さまざまな選抜方法を採用している大学入試。生徒の個性や能力に応じて、適切な選抜方法を選択する必要があります。本記事では大学入試の仕組みや選抜方法を解説します。2025年度から大学入試が新課程に移行するにあたっての変更点なども具体的に紹介しますので、大学入試に携わる方はぜひお役立てください。
大学入試の仕組み
大学入試は特別選抜と一般選抜を採用しており、以下のような方法で実施しています。
近年ではこれまでの受験への考え方が変化しており、一般選抜や総合型選抜を採用している大学が増えてきています。どの選抜方法も大学によって評価基準は異なります。制度を十分に理解した上で、それぞれの大学に合わせた戦略的な対策が必要です。
大学入学共通テストとは
大学入学共通テストとは、各大学を会場として実施される大学の入学試験です。大学入学共通テストは、これまで一般的に「センター試験」と呼ばれてきた大学入試センター試験の後継試験として、2021年度から開始されました。各大学が大学入試センターと共同で実施しており、全国の生徒が1月の同じ日程で同じ問題に取り組みます。大学入学共通テストは一般選抜の中で実施されるテストの1つで、基礎的な学習達成度を判定する目的のために使用されています。大学側が求める能力や意欲を持った生徒を評価・判定する際に役立ちます。出題教科や形式は定期的に変更されるため、傾向を分析しつつ対策することが必要です。
特別選抜は2種類
特別選抜は、学校推薦型と総合型選抜の2種類があります。学校推薦型は学校が推薦する生徒が対象となり、総合型選抜は志願者自ら出願できるため出身高校の推薦がいりません。ここからは、学校推薦型と総合型選抜の特徴をそれぞれ解説していきます。
学校推薦型
学校推薦型選抜は、以下の2つに分類されます。
学校推薦型選抜は大学が求める条件を満たした生徒であることを前提とし、出願の際に出身高校の校長の推薦書類が必要です。選抜方法は書類審査(調査書・推薦書・志望理由書)・面接・小論文・プレゼンテーションなど大学によって異なります。また、指定校制・公募制の他に「地域枠」があり、これは大学卒業後に大学の所在地で活躍することが条件です。たとえば国公立大学医学部では、地域の医師不足を解消することを目的に地域枠を導入しています。
総合型選抜
総合型選抜は学力や総合的な能力から判定し、大学が求めるアドミッション・ポリシーに合致しているかどうかも含めて選抜します。大学によってさまざまな評価項目があり、個性や意欲など総合的に人物評価を行う点が特徴です。選抜方法は学校推薦型選抜と同様ですが、大学によって自己推薦書や活動報告書などの提出が求められたり、体験授業への参加を求められたりする場合もあります。アドミッション・ポリシーは大学によって異なるため、受験する大学のホームページや学校案内を必ず確認しましょう。
国公立大学入試の仕組み
国公立大学では独自の入試の仕組みを設けています。大学によって選抜方法・入試の流れ・日程などが異なるため、事前に詳しくリサーチしましょう。以下で国公立大学における入試について詳しく解説するので、ぜひ参考にしてください。
国公立大学入試の選抜方法
国公立大学の入試は、大きく以下の3つに分けられます。
・一般選抜
・総合型選抜
・学校推薦型選抜
募集人員枠のおよそ8割を占めるのが一般選抜です。一次試験の役割を持つ大学入学共通テストの得点と、2次試験の個別試験の得点の合計点で合否を判定します。大学によっては調査書や小論文なども含めて多面的かつ総合的に生徒を判定する場合もあります。しかし基本的には学力試験の結果が重視されることから、入試対策のための学習は欠かせません。総合型選抜は書類審査・小論文・面接などを通して、生徒が大学で学ぶ意欲や適性を問う選抜方法です。現在では大学入学共通テストを導入する大学も増え、学力も重視される傾向にあります。学校推薦型選抜は高校の学校長の推薦状を必要としており、指定された評定平均値を満たす生徒が出願できます。高校での成績を重視している選抜方法といえるでしょう。国公立大学の入試は難関といわれており、試験科目や選抜方法は大学によって異なるため、志望校ごとに対策が必要です。
国公立大学入試の流れ・日程
一例ですが、埼玉大学工学部の入試日程は以下のとおりです。
参考:埼玉大学|学部入試の日程
一般選抜は1月に実施される大学入学共通テストを自己採点したのち、結果をもとに最終的な出願校を選択していきます。埼玉大学工学部では前期・後期の2回ですが、一部の大学では最大3回の受験が可能です。
私立大学入試の仕組み
私立大学も独自の入試の仕組みを設けています。大学によって選抜方法・流れ・日程などが異なるため、志望校の募集要項を十分に確認する必要があるでしょう。また私立大学の場合は試験日が全国同日ではない分、試験内容が多岐にわたります。ここからは私立大学の入試について詳しく解説していきます。
私立大学入試の選抜方法
私立大学の一般選抜は、大学入学共通テストを利用したもの、各大学が独自に行う個別試験によるものなど、大学によって異なります。個別試験は3科目が基本であり、文系学部では英語・国語の他に地歴・公民・数学から1科目を選択します。理系学部では英語・数学・理科という組み合わせが一般的な傾向です。一方で、近年では2教科や1教科で受験できる私立大学もあるため、志望校の募集要項を確認し選抜方法について十分に理解する必要があります。また試験日を複数設けている大学もあるため、同じ大学内で別の科の受験や、私立大学と国立大学の併願がしやすいなどの利点もあります。うまく活用することで合格のチャンスが広がるでしょう。
私立大学入試の流れ・日程
一例ですが、早稲田大学の入試日程は以下のとおりです。
参考:早稲田大学 社会科学部|入学試験要項
早稲田大学 人間科学部|入学試験要項
私立大学の入試は多様化が進んでおり、入試内容もさまざまです。入試日程や各大学の特徴を理解し、戦略的に計画していきましょう。
2025年度から大学入試は「新課程」に変わる
2025年度から大学入試が「新課程」に変更されます。近年ではスマートフォンの普及や人工知能の活用により、日本社会が急速な変化を遂げています。変化の激しい時代ですが、どのような未来でも生きていかなくてはなりません。そのため新学習指導要項では「生きる力」を身に付けていくために、資質・能力を育んでいくことを目的としてこの基準を設けました。ここからは新課程による変更点や経過措置について具体的に解説しますので、ぜひ入試対策にお役立てください。
主な変更点は2つ
主に大学入学共通テストの出題教科や科目が変更され、2科目選択の組み合わせルールも変わります。これにより、受験生はより柔軟な選択肢を得られるでしょう。
共通テストの出題教科や科目が変更される
新課程では文部科学省の方針変更により、より幅広い科目が対象になりました。そのため、2025年から大学入学共通テストの出題教科や科目が次のように変更されます。
2科目選択の組み合わせルールが変更
新課程では、地理歴史と公民の選択科目に制約が設けられます。以下6科目の中から最大2科目を選択することが可能ですが、5.公共、倫理と6.の公共、政治、経済のような同一名称を含む科目の組み合わせはできません。ただし、2.歴史総合、日本史探究と3.歴史総合、世界史探究の組み合わせは可能です。
これにより、受験生はより自分の得意な科目を生かした戦略が可能になります。
旧教育課程を履修した生徒は経過措置が設けられる
文部科学省は、旧教育課程を履修した生徒が入試の際に不利にならないように、以下の科目において必要に応じて経過措置をとるように要請しました。
・地歴
・公民
・数学
・情報
経過措置の実施は各大学の判断に委ねられており、正式な発表はこれからの大学もあります。生徒の入試の準備に大きな影響を与えることが予想されているため、可能な限り早めに予告・公表するように求めています。
2024年度大学入試への影響
2025年1月に実施される大学入学共通テストは、これまでの国語・数学・英語などの基礎的な教科に「情報」が加わった新課程に移行します。現行の6教科30科目から7教科21科目へ変更されます。経過措置の制度を利用できる生徒は、うまく活用すると良いでしょう。これらの変更点を理解し対策を講じることが今後の受験生にとって極めて重要です。大学入試の仕組みや変更点を把握して準備を進めましょう。
まとめ
大学入試は多岐にわたる仕組みがあるため、まずは生徒の強みを探すことが大切です。生徒によって学力が高かったり、課外活動に力を入れていたりと、他の生徒よりも優れている部分があるはずです。まずは大学入試の仕組みを理解し、生徒の強みに合わせた選抜方法を選べるように、教員は知識を深めていきましょう。2025年度からの変更点も注視しつつ、本記事を参考に今後の大学入試にお役立てください。