2024/11/20(水)

非認知能力とは、テストでは測れない粘り強さや協働性といった力を指します。予測困難な社会を生き抜くには、知識だけでなく自ら考え行動する力が欠かせません。
この記事では、非認知能力の基礎知識と高校現場で実践できる指導方法を紹介します。この記事を読むと生徒の成長を促すアプローチが分かり、探究学習や日常の授業に生かせるようになります。
非認知能力の基本と注目される背景
非認知能力の基本と注目される背景を見ていきましょう。
- 非認知能力とは
- 認知能力と非認知能力の違い
- 非認知能力が注目されるようになった背景
非認知能力とは
非認知能力とは、数値では測れない心の力を指します。目標に向かって粘り強く取り組む姿勢や、他者と協力する力、自己肯定感といった内面的な資質が該当します。社会情動的スキルとも呼ばれ、人生全体に影響を与える重要な能力です。
近年の研究により、将来の成功には非認知能力が大きく関わることが明らかになっています。例えば、困難な課題に直面しても諦めずに工夫を重ねる生徒は学力も向上します。友人と協働して探究活動を進める経験は、コミュニケーション能力を育てるでしょう。非認知能力は、認知能力の土台となる力です。
学校現場では探究学習や委員会活動を通じて、生徒の非認知能力を育成できます。
認知能力と非認知能力の違い
測定可能かどうかが両者の違いです。認知能力は知識や技能、思考力といった知的能力を指し、テストや知能検査で数値化できます。一方、非認知能力は意欲や意志、社会性など、テストでは測れない内面的な力です。
学習指導要領が掲げる3つの柱で整理すると分かりやすいでしょう。「知識及び技能」「思考力、判断力、表現力など」が認知能力に該当します。「学びに向かう力、人間性など」が非認知能力です。
数学の問題を解く場面を考えてみましょう。公式を理解し正解を導く力は認知能力、難問に粘り強く取り組む姿勢や、仲間と協力して解決策を探る態度は非認知能力です。
非認知能力が注目されるようになった背景
非認知能力が注目されるようになったきっかけは、1960年代にアメリカで実施された研究です。経済的に恵まれない3~4歳の子どもを対象とした「ペリー就学前プロジェクト」で、非認知能力の重要性が明らかになりました。
ペリー就学前プロジェクトでは子どもを2つのグループに分け、一方には主体的な学びを中心とした教育プログラムを提供しました。追跡調査の結果、プログラムを受けた子どもたちは認知能力に大きな差がなく、学習成績が高く安定した社会生活を送っていました。犯罪率や生活保護受給率も低い結果が出ました。
この差を生んだのは、テストでは測れない非認知能力だと考えられています。粘り強さや協調性といった力が、社会への適応力を高め人生を豊かにしたといえます。
非認知能力の代表例と主な特徴

非認知能力の代表例と主な特徴には下記が挙げられます。
- 自分の意思で行動し、何かに夢中になれる力
- 自制心を持ち、粘り強く取り組む力
- 周囲と協働しながら物事を進める力
- 自分を肯定し、前向きに行動できる力
自分の意思で行動し、何かに夢中になれる力
自分の意思で行動し、何かに夢中になれる力は、主体性や探究心を支える力です。目標に向かって意欲的に取り組み、好きなことに没頭できる姿勢です。
例えば探究学習で環境問題に関心を持った生徒は、休み時間も使って調査を続けることがあります。周囲が驚くほどの集中力を発揮し、データ収集や分析に没頭する姿が見られます。
こうした経験は大人になっても役立ち、困難な場面で粘り強く取り組む姿勢につながるでしょう。
自制心を持ち、粘り強く取り組む力
自制心を持ち、粘り強く取り組む力は、学習や人間関係の基礎を支える力です。
受験勉強中にスマートフォンの誘惑を断ち、計画通りに学習を進める生徒がいます。困難な課題に直面しても諦めず、試行錯誤を重ねながら解決策を探る姿勢も該当するでしょう。
探究学習では思うような結果が出ない場面もあります。そこで投げ出さず仮説を見直し調査方法を工夫する生徒は、やり抜く力を育てています。
こうした力を持つ生徒は、大人になっても周囲から信頼され成果を生み出しやすいでしょう。
周囲と協働しながら物事を進める力
周囲と協働しながら物事を進める力は、社会性を支える要素です。社会生活を送る上で欠かせない能力といえます。
探究学習でグループ活動を行う際、時にはメンバー間で意見が対立する場面もあるでしょう。そこで互いの考えを尊重しながら議論を重ね、最適な解決策を導き出す経験が協働性を育てます。文化祭の準備で役割分担し、それぞれの強みを生かして成功させる過程も同様です。
こうした経験を通じて周囲とうまく関わる力が身に付けられます。
自分を肯定し、前向きに行動できる力
自分を肯定し、前向きに行動できる力は、自己成長の土台になります。自己肯定感が高い生徒は、新しい課題にも前向きです。
探究学習で思うような成果が出なくても、失敗を成長の機会と捉えられる生徒がいます。発表で緊張しても「自分なりに頑張った」と肯定的に振り返る姿勢が、次の挑戦につながるでしょう。
日本の若者は自己肯定感が低い傾向にあります。教員が生徒の努力や成長を具体的に認めることで、自己肯定感は育っていきます。
非認知能力が高い人に見られる主な特徴

非認知能力が高い人は、精神的な安定性と主体性を持つ点が特徴です。自己肯定感や自ら行動する力を身に付けているため、物事に前向きに取り組めます。
予期せぬトラブルが起きても冷静に対処し、状況の変化に柔軟に対応できます。感情のコントロールがうまく共感性も高いため、周囲との関係も良好です。グループ活動では、メンバーの意見を尊重しながらまとめ上げる力を発揮します。
探究学習でリーダーになる生徒は、こうした特徴を持つ場合が多いでしょう。
非認知能力が重視される理由とは
非認知能力が重視される理由は以下の通りです。
- 社会課題に向き合う力が必要とされているため
- 予測できない事態に対応できる力が求められているため
- 入試や就職活動で人間力が評価される時代であるため
- AIが代替できない創造的な力が求められる時代であるため
社会課題に向き合う力が必要とされているため
環境破壊や貧困といった正解のない問題へ立ち向かうには、知識だけでなく粘り強く行動する力や共感力が不可欠です。これらの課題を解決する手段として、非認知能力が注目されています。
先進国の教育現場では、さまざまな価値観の中で協働する力を養うカリキュラムの導入が加速しています。社会課題を乗り越え、生徒たちが持続可能な未来を自ら築くための基盤として、非認知能力は欠かせません。
予測できない事態に対応できる力が求められているため
現代社会では、既存の知識だけでは解決できない不測の事態が頻繁に起こります。パンデミックや自然災害など、これまでの常識が通用しない状況下では、自ら考えて動く力が必要です。
未知の事態に直面した際、状況を的確に分析して柔軟に行動できる生徒は、困難を乗り越えられます。変化に対応する基盤となる非認知能力は、不確実な未来を自らの力で切り開くために必要です。
入試や就職活動で人間力が評価される時代であるため
学力試験だけでなく、受験生の内面や主体性を重視する評価基準が主流になりつつあります。従来の知識量に頼る選抜では、社会の変化に対応できる資質を見極められません。
具体例として大学の総合型選抜での対話型評価や、企業の採用におけるグループディスカッションが挙げられます。こうした場では、協調性や意欲といった非認知能力が合否を分ける要素になっています。
AIが代替できない創造的な力が求められる時代であるため
AIの急速な進化により、定型的な業務や高度なデータ分析は機械が担う時代です。
この状況下では、AIが苦手な感情の理解や価値の創出を担う非認知能力の役割が重視されるようになりました。ゼロから問いを立てる独創性や、多角的な視点から倫理的判断を下す能力はAIにはできません。
知識の習得だけでなく自律的に思考し他者と協働する力を磨くことが、生徒の将来を支える土台になります。
非認知能力を育てるには

役割経験を通して協働性と責任感を育てる
ボランティアやアルバイトなど、役割を担う経験が協働性と責任感を育てます。他者と協力しながら目標を達成する過程を通じて、チームで働く力が身に付くからです。
ボランティア活動では、仲間と協力しながら社会貢献を実現する喜びを体験できます。アルバイトでは職場のルールを守り、与えられた役割を果たすことで責任感が養われるでしょう。
こうした経験を通じて、生徒の協働性と責任感という非認知能力が着実に高まっていきます。
社会と関わる経験を増やし、視野を広げる
地域活動や校外プログラムへの参加を通じて、社会と関わる経験を増やすことが視野を広げます。学校の外で多様な価値観や考え方に触れることで、物事を多角的に捉える力が育つからです。
地域のイベント運営に携わることで、さまざまな年代の人と協働する経験ができます。企業や大学が主催するワークショップに参加すれば、実社会の課題に触れる機会も得られるでしょう。
社会との接点を増やすことで生徒の視野が広がり、非認知能力も高まっていきます。
自己探究とキャリア教育を通して進路選択の基盤を育てる
自己探究とキャリア教育の実践を通じて、自分の価値観や興味を深く理解することで、将来の方向性を主体的に決める力が養われます。
キャリア教育プログラムは、さまざまな職業や働き方について学べる機会です。インターンシップに参加すれば、実際の職場を体験しながら自分の適性を確認できるでしょう。
大学や専門学校の情報を比較する過程では、意思決定力も高まります。こうした自己探究を通じて、生徒は進路選択に必要な非認知能力を着実に身に付けていきます。

