近年、コロナウイルスの影響からオンライン授業を実施している通信制高校が増加しつつあります。オンライン授業は、新たな教育スタイルとして、さまざまな学校で取り入れられている学習方法です。この記事では、教育者・学校の先生に向けて、オンライン授業を実施している通信制高校の特徴やメリット、今後の課題について解説します。併せて、通信制高校の一般的な学習内容についてもご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
通信制高校の一般的な学習内容
通信制高校では「単位制」が一般的です。単位制では、毎日の学習時間を自分で決められる代わりに義務付けられている学習内容があります。それぞれ順番に見ていきましょう。
課題に対するレポート提出
通信制高校では課題に対するレポート提出が求められており、レポートを提出することで卒業に必要な単位数を取得できます。通信制高校は登校数が少ないことから、大抵は自習でレポートを作成します。そのため、課題に対するレポート作成が勉強時間に当たります。通信制高校のレポート提出方法は、郵送または登校日に直接提出するのが一般的です。レポート数は学校によって異なりますが、5〜8件/1カ月ほどの提出が求められます。
スクーリングや特別活動(登校)
通信制高校ではスクーリングや特別活動(登校)なども学習内容として取り入れられています。通信制高校の場合、スクーリング数や時間が決められているため、既定のスクーリング数や時間に到達しないと卒業できません。スクーリングや特別活動の数や時間は、学校によって異なります。例えば、全日制高校のように毎日登校型で年5回ほどのスクーリング合宿があったり、登校日もスクーリングの日にちも自分で全て決められたりと、学校によって日数や時間はさまざまです。
単位認定試験
通信制学校では、年1〜2回ほど行われる単位認定試験に合格することが必須とされます。基本的に通信制学校の多くは、単位制という制度を取っているため、3年間在籍していれば卒業できる全日制学校とは異なります。通信制学校の場合は、下記の条件をクリアした上で単位認定試験を受け、合格する必要があります。
・教科ごとに決められた規定数のレポートを提出する
・教科ごとに決められた規定数のスクーリングに出席する
全日制学校に比べると卒業までのハードルが高くなるため、3年で卒業できない学生も多くいます。
オンライン教育を実施している通信制高校の特徴
ここでは、オンライン教育を実施している通信制高校の特徴を3つ挙げていきます。併せて、置き換えに関する時間数の基準や留意点についてもまとめました。1つずつ順番に見ていきましょう。
オンライン教材を提供している
オンライン教育を実施している通信制高校は、生徒にオンライン教材を提供しています。そのため、オンライン教材を中心に学習を進めることが多く、紙ベースの教科書や本を使用して学習することはほぼありません。タブレットやスマートフォン、パソコンなどを使用することで、場所を問わない自由なスタイルで学習できます。
オンラインでのサポートや交流の仕組みが充実している
オンライン教育を実施している通信制高校は、オンラインでのサポートや交流の仕組みが充実しています。オンライン教育を導入していると、友達や先生と直接会って会話するタイミングがそれほど多くありません。そのため、学校によってはできるだけ生徒や先生との会話のタイミングを増やす試みを行っています。掲示板やアバターによるチャットを通じて、生徒同士が日常的にコミュニケーションを取れたり、バーチャル文化祭を楽しめたりと、交流の仕組みを取り入れている学校も多くあります。また、勉強のつまずきや学習状況などをメール・電話で適宜確認するサポート体制やオンラインホームルームなどオンラインでのサポートも充実しています。そのため、オンライン教育に不安を感じる生徒であっても、安心して勉強を続けられます。
スクーリングの一部をオンライン学習に置き換えられる
オンライン教育を実施している通信制高校の場合、スクーリングの一部をオンライン学習に置き換えられます。そのため、一般的な通信制高校のスクーリング日数が年間20日程度になることに比べて、オンライン教育を実施している通信制高校は年間数日程度しかスクーリングする必要がありません。とはいえ、スクーリングを全てオンライン学習に置き換えることはできません。オンライン教育を実施している通信制学校とはいえ、数日間のスクーリングは必須です。
置き換えられる時間数の基準
学習指導要領では、オンライン教育を実施している通信制高校がスクーリングの一部をオンライン学習に置き換えられる時間数の基準を、下記のように示しています。
・メディアごとにそれぞれ10分の6以内の時間数の置き換えは可能
・置き換えられる時間として、10分の8以上は原則不可
オンライン教育を主体にしているとはいえ、スクーリングの全てがオンライン学習に置き換えられるわけではありません。学校のカリキュラムごとに置き換えられる時間数は決まっています。
置き換えに際して留意すること
オンライン教育を実施している通信制高校がスクーリングの一部をオンライン学習に置き換える際に留意しておきたいことは、以下のとおりです。
・本来対面で行われるべき学習量と質を低下させないようにすること
・置き換える時間数に応じて報告課題等の作成を求める
スクーリングの一部を置き換える際には、オンライン学習の学習量と質を低下させないように配慮した授業が求められます。また、自宅学習も怠らず行えるように、オンライン学習に置き換えた時間数に応じて報告課題等の作成を生徒に求めることも義務付けられています。
通信制高校のオンライン授業・学習のパターン
通信制高校のオンライン授業・学習のパターンとして、オンライン教材を使用した自習学習や対面式授業などが挙げられます。また、オンライン授業・学習のサポートとしてチャットによるサポートや交流を積極的に取り入れている高校もあります。ここからは、それぞれの特徴を紹介していきます。
オンライン教材を使った自学自習
通信制高校のオンライン授業・学習パターンとして、オンライン教材を使った自学自習が挙げられます。オンライン教材を使った自学自習とは、学習アプリやオンデマンド教材などを使用して個人で学習する学習パターンのことです。自学自習は、個人のやる気や精神力が必要になるため、怠けてしまう生徒が多くいます。しかし、オンライン教材の内容が豊富だと勉強にも取り組みやすくなり、自学自習を率先して行うようになります。そのため、オンライン教材が豊富な学校では、個人で学習を進めるオンライン教育が定番の学習パターンになります。
対面式授業
通信制高校のオンライン授業・学習パターンとして、対面式授業が挙げられます。オンライン教育の対面式授業とは、複数人がライブカメラを使用するライブ授業やグループワークなどを行う授業方法のことです。オンライン教育の対面式授業は、場所を問いません。そのため、好きな場所から参加できます。自学自習がメインになるオンライン教育だとおろそかになるコミュニケーションスキルや協働することの大切さなどを学習します。また、オンライン教育の対面式授業には、仮想の教室空間に集まって授業や課外活動をする学習パターンがあるため、まるで教室にいるような感覚で授業を受けられます。
チャットによるサポートや交流
通信制高校のオンライン授業・学習パターンには、チャットによるサポートや交流なども含まれています。オンライン教育は、スクーリングをオンライン学習に置き換えられるため、先生や同級生との会話の回数が減ります。会話の回数が減るということは、授業に対する疑問や進路への不安などの相談もできないということです。しかし、オンライン教育を実施している通信制高校の中には、チャットツールを活用したオンラインホームルームやビデオチャット、質問掲示板などが開設されています。チャット上でサポートを受けられたり、簡単な交流が図れたりするため、授業に対する疑問や進路への不安なども気軽に相談できます。
通信制高校でオンライン教育を実施するメリット
通信制高校は、全日制高校では通学が困難だった人や働きながら学びたい人など、さまざまな事情を抱えた生徒が通っているケースが多い傾向にあります。ここからは、オンライン教育を実施する2つのメリットについて解説していきます。
通学が困難な生徒も学びやすい
通信制高校でオンライン教育を実施することで、通学が困難な生徒も学びやすくなります。例えば、毎朝早起きするのが苦手な方や病気・怪我などを抱えて身体的・精神的な負担を抱えている方であってもオンライン教育であれば自宅で受けられるので、負担軽減につながるでしょう。また、オンライン教育を実施している通信制高校によっては、心身のバランスを整えてくれる心理カウンセラーが授業へのサポートを実施しています。そのため全日制高校では通学が困難な生徒であっても、オンライン教育であれば学びやすい環境を作ることが可能です。
個々の生徒をサポートしやすい
通信制高校でオンライン教育を実施することで、個々の生徒をサポートしやすい環境が作れます。全日制高校であれば、1クラス数十人単位の生徒を1人の担任で見るため、個々の生徒のサポートが難しい状況になります。しかし、オンライン教育を実施している通信制高校であれば生徒数も少なく、サポート方法もオンラインがメインになるため、先生側のサポート負担も軽減されるでしょう。そのため、時間をかけて個々の生徒をサポートしやすくなります。
通信制高校のオンライン教育に今後求められること
通信制高校のオンライン教育は、まだまだ課題が多い教育方法です。そのため、今後より良いオンライン教育を生徒に提供するためにも、個別最適化の学びと協働的な学びの両立や教員配置の充実は欠かせません。
個別最適な学びと協働的な学びの両立
これからの通信制高校のオンライン教育に求められることは、個別最適な学びと共同的な学びです。オンライン教育では、生徒1人1人が個別学習を求められるため、最適な学習方法の提示が必要になります。また、オンライン教育を実施している通信制高校では他者と関わることが少なくなってしまいます。そのため、他者との関わり方を学ぶ授業方法やサポートなどが求められていくことになり、個別最適な学びと協働的な学びの両立が必要不可欠になるのです。
教員配置の充実
通信制高校のオンライン教育に今後求められることとして、教員配置の充実が挙げられます。オンライン教育では、授業を行っている先生の他に、生徒の様子を見て個別にメールサポートをしたり、チャットをしたりなどの補佐的役割を担った先生が必要になります。また、デバイスの不調や回線がつながりにくいなどオンライン教育で起こりえるトラブルにすぐ対応できる教員の配置も必要になるでしょう。現に、高等学校通信教育課程でも、1人1人の事情に寄り添ったきめ細かな指導を行えるように、教員配置の充実を図ることが求められています。
まとめ
オンライン授業は、コロナウイルスの流行によって導入され始めた学習方法の1つです。しかし、これからは当たり前のように使用されていく教育でもあります。現に、多くの通信制高校でもオンライン教育が導入されています。オンライン教育であれば授業を受けられるといった方もいるように、多くの生徒の未来を後押しできるようオンライン教育の知識を取り入れて、教育現場に生かしていきましょう。