高校の商業科では何を学ぶ?普通科との違いやメリット・デメリット

2025/02/03(月)

高校

文部科学省の令和3年の発表によると、高等学校は日本全国に約4,800校 存在します。その中で、商業科がある学校は約600校 。1970年には約1,200校 あった商業科ですが、その数は半減しています。そのため「商業科ではどのような授業を行っているのか」「普通科とどう違うのか」など、あまり情報が得られない教員の方もいるのではないでしょうか。本記事では、高等学校の商業科について、普通科との違いや具体的な学習内容、学ぶメリット・デメリットなどを解説していきます。また、卒業生の進路先やその特徴についてもご紹介しますので、進路指導にお役立てください。

高校の商業科とは|普通科との違いは?


高校の商業科では「情報処理」や「会計」など、商業に関する専門的な分野を中心に学びます。高校の普通科との大きな違いは、中学校で習う「普通教科」の割合が少なく、この専門的な分野の授業が多い点です。たとえば、高校の普通科では「数学」は「数学Ⅰ」や「数学A」などとさらに細分化した科目でカリキュラム構成されています。しかし商業科では、中学校と同じ「数学」のまま1科目で学習します。国語や英語なども同じです。そのため、大学の一般入試の際、自分が受験する学部・学科によっては、未履修の科目が存在する可能性があります。商業科の生徒が一般受験で大学を受験する際は、必要な科目が履修されていないことがあるので、塾や予備校で、受験に必要な科目を自分で学習する必要があります。商業科は、就職に向けたサポート体制が普通科より整っている一方で、大学受験については、生徒本人の努力が必要な面があります。そのため、大学進学については、一般受験より推薦受験を選択する生徒が多いのも、普通科との違いといえます。

商業科のねらいと、具体的な学習内容


ここでは、商業科ではどのような教育目標を定めているのか、具体的にどのような学習をしているのかについて解説していきます。

商業科のねらいと目標

文部科学省が示している学習指導要領商業編で定められている商業科の目標は以下の通りです。“商業の見方・考え方を働かせ、実践的・体験的な学習活動を行うことなどを通して、ビジネスを通じ、地域産業をはじめ経済社会の健全で持続的な発展を担う職業人として必要な資質・能力を次のとおり育成することを目指す。
(1)商業の各分野について体系的・系統的に理解するとともに、関連する技術を身に付けるようにする。
(2)ビジネスに関する課題を発見し、職業人に求められる倫理観を踏まえ合理的かつ創造的に解決する力を養う。
(3)職業人として必要な豊かな人間性を育み、よりよい社会の構築を目指して自ら学び、ビジネスの創造と発展に主体的かつ協働的に取り組む態度を養う。

(1)に記載されている「商業分野」とは、商業科で専門的に学ぶ学習分野のことで、大きく分けて4分野存在します。

商業科の4分野とは

学習指導要領の中に出てくる商業分野とは、「マーケティング分野」「マネジメント分野」「会計分野」「ビジネス情報分野」の4つを指しています。ここではその商業科の4分野について、それぞれどのようなことを学ぶのか具体的に説明していきます。

マーケティング分野

マーケティング分野では、消費者が商品を買うまでの行動や意識などを調査し、新商品を企画・開発したり、価格を決めたりするしくみなどを学びます。具体的には「マーケティング」「商品開発と流通」「観光ビジネス」の3科目で構成されています。

マネジメント分野

マネジメント分野では、経済活動のしくみや企業活動における経済資源などを詳しく学びます。具体的には「ビジネス・マネジメント」「グローバル経済」「ビジネス法規」の3科目で構成されています。

会計分野

会計分野では、商品やお金の流通から、その会社の価値や利益などが分かる資料を作成するしくみを学びます。具体的には「簿記」「財務会計Ⅰ」「財務会計Ⅱ」「原価計算」「管理会計」の5科目で構成されています。

ビジネス情報分野

ビジネス情報分野では、会社で使われているワードや表計算、プレゼンソフトの使い方やコンピュータの知識を基礎から学び、プログラミング言語についても学習します。具体的には「情報処理」「ソフトウェア活用」「プログラミング」「ネットワーク活用」「ネットワーク管理」の5科目です。この4分野の他に、基礎的科目として「ビジネス基礎」や「ビジネス・コミュニケーション」も学習します。

実際に使われている商業科コース名とその内容例

商業科のある高校では、さらに細かくコースを分けている学校が多く存在します。1年生のうちは全員「商業科」としてクラス分けされ、2年生からは、生徒自身が選択したコースへ進む学校が多いようです。商業科がある高等学校を例に、具体的なコース名や授業内容を以下にまとめました。

高田商業高等学校商業科(一般コース・進学コース)

・進学コース…進学希望者に対応し普通教科の授業時間が多く設けられ、特に英語と国語に力を入れているコース
・一般コース…商業科目の授業時間が多く設けられ、資格を取得しやすく、卒業後の進路を見据えた学習ができるコース
引用元:https://takasho.ed.jp/

松商学園高等学校商業科(会計ファイナンスコース・ITメディアコース・経営マネジメントコース)

・会計ファイナンスコース…会計分野を広く学び、経理や財務分析のプロフェッショナルを目指すコース
・ITメディアコース…コンピュータに関する知識や技能を深め、高度で実践的な学習をするコース
・経営マネジメントコース…さまざまなビジネスで対応できる知識や技術を学ぶコース
引用元:https://www.matsusho-h.ed.jp/

旭川実業高等学校商業科(会計ファイナンスコース・ITライセンスコース・ビジネスコミュニケーションコース)

・会計ファイナンスコース…会計報告や資産運用など、会計全般の知識を学ぶコース
・ITライセンスコース…国家資格であるITパスポートをはじめ、さまざまなIT関係の資格取得を目指すコース
・ビジネスコミュニケーションコース…ビジネスルールやマナーを中心に、コミュニケーションスキルや表現力を学ぶコース
引用元:https://www.asahikawa-jitsugyo.ed.jp/

商業科卒業生の進路とその特徴


文部科学省が調査した高等学校卒業者の学科別進路状況によると、令和4年3月に卒業した商業科生徒の62%は大学や専修学校等へ進学し、35.3%の生徒は就職しています。
農業科や工業科の進学率は50%を切っているのに対して、半数以上の生徒が進学する商業科の進学率はかなり高い水準であるといえます。また、文部科学省の各高校のHPに掲載されている卒業生の就職先情報によると、商業科の生徒の就職先は、事務系の職種が多いことが分かります。取得した資格を生かして、銀行や保険会社などの金融関係、通信関係、広告関係、公務員に就職を決める生徒の多さが、商業科卒業生の特徴といえるでしょう。

商業科を選ぶメリット


普通科ではなく商業科を選ぶ4つのメリットをご紹介します。

商業分野の実践的な知識が身に付く

前述の通り、商業科は普通科より専門的な学習の時間が多く設けられています。商品開発や販売などを実際に生徒が行う「体験型学習」が存在したり、企画をプレゼンしたり、商品のCMを作成したりする学校もあります。商業分野における実践的な知識を身に付けられる点が、商業科を選択するメリットの1つといえるでしょう。

在学中に取れる資格が多い

以下は、商業科で取得できる主な資格や検定の例です。
・全商珠算・電卓実務検定
・全商簿記実務検定
・日商簿記検定
・全商ビジネス文書実務検定
・全商ビジネス計算実務検定
・全商商業経済検定
・全商情報処理検定
・全商財務諸表分析検定
・全商財務会計検定
・全商管理会計検定
・全商英語検定
・実用英語技能検定
・ビジネスコミュニケーション検定
・日本漢字能力検定
・日本語ワープロ検定
・プレゼンテーション作成検定
・文書デザイン検定
・ホームページ作成検定
・ITパスポート試験(国家試験)
・基本情報技術者試験(国家試験)
これほど多くの資格を高校在学中に取得できるのも商業科の強みといえます。

就職活動のサポートが手厚い

令和4年3月の高等学校の卒業生の就職希望率は、、普通科は6.6%、商業科は約35%でした。 これはつまり、学校側も普通科に比べて就職についてのノウハウや経験・実績があり、情報収集や面接指導をより手厚くサポートできることを意味します。就職率の高さは生徒募集の鍵となり、学校の評価や受験者数に直結する問題でもあります。その点でも、普通科に比べて就職活動へのサポートはきめ細やかであると考えられます。

企業からの求人が多い

求人数が多い背景として、商業や産業に関する専門的な知識を学んでいることや、たくさんの資格を取得していること、現場実習が多いことが挙げられます。企業は即戦力となる人材を確保できるため、普通科より商業科などの専門科に求人を出すのは当然といえるでしょう。多くの求人情報の中から、自分に合った就職先を選べることも商業科を選ぶメリットといえます。

商業科を選ぶデメリット


商業科を選ぶデメリットの1つに、大学の一般受験に対応するのが困難な点が挙げられます。最初に触れたように、高校の商業科では商業に関する専門的な分野を中心に学ぶため、中学校で習う「普通教科」の学習時間が少なくなります。大学の一般受験では、この「普通教科」である国数英社理の受験科目が一般的です。そのため、商業科の生徒が大学受験をする場合、受験科目によっては独学で勉強を進めなくてはなりません。また、商業科で学習した科目を中心に受験を考えると、経済学部・商学部・経営学部など、受験できる学部が限定される可能性があります。2つ目に挙げられるデメリットは、大きな進路変更が難しい点です。たとえば「公務員を目指していたが、医療系に進みたくなった」「就職を希望していたが、大学進学したくなった」というときに、履修科目の点で進路変更は厳しいといえます。普通科と履修科目が違うため、編入学が難しいもしくはできないというケースもあるようです。

まとめ


高校の商業科は専門的な学科であるため、就職には強い半面、大学への進路選択の際は注意が必要です。特に国数英社理について、受験科目のどこまでを授業で履修したのか、どこを履修していないのかを正しく把握することが、進路指導をする際の鍵といえるでしょう。塾や予備校を使うのか、独学で行うのか、学校ではどれくらい補習で対応できるのかなど、生徒にとって有益な情報を事前に提示できるように準備を進めておきましょう。

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