高校生へのアントレプレナーシップ教育とは?必要性や事例も紹介

2025/02/27(木)

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近年、高校教育の現場でアントレプレナーシップ教育が注目を集めています。変化の激しい現代社会で求められる起業家精神や創造性を育むため、文部科学省も本格的な取り組みを始めました。アントレプレナーシップ教育は、高校生が課題解決能力やイノベーション力を身に付ける機会となっており、将来の進路選択にも良い影響を与えることが期待されています。本記事では、高校におけるアントレプレナーシップ教育の意義や実践事例、育成される具体的な能力について詳しく解説します。

アントレプレナーシップ教育とは?


アントレプレナーシップ教育は、起業家精神を育む取り組みとして、高校教育で重要性を増しています。単なる起業家の育成だけでなく、社会課題の解決に向けた創造性や主体性を養う教育プログラムとして注目を集めています。

アントレプレナーシップと高校教育について

アントレプレナーシップは、「entrepreneur(起業家)」と「ship(資質・技能)」を組み合わせた言葉です。高校教育において、この概念は単なる起業家育成にとどまりません。変化の激しい現代社会で必要とされる、創造性や挑戦する心を育むための重要な教育要素です。高校でのアントレプレナーシップ教育は、総合的な探究の時間などを通して実践されています。生徒たちは与えられた課題を解くだけでなく、自ら社会課題を見つけ、その解決に向けて主体的に取り組む機会を得られます。このプロセスを通じて、問題発見力や創造的思考力、さらには社会に新たな価値を生み出す力を培うことが可能です。現代の教育現場では、正解のある問題を解く力だけでなく、未知の課題に立ち向かう姿勢や能力の育成が求められています。

イントレプレナーシップとの違い

アントレプレナーシップとイントレプレナーシップは、どちらも新しい価値を創造する点で共通していますが、その実践の場に大きな違いがあります。アントレプレナーは独立して起業し、自らのビジョンにもとづいて事業を展開します。一方、イントレプレナーは、既存の企業内で新規事業や革新的なプロジェクトを推進する「社内起業家」です。イントレプレナーは組織の資源や人脈を活用できる半面、社内の調整や承認が必要となります。リスクは比較的低いものの、自由度はアントレプレナーほど高くありません。高校のアントレプレナーシップ教育では、この両者の特性を理解し、将来の進路に応じて柔軟に適用できる能力を育成することが重要です。

日本国内の高校におけるアントレプレナーシップの現状や課題


日本の高校におけるアントレプレナーシップ教育は、徐々に広がりを見せています。特に商業高校を中心に、起業家精神や創造的思考を育む取り組みが増加傾向です。しかし、その普及状況は十分とはいえず、多くの課題が残されています。主な課題として、指導者不足が挙げられます。アントレプレナーシップ教育を実践できる教員が限られており、プログラムの整備や改善が進みにくい状況です。また、学校間での取り組みの差も大きく、先進的な事例がある一方で、従来の教育方法から脱却できていない学校も多いのが現状です。さらに、生徒のアントレプレナーシップへの関心を高めることも課題といえます。起業や新規事業創造に対する理解や興味が十分でない生徒も多く、教育の効果を最大化するためには、その重要性や魅力を伝える工夫が必要です。

アントレプレナーシップが注目されている理由や必要性


アントレプレナーシップ教育が注目されている背景には、急速に変化する社会への対応があります。AI技術の進展や不確実性の高まりにより、従来の知識偏重型教育では十分に対応できない状況が生まれています。そのため、自ら課題を発見し、創造的に解決する能力が求められるようになりました。高校教育においては、2022年度から「総合的な探究の時間」が導入され、アントレプレナーシップ教育と親和性の高い実践が広がっています。これは、生徒の主体性や創造性を育む機会として重要視されています。さらに、文部科学省は小中学校段階からのアントレプレナーシップ教育の必要性を認識し、2016年度から「起業体験推進事業」を開始しました。2022年には実践事例集を作成し、全国的な普及を目指しています。

高校のアントレプレナーシップ教育で育まれる能力


高校のアントレプレナーシップ教育では、課題発見能力や創造力、イノベーション能力といった起業家精神の基礎となる能力を育成します。さらに、リーダーシップやチームワーク、意思決定力、自己管理能力なども養えます。これらのスキルは、将来の進路選択や社会での活躍に重要な役割を果たすでしょう。

課題発見能力

身近な社会問題や地域の課題に目を向け、そこから新たなビジネスチャンスを見いだすことを学びます。具体的には、データ分析やフィールドワークを通じて問題の本質を理解し、解決すべき課題を特定する力を養います。この能力は、将来の起業だけでなく、既存の企業での新規事業開発にも不可欠な要素です。課題発見のプロセスを通じて、生徒たちは批判的思考力や分析力も同時に身に付けられるでしょう。

創造力とイノベーション能力

創造力とイノベーション能力は、既存の枠組みにとらわれない柔軟な発想と、それを具現化する実行力として育まれます。特に、急速に変化する現代社会では、従来の常識にとらわれない自由なアイデアが求められています。生徒たちはブレインストーミングやデザイン思考の手法を学び、新しい価値を生み出すプロセスを体験的に学習することが可能です。また、アイデアを形にする過程で、実現可能性の検討やリスク分析なども含めた総合的なイノベーション能力を身に付けられるでしょう。

リーダーシップとチームワーク

リーダーシップとは、メンバーをまとめ、共通の目標に向かって導く能力を指します。新規事業やプロジェクトでは、予測が難しい状況が多いため、リーダーは柔軟に対応しながらチームを鼓舞する必要があります。一方で、チームワークは各メンバーが協力し合い、相互の強みを生かして成果を上げるための基盤です。アントレプレナーシップ教育では、グループ活動やプロジェクトを通じて、生徒たちが実際にリーダーとしての役割を担ったり、チームの一員として貢献したりします。この経験を通じて、彼らはコミュニケーション能力や問題解決能力も向上させられます。

意思決定力

意思決定力は、生徒が複雑な状況や不確実な環境下で適切な選択をするために必要です。新しいビジネスやプロジェクトを推進する際には、多くの情報を収集・分析し、最良の解決策を見つけ出すことが求められます。意思決定力を育むためには、実際のケーススタディやシミュレーションを通じて、さまざまな選択肢の中から自分で判断する経験が大切です。生徒は、自らの価値観や目標にもとづいて選択し、その結果について責任を持つことを学びます。また、グループ活動を通じて他者の意見を取り入れながら、合意形成や調整力も養われます。

自己管理と自律性

自己管理とは、自分の行動や感情をコントロールし、目標に向かって計画的に進む力を指します。一方、自律性は自らの判断で行動し、責任を持つ姿勢を意味します。生徒たちは、プロジェクトや課題に取り組む中で、時間管理や優先順位の設定、ストレスへの対処法の学習が必要です。また、自分自身の進捗を評価し、必要に応じて修正する能力も養われます。これにより、彼らは将来のキャリアや社会生活においても、自立した行動ができるようになるでしょう。

高校教育でアントレプレナーシップを育むために大切なこと


高校教育でアントレプレナーシップを育むためには、生徒の意見やアイデアを尊重することが重要です。生徒が自由に発言できる環境を整えることで、創造的な思考が促進されます。また、失敗を認められる雰囲気をつくることも大切です。

生徒の意見やアイデアを否定しない

生徒の創造的な発想を受け入れることで、自己表現や問題解決能力が育まれます。そのためには、「生徒の意見やアイデアを否定しない」ことです。このような環境が整うことで、生徒は自信を持って自らの考えを発信し、実践的なスキルを身に付けられるでしょう。

失敗を認められる雰囲気をつくる

アントレプレナーシップを育むためには、「失敗を認められる雰囲気をつくる」ことも重要です。この環境を整えることで、生徒はリスクを恐れず新たな挑戦に取り組め、学びの中で成長します。失敗を受け入れる姿勢が、彼らの創造性や問題解決能力を高める土台となります。

アントレプレナーシップを育んでいる高校の事例


香川県立三本松高校の「三高みんなの食堂プロジェクト」は、生徒が主体となって地域の食文化を活性化する取り組みです。このプロジェクトでは、SDGsを意識しながら、地元の食材を使用したメニュー開発や、運営に関するアイデアを生徒が提案し実践しています。生徒たちはこの活動を通じて、アントレプレナーシップやチームワークを学び、実社会での経験を積むことが可能です。高校3年生のプロジェクト代表は、「失敗も経験しながら、対象を考えて話す力がついた」と感想を述べました。

文部科学省は教職員向けのアントレプレナーシップ人材育成プログラムを開催している


文部科学省は、教職員向けに「全国アントレプレナーシップ人材育成プログラム」を実施しています。このプログラムは、教員を対象にしてアントレプレナーシップの知識やスキルを身に付け、理解してもらうことが目的です。アントレプレナーシップは、不確実な環境において重要な資質や能力を発揮します。社会の不確実性が高まる中で、アントレプレナーシップの必要性はますます増加するでしょう。プログラムでは、教員がアントレプレナーシップ教育の手法を学び実践することで、生徒に行動力や創造力を育むことを目指しています。既にアントレプレナーシップ教育に取り組んでいる方や、これから始めたいと考えている方も参加できるプログラムです。

まとめ


アントレプレナーシップ教育は、高校生にとって重要なスキルを育むための機会です。教育現場では、生徒が自らのアイデアを実現する力や問題解決能力を身に付けることが求められています。文部科学省や各高校の取り組みにより、実践的な学びが提供され、地域社会との連携も強化されています。これにより、生徒たちは将来のキャリアにおいて必要な資質を磨き、変化の激しい社会に適応できる力を養うことが可能です。アントレプレナーシップ教育は、次世代のリーダーを育成するための重要なステップとなるでしょう。

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