高校のキャリア教育の目的とは?実践例や手引を紹介

2024/10/22(火)

多様性

高校

社会が大きく変化していく中で、高校でのキャリア教育はますます重要視されています。しかし、中には「そもそもキャリア教育の目的は何だろう?」「どのように取り組めばいいの?」と疑問を抱いている教員も多いのではないでしょうか。この記事では、高校のキャリア教育の目的や意義とともに、実践例や指導のポイントを紹介します。キャリア教育について理解を深めたい方は、ぜひ最後までご覧ください。

高校で行われているキャリア教育とは?


中央教育審議会の「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について(答申)」では、キャリア教育が次のように定義されています。


ここでいう「キャリア発達」とは、社会の一員としての役割を果たしながら、自分なりの生き方を実現する過程のことです。キャリア教育の目的は、自分と働くこと、あるいは自分と社会との関係を適切に捉え、取捨選択や創造を繰り返しながら自立して生きていくための基盤となる力を育てることにあります。

文部科学省が定めるキャリア教育の必要性と意義


キャリア教育が必要とされている背景には、急速な社会の変化があります。近年、情報技術の革新やグローバル化が進み、社会環境は大きな変化を続けています。目まぐるしく変化する社会で、希望を持ちながら主体的に生きていくために必要なのが、変化を恐れず臨機応変に対応する力であり、そうした態度や能力の育成を担っているのがキャリア教育です。キャリア教育を通じて、新たな知識や体験に興味を持ったり、他者の存在意義を理解したりすることが、将来社会の一員として生きていくための基盤になります。

キャリア教育で育成すべき4つの力


キャリア教育で育成を目指しているのは、次の4つの力です。

・人間関係形成・社会形成能力
・自己理解・自己管理能力
・課題対応能力
・キャリアプランニング能力

上記4つの力は、それぞれが独立したものではなく互いに関連しているため、順序を付けたり全ての生徒に均一に身に付けさせることは適切ではないとされています。それぞれどのような能力なのかを詳しく見ていきましょう。

①人間関係形成・社会形成能力

人間関係形成・社会形成能力は、コミュニケーションスキル・チームワーク・リーダーシップなどを総合した能力を指します。価値観が多様化し、性別・年齢・個性に関係なくあらゆる人材が活躍する社会においては、他者の意見・立場を理解し、相手の意見を聞きつつ、自分の考えを適切に伝える能力が不可欠です。また、他者と協力・協働しながら、主体的に社会形成に努める力も求められます。人間関係形成・社会形成能力は、社会の一員として生活、あるいは仕事をしていくための基盤となる力です。

②自己理解・自己管理能力

自己理解・自己管理能力は、自分の役割を理解する力・自分の行動の動機付け・忍耐力などで構成された能力を指します。子どもの自信のなさや自己肯定感の低さが問題化していることに対し、物事を前向きに捉え、行動する力を育くむことが求められています。また、激しく変化する社会の中で他者と協力・協働しながら生きていくためには、自分の感情をコントロールしたり、主体的に努力する力が必要です。特に自己管理能力は、多様なキャリアを築いていくためにも欠かせない力といえるでしょう。

③課題対応能力

課題対応能力は、情報処理能力・課題発見能力・実行力などを含む力を指します。働く上では、自ら課題を発見し、適切な計画をもとに解決に向けて行動することが欠かせません。また、ますます情報化していく社会においては、適切な情報を選択し、活用する力が重要になります。このように、課題対応能力は、社会の中で自らの役割を果たすために必要な力です。

④キャリアプランニング能力

キャリアプランニング能力は、学ぶこと・働くことの意義を理解する力や将来設計能力などを総合した力を指します。自分なりのキャリアを築いていくためには、自分の社会的立場や果たすべき役割を踏まえて「働くこと」の意義を理解し、情報の取捨選択・活用を主体的に行っていくことが大切です。キャリアプランニング能力は、社会の一員として生きていく以上、生涯にわたって求められます。

高校のキャリア教育プログラムの事例


高校では、多様な形態でキャリア教育が行われています。ここでは、高校でのキャリア教育プログラムの事例を紹介します。

ワークショップ

ワークショップはファシリテーターの司会進行により、参加者全員で作業や発言を行う教育プログラムです。ワークショップの例としては、日常生活や進路についての質問に対して自らの言葉で答えさせることで自己理解を促す活動や、業界研究を通して働くことへの理解を深める活動などが挙げられます。ワークショップでは、通常の授業以上の活発な発言や主体的な思考・体験が促されるため、深い学びが期待できます。

職業体験

職業体験は、校内では体験できない経験を目的とした教育プログラムです。例えば、企業でのインターンシップ・大学やオフィスの見学・地域の課題解決プロジェクトなどが挙げられます。直接目で見て体感することが、働くことの意義・楽しさ・厳しさ・やりがいに対する深い理解につながります。また、学校の外へと足を運ぶことで社会との接点ができることから、職業体験が自らのキャリアについて考えるきっかけにもなるでしょう。

出張授業

出張授業は、外部講師による講義を実施する教育プログラムです。自分なりのキャリアを築いてきた先輩や、社会の第一線で活躍する方を講師として招き、体験談を語ってもらいます。出張授業は実際の経験者の話を聞ける貴重な機会であり、生徒たちは働くことやキャリアについて多くの学びを得ることが可能です。出張授業には、キャリア形成に向けて具体的な行動を促すことが期待されています。

国際交流

国際交流は、グローバル人材の育成を目的とした教育プログラムです。国際交流の例としては、海外留学生のホームステイの受け入れや外国語を使ったプレゼンテーションなどが挙げられます。外国語や他国の文化・慣習に日常的に触れることが、違いを理解し認める気持ちの育成につながり、国際人としての素質が養われます。

高校の学科ごとのキャリア教育のポイント


高校では、各学科の特色に合わせてキャリア教育に取り組むことが大切です。ここでは、学科ごとのキャリア教育のポイントを紹介します。

普通科

多くの生徒が大学に進学する傾向にある普通科でも、キャリア教育を充実させることは重要です。たとえ進学を選んだとしても、高校生のうちに職業を意識しておくことで大学進学の理由も明確になり、その先の未来の姿も思い描けるようになります。そのため、普通科では大学を卒業した後の社会をいかに意識させるかがポイントといえます。通常の学習内容と職業との関連性について考えさせるような授業づくりが大切です。また、就職希望者が多い普通科の場合は、職業科目の設置およびまとまった単位数の配当を行い、早い段階から将来の職業について学べる教育課程を編成します。職業体験などの取り組みを盛り込むのもポイントの1つです。

専門学科

専門学科は、職業学科と理数や芸術などを専門的に学ぶ学科の大きく2種類に分けられます。職業学科では、高度な専門知識やスキルだけでなく、社会に出て業務を遂行できる能力の育成に取り組む必要があります。一方、理数や芸術などに特化した学科では、専門分野を扱うことから生徒の進路希望が狭まりがちです。よって、こうした専門学科では、将来の職業を幅広く捉えられるようなキャリア教育の実施が重要になります。2種類の専門学科に共通して求められるのは、基礎科目から専門科目・実習・課題研究に至るまでの一連の学習内容とキャリア教育を関連付けて指導に当たることです。また、地域社会との連携による実践的な教育活動や、外部講師の活用による最先端の知識・技能の習得にも努めます。

総合学科

総合学科において、キャリア教育の中心となるのが、「産業社会と人間」です。「産業社会と人間」は、全ての生徒が1年次に履修することになっており、動機付けの役割を担っています。「産業社会と人間」では、生徒と地域・産業界との関わりを設け、将来の生き方や進路について考えさせることが大切です。また、それらの学習をもとに、3年間の綿密な学習計画を作成・実施していきます。さらに、多様な教科・科目を扱い、幅広い知識・技能を身に付けさせるとともに、「総合的な学習の時間」を活用して問題解決能力を養うことが求められます。

まとめ


キャリア教育は、社会の一員としての役割を果たしながら、自分らしく生きていくための力を養うことを目的とした教育活動です。情報技術の発達やグローバル化に伴い、社会で求められる能力や態度も変化してきています。生徒たちが社会に出た後も主体的に生きていくために、高校でのキャリア教育は大きな役割を担っているといえます。今回紹介した事例や指導のポイントを参考に、キャリア教育をますます充実させていきましょう。

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