これまで学校で行われるテストといえば、学期途中や学期末に行われる定期テストでしたが、近年では1つの単元が終わるごとに実施される単元テストへの移行が注目されています。しかし、単元テストにどのような効果があるのか、あるいは定期テストから移行する際にどのような点に気を付けたらいいのか疑問を抱いている方も多いのではないでしょうか。この記事では、単元テストのメリットだけでなく、デメリットや移行時の懸念点もしっかり紹介します。単元テストの実施に戸惑っている方は、ぜひ最後までご覧ください。
単元テストとは?
単元テストとは、その名の通り単元が終了するごとに行われるテストのことです。ここでは、単元テストが必要とされている理由や概要について解説します。
単元テストが必要な理由
単元テストが必要とされる理由は、従来の学習法では、生徒が十分に理解していないまま次の内容に進むケースが多かったためです。従来の定期テストは、点数を取ることが目的になりやすく、短期間で詰め込んだ知識がすぐに忘れられてしまうことが問題でした。単元テストは、学んだ内容を定期的に振り返り、理解度を深めながら学習を進めることができるため、確実に次の段階へ進む準備が整うという利点があります。
単元テストの概要
単元テストとは、各単元が完了した後に、その単元の理解度や定着度を図ることを目的として実施されるテストです。単元ごとに行われるため、テスト範囲はこれまでの定期テストに比べて狭まります。そのため、生徒の苦手分野やつまずきやすいポイントをより正確に把握することが可能です。なお、5教科のテストを同時に行ったり教科ごとに実施したりと、実施方法は学校によって異なります。テスト後に補習指導を設けている学校もあります。
単元テストと定期テストの違い
単元テストと定期テストの違いを、以下の表にまとめました。
単元終了ごとに行われる単元テストに対して、定期テストは学期中や学期末など、合わせて年5回実施されるのが一般的です。また、単元テストは1つの単元から問題が出題されますが、定期テストは複数の単元を出題範囲に含んでいる他、場合によっては単元の途中までがテスト範囲とされることがあります。さらに、定期テストは出題範囲が広いことから、生徒がどの部分でつまずいているかが分かりづらい側面があります。その点、単元テストは出題範囲が限られているため、苦手意識を持っている生徒がいればすぐに気付けます。
定期テストよりも単元テストが注目されている背景
これまで実施されてきた定期テストの課題が浮き彫りになってきたことで、近年では定期テストよりも単元テストが重視されるようになってきました。一般的に年5回実施される定期テストは、頻度が低いことからテスト直前にならなければ勉強を始めない、あるいは一夜漬けで知識を詰め込む生徒も多く、テストの実施がなかなか学習内容の定着につながらない傾向がありました。こうした定期テストの課題点から、テストで良い点を取ることのみを目的とした学習ではなく知識の定着を図るための学習の必要性が高まり、定期テストから単元テストへ移行する動きが見られるようになったのです。
単元テストのメリット
単元テストには、学習習慣の定着や理解度の向上などの効果が期待できます。ここでは、単元テストのメリットを紹介します。
テスト勉強をしやすい
定期テストでは、複数の単元から問題が出されるためテスト範囲が広く、逆算しながら学習計画を立てる必要がありました。しかし、中には何から勉強したらいいのか分からず、思ったようにテストで結果が出せない生徒もいます。その点、単元テストは出題範囲がごく一部に限られているため、何を復習すべきかが明確です。生徒は、迷わずにテスト勉強に取り組めます。
勉強の習慣が定着しやすい
定期テストの頻度が低い分、生徒はどうしても学習目的を見失いがちです。「次のテストまでまだ時間があるから」と学習を後回しにし、結果的に直前のみしか学習に取り組まないこともあります。一方で、単元テストは単元が終わるごとに実施されるため、生徒は常に次のテストを意識するようになり、おのずと勉強に取り組む時間も増えるでしょう。ひいては、勉強の習慣化につながっていきます。
弱点に気付きやすい
定期テストの範囲は複数の単元にまたがっているため、各単元からの出題数は少なくなります。そのため、仮にある単元の問題を間違えた生徒がいたとしても、苦手なために間違えたのか、あるいはたまたまミスをしてしまったのかの判別が難しく、生徒1人ひとりの弱点を把握しづらい側面があります。単元テストであれば範囲はごく一部に限られ、1つの単元についてあらゆる問題を出題できるため、生徒それぞれが苦手としている箇所を特定しやすくなるのはメリットといえるでしょう。
定期テストに比べると知識が定着しやすい
定期テストの場合、良い点を取るためだけに一夜漬けでテストに臨む生徒も多くいます。しかし、一晩で詰め込んだ知識は、定着することなくすぐに忘れされられてしまうでしょう。一方、単元テストを実施すれば、生徒は新しい知識の習得と復習を同時に行いながらテストに備えるようになるため、知識が定着しやすくなります。しっかりと理解しながら知識を積み重ねていけるのが、単元テストのメリットです。
単元テストのデメリット
単元テストにはあらゆる効果が期待できる一方で、リスクや懸念点もあります。ここでは、単元テストのデメリットを紹介します。
教科・科目以外の教育に悪い影響が出るリスクがある
単元テストの場合、定期テストよりも実施回数が多くなります。そのため、生徒は常にテストを意識しながら生活しなければなりません。テスト範囲が狭まるとはいえ、精神的には負荷がかかってしまうでしょう。学生のうちは、勉強以外にも部活や趣味などあらゆることに興味・関心が向きます。単元テストの実施による時間的、あるいは精神的負担は、そうした教科・科目以外の教育に支障が生じる恐れがあります。
入試問題に対応しづらい
同じ領域から出題される単元テストでは基本の知識の積み重ねはできても、それらを応用する力はなかなか身に付きません。なぜなら応用力は、複数の知識を組み合わせて問題解決に挑むことで養われるためです。入試では、基本問題から応用問題まで幅広く出題されます。1つひとつの知識が定着していることはもちろんですが、それらをいかに応用するかを知っていなければ、入試問題への対応は困難です。
実際に定期テストを廃止して単元テストに移行する際の懸念点
すでに定期テストを廃止し、単元テストに移行している学校もありますが、定期テストから単元テストへの切り替えにはさまざまな懸念点があります。それらの懸念点も踏まえて、単元テストへの移行を検討することが大切です。
教員の負担が大きくなる可能性がある
単元テストに移行すれば、テストの頻度は定期テストに比べて圧倒的に高くなります。それにより、教員はテストの作成や採点に追われることになり、これまで以上に業務の負担が大きくなる恐れがあります。昨今は、教員の働き方改革も重視されていることから、単元テストへの移行時には教員の負担を軽減するための工夫が求められます。
校内順位を知る機会がなくなってしまう
実際に単元テストを実施している学校では、順位を公表しないケースもあります。なぜなら、理解度を図ることを目的として単元テストを実施しているためです。いかに良い点数を取るのかではなく、どれだけ内容を理解できているかを教員・生徒の両方が把握するための手段として、単元テストは位置付けられているということです。ところが、校内順位を知る機会がなくなると、現状の学力や志望校合格に必要な学力とのギャップが測れなくなると思う生徒もいることでしょう。このことが、生徒や生徒の保護者にとって不安材料となってしまうかもしれません。
生徒が以前までのテスト期間に遊んでしまう可能性がある
定期テストが廃止されるということは、これまで設けられていたテスト期間もなくなることになります。通常テスト期間には部活動なども休止となり、100%勉強に集中できる時間が与えられていましたが、明確なテスト期間がなくなるとなればメリハリをつけづらくなってしまうでしょう。単元テストの実施には学習の習慣化も期待されていますが、集中的に勉強する機会がなくなることで、反対に部活動・趣味・遊びなどに重きを置いてしまう恐れもあります。
まとめ
単元テストとは、単元が終わるごとに実施されるテストのことです。知識の定着度の向上や学習の習慣化など、単元テストにはあらゆる効果が期待されており、実際に定期テストを廃止して単元テストに移行している学校も増えてきています。一方で、定期テストから単元テストへの移行には、いくつかの懸念点もあります。その1つが教員の業務負担の増加ですが、ICTツールを入れることで単元テストの実施や採点の手間を軽減する方法もあるため、各校工夫しながら単元テストを取り入れていくとよいでしょう。