高卒採用者の就職3年以内の離職率が高い理由とは?防止策も解説

2025/05/14(水)

高卒採用者の3年以内の離職率の高さが、たびたび問題視されています。教員の中には、「そもそもなぜ高卒採用者の早期離職率が高いのか」「高校ではどのような防止策に努めたらいいのか」と疑問を抱いている方もいるでしょう。この記事では、高卒採用者の3年以内の離職率が高い理由や、高校に求められる離職率の改善に向けた取り組みなどを解説します。より充実した就職支援に努めたいと考えている方は、ぜひ最後までご覧ください。

高卒の3年以内の離職率は高い?厚生労働省による調査結果を紹介


厚生労働省は、令和5年10月に「新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)」を取りまとめ、公表しました。ここでは、厚生労働省による調査結果を詳しく見ていきましょう。

高卒と大卒の3年以内の離職率比較

以下の表は、高卒と大卒の3年以内の離職率を比較したものです。


上表の通り、大卒よりも高卒のほうが3年以内の離職率が高い結果となりました。また、令和2年以前の5年間の離職率を見ると、大卒の3年以内の離職率は32%前後を推移しているのに対し、高卒の3年以内の離職率は常に35%以上を記録しています。


高卒の早期離職率が高いことが分かります。

職種別の3年以内離職率の比較

高卒の離職率が高い上位5つの職種は以下の通りです。


特に、サービス業の離職率が高いことが分かります。「宿泊業・飲食サービス業」と「生活関連サービス業・娯楽業」は、平成31年3月卒業者の離職率調査でも上位を占めていました。

現状早期退職は低下傾向にある

実は、高卒の早期離職率は低下傾向にあります。というのも、平成19年以前の卒業者の場合、3年以内の離職率が40%を超えており、最も高いときで50.3%を記録していました。

いまだ3年以内の離職率は35%を下回りませんが、長期的に見ると少しずつ下がっているのが分かります。

離職率の高いことで生じるデメリット


高い離職率は、企業にさまざまなデメリットをもたらします。離職率の高さがもたらす主なデメリットは、以下の通りです。

・「ブラック企業」の疑いを持たれ、採用難に陥る
・戦力化のために育成した人材を、戦力になる前に失う
・新人の激しい入れ替わりが、育成者の負担の増加や離職率の拡大を招く
・人材育成に投資したコストが無駄になる

企業は「採用」「人材育成」「コスト」それぞれにおいてデメリットを被ることになり、やがて負のスパイラルに陥る恐れもあります。こうした企業への悪影響を防ぐためにも、高卒の離職率の改善は重要です。

高卒の離職率が高い理由とは?


高卒の離職率が高い理由は、いくつか考えられます。離職率の改善に努めるために、まずは根本的な原因を知っておきましょう。

就職後のミスマッチ

就職後のミスマッチを招いている要因として、高校生の就職活動特有のルールが挙げられます。例えば、高校生の就職活動は「1人1社制」と定められています。「1人1社制」とは、1人の高校生の応募を1社のみとする制度です。この制度により、高校生の業界研究のプロセスがおろそかになり、結果として就職後のミスマッチを引き起こしていると考えられます。また、求人の公開から応募までの期間の短さも、企業とのミスマッチにつながっています。企業の求人票が公開されるのは例年7月1日で、応募書類の提出は9月から始まります。つまり、生徒たちはたった2カ月の間に、自分に合った企業を探さなければならないということです。リサーチが十分に行えていない状態で応募するとなれば、当然ミスマッチの可能性も高まるでしょう。

人間関係のトラブル

高校生で就職活動をした社会人の離職理由として、「人間関係」が多いようです。人間関係の悩みは、上下関係の厳しさやコミュニケーション不足に起因する場合があります。また、近年の若者の傾向としてプライバシーを重要視する人が多いことから、親睦を深めるために取った言動が、かえって彼らのストレスにつながっているケースもあるでしょう。

労働条件が合わない

入社してから労働条件が合わないと感じる理由としては、次の2つが考えられます。

・求人票に書かれた内容をしっかり確認していなかった
・社会経験がないことから、労働条件に対するイメージと現実にギャップが生じる

特に後者は、求人票の内容をしっかり確認していたとしても起こり得ます。給与額・労働時間・休日の条件などについて頭では理解したつもりでいても、社会経験のない高校生にとっては想像するにも限界があります。入社してから「思っていたのと違う」と、ギャップに悩まされてしまう高卒者は少なくありません。

職種そのものが合っていない

職種そのものに対して、就職活動時に抱いていたイメージと、実際に働いて得た感覚の違いから、離職してしまう人も一定数います。資料や説明会など仕事内容について知る機会は当然設けられていますが、高校生の場合全てを具体的にイメージできるわけではありません。そのため、働き始めると思っていたよりやりがいを感じなかったり、自分の能力を発揮できなかったりして、働き続ける意義を見出せなくなってしまいます。

企業が求める人材


厚生労働省の「若年者の就職能力に関する実態調査」では、主に以下の能力が高卒レベルに求められていることが分かりました。

・コミュニケーション能力
・基礎学力
・責任感
・積極性・外向性
・ビジネスマナー
・行動力・実行力
・資格取得

そして、これらの能力を習得していることが、採用の可能性を高めていることも同調査で明らかになっています。ところが、同調査に参加した企業の多くが、若年者の能力の習熟度に関して「不満」と回答しており、中でも高卒レベルの能力習熟度について「不満」の割合が大きかった能力は以下の通りです。

・ビジネスマナー
・資格取得
・コミュニケーション能力

この結果から、企業が求める能力の育成が高校の大きな役割といえるでしょう。

離職率を改善するために高校で取り組むべきこと


高校では、あらゆる角度から離職率を改善する取り組みを行っていくことが大切です。ここでは、具体的に5つの取り組みを紹介します。

基礎学力を定着させる

基礎学力とは、いわゆる「読み・書き・計算」です。前述した厚生労働省の調査では、企業が重視する能力の中に「基礎学力」が含まれていました。基礎学力は、コミュニケーション能力や思考力の基盤になります。また、生涯にわたって主体的に学び続けるための基本的な学力および学習態度を養うのも、基礎学力です。基礎学力の育成には、個別指導・グループ別指導・チームティーチングなど個々の習熟度に合わせた指導が効果的です。授業の改善や工夫を繰り返して、「学ぶことが楽しい」と感じられる授業づくりに努めましょう。

相談しやすい環境をつくる

社会経験のない高校生の場合、将来の働き方や生き方を具体的にイメージするのは困難です。そのため、いざ就職活動に挑むとなっても、どのように仕事を選べばいいのか分からない場合があります。そのときに、「家から近いから」「親が勧めてきたから」などの理由で選んでしまうと、就職後のミスマッチが起こりやすくなるでしょう。生徒が分からないまま仕事を選んでしまう事態を防ぐために、高校では生徒が相談しやすい環境をつくることが大切です。日頃から生徒との信頼関係を築いておくことで、生徒は悩みを打ち明けやすくなります。

個別支援の強化を図る

生徒1人ひとりが自分に合った企業を選択し、その企業で長く働き続けるためには個別支援の強化も欠かせません。効果的な個別支援の方法として、キャリア・カウンセリングの導入が挙げられます。キャリア・カウンセリングとは、それぞれの生徒が働き方・生き方に関する悩みや迷いを克服し、自らの意思で就職先を選択していけるように支援する取り組みです。専門的な知識・能力を身に付けたカウンセラーを常駐させたり、研修プログラムを活用して教員にキャリア・カウンセリングについて学ばせたりと、個々の悩みに寄り添える体制を整えておくことが重要です。

キャリア教育の充実を図る

キャリア教育とは、社会の一員としての役割を全うしつつ、自分らしく生きていくための能力や態度を育成する教育プログラムです。教育を通じて働くことを意識させ、社会に出た自分の姿を思い描けるように指導します。キャリア教育にはさまざまなアプローチがありますが、中でも積極的に実施したいのが職場見学や就業体験です。実際に職業現場を訪れ、大人が働く姿を見ることで、働くことに対する理解が深まります。また、教員が可能な限り多くの企業に足を運び、担当者とコミュニケーションを取ったり、高校での学習活動の実態を共有したりすることが、キャリア教育の改善やさらなる充実につながるでしょう。

家庭との連携を強化させる

家庭との連携を強めることで、生徒の状況を把握しやすくなり、早期の問題解決が可能です。その結果生徒のモチベーションやキャリア意識の向上にもつながり、より適切な職業選択がしやすくなるでしょう。また企業が求めるビジネスマナーやコミュニケーション能力などが育つかどうかは、家庭教育の在り方も大きく関わってきます。そのため、学校と家庭が協力し合って、生徒の進路をサポートしていくことが大切です。具体的には、進路指導の在り方や意義について事前に説明したり、近年の産業界や就職を巡る状況の変化について情報を提供したりすることで、家庭との連携は強化されます。学校と家庭が同じベクトルで生徒の指導・支援に当たることが、結果的に早期離職率の改善につながります。

まとめ


高卒採用者の3年以内の離職率は低下傾向にあるものの、いまだ35%以上を記録しています。早期離職に至る理由はさまざまですが、離職率の改善には高校での教育や指導の工夫が欠かせません。今回紹介した取り組みを参考に、高卒採用者の早期離職率の改善に努めましょう。

CONTACT USお問い合わせ

「すらら」「すららドリル」に関する資料や、具体的な導⼊⽅法に関するご相談は、
下記のフォームよりお問い合わせください。

「すらら」「すららドリル」ご導⼊校の先⽣⽅は
こちらよりお問い合わせください。

閉じる