コミュニティ・スクールとは?仕組みや期待できる効果などを解説

2024/11/07(木)

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コミュニティ・スクールは、学校と地域が連携して子どもたちの教育を支える仕組みです。近年、導入校が急増し、公立学校の半数以上で実施されています。本記事では、コミュニティ・スクールの仕組みと導入するメリットを、学校側と地域側の両方から解説します。記事を読むと、コミュニティ・スクールの期待できる効果や注意点が分かるようになるでしょう。

コミュニティ・スクールとは?(学校運営協議会)


コミュニティ・スクールとは、学校と地域が一体となり、子どもたちの教育環境を改善するための仕組みです。近年、教育現場は複雑化し、多様なニーズに応える必要が高まっています。このような状況下で、学校・家庭・地域が連携し、協力して取り組むことが求められています。コミュニティ・スクールはその実現を目指し、地域住民や保護者が学校運営に参加することで、子どもたちの未来を共に育むことが目的です。この取り組みにより、地域の特性を生かした教育が展開され、子どもたちの成長を支える新たなコミュニティの形成が期待されています。文部科学省の「2023年度コミュニティ・スクール及び地域学校協働活動実施状況調査(概要)」によると、コミュニティ・スクールは全国に18,135校あり、導入率は全国の公立学校の52.3%です。(2023年5月1日時点)(※1)

コミュニティ・スクールの仕組みや目的


ここでは、コミュニティ・スクールの仕組みと、目的・必要性について詳しく見ていきましょう。(※2)

コミュニティ・スクールの仕組み

コミュニティ・スクールの仕組みは、学校運営協議会を中心に構築されています。この協議会の構成者は、地域住民、保護者、学校支援者など、多様な立場の人々です。教育委員会が委員を任命し、学校の運営方針や課題について協議を行います。協議会では、学校の運営に関する重要事項を審議し、教育委員会や校長に意見を述べることも可能です。また、教職員の任用に関しても意見を表明する権限があります。必要に応じて、評価部や学校地域協働部などの下部組織を設置し、より詳細な活動を行うこともあります。2017年の法改正により、複数校で1つの協議会を設置することも可能となり、小中一貫教育などの連携がしやすくなりました。

コミュニティ・スクールの目的や必要性

コミュニティ・スクールの目的や必要性は、急速に変化する社会に対応した教育を実現することです。従来の全国一律の教育では、地域ごとの特性や課題に十分対応できなくなっています。特に、AI技術の進展により従来の職業が変容する可能性が高まる中、地域のニーズを察知し、新たな価値を創造できる人材の育成が求められています。コミュニティ・スクールは、学校と地域が連携し、地域の特性を生かした教育を展開することで、子どもたちの未来に向けた準備を整えることが可能です。また、地域住民の知恵や経験を教育に活用することで、より実践的で多様な学びの機会を提供し、子どもたちの可能性を最大限に引き出すことを目指しています。

コミュニティ・スクールを導入する4つのメリット【学校側】


学校側から見た導入のメリットを4つ紹介します。(※2)

学校の現状について理解してもらえる

コミュニティ・スクールの導入により、学校が抱える課題や日々の運営状況を地域住民に知ってもらう機会が増えます。これは、学校と地域の相互理解を促進する重要な効果です。例えば、教職員の多忙化や施設の老朽化など、学校が直面している問題を共有することで、地域からの支援や協力を得やすくなります。また、教育方針や指導方法についても理解を深めてもらえるため、保護者からの過度な要求や批判を減らすことができるでしょう。さらに、教職員と地域住民が交流する場が増えることで、お互いの立場や考えを知る機会が生まれます。これにより、学校と地域の連携がより強くなるでしょう。

地域の人との交流が増える

コミュニティ・スクールの導入によるメリットは、学校と地域の交流が活発化することです。学校外の人々と接する機会が増えると、新たな人脈形成につながります。従来、教員は学校内での人間関係に限られがちでしたが、コミュニティ・スクールによって地域住民との対話の場が増えます。これにより、多様な視点や経験を持つ人々と交流し、教育活動に生かせる知見を得られる可能性が高まるでしょう。また、地域ボランティアの活動が活性化し、学校支援の輪が広がります。イベントや行事の増加に伴い、教職員と地域住民が協力する機会も増えるでしょう。

学校づくりに助言をもらえる

地域住民や保護者など、多様な背景を持つ人々が学校運営協議会に参加することで、従来の学校の枠を超えた学校づくりの助言をもらえます。例えば、民間企業での経験や起業のノウハウを持つ人材が、学校運営に関する助言を行うことで、効率的な運営方法や革新的な教育プログラムの導入につながる可能性もあるでしょう。また、地域の特性を生かした教育活動の提案など、学校だけでは思いつかなかった取り組みが実現する可能性も高まります。こうした外部からの新しい視点は、学校の伝統を守りつつも、時代に合わせた改革を促進し、より良い教育環境の創出に貢献するでしょう。

子どもたちの社会教育も期待できる

コミュニティ・スクールの導入により、子どもたちの社会教育の機会が広がる点もメリットです。地域の多様な大人たちとの交流を通じて、子どもたちは学校の枠を超えた社会性を身に付けることができます。例えば、地域の専門家による特別授業や、地域行事への参加を通じて、実社会の知識や経験を得られます。また、学校運営に関する意見を述べる機会を得ることで、自己表現力や責任感が育つでしょう。さらに、地域の課題解決に関わることで社会貢献の意識が芽生え、将来の地域の担い手としての自覚も高まります。

コミュニティ・スクールを導入する4つのメリット【地域側】


次に、地域側から見た導入のメリットを4つ見ていきましょう。(※2)

防犯意識の高い地域づくりに取り組みやすい

コミュニティ・スクールの導入により、地域学校協働本部を通じて地域住民の学校への関わりが深まります。この結果、学校を中心とした地域の防犯意識が高まる効果が期待できる点はメリットです。例えば、地域ボランティアの学校への出入りが増えることで、子どもたちと地域住民の間に「顔見知り」の関係が築かれます。日常的なあいさつが習慣化し、地域全体で子どもたちを見守る雰囲気が醸成されるでしょう。こうした環境では、地域の人々がお互いに顔を知っているため、不審者の発見も容易になります。結果として、地域全体の防犯意識が自然と高まり、子どもたちにとってより安全な環境が整備されていくでしょう。

子どもたちが地域のことを好きになってくれる

コミュニティ・スクールの導入は、子どもたちが地域に対して愛着を持つ機会となり得ます。地域住民との交流を通じて、子どもたちは自分たちの住む地域の魅力や価値を再発見できるでしょう。例えば、地域の歴史や文化を学ぶ特別授業や、地域の課題解決に向けたプロジェクトへの参加を通じて、子どもたちは地域への理解を深めていきます。こうした経験は、将来的に地域の担い手となる人材の育成にもつながります。コミュニティ・スクールを通じて子どもたちの地域愛を育むことは、持続可能な地域づくりの基盤となるでしょう。

地域の困りごとにも対応してもらえる

コミュニティ・スクールの導入により、地域の抱える問題に対して、学校と地域が協力して取り組む体制が整います。これまでは、地域住民が個別に学校に伝えていた課題や要望を、学校運営協議会という公式の場で議論できるようになります。例えば、地域の高齢化に伴う見守り活動の強化や、子どもの居場所づくりなど、学校を核とした地域課題の解決に向けた取り組みが可能です。また、学校施設の地域開放や、地域人材の教育活動への参加など、学校と地域の資源を相互に活用する機会も増えるでしょう。このように、コミュニティ・スクールは学校と地域の連携を深め、双方にとってWin-Winの関係を築ける可能性があります。

教員の採用などにも意見を述べられる

コミュニティ・スクールの導入により、地域は学校の教職員人事に関して意見を述べる機会を得られます。これは、地域の特色や将来像を踏まえた学校づくりに寄与する重要な権限です。例えば、地域が求める特定の専門性や経験を持つ教員の採用を提案することが可能です。ただし、この権限の行使には慎重さが求められます。学校のビジョンや目標が明確に定まっていない段階での人事への意見は、すべきではありません。従って、教職員人事への意見は、学校と地域の信頼関係を築いた上で、双方の合意のもとに行われるべきといえます。これにより、地域の実情に即した、より効果的な学校運営が期待できるでしょう。

コミュニティ・スクールはメリットや魅力だけではない!問題点について


コミュニティ・スクールには多くのメリットがありますが、運営上の課題も存在します。主な問題点として挙げられるのは、方向性の相違によるトラブルと組織構造の偏りです。方向性の違いは、学校運営協議会内で意見の対立を引き起こし、時に深刻な人間関係の問題に発展することがあります。これを防ぐには、個別面談や組織の目的の再確認が効果的です。また、強力なリーダーに依存するトップダウン型の組織構造に陥りやすい傾向があります。初期段階ではリーダーシップが重要ですが、長期的には全メンバーが主体的に参加する相互支援型の関係性を目指す必要があるでしょう。
継続的な対話と柔軟な組織運営が、成功へのポイントです。(※3)

学校と地域が協力し合うことが大切


コミュニティ・スクールは、学校と地域が一体となって子どもたちを育む仕組みです。現代の複雑化する教育環境において、この協働体制は不可欠です。地域の知恵と経験を学校教育に生かすことで、子どもたちの学びがより豊かになります。同時に、教職員は本来の教育活動に集中できる環境が整うでしょう。さらに、この取り組みは地域の活性化にもつながります。子どもたちが地域に愛着を持ち、将来の担い手として成長することが期待できるからです。国の施策を活用しながら、各地域の特色を生かしたコミュニティ・スクールの導入を進めることで、「社会総掛かり」の教育体制が実現します。

まとめ


コミュニティ・スクールは、学校と地域が協働して子どもたちの教育を支える仕組みです。学校運営協議会を通じて、地域の声を学校運営に反映させ、特色ある教育活動を展開できます。導入のメリットは多岐にわたり、学校と地域の相互理解が深まり、子どもたちの社会性育成にも寄与します。一方で、運営上の注意点もあるため、継続的な対話と柔軟な対応が必要です。学校と地域が一体となって、子どもたちの成長を支える環境づくりが、これからの課題といえるでしょう。
※1:文部科学省「令和5年度コミュニティ・スクール及び地域学校協働活動実施状況調査(概要)
※2:文部科学省「「学校運営協議会」設置の手引き(令和元年 改訂版)
※3:文部科学省「第2章 これからのコミュニティ・スクールの在り方と総合的な推進方策について

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