今こそ必要な社会人基礎力とは 学校での育成方法もご紹介

2025/03/18(火)

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高校現場で求められる「社会人基礎力」は、目まぐるしく変化する社会の中で自ら考え、行動し、周囲と連携するための重要な土台です。大学生や社会人になってから意識するだけでなく、高校段階から少しずつ養うことで、生徒は将来の選択肢を大きく広げられるでしょう。

本記事では、その具体的な要点や育成のヒントを網羅的にご紹介していきます。ぜひ、日々の教育活動の参考にしてみてください。

社会人基礎力とは

ここでは、社会人基礎力という概念の概要と、高校教育でなぜ重視されるのかを解説します。さらに、その背景となる時代的要請についても触れていきます。

社会人基礎力の定義

社会人基礎力とは、どのような仕事や立場でも活躍できる人材となるための土台となる能力を指す概念です。主に経済産業省が提唱した枠組みに基づいており、大学生や新社会人を中心に語られてきましたが、近年では高校段階からの育成がより注目されています。

特に、高校生は社会経験が少ない分、柔軟な思考や多様な経験への意欲を育みやすい時期にあるとされます。この基礎力を育てることで、生徒は進学先や就職先を問わず、自ら課題を見つけて動き出す姿勢や、周囲と協力して成果を出すスキルを身につけることが可能となります。知識偏重の教育だけではカバーしにくい「主体性」「協働性」「問題解決力」などを意識的に育むことが、高校教育の新たな課題として浮上しているのです。

社会人基礎力の背景と必要性

現代社会では、産業構造の変化やテクノロジーの進歩などによって、必要とされる能力が多岐にわたるようになりました。従来は、特定の職業に特化したスキルがあればキャリアを築きやすいと考えられていましたが、今では長期的に学び続け、柔軟にキャリアを組み替える発想が求められます。

その結果、主体的に行動し、創造的に課題を解決し、チームで協働できる能力があらゆる業種で重視され始めました。高校時代からこれらの力を総合的に磨くことで、生徒は進学後や社会に出た際に、環境の変化にスムーズに対応することが期待できます。知識中心だけでなく、実践的な場で試行錯誤を重ねる機会を作ることが、この急激な社会変化に対処するために必要です。

高校教育における社会人基礎力の特徴

高校では教科の学習だけでなく、学校行事や部活動など多彩な経験を積む機会があります。こうした経験を通じて、生徒自身が「自ら考え、他者と連携しながら行動する」プロセスを身をもって学べることが、大きな特徴といえるでしょう。

また、学習指導要領の改訂によってアクティブ・ラーニングや探究型学習が重視されるようになり、生徒が主体的に課題を設定し、探究し、その結果を共有する機会が増えています。こうした取り組みが社会人基礎力の涵養にも直結し、生徒は自己の将来像や社会とのかかわり方を意識しながら学びを深められるようになります。

3つの能力と12の要素

ここでは、社会人基礎力を大きく3つの能力に分け、それを補う12の要素について紹介します。これらがどのように高校生の成長と結びついているのかも見ていきましょう。

アクション(前に踏み出す力)

アクションには「主体性」「働きかけ力」「実行力」の3要素が含まれます。高校での学びでは、授業や行事でリーダー役を担って周囲を巻き込みながら企画を進める機会が多々ありますが、これがアクション能力を育てる格好の場となります。

たとえば、誰もが及び腰になる新プロジェクトを企画・提案し、説得力ある方法でクラスメートや教員の協力を得ながら結果を出す過程を体験すると、主体性や働きかけ力が養われるのです。同時に失敗や困難に直面することもありますが、その克服プロセスが実行力を高める鍵となります。

シンキング(考え抜く力)

シンキングは「課題発見力」「創造力」「計画力」の3つの要素によって構成されます。探究学習やプロジェクト型学習において、自ら課題を設定し、新しいアイデアを生み出し、計画を立てて実行していくプロセスが、まさにこの力を養う場といえるでしょう。

高校生はまだ思考の枠組みが固定化されていない分、前例にとらわれず自由なアイデアを出しやすい時期です。さらに、計画力を身につけることで、アイデアを実現可能な段階にまで落とし込み、着実に成果を上げていく流れを学ぶことができます。大学進学や就職の際にも、この「考え抜く力」が強みとして生きてくるはずです。

チームワーク(チームで働く力)

チームワークは「発信力」「傾聴力」「柔軟性」「状況把握力」「規律性」「ストレスコントロール力」の6要素から成ります。高校における部活動やクラス運営、学校行事などで役割を分担して取り組む経験は、これらの能力をバランスよく伸ばす理想的な機会です。

具体的には、大人数での文化祭準備や大会出場のプロセスで、自分の意見をしっかり伝えつつ周囲の意見にも耳を傾け、全体としての方針を上手に調整していく力が求められます。さらに、ストレスコントロール力は、結果が思うように出ないときでも前向きに挑戦を続けるために欠かせません。こうした多面的な能力が組織の中で発揮されると、リーダーシップだけでなくチームプレーヤーとしての価値も高まります。

社会人基礎力を育むポイント

ここでは、高校の教育現場で社会人基礎力を高めるために活用できる具体的なアプローチを紹介します。授業、行事、教員のサポートといった観点から確認していきましょう。

学習活動における工夫

グループディスカッションや課題解決型学習を授業に組み込むことは、生徒の主体性や協働性を育むうえで効果的です。たとえば、生徒同士が話し合う場面を意図的に増やすことで、コミュニケーション力やリーダーシップが自然と鍛えられていきます。

さらに、ICTを活用したプレゼンテーションや情報収集のプロセスを組み合わせると、時代に即したスキルを身につける機会にもなります。学習の成果を試験やレポートの点数だけで評価するのではなく、プロセスや取り組み姿勢を振り返る仕組みを整えることが、長期的な学びの定着に寄与するでしょう。

校内行事や部活動の活用

文化祭・体育祭などの行事は、運営面での計画力やリーダーシップ、チームワークを実践的に養う場として非常に有効です。実際に、企画から当日の進行、後片付けに至るまで自分たちで行うため、多くの課題やトラブルが発生します。

そこを乗り越えながら成功体験を積むことで、生徒は自信を深めると同時に、自分たちの弱点を補完し合う協働の意義を体感します。部活動でも、大会出場や発表会といった明確な目標に向けて努力する過程で、社会人基礎力がはぐくまれます。日々の練習や準備を生徒同士が支え合うことで、相互理解やコミュニケーション力を高められるのです。

高校教員の役割と視点

教員は単なる教科の指導者にとどまらず、生徒の自律的な学習や活動をサポートする「ファシリテーター」としての役割が期待されます。具体的には、グループ編成を工夫して多様な価値観や背景を持つ生徒が共に活動するよう促す、評価基準を事前に明確化して生徒が主体的に行動しやすい環境を整えるなどの工夫が考えられます。

また、生徒一人ひとりの興味や得意分野に合わせた課題を用意する、定期的に面談を行い成長をフィードバックするなどの取り組みも重要です。こうした丁寧な支援があると、生徒は試行錯誤を前向きに捉え、自分に必要な力を主体的に伸ばそうとする意欲を高めることができます。

人生100年時代に考慮すべき新たな視点

ここでは、平均寿命が延びる社会において、社会人基礎力をどのように長期的に活かしていくかという視点を確認します。長い人生を見据えた学びやキャリア形成を後押しする要素を理解することが重要です。

学び(何を学ぶか)の重要性

医療の進歩などにより寿命が延びるなか、自分の力を定期的にアップデートし続けるマインドが不可欠です。高校時代から自分の興味を積極的に探索し、新しい領域にも果敢に挑戦する姿勢が身につけば、社会に出てからも学び続ける習慣が自然と定着します。

また、高校生のうちに「自分は何を学びたいのか、なぜ学びたいのか」をじっくり考えることで、専門分野の学修や進路選択がより意義深いものとなります。常に学びの対象を広げ、新しい知識やスキルに対してオープンでいることは、人生100年時代のキャリア形成において強力な武器となるでしょう。

組合せ(どのように学ぶか)の可能性

高校では文理選択や選択科目によって専門的な学習に取り組む一方、異なる視点や分野を組み合わせることで生まれる発想力や協働力にも目を向ける必要があります。たとえば、理系の知識を活かして社会課題を解決する探究プロジェクトや、文系の視点から地域の歴史や文化を再発見する取り組みなどが考えられます。

こうした分野横断型の学習を積極的に推進することで、生徒は多角的な視野を獲得し、将来社会に出た際のイノベーション創出や問題解決の糸口を掴みやすくなります。多分野の知識やスキルを組み合わせる力は、VUCA(不確実・不安定)な時代にあって大きなアドバンテージとなるでしょう。

目的(どう活躍するか)の明確化

高校生が将来どんな仕事をしたいのか、あるいはどのような社会貢献をしたいのかを考えることは、日々の学習や学校活動に意味を見いだすうえで大変重要です。漠然とした目標しか持っていない段階でも、インターンシップや地域活動、ボランティアなどを通じてさまざまな社会の側面に触れることで、自分がどこで活躍したいのかを具体化しやすくなります。

目的意識を持てば、学習に対するモチベーションが高まり、自分に必要なスキルを優先的に磨こうとする姿勢が身につくでしょう。結果として、それが社会人基礎力のさらなる充実へとつながり、今後の人生を生き抜くための確かな土台を築くこととなります。

高校段階でのチェックポイント

ここでは、高校生の社会人基礎力がどの程度育まれているかを把握するための観点を紹介します。評価するだけでなく、生徒指導の改善や活動設計の調整にも役立ててください。

主体的な学習態度の評価

授業や課題への取り組み方を観察すると、生徒が自発的に疑問をもち、解決のための行動を起こしているかを把握できます。例えば、自主的に参考資料を探したり、積極的に教員や友人にアドバイスを求めたりする生徒は、社会人基礎力の重要要素である主体性を発揮しているといえるでしょう。

また、成果だけでなく、その過程での試行錯誤に焦点を当てたフィードバックを行うことで、生徒自身がどこをどう改善すればよいかを学習の振り返りとして得やすくなります。こうした観点が、高校での評価制度や指導スタンスに組み込まれているかが重要です。

協働する力の観点

グループワークやクラス運営、部活動などでのコミュニケーションの様子を注意深く観察すると、仲間と情報を共有し、役割を適切に分担し、互いにフォローし合っているかが見えてきます。うまくいかないときに他の意見を取り入れる柔軟性があるかなども、チームワーク力を測るうえでのポイントとなるでしょう。

さらに、他者を尊重しながらも必要な意見はしっかり主張できるか、対立や問題が生じた際に建設的に対処できるかどうかも評価の視野に入れるべきです。これらの観点を踏まえた指導によって、現場でのコミュニケーションや協働の質が大きく高まります。

専門分野と社会連携の位置づけ

高校では、選択科目や専門コースを設けている場合も多く、地域の企業や大学、NPOとの連携プロジェクトを実施しているところもあります。そうした機会を通じて、生徒は自分の学びが社会とどのようにつながるのかを実感しやすくなるのです。

また、専門分野を活かして社会的課題にアプローチする体験は、自らの学習意欲を高めるだけでなく、将来の進学や就職を考えるうえでも具体的な指針となります。高校段階でこうした取り組みを積極的に行い、外部との連携を評価の指標に組み込むことで、生徒の社会人基礎力はより実践的に磨かれていきます。

まとめ

社会人基礎力は、高校生のうちから意識的に育むことで、大きな可能性を切り開く鍵となります。授業や行事、部活動などあらゆる場面で「主体性」「協働性」「問題解決力」を高める工夫を行えば、生徒の視野は広がり、将来の進路選択や社会への適応力が飛躍的に向上するでしょう。

教員がファシリテーターとしての役割を果たし、生徒に適切なフィードバックを提供することで、学習意欲と社会人基礎力は相乗的に高まります。ぜひ、本記事で紹介したポイントを参考に、高校現場での教育活動をさらに充実させてみてください。高校段階からの意識的な取り組みが、生徒たちの未来を明るいものへと導く大きな力となるはずです。

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