科情報科における「見方・考え方」
「情報Ⅰ」の4つの学習内容

ここでは、情報1の4つの学習内容ついて解説します。
情報社会の問題解決
情報社会の問題解決では、以下のスキルや知識の習得を目指します。
- 情報・情報技術を活用して問題を発見・解決する力
- 情報技術の人や社会に対する役割・影響
- 情報に関する法規(法律)・制度・マナー
- 情報モラル
問題を発見・解決する活動では、生徒が主体となり、より良い解決方法の実現に向けて他者と協働することで、学びに向かう力の向上が期待できます。また、情報社会の問題解決の学習内容は、残り3つの内容の学習に向けた動機付けとしての役割もあります。
コミュニケーションと情報デザイン
コミュニケーションと情報デザインの単元では、情報の受け手を意識し、目的や状況に応じて最適な手段でメッセージを届ける力を養います。単なるデザインの技法を学ぶだけでなく、メディアの特性を科学的に理解した上で、情報を整理・構造化するプロセスを重視するのが特徴です。
具体的には、図解やピクトグラムを用いた情報の可視化、Webサイトの構成案(ワイヤーフレーム)の作成、プレゼンテーション資料の構成などを通して、受け手に誤解を与えず、意図を正確に伝える手法を学びます。また、作成したコンテンツを相互に評価し、フィードバックを基に改善を繰り返すサイクルを経験させることで、客観的な視点から情報を精査する態度を育みます。
この学習を通して、生徒は情報技術を使いこなすだけでなく、情報社会に主体的に参画し、他者と効果的なコミュニケーションを図るための基盤を築いていきます。教員の皆様は、身近なユニバーサルデザインやスマートフォンのインターフェースなどを例に挙げ、デザインが社会の問題解決に直結していることを伝えると、生徒の関心を引き出しやすくなります。
| 学習の柱 | 具体的な内容・スキルの例 |
|---|---|
| メディアの理解 | 文字、音声、静止画、動画などの特性に応じた使い分け |
| 情報デザインの技法 | レイアウト、配色、情報のグループ化(近接・整列など) |
| コンテンツの制作 | 企画、設計、制作、評価、改善(PDCAサイクル)の実施 |
| 社会参画の姿勢 | 著作権の尊重、情報発信における責任感の育成 |
コンピュータとプログラミング
コンピュータとプログラミングの単元では、単にコードを書く技術を習得するだけでなく、コンピュータの仕組みや情報の内部表現といった科学的な理解を深めることが求められます。生徒がプログラミングを通じて、コンピュータや外部装置、情報通信ネットワークを自在に制御し、目的に応じてその能力を最大限に引き出すスキルの習得を目指します。
具体的な学習活動では、既存のアプリケーションソフトがどのような論理で動いているのかを図や文章で構造化して整理したり、その内部的な働きをプログラミング言語を用いて再現したりする演習を行います。また、アルゴリズムの概念を学び、計算の限界や効率性を意識させることで、論理的思考力を養う点も大きな特徴です。
指導の際は、プログラミングが課題解決のための強力な手段であることを実感させることが大切です。例えば、センサーを用いた外部装置の制御や、ネットワークを介したデータのやり取りなど、実社会での活用例と結びつけることで、生徒の興味関心を持続させやすくなります。
| 学習項目の例 | 具体的な学習内容のイメージ |
|---|---|
| コンピュータの仕組み | CPUやメモリの役割、情報のデジタル表現(2進数など)の理解 |
| アルゴリズムと設計 | 処理手順のモデル化、フローチャートによる論理構造の整理 |
| プログラミングの実践 | 言語を用いた実装、デバッグによるエラー修正と最適化 |
| 外部装置との連携 | センサーやアクチュエータを活用した計測・制御の体験 |
情報通信ネットワークとデータの活用
情報通信ネットワークとデータの活用では、単にPCをネットワークにつなぐだけでなく、情報システムが提供するサービスの仕組みを科学的に理解し、膨大なデータを問題解決に結びつける力を養います。
具体的には、通信プロトコルや情報セキュリティの基礎を学びつつ、データベースを用いた情報の蓄積・管理・提供の手法を習得します。例えば、アンケート結果などの多数の意見を集約する活動を通じ、データの妥当性を精査する態度や、統計的な分析・可視化のスキルを実践的に身に付けていきます。
また、気温の変動や売上推移などの実データをグラフ化する学習では、単なる現状把握にとどまらず、将来の傾向を予測したり、潜在的な課題を発見したりするプロセスの重要性を伝えます。建設分野における「情報化施工」のように、ICTを駆使して生産性を高める実社会の事例も、生徒の興味を引く有効な題材です。
情報の海から価値を導き出し、安全かつ効率的にネットワークを活用する姿勢は、これからの情報社会を主体的に生き抜くための基盤となります。
| 学習の項目 | 具体的な学習内容の例 |
|---|---|
| ネットワークの仕組み | プロトコル、LAN/WAN、クライアントサーバシステム |
| データの蓄積・管理 | データベースの基本構造、SQLの概念、情報セキュリティ |
| データの分析と可視化 | 統計処理(平均・分散など)、散布図や回帰分析による予測 |
| 課題解決への応用 | データに基づいた仮説検証、シミュレーションによる意思決定 |
大学入学共通テストでの「情報Ⅰ」の取り扱い

大学入学共通テストでは、2025年度入試から新教科として「情報」が導入されました。出題範囲である「情報Ⅰ」は、プログラミングやデータ活用など4つの領域から構成されており、思考力を問う実践的な内容が中心です。
2025年度と2026年度の試験傾向を比較すると、以下のようになります。
| 項目 | 2025年度試験(初回) | 2026年度試験 |
|---|---|---|
| 出題の重点 | 4領域からのバランス良い出題 | 前年踏襲に加え実践的な問題解決 |
| プログラミング | 共通テスト用言語(DNCL)による論理思考 | アルゴリズムの応用と効率性の評価 |
| データの活用 | 基本的な統計指標の理解と分析 | 複数資料の読解と情報の信頼性評価 |
| 主な特徴 | 試作問題に準じた標準的な形式 | 身近な事象のモデル化と深い分析 |
試験時間は60分、配点は100点満点ですが、問題文の読解量が非常に多いため、生徒にとっては時間配分が最大の壁となります。国立大学の多くが原則必須化しており、合否を左右する重要科目の立ち位置は揺るぎません。
今後の指導では、用語の暗記に留まらず、未知の課題に対して既習知識をどう組み合わせるかという演習が欠かせません。最新の入試動向を注視し、授業計画に反映させていくことが大切です。
「情報Ⅰ」履修でつまずくポイント
情報Ⅰが必修化されたことにより、いくつかの課題が浮き彫りになりました。ここでは、情報Ⅰの指導に関する課題やその解決策について解説します。
プログラミングが難しい
「情報Ⅰ」の学習内容の中でも、特にプログラミングでつまずく生徒は少なくありません。その背景には、アルゴリズムといった論理的な思考が求められるため、これまでの学習であまり経験してこなかった考え方に戸惑いを感じることが挙げられます。例えば、意図した通りに動作しない場合、エラーの原因を特定する作業に困難を感じ、失敗体験が重なることでプログラミングへの苦手意識を持ってしまうことがあります。
なぜ動かないのか、どうすれば改善できるのかを生徒自身が考え、試行錯誤する過程をサポートすることが求められます。
用語や概念が抽象的で難しい
情報Ⅰには、「アルゴリズム」「モデル化」「変数」など、日常生活では馴染みのない専門用語が多く登場します。これらの用語や概念は抽象的であるため、生徒が具体的なイメージを持てずに、内容の理解が難しいと感じる場合があります。特にネットワークの仕組みや情報の構造化といった目に見えない事象は、単に単語を暗記するだけでは、次の単元への応用が利きません。
生徒が「わからない」と感じたまま学習が進むと、科目全体への興味を失うことにもなりかねないため、図や具体的なワークを取り入れた指導が効果的です。
復習の時間が取りづらい
情報Ⅰは学習範囲が広く、新しい概念も多いため、授業の内容を定着させるには復習が欠かせません。しかし、多くの生徒は他教科の学習や部活動に時間を取られ、十分な復習時間を確保することが難しいのが現状です。
また、授業のどの部分が理解できていないのかを生徒自身が把握できず、どこから手をつけてよいかわからないまま、復習が後回しになるケースも見られます。こうした状況は、情報Ⅰへの苦手意識を醸成する一因となり得ます。
【生徒】「情報Ⅰ」の授業についていけないときの解決策

「情報Ⅰ」では、プログラミングやデータ活用など、これまであまり触れる機会のなかった内容を学びます。そのため、授業の進度に不安を感じる生徒もいるかもしれません。
しかし、つまずきを早い段階で解消できれば、学習の遅れを防ぐことが可能です。ここでは、授業内容の理解を深めるための具体的な対策を紹介します。
教科書・ノートで復習をする
学習の基本は、教科書と授業で取ったノートを丁寧に見返すことです。授業で扱った重要な用語や、教員からの解説が体系的にまとめられているため、自分の理解が曖昧な部分を特定するのに役立ちます。特に情報Ⅰでは新しい概念が多く登場するため、繰り返し教科書を読むことで、内容への理解が深まります。
まずは、単元ごとの要点や図解に目を通し、授業の全体像を改めて掴むことから始めるとよいでしょう。
動画教材や参考書を活用し問題演習量を積む
授業や教科書だけでは理解が難しいと感じる場合、動画教材や市販の参考書を活用することがおすすめです。特にプログラミングやネットワークの仕組みといった、動きや構造の理解が重要な単元では、視覚的に解説してくれる動画教材が理解の助けになります。
また、図や表を多く用いた参考書は、復習の際に要点を整理しやすく、自分のペースで学習を進めるのに適しています。自分に合った教材を見つけ、苦手な単元の克服に役立てましょう。
学習アプリなどで手軽に学ぶ
通学中などの隙間時間を有効活用できる学習アプリも、情報Ⅰの対策に役立つツールの一つです。多くのアプリでは、クイズ形式で手軽に知識を確認したり、ゲーム感覚で問題演習に取り組んだりできます。教科書や参考書とは異なるアプローチで学習内容に触れることで、これまで理解しにくかった部分がスムーズに頭に入ることもあります。
手軽に復習を始められるため、学習習慣を身につけるきっかけとしても活用が可能です。
【教員】「情報Ⅰ」を指導するポイント

必須科目である情報Ⅰと選択履修の情報Ⅱの2つで編成される共通科目情報科は、小学校・中学校・高校で行われる情報教育全体の中核とされています。そのため、情報Ⅰを指導する際は、小学校および中学校での学習内容を理解し、学習内容の連携を意識することが大切です。ここでは、小学校・中学校の学習内容について解説します。
「情報Ⅰ」の指導に役立つ文部科学省のコンテンツ
情報科の指導を充実させるために、文部科学省は教員向けのコンテンツを作成しています。指導方法に迷ったときには、ぜひ積極的に活用してみてください。
参照:AI教材で叶える業務軽減。理想の情報教育環境を構築するには
小中内容の情報Ⅰ
小学校段階では、2020年度からプログラミング教育が必修化されました。ここでの主な目的は、コンピュータの基本操作に慣れるとともに、プログラミング体験を通じて「プログラミング的思考」と呼ばれる論理的な思考力を育むことにあります。特定の言語を習得することよりも、正解が一つではない問題に対して、手順を組み合わせて解決を試みる経験を重視しているのが特徴です。
中学校では、技術・家庭科の技術分野において情報教育が実施されています。小学校での学びを発展させ、ネットワークを利用した双方向性のあるコンテンツ制作や、センサーを用いた計測・制御のプログラミングなど、より実践的な内容へと踏込みます。さらに、情報セキュリティや著作権といった情報モラルについても体系的に学び、社会の発展と技術の関わりを理解する土台を作ります。
高校の教員の皆様は、生徒がこれらの基礎を習得していることを前提としつつ、個々の習熟度の違いに配慮した指導計画を立てることが重要です。小中学校での既習事項を橋渡しとして活用することで、高校でのより高度な科学的理解へとスムーズに導くことができます。
高等学校「情報」実践事例集
文部科学省は情報教育を推進するために、教員向けに「高等学校「情報」実践事例集」を公開しています。当サイトでは、前項で解説した情報1の学習内容「情報社会の問題解決」「コミュニケーションと情報デザイン」「コンピュータとプログラミング」「情報通信ネットワークとデータの活用」の4つそれぞれにおける実践事例が紹介されています。
各事例の内容は以下の通りです。
- 単元目標と学習活動
- 学習活動の概要(授業の流れ・使用教材)
- 単元の評価規準
- 単元の指導計画
- 代表的な授業・補助教材
- 生徒の問題解決例
- 生徒の姿
- 本事例のポイントと留意点
概要だけでなく、評価規準や指導計画まで細かく提示されているため、すぐに実践に生かせるでしょう。また、本サイトでは情報2の実践事例も紹介されているため、高校2年生の情報科を担当する教員にとっても役立つといえます。
高等学校情報科に関する特設ページ
同じく情報教育の推進を目的に開設されたのが「高等学校情報科に関する特設ページ」です。前項で紹介した実践事例も本サイトから確認できます。本サイトの中で、特に情報科を担当する教員に有益なのが「授業・研修用コンテンツ」です。本ページでは、情報Ⅰの4つの学習内容それぞれの授業・解説動画および学習動画が載せられている他、教員研修用教材が公開されています。これらコンテンツを活用すれば、教員自身も情報に関する理解が深まり、より内容の濃い授業が実施できるでしょう。本サイトでは、高校の情報科に関する最新情報が随時更新されているため、定期的に確認し、授業に生かしていきましょう。
AI教材すららを活用した情報Ⅰの学び
ICT教材「すらら」を活用したAIドリルによる学習は、情報Ⅰの授業で生じがちな理解度の差を埋め、効率的な演習を実現する有効な手段となります。情報Ⅰはプログラミングやデータ活用など、生徒によって得意不得意がはっきりと分かれる分野を含んでいるため、一斉授業のみでは個々のつまずきを解消しきれない場面も少なくありません。
すららの最大の特徴は、生徒一人ひとりの理解度に合わせて問題の難易度を調整するアダプティブラーニングにあります。AIドリルが「どこでつまずいているのか」を即座に判定し、必要に応じてつまずきの原因となっている概念までさかのぼってレクチャーを表示するため、教員が一人ずつ個別に解説して回る負担を大幅に軽減できます。
また、共通テストを意識した豊富な演習量を確保できる点も教員にとって大きなメリットです。解説動画と連動したインタラクティブな演習により、抽象的な用語や複雑なアルゴリズムも視覚的に理解を深めることが可能です。授業内での定着確認はもちろん、家庭学習の課題として活用することで、限られた授業時間をより高度なグループワークや実習に充てられるようになります。教員の伴走者としてすららを導入し、生徒が自立的に学べる環境を整えてみてはいかがでしょうか。
まとめ
2022年度の新学習指導要領施行に伴ってスタートした「情報Ⅰ」。情報Ⅰは急速に変化を続ける社会の中で、生徒が主体的に参画する力を身に付けることを目的に設けられました。情報Ⅰの指導においては、小学校および中学校までの情報教育との連携を意識することが大切です。また、本記事で紹介した文部科学省が公開しているコンテンツをうまく活用し、自分自身も情報に対する理解を深めるつつ、生徒が情報に関する知識やスキルを適切かつ効果的に習得できるよう指導を工夫しましょう。

