中教審とは|役割や構成は?答申とは?最新メンバーや審議内容も紹介

2024/10/10(木)

制度・政策

教員の長時間勤務や教師不足が指摘されている昨今、ニュースなどで「中教審(中央教育審議会」という言葉を目にする機会が増えた方もいるのではないでしょうか。中教審は、教育に関わる重大な役割を担っています。本記事では中教審の概要や役割、組織構成、併せて答申についても解説していきます。中教審の最新メンバーや審議内容もまとめてありますので、ぜひ参考にしてください。

中央教育審議会(中教審)とは?


中央教育審議会(中教審)とは、文部科学省に置かれている諮問機関のことです。文部科学大臣の諮問(意見を尋ね求めること)に応じて、中教審の委員が教育・文化・学術に関する需要 事項について調査・審議します。その結果を、文部科学大臣に報告や意見として提出するのが主な役割です。

中教審設置の経緯

中央教育審議会は、1952年に文部大臣の諮問機関として最初に設置されました。その後、2001年1月6日に施行された中央省庁の再編統合によって、現在の中教審の形へと変わりました。具体的には、もともとあった中央教育審議会を母体としながら、生涯学習審議会、理科教育及び産業教育審議会、教育課程審議会、教育職員養成審議会、大学審議会、保健体育審議会の機能を整理・統合した諮問機関が現在の中教審ということです。

中教審の役割と権限

文部科学省のHP「中央教育審議会」によると中教審の役割は以下の通りです。
(1)文部科学大臣の諮問に応じて教育の振興及び生涯学習の推進を中核とした豊かな人間性を備えた創造的な人材の育成に関する重要事項を調査審議し、文部科学大臣に意見を述べること。
(2)文部科学大臣の諮問に応じて生涯学習に係る機会の整備に関する重要事項を調査審議し、文部科学大臣又は関係行政機関の長に意見を述べること。
(3)法令の規定に基づき審議会の権限に属させられた事項を処理すること。
また中央教育審議会令によると、中教審はあくまでも「重要事項を調査審議」する機関であることも記されています。つまり、教育に関わる法令や政策を決定する機関ではないということです。

中教審が教育政策や教育改革に与える影響

諮問機関には、法令によって設置される「審議会等」と、法令にもとづかない「私的諮問機関」の2種類があります。中教審は前者の「法令によって設置される」機関です。そのため中教審から出された答申は、教育政策や法律立案に深く関わっているといえます。委員の専門性と権威による社会的・政治的な影響は多大で、実質的に中教審から出された答申をもとに政策立案が方向付けられるケースも多くあります。その最たる例が「学習指導要領の改定」です。学習指導要領は、中教審から出される改善案の答申をもとに改定されています。
参考:幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善について(答申)

中教審の構成メンバーと選任方法

中央教育審議会は30人以内の委員で構成され、任期は2年で再任もできます。また、臨時委員及び専門委員を置くことができます。委員の選任方法は、学識経験のある者の中から、文部科学大臣が任命します。また、会長は委員の中から互選で選出され、幹事は関係行政機関の職員の中から、文部科学大臣が任命します。
参考:中央教育審議会令

中教審の4つの分科会


中央教育審議会には、その専門性を踏まえ4つの分科会が存在します。各分科会は、必要に応じてさらに部会を設置できます。具体的に4つの分科会の主な所掌事務について説明します。

教育制度分科会

教育制度分科会の主な所掌事務は以下の通りです。
1.豊かな人間性を備えた創造的な人材の育成のための教育改革に関する重要事項
2.地方教育行政に関する制度に関する重要事項
最新では、2013年12月10日に「今後の地方教育行政の在り方について(答申案)」という議題で分科会が行われました。

生涯学習分科会

生涯学習分科会の主な所掌事務は以下の通りです。
1.生涯学習に係る機会の整備に関する重要事項
2.社会教育の振興に関する重要事項
3.視聴覚教育に関する重要事項
4.青少年の健全な育成に関する重要事項
最新では、2023年7月10日に「リカレント教育の推進について」という議題で分科会が行われました。

初等中等教育分科会

初等中等教育分科会主な所掌事務は以下の通りです。
1.初等中等教育の振興に関する重要事項
2.初等中等教育の基準に関する重要事項
3.学校保健,学校安全及び学校給食に関する重要事項
4.教育職員の養成並びに資質の保持及び向上に関する重要事項
最新では、2023年5月24日に「『令和の日本型学校教育』を担う質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策について」「通常の学級に在籍する障害のある児童生徒への支援の在り方に関する検討会議報告について」「『誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策(COCOLOプラン)』について」という3つの議題について分科会が行われました。

大学分科会

大学分科会は、大学及び高等専門学校における教育の振興に関する重要事項を主な所掌事務としています。最新では、2023年5月17日に「分科会長の選任等について」「大学分科会の運営について」「第11期大学分科会の審議状況、第12期大学分科会の審議事項等について」「大学設置基準及び専門職大学院設置基準の改正等について(諮問)」「国際連携教育課程制度(ジョイント・ディグリー)の見直しについて」という5つの議題について分科会が行われました。
参考:教育制度分科会:文部科学省
生涯学習分科会
初等中等教育分科会:文部科学省
大学分科会:文部科学省

中教審「答申」とは?


文部科学大臣の諮問を受けて中教審で調査・審議し、まとめられた報告書を「答申」といいます。この答申は公表される決まりであり、文部科学省のHPで確認できます。

答申で教育関連の政策・改革の動きが見える

中教審の答申をもって教育関連の政策や改革が進められるため、答申を見るとその時々の政策や改革、教育に関する課題を読み取ることができます。先にも述べましたが、学習指導要領の改定にも中教審の答申が大きく関わっています。2017年度から段階的に施行された新学習指導要領も、小学校での「プログラミング教育」「外国語教育」など、中教審の答申を受けた内容が盛り込まれています。
参考:学習指導要領の変遷

過去の答申例

学習指導要領の改定以外にも、答申がもとの教育に関する政策や改革があります。ここでは過去の答申例をいくつか紹介します。
・2022年12月19日
「令和の日本型学校教育」を担う教師の養成・採用・研修等の在り方について~「新たな教師の学びの姿」の実現と、多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成~(答申)(中教審第240号)
・2022年9月21日
大学設置基準等の改正について(答申)(中教審第238号)
・2020年11月5日
高等専門学校設置基準の改正について(答申)(中教審第227号)
・2019年1月25日
新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について(答申)(第213号)

最新の答申例

2023年度に出された答申は以下の通りです。(2023年7月現在)
・2023年7月5日
専門職大学院設置基準の一部改正について(答申)(中教審第242号)
これは2022年12月19日の答申「『令和の日本型学校教育』を担う教師の養成・採用・研修等の在り方について」の中の、「学部学生が教職大学院の授業科目を先取り履修した場合に、当該先取り履修した単位数等を勘案して、教職大学院入学後の在学年限を短縮できるよう制度改正の検討を進めること」を踏まえ、専門職大学院設置基準の改正を行う必要があるため、改めて諮問されたことに対する答申です。そのため「令和5年5月17日付け5文科教第293号で諮問のありました標記の件については、これを適当と認めます。」という一文のみの答申が記載されています。現在は2023年5月22日の諮問された「『令和の日本型学校教育』を担う質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策について」という議題について、中教審では調査・審議中です。

中教審の「緊急提言」とは?


緊急提言とは、最優先で取り組むべき施策をまとめたものです。中教審から出された最新の緊急提言は、2017年8月29日に初等中等教育分科会の中の「学校における働き方改革特別部会」から出された、「学校における働き方改革に係る緊急提言」で、内容は、以下の通りです。
1.校長及び教育委員会は学校において「勤務時間」を意識した働き方を進めること
2.全ての教育関係者が学校・教職員の業務改善の取組を強く推進していくこと
3.国として持続可能な勤務環境整備のための支援を充実させること
具体的には、以下の内容などが盛り込まれています。
・ICTやタイムカードなどで勤務時間を客観的に把握し、集計するシステムの構築
・休憩時間の確保
・部活動の休養日を含めた適切な運営
・給食費の公会計化
・スクールロイヤーの活用促進に向けた体制の構築

第12期中教審の注目ポイント


最新の中教審メンバーは「第12期」で、2023年3月15日に12期はじめての総会が行われました。ここでは、第12期中教審のメンバーや審議内容のポイントを紹介します。

会長は荒瀬克己氏

第12期中教審の会長は、独立行政法人教職員支援機構の理事長でもあり、京都市立堀川高等学校元学校長の荒瀬克己氏です。2005年以降、中央教育審議会初等中等教育分科会や大学分科会、教職大学院特別審査会、文部科学省言語力育成協力者会議委員、全国都市立高等学校長会の会長、立命館小学校の学校評議員などを歴任した教育界の専門家です。荒瀬氏は、普通の公立高校だった京都市立堀川高校に「探究科」を設立し、1桁だった国公立大学への現役合格者数を100人以上に増やし「堀川の奇跡」として注目されました。小・中学校を含めて、教員出身の会長は初めてのことです。

校長会のトップがそろって正委員に

全国連合小学校長会会長の植村洋司氏、全日本中学校長会会長の齊藤正富氏、全国高等学校長協会会長の石崎規生氏と、小・中・高の校長会の会長がそろって正委員に入っていることも注目ポイントです。現職の校長が中教審の委員に入っていることで、小中高の連携や現場の生きた意見が広く反映されることが期待されています。

12期の主な審議内容

文部科学省の中央教育審議会12期審議事項によると、中教審第12期の主な審議内容は以下の通りです。
・個別最適な学びと協働的な学びの一体的充実に向けた学校教育やそのための環境整備の在り方について
・義務教育の在り方ワーキンググループ及び高等学校教育の在り方ワーキンググループにおいてとりまとめられた論点整理等に基づき、必要な事項についての検討
・教師の養成・採用・研修の一体的改革に向けた取組について
・「令和の日本型学校教育」を担う教師の養成・採用・研修等の在り方について」(令和4年12月中央教育審議会答申)を踏まえた実効性ある取組の実施等に向けての検討
・急速な少子化の進行等への高等教育の対応方策について
・今後の高等教育全体の適正な規模を視野に入れた地域における質の高い高等教育へのアクセスの確保の在り方や、国公私の設置者別の役割分担の在り方等について、一定の方向性を打ち出す審議
・大学院制度と教育の在り方について
・ 大学院部会においては、人文科学・社会科学系における大学院教育改革について最終とりまとめに向けて審議を行うとともに、大学院におけるリカレント教育、大学院における基幹教員の考え方についての審議
・法科大学院等の教育の改善と充実について
・法科大学院等特別委員会においては、第11期の議論のまとめを踏まえ、新たな一貫教育制度の着実な実施、在学中受験に向けた教育課程の工夫等についての審議
参考:中央教育審議会12期審議事項

まとめ


中教審の答申によって、働き方改革や教員の研修の在り方などが見直され改革が進んでいます。さまざまな審議が進められているため、今後も動向に注目する必要があると言えるでしょう。

CONTACT USお問い合わせ

「すらら」「すららドリル」に関する資料や、具体的な導⼊⽅法に関するご相談は、
下記のフォームよりお問い合わせください。

「すらら」「すららドリル」ご導⼊校の先⽣⽅は
こちらよりお問い合わせください。

閉じる